147話 魔法使いの証拠
レン、蓮花、可憐で楽しく食事をしたと思ったら、店を出た途端チンピラに絡まれた。
全察知…よし、問題なく使えるな。
ん?ふ〜ん…
何かに気付いたレン、途端に悪い顔になっていく。
「なんだよおっさん、羨ましいのか?」
「あぁ?なんだと?」
「恐い…」
「お兄さん…」
2人は身を縮めてレンの背中に隠れる。
「おいおい、やめてくれよ俺の家族をビビらせないでくれ、こいつは従兄弟なんだよ、別に大層な身分とかじゃない、親戚が一緒に飯食っちゃダメなのか?」
「親戚…そんな事聞い…」
「は?なんて?」
「い、いや、うるせぇ!昼間っから見せつけてくれやがって!迷惑なんだよ!」
「別に見せつけてはいないんだが…なんだ?夜だったら良かったのか?」
「そ、そうだ!夜ならいい!」
えぇ…
「確かそんな法律はなかったはずだが…それじゃ夜しか外食できないじゃないか、店の人も何も言ってこなかったぞ?」
「う、うるせぇうるせぇ!俺が決めた事だ!」
「なぁんだそうか、法律変わったのかと思ったじゃないか、適当なこと言うなよおっさん」
「おっさん言うな!俺はこう見えても19歳だ!」
「えぇ!?昼間っから勘弁してくれよ、そんな顔でうろつかれたら迷惑だ、あんたの場合は夜でもダメだけど」
「ぶっ…」
我慢しきれず蓮花が吹き出した。
「てめぇ…好き勝手言いやがって」
「いや好き勝手言い出したのはおっさん…顔の方だろ」
「ぶ、ぶふっ」
「おっさん顔…ふ、ふふ」
「ぶっ殺す!」
我慢しきれず手を出してくるおっさん顔。
さて、地球でのステータス恩恵はどうかな?
ガシッ
「!?」
「う〜ん、動きも遅く感じるし、力も加減が難しい、トマトみたいにふにゃふにゃに感じる、少し力を入れたら潰れそうだな」
「は、離せ!」
「なんで?離すわけないじゃん、また殴ってくるでしょ」
少しだけ、本当に少しだけ力を入れると、掴んでいる手首からミシミシと音が聞こえる。
「う、うがぁ!痛ぇ!すまん、助けてくれ!」
「は?掴んでるだけじゃん、本当のこと言ったら助けてやるよ」
「ほ、本当のこと?」
「誰かに言われて来ただろ」
「い、いえ、そんな事は…」
また少し力を加える。
「あぁ!!勘弁して下さい!そうです、のぞみに言われました!ぶっ飛ばして欲しいやつがいるって!」
「よし、正直者は好きだぞ?」
掴んでいた手首を離してあげる。
「ヒィ、ヒィ〜」
「お兄ちゃん…のぞみちゃんが?」
「そうみたいだな、最近出来た彼氏か?」
「いや、俺はのぞみの彼氏じゃねぇ、彼氏は俺の友達だ…そいつにも言われて来た」
「へぇ、そこの角に隠れてるのがその彼氏かな?のぞみも一緒にいるだろ、出てこい!隠れてんだろ!」
「へ?」
「あ〜あ、バレちゃったのかぁ」
「のぞみちゃん…」
ブロック塀の角から金髪のイケメンが登場した、いかにも軽薄そうな顔をしている、その後ろをのぞみが不機嫌そうに付いてきている。
「おい女、こいつに何かしたらただじゃおかねぇって言ったよな?」
「う、うるさいわね!蓮花じゃないわよ!あんたをどうにかしようと思ったのよ!」
「ああ?俺に手を出したらもっと酷い目にあうに決まってんだ…」
「はいダメダメ〜、なに勝手に俺の彼女に話し掛けてんの?殺すよ?」
どいつもこいつも簡単に殺す殺すって…
「は、ははは♪」
「なになに〜?おかしくなっちゃったの?」
「殺すってお前、1人も人間殺したことないくせに、無理すんなよ、簡単に口にしていい言葉じゃねぇぞ?」
「はぁ?なにこいつ、超ムカつくんだけど、本当に殺っちゃう?」
「海斗〜、私あの人が恐いの〜、やっちゃってよ〜」
「キモいなぁ、蓮花に手を出したらただじゃおかないとは言った、殺しはしないつもりだったが、俺に手を出したら生きていられる保証はしないぞ?」
「はははははっ!それこそ無理すんなよ、カッコつけちゃって、正義のヒーロー様ですかぁ?」
「別に隠してるやつら全員出してもいいぞ?」
「は?な、なんで…」
「隠れてるだろ?う〜ん、20人くらいいるなぁ、さっさと出せよ」
「お兄ちゃん、大丈夫なの?」
「大丈夫だよ、俺は最強の魔法使いだからな」
「魔法使い…?は、はは、ははははは♪おいおい、本気で言ってるのかよ♪え?コメディアン?これカメラ回ってんの?」
「カメラが回ってれば手加減してやったんだけどな、残念ながらカメラは回ってないんだわ」
「そうか〜、お前達〜!出てきていいよ〜!」
ゾロゾロと人が出てくる。
「さて、ここじゃあお店に迷惑を掛けちゃうからな、移動しようか」
「おっと、逃げようとしても無駄だよ〜、この場でボコしまぁす♪」
「はぁ、いや場所は移動させてもらう、そうだなぁあの公園でいいか…転移」
―――
気付くと全員、レンが社会人だった時、たまに来ていた公園に転移していた。
「はい到着」
「え、本当に魔法?」
「お兄さん凄い」
「だろ?だから言ったじゃないか、本物の魔法使いだって」
他の皆はただ唖然としていた…
「な、なんだよここ!おいお前!何をした!」
「だから魔法使いだって言ったろ?蓮花、可憐 少し離れてろ」
「うん」
「はい」
ボッ
2人が距離をとると、頭上に直径2mほどの巨大火球が出現する、レンはポケットに手を入れたままだ。
「さて、最初に死にてぇのはだれだ?」
「じょ、冗談じゃねぇ!なんだよこいつ!ただのお遊びじゃなかったのかよ!俺は抜けた!本当に死んじまう!」
「俺も無理!」
「俺も!」
…
「あとはお前達だけだなぁ金髪野郎と女、信頼ないねぇ、仲良く死ぬか?」
「は、ハッタリで驚かせようとしても無駄だ!」
「そうよ!そんなのどうするのよ!」
「は?お前達に向かって飛ばすだけだが?」
「そんな事が出来るわけ無いだろ!」
「いや、出来るけど…ほら」
ゴゥ!
火球が2人の直前まで移動して2人の周りを1周、またレンの頭上に戻る。
「あ、あぁ…」
「う、うぇ〜ん」
余りの恐怖に金髪は膝を付いて唖然、のぞみは泣き始めた。
「火球は流石にやり過ぎかぁ、こっちのほうが魔法っぽいかな?」
火球が消え、同じ大きさの水球が現れた。
「これなら種も仕掛けも無いことが分かるだろ?」
後ろを振り向き、蓮花と可憐に話しかける。
「本当に魔法…お兄ちゃんは何者?」
「凄い…水が宙に浮いてる、綺麗…」
「まずは決着をつけるか、おい」
「は、はい…」
「うう、ぐす…」
「金輪際この2人に手を出すな、分かったな?」
「分かった、絶対に手を出さない」
「うう、うぇ〜ん!ごべんなざい〜!」
「泣くなよ、手を出さなきゃ何もしないんだから真面目に生きれば良いだけだろ、簡単だ、それでもこの恐怖を忘れて手を出したなら」
突然2人の体が宙に浮く。
「え、えぇ、なになに!?なんだよこれ!」
「う、やめてぇ〜、許して〜!」
ヒュッ!
「うわぁぁ!!」
「きゃあぁぁ!!」
空高く舞い上がる2人。
「「…」」
そしてまた地面に戻ってきたときには気を失っていた。
そのまま2人だけを転移させ、焼肉屋の前に戻しておく。
「はい、というわけで証拠を見せたわけだが」
「いやいやいや、ちょっと待って、頭の中が整理ついてないから」
「レン兄さんは魔法使い、凄い…」
「ふぅ〜、ふぅ〜…ふぅ」
「整理はついたか?」
「まぁね、レンお兄ちゃん…私達に魔法教えて」
「お願いします!」
「おう、いいぞ」
「だよね、そう簡単に教えてもらえるわけないよね」
「ですよね、レンお兄さんのご飯の種ですものね」
おい、こういうのは途中で気づくものだろ、今なんと?とか言いながら。
「教えるって言ってんだろ、なんで玉砕確定で話してんだよ」
「え?今なんと?」
「テンポが遅え!教えるって言ったんだよ!」
「「やったぁ♪」」
「ヤレヤレだぜ、取り敢えず軽く説明するぞ」
「ゴクリ…」
「でた、蓮花のゴクリ芸」
可憐の解説もなかなかに癖があるな、ゴクリ芸って…
「俺はな、元々この地球に住んでいた、地球人だった者だ」
「いきなり強烈なボディブロー…」
「お前達はファンタジー小説とかは読むか?」
「はい!大好物です!」
「おお、可憐は気が合いそうだ」
「私もたまに読むかなぁ、ファンタジーならアニメの方が多いかも」
「異世界転生物とかは見るか?」
「うん、見るよ〜、最近の流行りだよね、私は令嬢物が好き!」
「へぇ、JKでも見るもんなんだなぁ」
「うん♪私はこう見えて陰キャ寄りだからねっ」
すまん、その設定、多分俺のせいだわ。
「まぁ、そんな出来事が俺の身にも起こったってわけだな」
「今なら信じられるよ、だって見ちゃったもん」
「はい、到底科学では証明出来ない数々の事象を体験しましたからね」
「まぁさっきも使った転移は、ファンタジーのチート級魔法の代名詞だな、これを覚えて故郷に帰ってきたって訳だ」
「なるほどねぇ、私は運が良かったねぇ、こんな人にたまたま声を掛けたんだから」
いや、それは地球の管理人の仕業だと思う、まだ分からんけど、とにかく運とかそんなんじゃない、絶対に。
いったい何を考えている?地球にも魔力を補充したいのか?宇宙に持っていかれてるらしいからなぁ、少し可哀想だよな…しょうがない、俺の故郷だし少し協力してやろう。
「別に宗教的な話ではなく、マジで神様的な存在は実在するんだ」
「え、急にスピリチュアルな話?宗教の勧誘?」
「違う、ガチなんだよ、もちろん地球を管理している神もいる、はずだ」
「…凄い話になってきました」
「可憐ちゃん、目がキラキラしてるよ?」
「そういう蓮花ちゃんこそ」
「取り敢えず場所を移そう、転移」
転移を使用して、誰もいない森の中の一角にやってきた。
「ここは?」
「森…いや、山ですか?」
「そう、俺が昔遊んでいた山の中腹にある拓けた場所だ、あそこに見えるのが蓮花が声を掛けてきたコンビニだよ」
指を差し場所を教えて安心させる。
「本当だっ、凄い!一瞬で行ったり来たり、私も覚えたい!」
「ウズウズしてきました!魔法教えてもらえるんですね!」
「ああ、魔力は分かるな?」
「ええ、大好物ですので、物語ならオールマイティに網羅しています!」
「魔力って本当にあるの!?」
「あるぞ、この地球にもある…しかし地球の魔力は宇宙に放出されてしまっていてな、誰も魔力に気付かない進化をしてしまったんだよ、むしろ魔力を必要としていない世界のほうが珍しいくらいなんだ」
「地球があるこの世界が特殊、ということですか?」
「そうだ」
「魔力って本当にあるんだ…ステータス!」
「おい、そんなんで出るわけが…」
「ああっ、出た!本当に出たよ!?」
「えぇ!?」
「蓮花ちゃん本当!?なら私もステータス!…本当だぁ、出たぁ、やったぁ♪」
「そんなバカな!?」
なるほど…想像力か、こいつらは魔法を実際に見て体感した、だからステータスがあると確信したから出せるようになったのか…普通は心のどこかでそんなものは存在しないと思っているものだからな。
「お兄ちゃんどうしたの?四つん這いになって」
「まさかステータスを出せると思わなかった的な話ですか?」
「その通りだ」
「私達天才かも…」
「信じ込んだ、からですかね…」
「可憐、正解、だが天才というのも間違いじゃないかもな、おそらく蓮花は天才肌で思い掛けない成長をするタイプ、可憐は現実派でコツコツ強くなるタイプだな、2人とも強くなりそうだ…」
「やったね可憐ちゃん♪」
「うん、蓮花ちゃんもおめでとう♪」
はは…なにこれ?どうなってんの?
「はぁ、まぁいい、ステータスを見せてくれるか?」
「はぁ〜い♪って…どうやって見せるの?」
「公開可って念じればオッケーだ」
「うん、じゃあはい!」
「私も…どうぞ」
名前 神園蓮花 Lv1
年齢 18歳
身長 158cm
職業 JK Lv3
基礎能力
体力 10000
筋力 121
俊敏 156
精神 1053
魔力 53
知能 99
技術 521
才能
魔法 回避
技能
気配隠蔽1
ファイアー ウィンド ライト ダークネス
名前 紫水可憐 Lv1
年齢 18歳
身長 158cm
職業 JK Lv3
基礎能力
体力 10000
筋力 96
俊敏 105
精神 1133
魔力 121
知能 568
技術 121
才能
魔法 読書
技能
思考2
ウィンド ウォーター ソイル ダークネス
なるほど…え、いやいやいや…強すぎん?なんなの?2人とも魔法4種ってヤバない?蓮花なんか闇と光両方使えるやないか!やっぱり俺やカリンの入れ替わりだから特殊なのか?
結局地球人にもレベルはあったのか、やっぱり俺だけが特殊だったんだなぁ…
それにしても、やはり蓮花は天才肌だな、技術が異様に高い、可憐は知能が高く、技能に思考とやらがある、いいコンビになりそうだ。
「オーケーありがとう、もう2人とも魔法を使える才能はあるみたいだな、っていうかぶっちゃけチートが過ぎるぞ、自重しろ自重を、完全にバグじゃないか」
「えへへぇ、やっぱり天才だったかぁ、私!」
「それで魔法はどうやって使うのですか?」
「地球の人間だからな、科学に関しては大丈夫だろ?あとは何でも出来ると思いこめば使えるようになるよ、決まった詠唱とかもないしな、自分の魔力を使って再現するだけだ」
「そんなに簡単なのですか?」
「もう俺の魔法見ちゃったからなぁ、再現と言っても、そのものを再現するのは燃費が悪い、例えばファイアーだけど…」
燃焼の三要素を教えて、どんな感じで魔法を使っているのか、魔力節約のポイントなんかを教える。
「もちろん独自の使い方を研究してもいい、楽しいだろ?」
「はい!頑張ってみます」
「よ〜し!やるぞぉ」
「火はやめろよ?」
「なんで?」
「森が燃えるだろ」
「あ、そうか」
「ある程度魔法を制御出来るようになってからだな、最初はウィンドでいいんじゃないか?頑張れば空も飛べるぞ?」
「えぇ!?マジ?」
「本当ですか!?」
「おう、ほれ」
ヒュ〜
空中を自在に飛び始めるレン
「凄い凄い!私ウィンド頑張る!」
「私も最初はウィンドから行きます!」
「2人で切磋琢磨して頑張れよ、あと飛ぶ時はスカートはやめろ」
「レンお兄ちゃんなら見られてもいいよ♪」
「わ、私も大丈夫、です…」
「冗談もほどほどにしろ、ほれ、早く魔法を撃ってみろ」
「ちぇっ、硬派だなぁ、じゃあ私から打つね〜」
両手を前に出して目を閉じる蓮花。
「よし…はっ!」
ギュルル…
目には見えないが、全察知により蓮花の手の前で風が渦巻いているのが分かる。
「行けー!」
ドンッ、バキィ!
遠くの木に当たって木片が飛び散った、流石に折れるまではいかなかっが…
「出せたぁ!やったぁ!」
本人は大喜び。
そりゃそうだよな、多分嬉しすぎて身体中鳥肌立ってるだろ。
「凄いよ蓮花ちゃん!じゃあ次は私ね」
「可憐ちゃん頑張れ〜!」
「うん…はぁぁ!」
ブォー!
可憐を中心に竜巻のような風が発生し、落ち葉が舞い上がる。
「おい!ストップ!スカートスカート!」
「おお〜、可憐ちゃん大胆だね〜♪」
「え?きゃぁ~!」
自分のスカートが豪快にめくれ上がっているのを見て魔法は停止、恥ずかしくて叫びながら地面に座り込んだ。
「だから気を付けろと言ったろ、例え見られてもいいとは言っても、いくらかは集中力に影響するんだ、まぁこんな世界で魔物なんかはいないから、そんなに気にするところじゃないかも知れんがな」
「うぅ…恥ずかしい」
「例えスパッツでも、あれだけ豪快だと流石に恥ずかしいよねぇ」
「うん、恥ずかしいね、ははは…次はスカートはやめておくよ」
「ジャージだね」
「そうしろ、さて2人とも、魔力はどうだ?」
「え〜っと、ん?減ってないよ?」
「私もです」
「え、そんな事ある?あ…」
地球から地上へ魔力が溢れてるからか?少しくらいならすぐに回復するするんだろうな、潜在能力を上げるにはもってこいの世界だったんだなぁ地球って。




