14話 修行開始!
俺は異世界やファンタジー物のラノベ小説で、嫌いなテンプレがいくつかある!その中で上位に入るものが、ピンチになりすぎ問題だ!
いきなりピンチになった男から出てきた言葉がこれである。
追放、復讐ものは最初にピンチになるのはお約束だからな、俺の場合はセーフだ!
レンは常々考えていた、次々に登場する敵との戦いに、なんでいつもギリギリなのかと、圧倒的な力をつけてから挑めと。
若い頃は読んでいられた、ギリギリまで追い詰められ、親しい人を傷つけられ、覚醒する主人公、格好いいと思っていた。
歳をとると、物語の最初から最後まで常にギリギリの戦いでは息が詰まるのだ。
―――――
「よし、ある程度力はついた、これで勝つことができればいいが、明日は◯◯とデートだし今日は早く休もう、◯◯は明日、俺なんかとのデート楽しんでくれるのだろうか?とにかく!◯◯の為にも、世界の為にも、この戦いは必ず勝たなければな」
―――――
いやいや、ないわ〜、必ず勝たないとダメなら、ましてや世界の為に戦うのなら、ある程度じゃダメだろ、のんびりデートするなよ、戦いまでそんな時間あるの?その時間があれば強くなれるんじゃないの?1日でも多く修行しろよ、彼女を説得して鍛錬しろよ、常に強くなることを考えろよ、だって死んだら終わりなのだから。
その敵が束になっても敵わないほどの力を付けてから舐めプして倒せと、そう思うようになっていった。
そんな無茶苦茶なことを考えながら今、レンは筋トレをしている。
俺には、時間がない!
そして時間がなかった。
俊敏を落とさず、強くしなやかな筋肉を付けるため、重量は軽めだ、足、胸、腕、肩、背中、お腹、と部位に分け、大体1セット15〜20回が限界になるくらいの重量設定で、永遠と連続500セットほど続けているんだ、どんどん力が上がって、加重、加重、加重…ちょ、これ、持ち上がるの?ってほどの見た目のウェイトちゃんたち。
ぶっ通しで2日目の中盤である。
「ちょ、ちょっと休憩しない!?」
「何言ってるの〜レン〜、まだ始まったばっかりでしょ、ほらっ、い〜ち、に〜い」
いやいや確かに頑張るとは言った、言ったけども!ここじゃ怪我しないから永遠に出来ちゃうんだよ、ティアが魔力的な補助で何かして、なぜか眠くもならないしお腹も減らないし、疲れては回復、疲れては回復、超回復に次ぐ超回復で、もうある程度身体出来上がっちゃってるんだよ!早いよ!そして怖いよ!俺の筋肉は何を栄養素にして脹らんでるんだよ!ティアがこんなにスパルタだとは思わなかったよ!
「な、なぁ、一回ステータス確認させてくれない?…ねぇ!返事してよ!」
ダメか、このやり取りももう何回もやっている、こりゃ本当に悪魔に魂売ったほうが良かったかもしれないぞ。
―――それから3日後
「はい!これで各部位300セット、トータル1800セット終〜了〜!」
ふっ、燃え尽きたぜ、この俺をここまで追い詰めるとは、さすがは女神様だな。
「はいレン!」
プレス用ベンチに座って真っ白になっている俺の目の前にテーブルを創造し、これまた美味しそうな料理が創造される。
やはり何度見てもすごい力だ。
「おお、美味そうだ、ありがとうなティア」
「いえいえ〜、どういたしまして」
5日間ぶっ通しで筋トレして、飯を出されて平気で食ってる俺も大概だな。
食事をしながらそんなことを考えていたら。
「でもレン、本当にいい身体になったねぇ」
「そうか?まぁ自分でもかなり変わったとは思うが、ティア、鏡は創造できるか?
「うん、いいよ〜」
ぽんっ!と姿鏡が目の前に出てくる。
さて、どれどれ?
「おお〜、すげぇ、サイボーグみたいだ」
ムッキムキではないが、余計な脂肪は一切無く、かなりいい感じに仕上がっている。
「大丈夫なのかこれ?生きるには多少の脂肪も必要だと思ったが」
「大丈夫だよ、そのあたりは魔力が補助してくれるし、筋肉もほとんど魔力補助でできてるから、あとは、維持するために、筋トレは毎日少しずつで大丈夫だよ」
運動しながら魔力を取り込んで、それを栄養に体を作っていく、これであれば俊敏を落とさずに筋力をアップさせるには最適なのか?
「さて、ステータスがどうなったのかも確認しておくか」
貯蓄 80 +80
体力 10000
筋力 7850 +7730
俊敏 4320 +4240
精神 99999 +99844
魔力 2856 +2856
魔体 18709 +18709
知能 694 +374
技術 1089 +533
才能
投資 努力
技能
貸与1 リスクリワード1
めっちゃ上がってる…それもそうだよな、だって各部位300セットって…普通の人間が筋トレするときは、一般人なら各部位を1週間に5セットとか、ボディビルダーなら10〜15セットなんだよ?しかも、ずっとじゃなくて増量期とか減量期があって、数ヶ月単位で筋トレの強弱を変えるんだ。
そんなの関係なくどんどん加重しながら永遠と、一般人の括りでいえば1年分以上継続したって事だ、それもたった5日で、しかも魔力補助で余すことなく筋肉に還元してるんだから、こうもなるわな。
「今は一時的に候補者という立場を解除して、能力に全振りするようにしてるからね〜、普通は魔物を倒さなきゃダメなんだけど、まぁそこは私がいるしね♪ちょちょっとレンの体をモニャモニャっといじればねっ♪それに異世界転移っていう経験と、裏切られた絶望で、潜在能力の上限も解放したみたいだし」
「何だよそのモニャモニャって、ここはやっぱり魔力が豊富なんだな、じゃなきゃこんなに上がらないもんな」
「当たり前だよ、ここが源といっても過言じゃないからね〜、これ以上はちょっと教えられないけど」
「おのれ!テンプレめ!」
くそぅ、めっちゃ気になる、あと別にモニャモニャってしなくても、貯蓄に貯めて自分の好きな能力に振ったほうが良くない?まぁ神様のすることだ、ただの人間なんかの考えでは、及びもしない何かがあるんだろ。
「ううん別になにもないよ?だって一回貯蓄に貯めるのめんどくさいじゃない?それに筋トレにずっと幸せを感じていられるの?あとレンって考えると長いから能力割り振りの時絶対時間かかるし時間も限られて…」
「わ、分かった、分かったから!怖いよ!句読点がないよ!」
うん、考えが及んだよ、ごもっともな考えでございます…そ、そんなことより今はステータスだ!
才能は(奉仕)が(投資)になり、さらに(努力)が生えた。
技能は(贈与)が(貸与)になった。
あの鼻くそやっぱりなんかやってたな。
それにしても努力か、だから筋トレ直後の飯も平気だったのか?確かに筋トレ中も急に楽しくなってきて、笑ってたらティアがちょっと引いてたもんな、その時に生えたんだろう、才能(ドM)とかじゃなくてよかった。
さすがに筋力は上がったな、俊敏の上昇も目覚ましい、魔力はそこそこ、魔体がとんでもねぇことになってんな、筋トレ中のティアによる魔力補助が影響してそうだ、知能と技術はこんなもんか、筋トレだけの脳筋トレーニングだったからな。
レンは、残り5日間はどうするか考える。
「精神のことは気にしないの?」
わかってた、敢えてスルーしてたんだ、俺の考えが正しければ、あの鼻くそのおかげってことになっちゃうから、あと筋トレの可能性も否めないんだよ。
「そうだねぇ、そこだけは感謝かな、ざまぁって感じ♪」
筋トレのことはスルーされた。
貯蓄は全然増えんな、そりゃそうか、能力に全振りしてるんだからな、全振りか…でもちょっとだけ貯蓄に行ってますわよ?候補者解除したのではありませんの?ティア氏?
思えばこの創造ポイント、各能力に割り振るだけでなく、ここの管理人になった時も必要になったりもするのだろう、ティアもいろんなもの創造してたし。
「ううん、ここでは使わないよ?」
必要じゃなかった。
「なんでだよ!せっかく人がキメ顔で解説してたのに!」
「レン、ポインツね、だって、ポインツに限りがあったら、そのうち創造できなくなっちゃうじゃない」
大丈夫だティア、口ではポイントって言ってても、いつも心にポインツだからな、お前が言ったことだろう。
「確かに、創造に限界があったらダメか、じゃあ全部能力に割り振るのか?」
「ふっふっふっ、創造の定義は広いからねぇ、なんと!創造ポインツは能力への割り振り以外にも、任意に技能の改造や進化などをさせたりできるのだー!」
「な、なんだってぇ!」
三文芝居はこのへんで、でも実際とんでもねぇ能力だ、コストは高そうだがな。
「能力割り振りよりも、こっちのほうが創造としてはメインかな、ただ、レンが思ったとおりコストはヤバめだよ」
「くそっ、ステータス表示がシンプルだからって油断してた、考えることが多くなりそうだな」
「まずは基礎能力優先で大丈夫だよ、余裕が出てきたら、能力に振るのは少しにして、ポインツは貯めておく、ピンチになりそうなときだけ、必要な能力に大きく割り振って、さらに余裕ができたら技能の改造だね〜、まぁ本当にコストがヤバいから、人生で数回しか出来ないと思って、良く考えて使ってね♪」
「どうやって使うんだ?」
「そのへんは頑張って♪」
「おい、お前の可愛い可愛いパートナーが困ってるんだぞ?」
「冗談言ってられるならまだ大丈夫だよ、それに教える事なんてないよ、念じるだけなんだから、小説好きのレンなら大体分かるでしょ?」
「わかった、その辺も含めて異世界を楽しむよ」
「うん、楽しんでね♪私は寝てるけど」
「やっぱりそこはティアなんだな、でもずっと心配されてるよりは気が楽だよ、今日はもう休むか」
「うん♪」
ティアの頭をなでながら言う。
この日はぐっすり寝て、というか、ここは昼夜がないので、小屋とベッドを創造してもらい、ティアが駄々をこねたので、一緒に寝た。
控えめに言って最高でした。
次の日
「今日から、筋トレを挟みつつ、走り込み、シャドー、反復横跳びのような運動も日課に入れていく、知能と技術を上げるためだ」
「うん、分かった♪」
「あとティア、テニスとかバドミントンとかの地球のスポーツって分かるか?」
「知ってるよ〜♪」
ティアに頼んでテニスとバドミントンのラケットを創造してもらい、ボールとシャトル、さらにはコートも創造してもらった。
やりたい放題だ。
「こういうスポーツも、思い付く限りやっていこうと思う、悪いんだがティア、その都度創造と、俺の相手もしてもらっていいか?」
「うんっいいよ!やった〜♪」
嬉しそうだ、よかった。
それから、来る日も来る日も、ずっと基礎トレーニングをやり続け…
――――5日後
「楽しかった、筋トレ以外の運動がこんなにも楽しいとは、まぁティアがいてくれたおかげだな」
「えへへへ〜♪」
さてさて、ステータスは〜っと♪
貯蓄 245 +165
体力 10000
筋力 11540 +3690
俊敏 10589 +6269
精神 99999
魔力 6122 +3266
魔体 26891 +8182
知能 4231 +3537
技術 7093 +6004
才能
投資 努力
技能
貸与1 リスクリワード1
やっぱりちょっと漏れてポインツになってるよ。
まぁ、いいか。
筋力はそこそこ、俊敏は筋力に追いついてきたし技術もそれなりに上がった、予定通りだ、精神は…カンストか?魔力と知能もそこそこで、やはり魔体の上がり方が一番すごいな、技術も予定通りだ。
「あいつらに渡したポイントが1人100000だったから、各能力に平均的に振り分けたと仮定して、各ステータス12500、プラス最初から持ってた能力か…勝てるのは飛び抜けてる精神と魔体だけだな、まだまだポイントを貯めて割り振らなきゃ、まぁまずは生き残れるくらいにはなっただろ」
「すぐには振れないと思うから大丈夫だよ、なんでレンと一緒に来た人間が、貯蓄を持ってるのか分からない、多分だけど私が創った貯蓄じゃないよ、基礎能力に割り振る機能はあっても、潜在能力を超えて振るのは無理だと思う、つまりただの経験値のままで、創造ポインツには出来てないって事、私が何千年もかけて創った能力だよ?」
「俺が渡したのは創造ポインツじゃないのか?」
「あ、ポインツって言ってくれたね♪良く考えてレン、創造ポインツはそのままポインツとして使うんじゃないんだよ、創造ポインツを利用して能力を割り振るの、つまり潜在能力を超えて割り振れるのは、創造の力なんだ、創造っていうのはすごい力なの、他の5人に経験値としてポイントを贈与できたのも創造の力、その時点であの鼻くそ軍団は、ただ多めの経験値を手に入れただけなんだよ」
「そこはポイントなんだな、あと鼻くそはダメ」
「ええ〜いいじゃ〜ん、私も貶したい〜」
いや、いいじゃ〜んって、ギャルかよ。
「ギャル、嫌い?」
「…嫌いじゃないです」
「ふふふ♡素直でよろしい」
「最後に強制的に残りのポイント持っていかれたんだけど、それは?」
「そうなの?ドレインタッチかな?人の能力を奪う技能、レンの場合能力のほうに奪えるものがなかったから、貯蓄から持っていかれたのかも、でもそれもポイントになってるはずだから大丈夫だよ」
「そうか、とりあえず理解した、でも油断はしないようにするよ」
「うん、気を付けてね、それにしても、スポーツ?楽しかったね〜♪地球人ってよく考えるよ、凄いねっ」
「そうだな、思いつく限りの、2人でやるスポーツをやりまくってたからな」
特に卓球の白熱具合がすごかった、ティアの二世帯住宅の耐震等級は3だった、とだけ言っておこう。
さて、そろそろ頃合いだろう。
そう、冒険の始まりだ!