152話 大暴れ!退学騒動
放課後、いつもの鍛錬場所で、レン達に学校での出来事を報告したJK3人組。
「なるほどなぁ、クソしかいねぇじゃねぇか」
「聖愛ちゃんはどうだったの?」
「私は特に何もありませんでした、いつも通り無視され続けた1日でしたね、校舎が揺れた時ニヤつきそうになりましたけど」
「1人で喋ってたら変人だもんね」
「聖愛、変人になってみたら?」
「お姉ちゃん!?…いいかも、明日やってみる!」
いや、変人って…面白そうだから止めないけど。
「新しい生活指導の先生もダメダメだしね〜」
「あのオールバック先生はいつから勤務なんだろうね」
「明日からでしょ?」
「蓮花ちゃん、なんで分かるの?」
「え?テーブルの上に書類置いてあったじゃん」
「そんなの普通見ないよ…」
「そんなに酷い先生なのか?」
「そうなんだよ〜、聞いてよカリンお姉ちゃん、生徒の方に問題があるって、働いたら最初に私達を退学にしてやるって言うんだよそいつ〜、酷くない?」
「よしレン!そいつを殺しにいくぞ!」
「やめなさい、完全に昔のカリンに戻ってんじゃねぇか」
「う〜ん…」
「レイカ、何か策はあるか?」
「別に退学になっても良くない?お金があれば生活は出来るでしょ、究極食べていければお金もいらなくない?」
カリンもレイカも極端過ぎない?お姉ちゃんって言われて舞い上がってんなぁ。
「マリーは何かないか?」
「え?あ、え〜っと、暗殺…かな」
「怖ぇよ!」
まともなやつがいねぇ…
「すまんなお前ら、ここにまともな大人はいないらしい、俺も含めて…」
「お兄ちゃん、私達を大切にしてくれるだけで十分だよ〜」
「そうですよ、心強い味方って偉大です」
「今日もいつも通り1日無視されたけど、心はいつもと違いました、全然余裕でしたもん」
「精神3万は伊達じゃないってことだな、しかしお前達も大変だったんだなぁ、よしっ!好きに暴れろ、強さも十分だしこの際バレてもいいぞ、流石に殺しは避けたほうがいいだろうけど、何があってもフォローはしてやる、絶対に見捨てたりしない」
「もちろんだ、カリンお姉ちゃんに任せろ!」
「私とマリーお姉ちゃんもいるからね〜」
「わ、私がお姉ちゃん…」
「よーし、時間はあまりないけど、今日も軽く鍛錬しよう」
「「「はい!」」」
2時間程度ダンジョンで潜在能力を上げて、本物の魔物で戦闘訓練、レベル上げをしてこの日は解散となった。
「よ~し!明日は暴れるぞぉ!」
「蓮花ちゃんやる気満々だね♪」
「私も暴れてやる!もう魔法バレてもいいんだよね?お姉ちゃん」
「そうね、もういいよね、レンお兄さんも言ってたし」
「やる気出てきたぁ!」
「あ〜あ、でも明日で高校生活も終わりかぁ」
「蓮花ちゃん何か問題あるの?」
「え?…ない、かも?」
「でしょ?でも問題は親だよね」
「私…言う!無視されてた事、退学になりそうな事、もちろん魔法の事も!」
「蓮花ちゃん…私も頑張る、聖愛、協力してお父さんを説得するよ」
「うん!私も頑張るよお姉ちゃん!」
「じゃあまた明日ね、バイバイ」
「うん、バイバイ」
「お疲れ様でした蓮花先輩!」
―――
神園家のリビング、夕食後テレビを見ながらまったり中の神園親子。
「ははははっ、ドッキリは見てて飽きないわねぇ」
「お母さん!!」
「うわぁ!?ドッキリしたぁ!何よいきなり大声出して〜」
「報告があります!」
「う、うん?」
「私!ずっとクラスでイジメられてました!」
「え、えぇ…そんなテンションで言う?」
「明日退学になるかもしれません!」
「退学…ちょ、ちょっと待って、急展開過ぎない?」
「だから退学前に大暴れしたい!」
「…蓮花」
目を瞑り考え込む母親、突然カッと目を開き。
「よく言ってくれたわ!そこまで言うなら学校が悪いのでしょう!大丈夫、私が責任取るわ!存分に暴れてらっしゃい!」
「イエスッ、マム!あと一つ!報告があります!」
「何だー!言ってみろー!」
「私、魔法使いになりました!」
「まほっ!?どういう意味なの!?何かの隠語?」
「文字通り魔法使いだよっ♪」
「…」
「…ふふ♪」
ピカッ
「消えた!?どこ!?」
「ここだよ〜」
「きゃあー!」
瞬光で母親の後ろに回り込んだ蓮花、後ろから声をかけられ驚き叫ぶ母親。
「なに今の!?」
「だから魔法だって言ったじゃん」
「本当にそんな事が…」
「むぅ、まだ疑ってるねぇ、これならどうだっ」
シュッ
サッと袖を捲る蓮花、そこには猫の入れ墨のようなものが。
「タトゥー?」
「違うよ」
お母さん…もしこれが本当にタトゥーだとしたら、母親としてその冷めた反応はどうなの?
「これも魔法、出ておいで、シャドーキャット!」
腕から黒霧が離れ、音もなくテーブルの上に着地した。
「あらぁ〜!これ、蓮花が動かしてるの?」
「そうだよ〜、可愛いでしょ?」
「素敵ね!凄いわ!私も魔法…出来るかしら」
「先生方が言うにはね、地球人も全員魔法を使えるはずだってさ」
「これは…魔法時代、来るわね?」
「…来るよ」
「お願いします!」
「よろしい!私を先生とお呼びなさい!」
「きゃあ〜!先生素敵!これでパートの子たちにおばちゃんなんて呼ばれないわねっ!」
お母さん、それは魔法と関係ないと思うよ?
ハイテンションの神園家であった。
―――
一方紫水家、同じく夕食後の団らん中。
「ふぅ~、食ったぁ…ん?な、なんだ2人とも」
リビングのテーブルを挟み、娘2人にじっと見つめられる父親。
「え、あ、小遣いか?」
フルフル…
首を横に振る2人。
不意にテーブルの上に手をかざす聖愛。
ゴトッ…
「な、え!?金…の延べ棒?のおもちゃか?」
「聖愛!?買収するの!?」
「この方が早くない?お父さん…これ本物だよ、あげる」
「いやいや、ちょ、待って…本物!?本物って、マジ?いやいや、その前にどうやって出した?マジックでも練習してるのか?」
「今のは魔法…かな?お姉ちゃんどうなの?」
「はぁ、魔法だよ、はいお父さん」
ゴトッ…
テーブルの上に延べ棒が2つ、これで2000万円以上だ。
「可憐まで…マジシャン姉妹でも目指すのか?」
「違うよ、ごめんね順序がぐちゃぐちゃになっちゃった」
「どういう事だ?」
「私達ね、学校でイジメられてるの」
「え、そんな…2人ともか?学年が違うのに、父さんか?父さんが原因なのか?あとイジメとこの金の関係は?」
「だから順序がぐちゃぐちゃだって言ったでしょ、お父さんのせいじゃないよ、クラス中どころか学校中から無視をされ続けてるの、学校の外ではナンパをさせられたり、うまくいかないと叩かれたりもした」
「えぇ…」
「お姉ちゃん、そんな事させられてたの?」
「うん、黙っててごめんね、お父さんもごめんなさい」
「い、いや、言ってくれてありがとう、じゃあ学校に苦情の電話を」
「無理だよ、学校中って言ったでしょ?教師も全員だから」
「なら警察に…」
「それもいいよ、私達決めたの…」
「うん、決めました!」
「何を?」
「学校やめます!」
「暴れてやめてやる!」
「ちょ~っと待て!早まるな!」
「もう無理なんだよお父さん、明日からね、新しい生活指導の先生が来るの、今日校長先生に相談しに行ったらその人がいて、問題があるのは生徒の方だって、退学にしてやるって言われたんだ」
「おいおいおい、今どきそんなドラマみたいなことあるのかよ、しかも俺の母校で…」
「もう暴れるって言っちゃったの、録音、聴く?」
「あ、ああ、聞かせてくれ…」
麗子、斉藤、校長室のやり取りの録音データを聞かせると。
「えぇ…手遅れじゃん、っていうか、その前のドンって音はなんだ?会話の流れ的に友達の蓮花ちゃんが何かやったよな?」
「あの時のはこれだったのかぁ、壁でも壊したの?」
「柱を軽く殴っただけだよ」
「だよね、全力だったら校舎壊れるもんね」
「…」
「お父さん、これから起こること、信じられないかもしれないけど、私達は真剣だから目をそらさないで」
「うんうん、じゃあ私からね」
フワッ
聖愛が宙に浮く。
「へへへ〜、すごいでしょ!これ、今は私しか出来ないんだぁ♪」
「ど、どうなって…」
バキッ、ガシャーン
「へ?」
突然可憐がチョップをかましてテーブルを真っ二つにした、並べられていた食器も全て床に落ち粉々である、到底女の子が折ることなど不可能なほど厚みのあるテーブルが、いとも簡単に割れた事に父親は唖然となる。
「見てて」
パキパキパキ…
テーブルも食器も逆再生のように元通りになってしまった。
「どういう…タネは?仕掛けは?」
「目の前で見て、そんなものあるように見えた?」
ブワッ
「うわぁ!」
父親の周りだけ急激な上昇気流が発生、父親の体を飛び上がらせた。
「分かった!分かったから降ろしてくれぇ!」
「私達魔法使いになったの、これから地球は剣と魔法のファンタジー世界に変わるんだよ」
「マジ?」
「マジ」
「本気のマジ?」
「本気のマジだよ」
「マジかぁ…なんか、ワクワクしてきたぁ!」
実は可憐がファンタジー小説にハマったのも父親が原因だった、古い家系でこの辺りの地主であったが、父親の代からは時代も変わり、地主というだけでは食っていけず、普通に出版社で勤めているサラリーマンである、担当している小説家がファンタジー系の小説を執筆しているので、家にそれ系の本が何冊もあったのだ、もちろん父親もファンタジー系には精通している。
カリンはハマらなかったが、可憐は見事にハマってしまった、という設定のもと、カリンの代わりにこの世に生まれた。
「それで、この金は?」
「これはね、先生達は綺麗な人達だから、素直に感想を言ったら貰った」
「それだけで!?」
「先生達ね、地球出身の異世界暮らしの人達なんだって〜、金なんて大した価値はないみたいだよ?」
「違うわよ聖愛、金はそれなりに価値があるって言ってたよ、グラム1万円以上っていうのも変わりないみたいだけど、レンっていう先生はね、鉱石だったら簡単に魔法で作れちゃうの、先生達にとっては大した価値はないって意味なんだよ、っていうか実は私も…」
ボロ…ボロボロ…ボロボロボロボロ…
「ちょっ!ストップストップ!これって…ヤバくないか?」
「確実にヤバいね、でも盗んだわけでもないから法律では裁けないはずだよ?」
「小さめのインゴットは作れるか?10gくらいの、少し古めかしい感じで」
「うん、ん〜」
ゴトッ
「はい」
「注文通りだ…これはもう疑いようもないな、ちょっと待ってろ」
そう言って父親は颯爽と家を飛び出してしまった。
「どうしたのかな?」
「お姉ちゃん、売りに行ったに決まってるじゃん」
「そうなの?」
「お父さんにも欲はあったんだよ」
「そう、かもね、買収しようとした私達だって欲まみれだもんね」
「いいんじゃない?レン先生だって好きにしろとか、神様はいちいち気にしてないって言ってたし、説得力が違うよね〜」
「そうだね、私も好きに生きるよ」
「私も〜」
十数分後…
ガチャ…
スタスタスタスタ…
やけに早足でリビングへと戻る父親。
「売れた!マジで売れたよ!24金…純金だった!ほら、お前のお金だ」
目の前に13万円が差し出される。
「9.8gだったよ、今は金の値段が高騰してるからな」
「いいよ、お父さん使いなよ」
「馬鹿言うな!それはお前が出した金の値段だ、社会人を舐めるなよ」
「1kgの延べ棒はそ〜っとしまったのに?」
「うぐっ、それは…」
「はははっ、いいよお父さん♪好きにしなよ、今私達はお金より魔法なの」
「聖愛、ありがとう…」
「お父さんもやってみる?魔法」
「へ?俺も出来るのか?」
「先生達は出来るって言ってたよ、私達は少し特殊みたいだけど、人間全員に何かしらの魔法の才はあるはずだって言ってたよ」
「やる!会社も辞める!」
「気が早いよ!」
「お前達だって学校やめるんだろ!ずるいぞ!」
「私達はやめるんじゃなくてやめさせられるの!怪しまれるからそうそう金だって売れないよ?もうすこし様子見ようよ!そしたら文句は言わないから!」
「分かった、愛する娘達のためだ、父さん頑張るぞ!魔法もよろしくお願いします!」
「まずはレン先生に会わせないとね〜」
「そうだね、明日は会社を早退出来ない?」
「出来るっ!」
「即答!?」
お父さん…子供みたい、ふふふ。
―――次の日の朝
「おはよ〜可憐ちゃん♪どうだった?」
「説得はしたよ、でも盛り上がり過ぎて会社辞めるって言い出しちゃって、引き止めたけど」
「そうなんだ、うちも大成功♪お母さんに魔法を教えることになったよ」
「うちも同じ、今日会社を早退してもらってレンお兄さんに会わせるつもりなの」
「え?マジ?え〜、お母さんにも連絡してみようかなぁ」
「取り敢えずしてみるだけしてみたら?」
「うんそうする〜、あれ?聖愛ちゃんは?」
「今日は気合い入れて変人になるって、先に出たよ、今頃教室は大騒ぎなんじゃない?」
―――
『会社、半休取れたからな、先生達によろしくな、じゃあまた』
「はいはい♪またね〜」
「おい」
「ん?」
流石に独り言はハードルが高いので、早めに登校し、教室にある程度生徒が揃った所で父親に電話をする計画を実行した聖愛、案の定クラスのカーストトップである男子が話し掛けてくる。
「お前なに教室で勝手に電話してんだよ」
「なんで?藤堂君だっていつも電話してんじゃん」
「あぁ?なに口答えしてんだよ、いつからそんな偉くなった?」
「偉い?生徒同士で偉いも何もないよ〜、何言ってんの?馬鹿なの?」
「あんた!私の彼氏を馬鹿にしないでくれる?」
「私が馬鹿にしたんじゃなくて、そっちがただ馬鹿なだけでしょ?なんで私のせいなの?馬鹿なのはそっちのせいじゃん」
「な…なんですって!?許さないわよあんた!」
「なにが〜、馬鹿なのを指摘しただけじゃん、よく分からないなぁ、面倒くさいから話し掛けないでよ、いつもは無視するじゃん、そういうのはなんで私だけ電話しちゃダメなのか、理由をきちんと説明してから言ってよ〜、じゃなきゃやっぱり馬鹿じゃん」
「ぶっ飛ばす」
「いいの?」
「は?なにが?」
「私を殴るんでしょ?いいよ?ほら」
左のほっぺを差し出し殴らせようとする。
「生意気…殺してやるわ」
『その代わり!!』
声に魔力を乗せて威嚇するように叫ぶ。
「うっ…な、なによ」
「反撃されてもしょうがないよねぇ」
バキッ…バキバキ…
机に聖愛の指が食い込み、机が破壊されていく。
「正当防衛でしょ♪」
「え、え…なにそれ」
「ほらさっさと殴りなよ!」
ドカァーン!
机を教室の壁に向かって軽く放り投げた、椅子に座ったまま足を組み、本当に軽く放り投げただけ、しかし机が飛んでいった速度は常識の範囲外、一気に2人の顔が青ざめ、周りもざわめき出す。
『きゃぁ~!!』
『うわぁ~!化け物だぁ!』
パチンッ、バタン、パキパキパキ…
教室を逃げ出そうとする者がいたが、聖愛が指を鳴らすと、教室のドアが勝手に閉まり、壁とドアが同化して動かなくなった。
『なんだよこれ〜!』
『出してくれ!助けて〜!』
さながら地獄絵面、絡んだ2人組は、足を組んで座っている聖愛に睨まれ、動けなくなっていた。
「嫌だなぁ、私が悪者みたいじゃん、悪者はみんなの方だよね?」
「…」
「ねっ?」
「は、はい!私が悪者でした!すみません!」
「お、俺も悪かった!すまない!」
ドゴッ、バキッ
「うぐぅ…」
「すみません、でしょ藤堂君?あ、もう聞こえないかぁ、ふふふふ」
タメ口で謝った瞬間、吹っ飛び壁に激突する藤堂、気を失って床に崩れ落ちた。
「う、あぇ、うぇ〜ん!許して下さい〜!」
とうとう女の方も泣き出した。
「うるさい!泣きたいのはこっちのほうなんだよ!散々人の事無視して陰口叩きやがって!お前達もだ!騒いでないで静かに席に座ってろ!」
「うぅ、ぐすっ、うぇ…」
「あんたも席についてろ!目障りなんだよ!」
「は、はい、うぅ…」
とぼとぼ席に戻る女、藤堂も風魔法で席まで運び座らせておき、扉の固定を解除、ぐちゃぐちゃになった机が聖愛の前まで飛んできて完全に修復、そのままチャイムがなるまで地獄のような静けさが教室を包んでいた。
―――
ん?これは…
「可憐ちゃん聞こえた?」
「うん聖愛が動いたね、1人でよくやるよ」
珍しく誰も陰口を叩かないクラスメイト達。
「なんか静かじゃない?いつもだったらコソコソ悪口言われるのにね」
「う〜ん…なんか臭うよ蓮花ちゃん」
「そんなに臭い?」
「蓮花ちゃんは臭くないよ、みんなの顔、なんかニヤニヤしてない?」
「言われてみれば?う〜ん、あいつだな、たぶんオールバック野郎だよ、もしくは校長か麗子先生か斉藤先生」
「いや、容疑者多すぎるよ、絞り込めてないよ」
キーンコーンカーンコーン…
ガラガラガラ…
いつものように担任の麗子先生が入って来るが、いつもとは違い黒スーツの男を連れて入ってくる。
「あ、昨日のクソオールバックだよ可憐ちゃん」
「おかしいね、いっぱいクラスがあるのに、朝一からこの教室に来るなんて確実に狙ってるよねぇ、分かりやすい」
「まぁ馬鹿って事なんじゃないの?子供だと思って丸め込めるとでも思ってるんじゃない?」
聞こえるように悪態をつく2人に麗子は緊張顔だ、一切2人の方を見ないようにしている、男の方は2人をキッと睨んでいるが。
「なにあれ、きもっ」
「目線だけで人を威圧出来ると思い込んでるんだよ、可哀想だから下向いててあげようよ」
「そうだね〜」
そうわざと聞こえるように言って下を向く2人、男の額には血管が浮かび上がり、今にも爆発しそうである。
「では出席を取ります…」
いつものように出席を取っていくが、今日は昨日の事もあってか蓮花の名前を呼ぶ麗子。
「神園さん」
「…」
「神園さん?」
「…」
「…」
「おい!聞こえなかったのか!麗子先生が呼んでるだろ!」
男が叫ぶ、が…
「はぁ?誰ですか?なんで部外者がいるんですか?」
「なん、だと?昨日会ってるだろ!」
「は?ここの先生じゃないと言ってましたけど?自分の発言も忘れたんですか?録音聞きますか?」
「うぐ…」
「そういうイキりは自己紹介してからにして下さいよ〜、ここの先生じゃないんじゃ知りませんよ」
「出席確認を続けます、紫水…さん」
「…」
「紫水さん…」
「先生、無理に呼ばなくてもいいですよ、だって名簿に名前があった事は校長に聞いてますから、呼びたくなかったんですよね?」
「いえ、名簿には…」
「録音、聞きますか?」
「いいです…」
2人を飛ばして出席確認は終わる。
「今日から生活指導の先生として勤務して頂くことになりました、百鬼先生です」
「皆さんよろしく、まずは学校の膿を出していく所から着手しますので、皆さんも協力して下さい」
完全に蓮花と可憐をロックオンしながらの発言である、他の生徒もニヤニヤしている。
「ははは♪生活指導なのに膿を出すって、退学させようとしてんじゃん、おかしいね♪」
「指導なんかする気ないんだね、怠慢だね」
「なんだとお前ら!それだけお前達が救いようないって事だろうが!」
「初日なのにおかしな事言うよね、判断早過ぎない?そんなんで先生やっていけるの?やっぱり初めから指導する気ないじゃん、膿を出す所からって自分で言っちゃってるのにね、それって指導する気ないって自分で言ってるって気付いてないんだね、頭悪いね」
「何が生活指導なんだろう?似合ってもいないオールバックになんかにして、生徒を怖がらせて、無理矢理言うことを聞かせる気満々だよね」
「ぐぬぬぅ…」
ああ言えばこう言う、自分は難癖付けて学校を追い出そうとしているが、言い返される言葉はド正論なため、言い返す言葉もなくなって歯噛みするオールバック。
『ねぇ可憐ちゃん、多分だけどあのオールバックは、使えるよね』
『そうだね、間違いないと思う、私達はレンお兄さんの言った通り抑えておこうね』
『うん』
コソコソと話していると…
『緊急事態発生!緊急事態発生!全生徒は直ちに校庭に避難して下さい、繰り返します…』
「なになに?なんなの?」
「麗子先生慌てないで下さい、お前達!校庭に避難だ!」
「これは…聖愛ちゃんなんかやったんじゃない?」
「かもね、先越されちゃったか」
2人も席を立ち、一緒に避難しようとすると…
「お前達2人は座ってろ!」
「は?なんで?見殺しですか?」
「まぁいいじゃん、可憐ちゃん、素直に座ってよう?」
「そっか、それもそうだね」
言われた通り静かに席に座り直す2人、オールバックはニヤつきながら最後に教室を出ていった。




