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146話 帰郷

新年明けましておめでとうございます_(._.)_


趣味全開で描き続けたこの作品も気付けばもう150話間近。


そろそろどう終わらせようかと考えつつも、年明けと共に話も地球編へと移ります。


終わらせられない…(´゜д゜`)ドコマデカクノ…?

「レン、本当に行くのか?戻って来られるんだろうな」

「保証は出来ない、だがあっちにも魔力はあるんだし、俺には魔体というステータスもある、きっと大丈夫だよ」

「絶対だぞ、約束しろ」

「分かったよカリン」

「レン…」

「レイカ…」

「できたらお菓子買ってきて!」



ズルッ



昭和コントのようにコケるレン。



「おい、少しは心配したらどうだ?」

「レンを心配なんてするわけないじゃない、絶対大丈夫だって信じてるから」

「そうかよ、まずは行けるかどうかだがな」

「鼻くそが行けるんだから大丈夫だよ」

「まぁ正直、失敗する予感はしないし大丈夫だろうな、じゃあ行ってみるよ」

「絶対帰ってこいよ!」

「お菓子ね!」

「分かったって」



転移を使えるようになって試したい事、それは地球への転移だった。



「行ってくる、転移」



ヒュッ



―――



「ここは…以前転移させられる前にいた、カフェへの階段だな、無事成功だ、他の奴らにも転移を貸与して覚えさせたほうがいいかも知れないな、俺が連れてくると他の奴らはツェファレンで死んだことになっちゃうからなぁ」



まずは階段を降りて、実家へ向かってみるレン。



「全然変わってないな、相変わらず田舎のままだ、あっちでは1年経ったけど、こっちではどのくらい経ってるんだろう…」



ゴチャゴチャ考えながら実家へ到着。



懐かしいな…



ピンポーン





「母ちゃんはいないのかな?」



ガチャ…



「は~い…どちら様?」

「!!あ、いや…」

「どうしました?」

「い、いえ、俺は蓮君の友達でして、ご在宅ではなかったですか?」

「れん?…もしかして蓮花のこと?もしかして彼氏さんかしら!?あらあら!あの子ったら何も言わないで!」

「い、いやいや、蓮という男性なのですが…」

「あら、違うの?蓮花なら今学校に行ってますが、レンという男の子はいないわよ?」

「あ…そ、そうですか、名前が似てるので間違いだったのかもしれませんね、あいつ〜、間違えやがって〜、情報はしっかり精査しろって言ったのに〜、スミマセンでした」

「いえいえ、こちらこそなんか申し訳ないわねぇ」

「いえ、では失礼致します」

「珍しく礼儀正しい子ねぇ、こんな子が彼氏だったら私も安心なのに」

「ははは…ではでは〜」



そそくさとその場を後にするレン。



そうか…死んだ事になるどころか、存在自体が何者かと入れ替わってしまうんだな…これはキツイ、泣きそうになる…でも母ちゃん元気そうだったな、それが分かっただけでも来た甲斐があったよ、幸せにしてやれよレンカとやら。



たまに様子を見に来て、泣かせてたら説教してやると考えながら、転移前にカリン達と鉢合わせたコンビニに向かい、適当な雑誌を手に取り現在の日付を確認する。



「え、1週間くらいしか経ってないじゃん」



なんてこったい、俺が転移した瞬間にレンカとやらがこの世界に誕生したのか?記憶とかどうなってんだよ、もしこれが日常茶飯事なら、自分が本当に生物としてきちんと両親から生まれたのかも怪しくなってくるぞ…



「はぁ、鼻くそみたいのがいっぱいいたら、神様も大変なんだろうなぁ」



クスクス…



やべっ、独り言を聞かれて笑われておる…



「お兄さん、なになに?芝居の練習?内容がイミフ過ぎて草なんだけどw」



黒髪ショートの美少女に話し掛けられた。



「ふっ、今のが芝居に聞こえたか?その意味を知ったらお前は生きていられなくなるぞ」

「ハハハッ♪ウケる〜、お兄さん面白いねぇ!遊ばない?」

「むっ?逆ナンというやつか?やめておけ、お前は学生だろ、今はまだ下校の時間じゃないはずだ」

「ざんね~ん!今はテスト期間中で半日なんですぅ〜♪」

「なら家帰って勉強しろ」

「むぅ〜、こんな可愛い子に声かけられてるのにー!なんで断るのっ!」

「俺がお前みたいな子と一緒にいたら普通に犯罪だろうが!どうせ罠か罰ゲームかなんかだろ!バレバレなんだよ」

「うっ…な、んで、なんで、分かったの?」



急に小声になる少女。



「お兄さん、目線は真っ直ぐのまま、左の方を意識して、人が3人いるの分かる?」

「馬鹿にするな、お前があそこから向かってきていたことも分かってる、だから罠だと言ったんだ」



あとはこいつらがどんな関係なのかだが、その3人の内2人はこっちを見てニヤニヤしている、この様子からこの子は賭けに負けたか、いじめられてるかの2択だろう、はぁ…なんで転移早々こんなトラブルに巻き込まれるかなぁ。


おじさん、助けたい気持ちがうずいちゃうよ?



「お前達、JKだよな?」

「うん」

「イジメられてんのか?」

「…」



確定だな。



「はぁ…いくらだ?」

「へ?」

「いくらくらいむしり取ってくれば奴らは納得するんだと聞いているんだよ」

「ご飯代、くらい?」

「やっす」

「安くないよ!JKには大金なんだから!」

「大金を他人から奪おうとするな、バイトしろ」

「私はしてるよ、全部取られちゃうけど…」

「めんどくさっ」

「ご、ごめんなさい」



外で待機している3人の顔が曇り始める、コンビニ内で話している顔色を伺って、今回は失敗したと思っているのだろう。



「よし、飯食いにいくぞ」

「え、いいの?」

「いいよ、可愛いJKの誘いだ、断る理由はない、あいつらも一緒でいいんだよな?」

「い、いやでも…」

「うるせぇ、いくぞ!目にもの見せてくれる!」

「やめて!またイジメが酷くなっちゃう…」

「大丈夫だ、そうはさせない、お前の名前は?」

「蓮花…」



ほらぁ、絶対神様かなんか関わってきてんだろこれ!俺はお前らの駒じゃねぇぞ!



「奇遇だな、俺の名前はレンだ、似た名前同士よろしくな、取り敢えず俺は従兄弟だった、そして説教されたとでも言っておけ」

「う、うん…よろしくお願いします、レンお兄ちゃん」

「お?物わかりが早いな、いくぞ蓮花」

「うん!」



嬉しそうな顔しやがって、俺の入れ替わりなら親は母ちゃんだけで一人っ子、祖父も祖母も他界しているはずだし、親戚にも近い年の人はいなかったはずだ、嘘でも兄弟が出来て嬉しいんだろうな。



そのまま2人でコンビニを出て3人のもとへ。



「よう、あんたらも一緒に飯食いに行くか?こいつの友達なんだろ?」

「えぇ~、ナンパですかぁ?お兄さん♪」

「いや、友達なのかを聞いただけだろ、嫌なら別にいいけど…」

「い、行きます行きます!やった〜♪」

「ねぇ蓮花、もしかして知り合いなのぉ?」

「え、あ、いや…」

「蓮花と俺は従兄弟なんだよ、俺に気付かず逆ナンなんかしてきたから、説教してたらお腹空いたって言うから、たまたま見かけたあんたらも友達だから誘いたいって、人使いの荒い従兄弟だぜ」

「ごめんってレンお兄ちゃん、怒んないでよ〜」

「お前、俺がどんな仕事してるか分かってんのか?仲間にカタギの人間と一緒にいるところ見られたらどうなる事やら」

「か、カタギ?ねぇ、この人大丈夫なの?」

「うん?お兄ちゃんは優しいから大丈夫だよ〜」

「別に優しくはねぇよ、お前が従兄弟だからだ、知らん奴だったらボコボコにしてる所だ」

「「「…」」」



イジメっ子達は黙ってしまう。



「勉強はちゃんとしてるのか?」

「そこそこだね〜」

「大丈夫なのかよ、母さんを泣かせるんじゃないぞ?」

「うん、大丈夫」

「あと、何かあったら必ず俺に連絡しろ、最近はこの辺りで仕事してるからな、すぐに何とかしてやる、ただじゃおかねぇ、そういうのには慣れてるからな」

「あ、あぁ!ちょっと彼氏から連絡が〜、ごめんね〜私抜けるわ〜」

「え、のぞみ?彼氏なんていたっけ?」

「最近出来たんだよ〜、参ったなぁ〜ごめんね〜」



タタタタタタ…



まずは1人脱落だな…



「あ、私も用事あったんだった!」

「サクヤも?」

「うん、ごめんね蓮花、またね〜」



スタタタタ…



2人目脱落、早いな〜



「さて、何を食べたい?」



金なら日本円に換金出来たからな、貸与様々だぜ!



「肉!」



蓮花が遠慮せずに叫ぶ。



おい、少しは遠慮しろよ、初対面だろ。



「あんたは?何か食いたいものあるか?」

「え、え〜と、はははっ、何でも大丈夫です」

「レンお兄ちゃん、実はね…」

「大丈夫だ、あんたもイジメられてたんだろ?」

「!?」



1人だけ制服も着崩してないしな、これで不良だったらおかしいだろ。



「なんで…」

「いや、普通に分かるだろ、教師とかは見ぬふりするかもしれんが、ここは学校じゃないんだ」

「そ、そうですか、見て見ぬふりされていたのですね…」

「間違いなくそうだろうな、関わりたくないんだろうよ」

「ねぇ、私は?」

「お前は見た目不良だからな、さっきの2人と一緒にこの子をイジメてるとでも思われてるんじゃないか?良かったな見ぬふりされてて、もし先生が見ぬふりしてなかったら、濡れ衣着せられてたかもな」

「ひどい…」

「ははっ、取り敢えずどこかで飯食おうぜ、俺も腹減ってきた」

「え、本当に奢ってくれるの?」

「いやいや、まだ解決してないだろ、できれば個室のある焼肉屋がいいな、そこで少し話をしよう」

「やった〜!お肉〜♪」

「蓮花ちゃん、はしたないよ」

「あんたの名前は?」

「可憐です」

「カレン…ね」



絶対カリンの入れ替わりだろ、神よ…もう何も言うまい…



「もしかして兄弟がいないか?」

「え?妹と知り合いでしたか?」

「やっぱりいるのか…妹?ああ、別に変ではないか…」



蓮花も女だしな、双子じゃなかったとしてもおかしくはないか…いや、まぁ何もかもおかしいんだけどな、な〜んか適当だなぁ。



「なんか変だねお兄ちゃん、コンビニでも鼻くそが〜とか、神様が〜とか、言ってたし」

「そうなの?でもなんだか親近感が沸くのはどうしてなんだろう」

「そうか?まぁ俺ほど優しさに溢れた男もなかなかいないからな」

「凄い自信だね」

「何の見返りもなくお前たちを助けただろうが」

「うんうん優しい〜、よろしくねっ♪」



何をよろしくなんだか知らんが、まぁいい。



「とにかく行くぞ」

「は~い♪」

「よろしくお願いします」



―――



店構えからして明らかに高級そうな焼肉屋にやってきた3人。



「めっちゃ緊張するんだけど…なにここ」

「わ、私達なんかが、来てもいいお店なのでしょうか…」

「いいに決まってんだろ、どんどん注文しろ」

「えぇ…」

「どうしよう…」

「じゃあ勝手に頼むぞ」



テーブル横にあるタッチパネルを操作して、一人前5000円はする肉をどんどん追加し、注文してしまう。



「まずは腹ごしらえだ」

「う、うん、ゴクリ」

「ふふふ、蓮花ちゃん、ゴクリって普通口で言う?」

「だって出ちゃうよ〜、こんなの食べたこと無いもん」

「では頂きますね、お兄さん」

「腹いっぱいになるまで食えよ、遠慮はするな」

「やった〜♪」



そうは言っても蓮花も可憐も一般人、レンだってそんなに食べられるようなタイプではなく…



「うう…もう入らん」

「めっちゃ余った…悔しい」

「2人とも注文しすぎですよ!」

「おお?可憐ちゃんが大声を出すなんて珍しい〜」

「もうっ、茶化さないでよ蓮花ちゃん!」

「はははっ、2人は仲いいんだな」

「まだ知り合って1週間くらいなんですけどね、何故かお互い知らなかったんですよ、もう高校入って3年も経つのに」

「そうか…」



この辺りの高校はそんなに大きくないから3クラスほどしかないはずだ、っていうか俺の母校だろうな…しかし、今までお互いを知らなかったなんて、俺とカリンの入れ替わり確定だろ。



「よし、まずは俺の正体を教えよう」

「正体、ですか?」

「なになに〜?正義のヒーロー?」

「違う、ふっふっふ聞いて驚け、俺は…魔法使いだ!」

「ぶっ、はははは♪」

「えぇ…マジシャンって事ですか?この辺りで仕事してるって、営業ですか?」

「いや、違うが…その前に、まずは可憐、済まなかったな、こいつの従兄弟というのは嘘だ、普通に初対面だ」

「ごめんね可憐ちゃん」

「そうだったのですね…」

「イジメられてるのが分かったからな、蓮花に手を出したらただじゃ済まない、っていう雰囲気を作るための芝居だ」

「なるほど、理解しました」

「それでお兄ちゃん、マジシャンというのは?」



自重はしないと決めたからな…もし大変なことになっても余裕で逃げ切れるし、最悪はツェファレンに逃げればいい。



「いやマジシャンとは違う…いや?意味は一緒か、魔法使いだもんな…」

「どういう意味?」

「マジシャンというのは、手品師、魔術師、奇術師、色々な意味が含まれる」

「はい、それは分かります」

「そうなの?」

「そうなんだよ、蓮花はもう少し勉強を頑張れ」

「えぇ〜、それなりに頑張ってるよ〜」

「まぁいい、俺はその中でも魔法師だ…」

「「「…」」」



流石に笑えなくなった2人、可哀想な人を見るような目でレンを見つめる。



「おいやめろ、そんな目で俺を見るんじゃない」

「いやいや、そんなガタイが良くてビシッとスーツを着こなした渋い男前が魔法使いとか…無理があるでしょレンお兄ちゃん」

「か、可哀想な人…」



やめて!哀れまないで!まぁ、わざと勿体ぶってるからしょうがないけど…



レンの格好は濃いめのグレー色のフォーマルスーツ、転移前にレイカに作ってもらったのだ、地球にはない魔鉱石を糸のようにして編み込んで出来ているので、これがバレるだけでも大変なことになるのは間違いない。



「ふん、見て驚けよ、手品ってのは技術を使った詐欺みたいなもんだ、俺の魔法は一味違うぞ」

「お兄ちゃん!もう助けてもらったし十分だから!」

「そ、そうですよ、私…これ以上お兄さんを見てられません!」



ガチのやつじゃん!やめてよ!



「まずは見てから言ってくれ!そこの余った肉を見てろ」

「えぇ〜、無理しないでよ〜」

「そうですよ…」



そんな2人を他所に、テーブルの上に余っていた肉が、パッと消えてなくなった。



「「え!?」」

「ふっふっふ、分かったか、この非科学的な現象、本当に種も仕掛けもない、これが魔法だ、驚いたか?」

「どうなって…」

「さらに…」



レンが手のひらを上に向けると、先ほど消えた肉のうちの2枚が空中に現れる、そして宙に浮いてその場に留まった。



「え!えぇ!?それどうなってんの!?」

「す、凄い、確かにマジシャンです!こういうの見たの初めてです!」

「手のひらをよく見てろ、種を見破るつもりでな」

「望むところ!絶対見破ってやる!」

「何が起こるのでしょうか、楽しみです♪」



肉はレンが広げた手のひらの上30cm辺りの場所で浮いている、その手のひらの中心が徐々に赤くなり、ポッとロウソクの炎程度の火が出てきた。



「「…」」

「まだまだ…」



炎は勢いを増し、肉を炙り始めた。


いい焼き具合になった頃、蓮花と可憐の目の前にある取り皿が宙に浮いて肉を回収、そのまま2人の前へ戻った。



「凄い!なんかテレビを見てるみたいだよ〜♪」

「本当に素晴らしい手際です、どうなっているのでしょうか…」

「だから種も仕掛けもないと言っただろ?今お前達は科学で証明出来ない現象を見ている、そして…これと同じ事をお前達も出来る可能性はある」

「いやいやいや、流石に騙されないよ〜、どんな詐欺なの?お兄ちゃん詐欺師?」

「そこまで言うなら証拠を見せてやる、まずは会計だ」

「なんか楽しくなってきた!こういうのだったら詐欺でもいいよ、お兄ちゃんカッコいいし♪」

「そうね、私も少しワクワクしてきました、証拠とやら、楽しみにしています」



カッコいい?そんな事が…そういえばカリンが言っていたな、俺は意外と人気があると…卑屈になるのはやめておくか。



「ありがとう」



ピンポーン



パネルのお会計ボタンを押し、会計を進める。



「ありがとうございます、お会計でよろしかったですか?そちらの会計札をお持ちになって、レジまでお願いします」

「はい」



3人は席を立ちレジへ。



「お会計は65800円になります」

「はい」



パッ



「え…」



手のひらの上に突然現れたお金に店員も驚く。



「はははっ、ちょっとした手品だよ、すまんな驚かせて」

「凄いですねぇ、7万お預かりします、お釣りは4200円と、レシートですね〜」

「ごちそうさま」

「「ごちそうさまでした」」

「またのお越しをお待ちしております」



会計を済ませて店を出る。



「めっちゃ驚いてたね♪」

「先ほどのも凄かったです、パッとお金が出てきましたね♪」

「人の驚く顔を見るのは楽しいよな」

「お兄ちゃんはいい性格してるねぇ」

「まぁな、さて…」

「おう兄ちゃん、いい女連れて昼間っからいいご身分だなぁおい」



はぁ、チンピラに絡まれるとか、ここに住んでる時は1度もなかったのに…これ、やっぱりやってんなぁ、地球を管理してる神様の仕業か?後でちょっと聞いてくるか。

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