13話 貯蓄の謎
小出しはめんどくさいので、貯蓄の謎、レンが狙われたあれこれ、ある程度放出です(*´ω`*)
興味のない方はスルーしてください。
貯蓄、それは女神ヘスティアが創った能力、レン達神園一族だけが持つ独自の特殊ステータスで、経験値を貯められる。
異世界では経験値をレベルに変換する、そしてレベルアップするときに各能力に数値が振り分けられる、レベルアップする前にどんな行動をしたかによって、振り分けられる能力が決まる。
地球にはレベルアップというシステムはなく、経験値などというものは、物語の中だけにしか存在しない。
ヘスティアはレベルアップというシステムに目をつけた、なぜ異世界にはレベルアップというシステムがあり、いったん経験値を貯めるのかと、地球の生き物と地球以外の生き物のステータスの差は、そこに何か秘密があるのではと考えた。
実は候補者を探している最中の、ただの暇つぶしだった。
候補者を探しながら、色々な世界の生き物を観察した、それで分かったのだ。
経験値とは魔力的な何かなのだと、地球には動物しかいなかった、異世界では魔物どうしが殺し合いをしていた、そして倒された魔物から溢れた魔力を、倒した魔物が何かに変えて吸収していたのだ、そして体の中に一旦貯める。
さらにヘスティアは観察した、そして、生き物によってレベルアップするためのタイミング、つまりは必要貯蓄量が違う、ということに気づいた。
ツェファレンに住む生き物がとる行動、特に魔物を倒すという行動が、もっとも潜在能力を上昇させる要因だった。
そして、潜在能力の高い魔物ほど、レベルアップに必要な経験値量が多かった。
実はレベルアップとは、潜在能力の強制解放だったのだ。
レベルアップすると能力が上がる、のではなく、レベルアップすると能力が一部解放される、が正しい認識だ。
もともと魔物自身に備わっていた力を解放するシステム、それがレベルアップだ。
人間にも、天才と言われる者だったり英雄や勇者、など呼び名は様々だが、共通するところは、潜在能力の上限が高いということ、レベルアップ時の能力上昇幅が高いので、同じレベルでも強さが違う。
潜在能力は特殊な経験によって上限が解放したりもする。
潜在能力の上限分レベルアップすると、いわゆるカンストである。
ここからはもうレベルも上がらず、成長限界となる。
ではそれ以降獲得するはずだった魔力はどうなるのか?空気中に散り、地上に吸収され、魔脈の一部となり世界の端へ流されてゆく。
では地球はどうなのかというと、実は地球にも魔力はある、地球という星が毎日せっせと魔力を生産していたのだ、しかし宇宙という広大な空間に流れ出てしまっていた、可哀想な地球である。
実は宇宙などというものは他の世界には無いのだ、異世界からすれば、宇宙のような、常に光の3倍ほどの速さで広がり続ける空間の存在のほうが、よっぽどファンタジーなのである。
宇宙が広がるにつれて、さらに魔力を持っていかれる力も強くなり、ついにはただ魔力を宇宙に垂れ流すだけになってしまった地球。
魔力が地上に流れないので、魔物も発生せず、動物しかいない地上、魔力を持たない生き物どうしなので、食べるために相手を殺しても経験値が貯まらない、もちろん潜在能力も上がらない、だからレベルアップシステムもない、人間が誕生した今も、それが続いているのが現状だ。
能力も満足に上がらない地球の生き物は、その幾ばくかの恩恵にも気づかず、そのうち魔力の存在を忘れ、その力に頼ることなく、独自の進化を遂げた。
これがヘスティアの導き出した答えだった。
じゃあ、その生産された魔力を、宇宙に持っていかれる前に吸収して、貯蓄しちゃえばいいんじゃね?と考え創り出した能力、それが貯蓄だ。
しかも地球から溢れる魔力を少ないリスクで経験値に変えるというチートっぷり。
どういうふうに魔力を経験値に変換させるのか、そもそもこの時は経験値という言葉も無かったのだ、魔力をどうしたら、何かに変えて体に吸収させられるようになるのか…
試行錯誤していく内に、何かしらのきっかけ、何かの経験が必要だということが分かった。
異世界で言えば、魔物を倒すと言う行動、経験だ。
ならば、魔物のいない地球ではどうするのか?
他人を思いやる気持ちを抱くことだったり、幸せな経験をすること、他人に危害を加えないという条件をもとに、経験値を獲得するようにしてしまえばいい、と創り出したのが貯蓄、さらにはその先、創造ポインツに変換させ、潜在能力もなにも関係なく、任意に能力を割り振れる、というとんでもない能力を創り出してしまう、暇つぶしにしては明らかにやり過ぎである。
しかしヘスティアはちょうどいいと思った、自分の相棒を探すのにはもってこいの能力じゃないかと。
ヘスティアは、貯蓄した創造ポインツを、他人への焦り・怒り、などの負の感情を抱くと、貯蓄されたポインツが流れ出し、減ってしまうように創り直した。
候補者を選定するため、そういう仕組みにしたのだ。
しかし、今だに地上は獣だらけ、貯蓄を与えるに至る生き物はいなかった、確かに獣にも愛はある、幸せも感じる、しかしそれ相応の怒り、焦りもある、だから貯蓄を貯められそうもない。
ヘスティアは、後に慈愛の神、と呼ばれるほどの優しい性格、一緒に箱庭を管理する事になる、相棒の性格に妥協はしたくなかった、だから待ち続けた…何千年も。
そのうち思考能力を持つ生き物、人間という存在が誕生する。
異世界でも魔物は亜人に、獣は人間に進化してゆく、魔力という強力な力がある異世界のほうが進化が早かった。
しかし、強力な力に支配されている分、人々の性格は荒れていた、命の価値も低く軽い、すぐ死んでしまう、焦り、怒りが渦巻く世界、これでは貯蓄も貯められないし、神の器も育たない。
そこでもう一度地球に目を向けた、ヘスティアにはこれ以上ない環境だった、その中でも他人を思いやり、尊重し、自分を犠牲にする人が多い日本、命を投げ出すものも多かったが、それも国の為、そんな中でも特に他人に優しい心を持つ者を見つけ出し、神園の名と貯蓄を与えるに至る。
この時から神園一族の試練が始まった。
貯蓄があることにより神園一族は、地球でももらえるはずの、わずかばかりの経験値すらも貯蓄に吸われ、能力が上がらず、その人本来の力しか発揮できない、故に平凡な生活を余儀なくされるのだ。
しかしヘスティアからすれば、神と言われる存在なだけあって、人の人生などどうでもよかった、どれだけ貯蓄を貯められる資質を持っているのかを、簡単に視覚化できるので、めんどくさがりのヘスティアにはちょうどよかったのだ。
生まれた時から貯蓄を与えられる神園一族、感情を制御できて、人一倍他人とのトラブルを起こさないレン、まさにヘスティアの望んでいた人材だった。
ところが…
それに目をつけた異世界の人間がいた、自称現人神と言う名の鼻くそだ。
自身の能力を上げるため、レンの貯蓄した創造ポインツを狙った。
しかもすぐに奪うのではなく、その魔法の腕を活かし、地球人を眷属にして、レンに取り入らせ幸せを感じさせる。
ある程度貯まったところで、異世界に眷属もろとも転移させ、ポインツを眷属に分け与え、レンをその場に放置する。
上位存在は転移させた相手に手が出せない、というレンの予想はそれなりに当たっていて、候補者同士、相手を死に至らしめるほどの争いは禁止、というルールがある、候補者を減らさないために、神々が決めたルールだ。
だから、レンを亡き者にできない鼻くそは、自分の世界の凶悪な魔物のいる場所に連れてきて、貯蓄を奪ってしまえば、能力の低いレンは勝手に死ぬだろうと考え、実行しようとした。
しかし…
ここからはレンもヘスティアも知らないことだが、実は箱庭に転移したのは何かの間違いだった。
レンは候補者の1人という立場で、しかもヘスティアはもうこの人間で決まりだと決めつけていたので、死んだら箱庭に転移してくるように設定して、お昼寝していたのである、たとえ凄腕の鼻くそ魔法でも、さすがに女神の魔法には勝てず、地球で死んだと世界に認識されたレンは、シンたちもろとも箱庭に来てしまったのだ。
焦った鼻くそは、眷属の場所を感知して、急いで転移で向かった、眷属のいる場所付近には転移できるのだ。
だがそこで、鼻くそにとって都合のいい展開が訪れる、まずここが箱庭であるということ、また、眷属たちがレンに幸せを感じてもらおうと、色々仕掛け始めたのだ、だから少し様子を見て、ギリギリまで貯蓄を貯めさせ、セイトのステータスオープンの言葉で登場した。
そこが箱庭だと気づいていたので、怪我しないということを利用し、セイトを思いっきりひっぱたき、お得意の魔法で読心を使い、自分が神様だという演出をした、実はツェファレンに移動したあとも読心は使えたのだが、度重なる転移の使用など、魔力消費の関係で使えていなかった、中心の街に転移するための魔力を残しておかなければならなかったからだ。
お昼寝していたヘスティアは、異変を感じて飛び起きる、まだ寿命が残っているのに、なぜレンの気配が箱庭にあるのかと、急いで向かったときにはもう、レンはツェファレンに転移したあとだった。
―――――
でもどうやってやつらにも貯蓄を?
なぜ、貯蓄の謎を知ってる?
あの鼻くそは人のステータスにまで干渉できるのか?
もしかして俺の奉仕と贈与も…
ほんとにあいつはただの人間なのか?