148話 神の器
ギシギシ…バタァーン!
何回かウィンドを練習して、2時間足らずで木を倒すまで威力を上げた2人。
「よし、こんなもんかな、よくやったな2人とも」
「明日はどうしますか?」
「え?俺必要?」
「お兄ちゃん、当たり前じゃん」
「私も…お兄さんがいたほうが安心します」
「分かった、それなら気が済むまでとことん付き合うよ」
「やったぁ♪」
「またコンビニで待ってればいいか?」
「そうだね」
「お兄さんはスマホとかは…」
「すまん、もうこの世界の人間じゃないからな、持っていない、あっちの世界ならこの腕時計で通話できるんだが、こっちには中継がないからなぁ」
「分かりました、明日も半日なので午後一にコンビニでお願いします」
「よろしくねお兄ちゃん♪」
「おう、じゃあコンビニまで転移するぞ」
「え、騒ぎにならない?」
「大丈夫だ、潜行、転移」
ヒュン…
「「…」」
「な?大丈夫だったろ?」
「えぇ…誰もこっちに気付かないなんて、それも技能なの?」
「ああ、潜行っていう技能だ、蓮花も覚えられる才能があるぞ?っていうかすでにそれに近い技能があるだろ」
「気配隠蔽ってやつかな?」
「そうだ、とにかく足音を立てないように意識して歩いてみろ、一ヶ月くらいで潜行は身につくかもな、気配隠蔽がレベルアップするだけかもしれないけど」
「長っ!」
「技能を身につけるのはそれだけ大変なんだよ」
「頑張るしかないかぁ、でも勉強よりは楽しいからいっか」
「蓮花ちゃん、お勉強も頑張ろうね♪」
「は~い可憐先生〜」
「ははっ、しばらくは他人にバレないようにな、マスコミに囲まれたくはないだろ?」
「うん、もちろん!」
「気をつけます」
「じゃあな、転移」
―――
「行っちゃったね…」
「不思議な人だった」
「じゃあまた明日ね、可憐ちゃん」
「うん、バイバイ、蓮花ちゃん」
家路につく蓮花。
「ただいま〜」
「あらおかえり蓮花、早いのね、早退?」
「違うよ〜、テスト期間だって言ったじゃん、部活も休みなんだよ〜」
「そう言えばそうだったわね、なら逆に遅くない?」
「え?あぁ、うん、可憐ちゃんと一緒に勉強してたからね〜」
「偉いわねぇ〜、そんなに頑張らなくてもいいのよ?高校の勉強なんて社会でちっとも役に立たないんだから」
「親としてそれはどうなの?」
「いいのよ、得意な物だけ頑張ったほうが効率がいいに決まってるし、大成しやすいのよ、日本の教育方法が遅れてるの」
「それには同意します!お母さん、ご飯!」
「ええ、着替えてらっしゃい」
「は~い♪」
ドタドタドタ…
急いで着替えて夕食中。
「美味し〜♪やっぱりお母さんのハンバーグは世界一だねっ」
「そうでしょ?これでもシェフなんだから、当たり前よ」
レンの母親は近くのレストランでシェフとして働いていた、女手一つで子を育てるにはパートでは厳しい世の中だ。
「そういえば、午前中に好青年が訪ねてきてねぇ」
「へぇ、誰だったの?」
「それが家を間違ってたみたいなのよ、レンって男の人は居ないかってねぇ、蓮花の彼氏かと勘違いしちゃった、うふふ…」
「レン…?どんな人だったの?」
「背はまぁ普通かしら、低くはないくらい、がっしりした体型でスーツを着たイケメンというより、男前だったわね」
「スーツ…」
「ええ、ねずみ色のスーツが似合っていたわ」
「…」
どういう事なの?それってレンお兄ちゃんの事だよね…自分を訪ねてくるとか…もしかして本当にお兄ちゃんだったとか?異世界に転移して私とお母さんの記憶から消えているとかなら分かるかも…お母さんと私を確認しに来たとか?
ま、いっか♪明日聞けばいいや。
流石はレンの入れ替わりと言うだけあって、細かいことは気にしないタイプの蓮花であった。
―――
さて、そろそろ来る頃かな?
レクステッドに帰っても良かったが、帰らずあるところに立ち寄り、ビジネスホテルで1泊してきたレン、約束通りコンビニで立ち読みしていた。
毎日立ち読みも悪いよな、飲み物とパンくらい買っていくか…あ、レイカに頼まれてたお菓子買っておかなきゃ、でもコンビニはなぁ…後でいいや。
コーヒーとパンを会計して、駐車場で食べるかと思って外に出ると。
「あ!お兄ちゃ〜ん♪」
「昨日ぶりです、お兄さん」
ちょうど2人がコンビニにやってきた、スカートの下にジャージを履いて…
「よう2人とも、疲れとかはないか?」
「だいじょ〜ぶ!」
「平気です、それよりも楽しみすぎて少し寝不足です」
「ははっ、じゃあさっそく行くか?」
「「はい!」」
「転移」
―――
「さて、今日はどうする?」
「その前にお兄ちゃん…」
「ん?なんだ?」
「ステータス見せて」
「そんなことか、いいぞ、ステータス」
名前 レン∶神園蓮
年齢 21歳
身長 175cm
職業 ハスラー Lv5
基礎能力
貯蓄 825300
体力 10000
筋力 100000 貸与[-60000]
俊敏 100000 貸与[-60000]
精神 66000 貸与[-100000]
魔力 100000 貸与[-60000]
魔体 100000 貸与[-50000]
知能 41500 貸与[-10000]
技術 100000 貸与[-70000]
筋力、俊敏、精神、魔力、魔体、技術はこれ以上能ポイントを振れないため、貯蓄に振られています。
所持金
K4,700,000(4百70万クリ)
S300,000,000(100億サリー)
B9,00,000,000(9億バレル)
D1,000,000,000(10億デビル)
¥1,200,000(120万円)
利息[20,000,000]換金可
才能
投資 努力 回避 武術 魔法 同化 直感
技能
貸与6 リスクリワード4 潜行7 ドッジング5 全察知5
想像魔法(創造・同化) リスクリターン 収納 転移 激痛軽減 技能封印 クリーン
剣術Max 短剣術3 体術8 盾術5
貸与中 五眼「肉眼・天眼」
装備
魔鉱スーツ(グレー)
レン専用装備
指輪(指輪1・2・3合成) バングル ピアス スマートウォッチ
装備効果
魔法収納【闇】 魔力偽装 認識阻害 魔法発動速度アップ 移動ポイント記憶【瞬光専用】
称号
討伐者
[カオスゴブリン]
開拓者ランク SSS+
「う〜ん、いつ見ても素晴らしいステータ…」
「やっぱり…」
「ん?なんだ?」
「神園…」
「!?」
しまった!迂闊だった…
「い、いや蓮花…その」
「お兄ちゃん…」
「え?」
「お兄ちゃんなんでしょ!?私の本当のお兄ちゃん!」
「あ、え〜っと、それは…」
「転移に巻き込まれて、この世界の人たちから記憶が消えちゃったんだよね!?」
そういう事にしておくか、流石に俺の入れ替わりで、何からできてるか分からないとかショックデカすぎるだろ…多分魔力なんだろうけど。
「バレたのか、なんで分かった?」
「昨日家にレンという男の人を探して訪ねてきた人がいたってお母さんが…」
「あちゃあ〜、母ちゃんかぁ」
「母ちゃん…やっぱりお兄ちゃんなんだ!お兄ちゃん!」
ガシッ!
「お兄ちゃん…なんで私達を置いて行っちゃったの!なんで…なんで私はお兄ちゃん忘れちゃったの?うわぁ〜ん!」
「蓮花ごめん…突然の出来事で避けられなかったんだ…」
「レンお兄さん、私は?私もお兄さんを知っていたのですか?」
「ああ、もちろんだ…ごめんな」
「う、うぅ…大変でしたよね、私達は忘れてしまいましたが、お兄さんはずっと苦しんでいましたよね、うぅ…」
優しい子達だ、普通の人間じゃないか、ティアが言っていた通りだな…入れ替わりとかは考えないようにしよう。
「また仲良くしてくれるか?忘れても兄弟だ、母ちゃんは…どうするか」
「多分この世界も魔法が当たり前になる時が来ると思う…数年後だろうけど絶対来る、だって他にも見た人がいるから、のぞみちゃんとか…私が魔法を使ったらきっと覚醒するよ、その時代が来たらお母さんに言う、今はきっと信じてもらえないから」
「そうだな、取り敢えず今は2人だ、この世界に魔法が普及した時、当然悪いやつも出てくるはずだ、その時トップにいて抑止力となるために2人を鍛えよう」
「「よろしくお願いします!」」
―――
「今週はずっと勉強してるの?」
「うん♪最近勉強が楽しくなってきたんだよ〜」
「あら、私の娘にそんな才能が…将来は楽できそうねぇ」
「それはどうなのお母さん?」
「ふふふ、私達の家族や親戚は目立った才能の持ち主はいないからね、あの子だって…ん?あの子…あら?誰だったかしら、嫌ねぇ年取ると物忘れが激しくて」
「…お母さん」
それ、きっとお兄ちゃんの事だよ…やっぱり記憶がなくなってるんだ…
―――
「お姉ちゃん、お腹すいちゃった」
「はいはい、お行儀よく待ってなさい聖愛」
「はぁ〜い」
「ただいま〜、おお可憐帰ってたのか、今日はもう勉強会は終わりか?」
「うん、お父さんも行儀よく待ってて、今ご飯作っちゃうから」
「ははは、頼むな、いつもすまん…」
「お父さんおかえりなさい」
「ただいま聖愛、行儀よく待ってるのか?」
「当たり前だよ、食べさせてもらえなくなっちゃうからね」
「可憐の料理は母さんと同じくらいうまいからなぁ」
「私も料理…お姉ちゃんから習おうかなぁ」
―――
『ごちそうさまでした』
「ふぅ、やっぱりお姉ちゃんから料理習おう」
「そう?ふふふ、私も少しは楽できそうね」
「任せてよ〜、こう見えても物覚えはいいんだから」
「そうかそうか、天国の母さんも喜んでるだろう、2人が優秀で俺も安心だな、あいつらは少しおバカだったけど」
「誰がおバカなの?」
「ん?誰って…え?誰だったっけ?」
「お父さん、ボケるのはまだ早いよ〜」
「参った、疲れてるんだなぁ、はははは♪」
「…」
他にも忘れた人いるのかな…もしかして私にも他に兄弟がいたの?そういえばレンお兄さんは初め、妹と聞いて少し変な顔してたし…蓮花のお母さんも時々他の家族がいたような言動をするみたいだし…お兄さんが地球に帰ってきたから記憶が復活し始めてる?なら私や蓮花は?なんで思い出せないの?
―――
「ねぇレン〜」
「ん〜?なんだティア〜」
「ツェファレンに帰らなくて大丈夫なの?」
「ああ、地球のあの2人をどうにかしてからかなって」
「本当に大丈夫かなぁ、重要なこと忘れてない?」
「なにが?」
レンは箱庭に来ていた、地球に行けたなら箱庭に行けるだろうと思ったら案の定来ることが出来たのだ、ツェファレンで死んだと思ったティアが、早すぎる、鼻くその仕業だと暴走しそうになったのをだめるのに苦労したが。
あの時は危なかった…ツェファレンが滅んでいてもおかしくなかったよ…
「ん〜、地球に行ったら1週間しか時間経ってなかったって言ったじゃん?もう地球に1週間いるよねぇ」
「…え、ああ!やべぇ、マジか!」
「うん、たぶんかなり心配されてると思うなぁ、まぁ私はいつまでもここにいてくれて構わないけど、もう十分神の器も育ってるみたいだしね」
「いやいやいや…ヤバいヤバい、カリンに殺される…どうしよう…」
「う〜ん、どうにかしてあげようか?」
「え、出来るのか?」
「まっかせなさ〜い!カリンとレイカとあとマリーかな?3人に転移を付与してあげるよ、そして私が拉致してたって夢の中で伝えてあげるっ♡」
「おお〜!神様仏様ティア様〜!ありがたやありがたや〜」
「ふっふっふ〜もっと敬いなさ〜い」
「本当に何でもありだなぁ」
「私、神様だからねっ!でも…一つだけ条件があります!」
「え、怖い…」
「あの2人も…いや、マリーも含めた3人にはレンの眷属になってもらって、将来はこの箱庭で働いてもらいま〜す!」
「願ってもない!逆にいいのか?」
「箱庭はねぇ、成長すると管理が大変なんだよ〜、どんどんお嫁さん作ってね♪ただの友人とかは無理だから、レンと家族になる必要があるよ」
「ほへぇ、まぁ自ら嫁を作る気はないよ、告られれば同意するくらいだな〜」
「うんうん、レンも考えが神っぽくなってきたね、器が育った証拠だよ〜」
「まぁいい、さて…今日もあいつらを鍛えてくるかぁ」
「地球に魔力を!」
「地球に魔力を!」
右手の拳を左胸にポヨンと当て、急に変なことを叫ぶティア、ついついレンもそれに習って動いてしまった。
なんだよこれ!つい真似しちゃったけど!
「地球の神様がお礼言ってたからね、頑張ってね〜」
「へぇへぇ、コマ使いの荒い神様達だぜまったく」
レン、今日は修羅場になりそうだけど、頑張ってね♡ふふふふ…
そんな不穏なことを考えながらレンを見送るティア、果たしてその修羅場とやらをどうくぐり抜けるのか。




