151話 出張ダンジョンと鍛錬の成果
「どこでもダンジョン〜!」
「お~い!やめろやめろ!」
そのまんまだと思ったじゃねぇかよ危ねえなぁ、っていうかちっちぇ〜、手の平サイズの扉やん。
「レンはなにを焦ってるの?」
「いや、そのままの名前を出すのかと思って少し焦ったんだよ」
「そのまま?ふ~ん、面白いね♪」
さてはこいつ分かってねぇな?いやわざとか、油断できねぇな。
「この扉はね、どこにでもダンジョンを出張させることが出来るのだ〜!」
「「「わぁぁ〜♪」」」
パチパチパチパチ!
生まれ変わり3人組は大盛り上がり。
「レクステッドのダンジョンと繋がってるのか?」
「それは流石に私でも無理だよ〜、もしこの小さい扉が繋がってたとしても通れないでしょ」
「そ、そうだな、どういう仕組なんだ?」
「このまま単体じゃ使えないの、まずはなんか岩とか、木とか適当な物に…レン、地面から如何にもダンジョンの入り口っぽい岩を出せる?」
「よし、任せろ」
ゴゴゴゴ…
高さ5mくらいの黒いゴツゴツした岩山が地面からせり出してきた、中心がくり抜かれて空洞になっている、大きなかまくらのような見た目だ。
モデルは兎トンネルだな。
「いいねぇ、雰囲気あるよ…ここに、ほいっ」
扉を岩に向かって軽く投げると、ピタッと張り付いて。
ズモモモ…
「埋まった…」
「なんか、絵面がシュールだな」
カリンも思わず突っ込みを入れる。
ゴゴゴゴ…ピカッ!
「うお!」
「じゃ~ん!インスタントダンジョンの出来上がりでぇす!」
強烈な光とともに、岩山の中心に石の扉が出来上がっていた、入り口横には台座があり、水晶が埋め込まれている。
「あとは入り口の横にある水晶で…」
水晶に手を置いて何やら念じるレイカ…
「難易度は、中層第1区くらいでいいかな?」
「そうだな、ボアを完封したんだ中層はいけるだろうな」
「はい、設定完了です!」
「凄すぎる…」
「本当に皆様は神様候補なのですね、私も精進しなきゃ」
「うんうん!可憐ちゃん、聖愛ちゃん、一緒に頑張ろうねっ♪」
「はい先輩!」
「まぁそんなに広いダンジョンじゃないけど、深層第2区くらいまでの難易度ならいけるから、なかなか使えると思うよ?」
「使えるどころの話じゃねぇよ、これツェファレンでバレたら、レイカ…お前寝る暇無くなるぞ?」
「無理!私は作りたい物を作りたい時に作るの!」
「そうか、いつも作ってくれてありがとな」
「いいよいいよ〜、仲間の為ならこれくらいはね〜♪」
「持つべきは仲間だな…さて、修行開始だ、俺は中層の魔物を捕まえてきて閉じ込めておくから、みんなで楽しんでこい」
「よし!いくぞお前達!」
「「「はい!」」」
「私は殿を務めよう、姉様は先頭を頼む」
「分かった、いざ!」
「私はここで待ってるね〜、いろいろ調整も必要だから、ダンジョンを楽しんできてね〜♪」
5人は楽しそうにダンジョンへ入っていった。
「順調だな、地球に魔力があればレイカにこんな苦労を掛けなくても良かったんだが」
「全然苦労じゃないよ♪新しい物を作るのは楽しかったしねぇ」
「そうか、でも改めてありがとう、よしっ、魔物をとっ捕まえてくるわ」
「うん、行ってらっしゃい」
ダンジョンで2時間ほど潜在能力上げをして出てきて、魔物を狩ってレベル上げ、休憩してご飯を食べる。
2回目の潜在能力上げはいきなり深層第1区設定だ、レンが能力を貸与し、能力上昇の速度を上げた、北区中層の虫の魔物を捕まえてきたから、キモくて戦いたくないというのが一番の理由なのだが。
そして同じルーティンを2日連続夕方まで繰り返し、3人の実力を実践で鍛えていった、3人はなんと、カオスゴブリンですらタイマンで倒せるようになっていた、明らかにやり過ぎである…
「「「ありがとうございました!」」」
「3人とも十分強くなった、たぶん核戦争でも生き残れるレベルだろうな」
「うむ、正直やり過ぎた感は否めないが、まぁどうにかなるだろ」
「そうだねぇ、これだけ強くなっておけば、たとえ他人にバレて魔法が普及しても数年は追い越されないと思うよ」
「その間3人だって鍛錬はするんだ、追い越される心配はないだろう、だが油断はするなよ?レベルやステータスに関係なく害をなす技能というものもある、警戒するに越したことはない」
「「「はい!」」」
なんか卒業みたいな感じになってるけど、明日からも会うんだよなぁ。
因みに貸与したステータスはそのままにしておく事になった、特に精神は多めで3万ずつ貸与してある、少し貯蓄を使ってしまったが、いつルードに目をつけられるか分からないということで、全員一致の判断であった。
「じゃあまた明日〜、お兄ちゃん!皆さん!バイバ~イ♪」
「明日もよろしくお願いします、では失礼します」
「先生方!ありがとうございました!さようならー!」
うんうん、いいねぇ、あの3人が地球最強の戦闘力を持ってるなんて誰も気付かないんだろうなぁ、周りが気付いた時が楽しそうだ♪その瞬間を見れないのが残念だなぁ。
「じゃあ俺たちも帰ろうか、少しゆっくりしたいよ、約束は明日の午後で…今は18時、15時待ち合わせだから43日間はゆっくり出来るな、久々にカインド村でも行ってみるか、ティルを慰めなくちゃな」
「あたしも行こう」
「私も〜」
「私もいいか?」
「全員だな、じゃあ行くか」
一旦箱庭へ帰っていくレン達。
―――――次の日
レンの住んでいた実家のある地元の高校…
キーンコーンカーンコーン…
「おはよう可憐ちゃん、聖愛ちゃん」
「蓮花ちゃんおはよう」
「蓮花先輩!おはようございます!」
「前まではビクビクしてたけど、なんか今日からは学校が全然怖くないや、精神3万って凄いね〜、少し緊張はするけど」
「そうだね、むしろ絡んできて欲しいまであるよ」
「流石っ、可憐ちゃんはファンタジー脳だね」
「私は絡んできたら…どうしようかなぁ、まぁ適当にあしらおうかなぁ」
「聖愛ちゃんもやっぱり無視されたりしてるの?」
「うん、でももうどうでもいいです、昨日の人達見てたら余計に、大切に思ってくれる人がいるだけで全然心の余裕が違いますね!」
「そうだね〜、暴力沙汰はまずいから私も適当にあしらおうかなぁ」
『うわぁ、ハブられ組が楽しそうに笑ってるよ〜』
『ホントだ、こんだけ無視されてよく学校来られるよねぇ、キャハハハ…』
「「「…」」」
普段だったら聞こえない陰口がはっきりと聞こえる3人。
「ステータスの恩恵が凄いねぇ、よ〜く聞こえちゃったよ、ふふ♪」
「なんか逆に楽しくなってきました!」
「聖愛、まだ暴力はダメだからね」
「は~い、じゃあ私はここで〜♪」
聖愛は2年生なので2階へ、蓮花と可憐は3年生なので1階の教室だ。
ガラガラガラ…ガラガラガラ、バタン…
2人が入った途端静まり返る教室。
う〜ん、最近はのぞみちゃんもサクヤちゃんも絡んでこないし、こりゃあ1日何もないかなぁ、こっちからアクションを起こさないとダメ?
「最近は寒くなってきたねぇ可憐ちゃん」
「!?う、うん、そうだね〜、うちはもうコタツ出したよ?」
「そうなの!?うちも出そうかなぁ」
わざと大きな声で会話をする2人、蓮花に突然話し掛けられて驚くが、作戦を理解し普通に返事を返す可憐。
普段は静かにしている2人が仲良く会話をする姿が気に食わない者たち。
『ねぇねぇ、なんか虫がうるさくなぁい?』
『確かに、ブンブンうるさいよねぇ』
来たっ…
2人は目を合わせ小さく頷く。
「虫?この季節に?全然聞こえないよねぇ、耳がいい人もいるんだねぇ、可憐ちゃん聞こえる?」
「全然、自分の声と虫の羽音を勘違いしてるんじゃない?耳障りなのには変わりないからね」
「ぶっ、んふふふ、それじゃあ年中無休でブンブン鳴りっぱなしだね、ふふふ♪」
シーン…
まさかレスが返ってくるとは思ってなかった女子2人は唖然、そのうち顔が真っ赤に染まっていく。
「あんだと可憐!蓮花ぁ!」
「あれ?本当に虫がうるさいかも…」
「いやいや蓮花ちゃんも勘違いしてるよ、ダメだよ人の事虫って言っちゃ、一応人間だと思うよ?一応ね、ギリギリだけど」
「そうだね、猿みたいにすぐ怒るけどね、人間だったね、まぁ同じ動物だけど?ギリギリ人間寄りだよね」
ドカッ!
可憐の机が蹴り飛ばされた。
「うわぁ!なになに?三浦さんどうしたの?」
「あんたら、ちょっとツラ貸せよ」
「え?ツラ?顔の事?いやいや、いくら自分が可愛くないからって私の顔は貸せないでしょ、やめてよ〜、冗談が上手いんだから〜」
「ごめんね三浦さん、私も貸せたら貸してあげたいけど、この顔は取り外し出来ないの、ごめんなさい、どうかその顔で我慢してくれる?」
「舐めてんのかよコラァ!」
「なにも舐めてないけど…」
「うん、舐めてないよね〜」
「馬鹿にしやがって!」
「え?してるつもりはないけど…っていうか馬鹿にしちゃダメなの?」
「だよねぇ、いつも私達馬鹿にされてるような気がするんだけど、自分が馬鹿にされると怒るの?まぁしてるつもりもないんだけど」
「あぁ?馬鹿にしてるだろうが!!」
「だから馬鹿にしちゃダメなの?」
「ダメに決まって…」
「なんで?」
「そんなの…」
「なんであなた達は私達を馬鹿にしてもいいのに、私達はあなた達を馬鹿にしちゃダメなの?」
「うるせぇ!そう決まってんだよ!」
「誰が決めたの?法律?違うよね、ねぇ誰が決めたの?ねぇねぇ」
「い、いやその…」
「簡単でしょ?教えてくれればいいんだから、早く教えてよ、早く」
「な、なんだよ気持ち悪ぃな!なんなんだよ!」
「気持ち悪いなら話し掛けないで」
「本当だよね、よく気持ち悪い相手に話し掛けるよね」
「あんた達が話し掛けてきたんだろ!」
「いや、最初に虫がとか…」
キーンコーンカーンコーン…
ちっ、時間切れか…流石に教室内じゃ手を出してこないかぁ。
ガラガラガラ…
「はい皆さん席に付いて下さい、出席取ります」
黒スーツを着こなしたポニーテールのメガネ美人の先生が入ってきた、クラスの担任麗子先生、この先生も蓮花達を無視する1人である、というか、教師全員からも無視されているのが現状だ。
「阿久津さん」
「は~い」
…
順番に名前を呼ばれ皆が返事をしていく。
「はい、一時限目は数学です、皆教科書を用意して…」
「先生〜」
「!!」
まさか蓮花が声を掛けてくるとは思っていなかった麗子、ビクッとなりポニーテールが揺れる。
「な、なに?どうしたのですか?」
「私と可憐ちゃん、出席確認されてませんけど〜?」
「そうですね、私も蓮花ちゃんも今まで1回も呼ばれたことないんですけど、ちゃんと出席扱いにはなってるんですよね?」
「あ、あなた達は…」
「あ、因みに録音してますので発言には注意してくださいね」
「蓮花ちゃんダメだよ、それを言ったら意味ないじゃない」
「私って優しいじゃない?」
「うん、確かに優しいけど」
「ご、ごめんなさいね、名簿に名前がなかったみたい、ずっと気付かなくて、言ってくれて助かったわ」
「名簿、見せて下さい」
「え…」
「名前無いんですよね?見せて下さい」
「い、いや…それは」
「どうしたんですか?」
「ダメよ!これは見せられない決まりなのよ!」
また決まり…
「ふ~ん、すみません、少し席外します、行こう可憐ちゃん」
「うん、私も席外します」
「ちょっとどこ行くの!?ダメよ!授業中よ!」
「校長先生に聞いてきます」
「それいいね、行こう蓮花ちゃん」
ガラガラガラ…
2人はスタスタと教室を出ていってしまった。
「ちょ、ちょっと!待ちなさい!じ、自習にします!皆さん静かに自習するように、待ちなさい2人とも!」
―――
「なんかヤバくない?あの2人」
「流石にやり過ぎたかなぁ」
「ってか、なんであの2人をハブってるんだっけ?」
「??」
「うるせぇ、そんな事どうでもいいんだよ!絶対ぶっ飛ばしてやる」
「ね、ねぇ三浦さん、2人をイジメるのもうやめない?」
「そうだよやめようよ〜」
「あぁ?なんだと?何言ってんだよのぞみ、サクヤ」
「2人はヤバいんだよ、この前返り討ちにあったんだ」
「はぁ?」
「蓮花の従兄弟がヤバくて、気に食わなくて彼氏に頼んで大学の友達20人で囲んだんだけど、たった1人にやられちゃったんだよ、私はもう関わらないから」
「腑抜けやがって、そりゃ彼氏が弱すぎただけだろ!」
「なんとでも言えばいいよ、私は絶対関わらないから」
「私も…」
「ふん、てめぇら、覚えておけよ」
『うるっせぇよ、女が番長気取りやがって、時代錯誤なんだよ』
のぞみは三浦に聞こえないよう小さくつぶやく、その時…
ドォーン!
大きな音と共に校舎がグラグラと揺れ動いた。
「な、なんだよ今の…」
「ひ、ひぃ…蓮花の従兄弟が来たのかも!ヤバいヤバいヤバい!」
「どうしたの?のぞみ?お~い、のぞみ〜!」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…」
「ね、ねぇ本当にのぞみがヤバそうだよ」
「そんなやつほっとけサクヤ!」
―――
「ま、待ちなさい!止まりなさい!」
「なんですか先生」
「なんで校長先生の所に行くのよ!」
「え、だって先生嘘付いてるような気がしたからですけど」
「そうですね、私もそう見えました」
「嘘なんか付いてないわよ!これは見せられないの!」
「嘘じゃないんですよね?ならいいじゃないですか、私達が説教を受けるだけ、別に先生は困らないですよね?」
「そうですよ〜、早く行こうよ可憐ちゃん」
「うん」
「ちょっと待ちなさいってば!」
「どうしました?麗子先生」
「ああ斉藤先生!あの2人を止めて下さいませんか!?」
「あの2人…あぁ〜、あの2人ですか…何をしたんですか?」
「実は…」
麗子先生は斉藤先生に経緯を説明する。
そして…
「おい待て2人とも!」
「あれ?斉藤先生どうしました?」
「おはようございます斉藤先生」
「お、おはよう、麗子先生から話は聞いた、名簿を見せられないのは本当だ、だから素直に教室に戻りなさい」
「じゃあ斉藤先生が確認して下さい、名簿に私達2人の名前がない事を、そしてなんで2人の名前がないのか理由も調べて下さい、さらになんで全生徒と教師から私達2人が無視されるのかを…」
「自意識過剰だ、無視なんかしていない」
「なんで分かるんですか?出席確認で一度も名前呼ばれたことがないんですよ?その時点でおかしいとは思わないんですか?私達斉藤先生とも今初めて喋ったんですけど?全校生徒にも聞き込みしたんですか?それとも斉藤先生の勝手な判断ですか?これでも自意識過剰なんですか?」
「う、と、とにかく!教師に戻れ!子供は黙って大人の言う事聞いてりゃいいんだ!クソガキ共が!」
「は?」
スタスタスタ…ドォーン!!!
蓮花が校舎の柱を殴りつけた、柱には蓮花の拳を中心に広範囲に渡りヒビが入り校舎全体が揺れる、斉藤は尻もちを付き、少し離れたところで様子を伺っていた麗子も床に座り込んでしまう。
「今、黙って大人の言う事を聞いてりゃいいんだって言いましたか?斉藤先生?」
「私にもそう聞こえたよ蓮花ちゃん」
「だよねぇ、聞き間違いですかねぇ」
「どうなんですか?」
「い、あ、いや…」
「先生?聞こえませんよ〜!」
「す、すみません!教頭先生に命令されてます!」
「教頭先生?なんで教頭先生が私達を無視するような真似を?」
「し、知らないんだ…とにかく相手にするなと」
「教頭は今どこですか?」
「いない…」
「え?」
「滅多に学校に来ないんだ…」
「はぁ?」
「とにかく校長室に行きます」
「ま、待ってほしい!」
「うるさい!」
「黙っててもらえますか?斉藤先生」
「…はい」
「行こう可憐ちゃん」
「うん、蓮花ちゃん」
恐怖で腰が抜けた先生2人は動けず、これ以上反論することはなかった。
コンコンッ
…
「いないのかなぁ」
「う〜ん、職員室行ってみる?そこで先生達を吊るし上げれば出てくるかもよ?」
「う〜ん…でも人がいる気配はするんだよねぇ」
ガタガタガタ…
「鍵かかってるね〜、居留守かなぁ?」
「壊しちゃう?」
「なんか、可憐ちゃん過激になったね〜」
「ふふっ、柱を壊す程じゃないけどね」
「はははっ、ついカッとなってね♪」
ガタガタ…バキッ!
「あ、壊れちゃった、てへっ♪」
「な、なんじゃお前達は!」
「ほらぁ、やっぱりいたじゃん♪」
「なんで返事してくれないんですか?」
「今は大事なお客様の相手中じゃ!」
校長が座っているソファの向かいの席には目つきの悪い、黒髪オールバックの男が座っていた。
「なんですかこいつら?血の気の多い学生ですね」
「す、すまぬ…はやく!お前達出ていかんか!」
「え〜なんでですかぁ、なになに〜?新しい先生ですか?」
「なんか普通の人じゃないみたいですね、裏の人って感じです」
「そうじゃ!新しい生活指導の先生じゃ!」
「だったら張り紙くらいしておけばいいのに、なんでそんなにコソコソしてるんですか〜?」
「はぁ、授業中に校長室を訪ねてくる学生がいるとは思わなかったんじゃよ」
「あ、確かに授業だった」
「それよりも校長先生、聞いて下さいよ」
「なんじゃ、ワシは忙しいのに」
「学生の悩みですよ?聞いてくれないんですか?」
「担任がおるじゃろ」
「担任について相談したいのに、担任に相談してもダメじゃん」
「担任について?」
「そうなんですよ、私達〜、ずっとクラス中…いや、学校中から無視されたり、陰口言われたりしてるんです、名簿にも名前がないみたいなんで、校長先生に話聞いてもらうしか無いじゃないですかぁ」
「名簿に?なんじゃそれは…お主ら名前は?」
「神園蓮花です」
「紫水可憐です」
…
「あるぞ?名前はちゃんとある…」
「なら何で朝の出席確認で名前呼ばれないんですかねぇ?」
「担任に聞いたら名簿に名前がなかったって」
「う〜ん…どう思いますか?百鬼先生」
「知りませんよ、まだ私はここの先生じゃありません」
「手厳しいですなぁ、はははは」
「笑い事じゃなくない?」
「何?あんなのが生活指導の先生なの?資格ないよね」
「あくまでも私は生徒の生活指導が担当だ、先生のあれこれは知らん、問題があるならお前達だろ」
「世も末だね」
「お金で買収でもされたのかな〜?」
「先生達がそう来るなら私達も好き勝手させてもらいますね」
「あ~あ、来て損したよ〜、新しい先生もクソだし…」
「はしたないよ蓮花ちゃん、言い方があるでしょ、底辺とか」
「貴様ら…私が勤務し始めたら、最初にお前達を退学にしてやる」
「へぇ、なら退学になる前に大暴れしちゃおうかな、ねっ、可憐ちゃん♪」
「そうだね〜、この学校…運営継続できるかな?まぁ退学になるんだし、関係ないよね」
「じゃあ失礼しました〜、あ、因みに今の会話全部録音してましたので」
「失礼しました…」
「録音!?ま、まずいのじゃ…」
「大丈夫ですよ、所詮ガキです、どうにでも言いくるめられますよ」
「そ、そうかの?よろしく頼むのじゃ」
「あ、あと〜、斎藤先生が教頭の指示だって言ったのも録音してますからね、どうぞ覚悟して下さいねっ♪」
「な、なんだと!ま、待て…」
ピシャッ、メキメキメキメキ…
蓮花の最後の一言でオールバックがやたらと焦り顔で叫んでいたが、そんなのは構いもせず扉を閉めて去ってしまう2人。
2人は気付いていなかった、校長室の扉が開かれた理由を…壊された鍵も、ヒビの入った柱も綺麗さっぱり直されていたのである。




