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137話 呪いの謎④

まぁいいか、ニャルにも許可をもらってないしな、後で報告しよう、とりあえず今はナナの呪いの事だ。



レイカにラーメンの事を報告し忘れたレン、スパッと気持を切り替え、ナナの呪いを解く事に集中する、しかし、肝心のお店がまだ開店していなかった。



「う〜ん、まだ開店してないのか…どうすっかなぁ」

「あっ、レン!とぉ〜う!」



ひゅ〜、すたっ



「にゃ!」



レンを見かけたニャルが、店の2階の窓から飛び降りてきて、手を招き猫みたいに猫手にしつつ、可愛くポーズをとってきた、シュピッとキメ顔だ。



「いらっしゃいませにゃ〜」



着地をしたあとポーズをとった意味は?



「ニャル…お前、もう種族を隠す気ないだろ、完全に猫じゃないか」

「にゃはは〜、隠すのはめんどいにゃ、大丈夫な人なのかは少し話せば分かるにゃ」

「そうかい、落ち着いたら獣人の事について話を聞かせてくれ、いやマジで、頼む」

「わ、分かったにゃ、なんか違う意味で怖くなってきたにゃ…」

「はっはっはっー♪そんな事はないぞ〜、こんなに獣人に対して紳士的な人間もなかなかいまい、俺はモフリストだからな!」

「モフリスト!?…まぁいいにゃ、今日はどうしたにゃ?まだお店は始まらないにゃよ」

「知り合いにな、こういうものを作ってもらったんだよ」



収納からメガネを取り出して見せる。



「これは…なんにゃ?」

「え、メガネ、だけど…」

「めがね?知らないにゃ」



確かに…この世界で眼鏡を掛けてるやつ見たことないかも…なんかチグハグしてんなぁ、時計とかはあるのに…



「こういうふうに顔に掛けるんだよ」



自分の顔に掛けてみせるレン。



「仮面かにゃ?なんだかヘンテコにゃ」

「ええ〜、掛けてもらうのハードル高いかも…そりゃあ見たことなければ、顔に何につけてんだってなるよな」

「それで?その出来損ないの仮面がどうしたにゃ?」

「いや言い方!いいか?このガラスの部分は、魔力を遮断する結界になってるんだよ、これをナナに掛けてもらおうかなって思ったんだけど…そんなに変か?」

「私達獣人には人間のセンスは分からないにゃ」

「まぁいい、ニャルのセンスが絶望的だという事だけは分かったよ、とりあえず、これで呪いが抑えられるなら安いもんだろ」

「にゃにを〜!私はセンスのかたまりにゃ!絶対ナナも微妙な顔する決まってるにゃ!」

「ほぉ〜、言うじゃないか、これの良さが分からんお前に勝ち目はないぞ、ナナの部屋に行こうじゃないか」

「望むところにゃ!」



―――



「可愛い、メガネですね…」

「な、なんでにゃ…」



メガネ、普通に知ってるじゃねぇかよ、ふん、俺の勝ちだな。



「しくしく…」



ニャルは床に四つん這いになり、しくしくと鳴いている。



「レン様…このメガネは?」

「ああ、それはな…」



結界と効果の説明をする。



「凄い…掛けてみてもいいですか?」

「いいぞ、掛けたら…よいしょっと、こいつを直視しろ」

「にゃにゃー!?やめるにゃー!心の準備ができて、ない、にゃ〜ん…んにゃ〜」



四つん這いになっているニャルの首根っこを、ローブの上から肉ごと掴んで持ち上げてみた、最初は騒いでいたニャルだったが、そのうち手足をぶら~んとさせて、目を細めて抵抗しなくなる。



「むにゃむにゃむにゃ…」

「マジで猫やん…」



寝そうになってねぇ?なんでこの体勢で落ち着けるんだよ、普通の猫と重さが違いすぎるだろ、首の筋肉が肉離れとかになってもおかしくないのに。



「ど、どうで、しょうか…」

「おお、知的だな、似合ってるぞ」

「ありがとうございます…」

「さて、おいニャル!目を覚ませ!」

「にゃにゃ!?」

「ナナ!今だ!」

「はい!」



ガシッ!



「にゃ!?」



ナナはニャルの顔を固定し、至近距離でじっと目を見つめる。



「こらっ、目を瞑るな、お前しか効果の確認ができないんだ、大丈夫だから」

「いーやーにゃー!」

「分かったよ!なんか欲しいもの一つだけ買ってやるから!ほらっ!」

「そんなの!いらな…え!?なんでもにゃ!?」

「ああ、金なら持ってる、何でも買ってやるよ」

「わ、分かったにゃ…」



時計を貰えるかもと思ったニャルは、恐る恐るナナの目を見る…



「にィ〜…」



目をうっすら開けて、ダミ声で鳴きながら。



めっちゃビビってるやん、今にも喧嘩しそうな猫みたいな声出しやがって、本当にこいつは見ていて飽きないな。



「ニャル…どうですか?」

「…な、何もない…にゃ?」

「凄い…」

「凄いにゃ!全然大丈夫にゃ!やったにゃあ!ナナおめでと〜にゃっ!」

「こらこら、そんなにはしゃぐな、完全に原因は取り除いてないんだ、メガネの隙間に気を付けろよ」

「はい…」

「じゃあ、何買ってもらおうかにゃ〜♪」

「は?お前は何を言ってるんだ?」

「えぇ!?何でにゃ!何でも買ってくれるって言ったにゃ!これだから人間は信用できないにゃ!」

「冗談だよ、なんかニャルはからかいたくなるんだよなぁ、可愛いから」

「にゃあ!?か、可愛い…」

「この世界は見た目が可愛い女がが多すぎるんだよ」

「この、世界?」

「あれ?2人には言ってなかったか?」



ん?そういえば、ルダン達にも言ってはなかったな、別に隠してないし、いいか。



「俺は渡り人だ」

「!?ちょ、ちょっと用事を…」

「待て」

「にゃ!?」



ローブを掴んで、ニャルの逃亡を阻止する。



この前も聖堂の方へ走って行ったし、なんか怪しいんだよなぁ…っていうか誤魔化すの下手過ぎだろ。



「お前、何を隠してる?実はナナの事を面倒見てるのも、偶然じゃないんじゃないのか?」

「それは…にゃ、にゃ〜…」

「大丈夫、怒らないから言ってみなさい、ほら、隠し事がないっていうのは楽になるぞ〜?ほれほれ、すっきりしちゃえよ」

「私は…獣人にゃ」

「それは知ってるよ」

「昔、魔王様に死にそうになっているところを助けられて、今は魔王様側近の諜報員として活動しているにゃ…」

「なるほどな、聖堂ではなくて、魔王城へ向かっていたのか」

「ニャル…」



ナナが心配そうにニャルを見つめている。



「取り敢えず、それで?」

「ある日、魔王様にナナの事を頼まれたにゃ、生きる術を持たない可哀想な娘がいるから保護してくれと、まぁ保護というより仲良くしてくれと言ったところにゃ」

「魔王…実は優しいやつなのか?」

「魔王様はとても優しい人にゃ、ナナを含めた9人の呪い子、その呪いを解くために、人生の半分以上を掛けて魔法の研究をしているにゃ」



9人…ナナと一緒に施設にいた人数とは違うんだな…



「ナナ、ごめんにゃさいにゃ」

「なんでニャルが謝るの?」

「私は…施設の事を知っていたにゃ」

「そう、でも、なんでそれで謝るの?」

「え、だって、にゃ?なんでにゃ?」

「おい、しまらねぇな、それでその施設は何をする場所だったんだよ」

「そこまでは分からないにゃ、誰が何のために子供たちを隔離していたのかは…でも呪いに関係する何かだと言うことは分かるにゃ」

「まぁ流れ的にそうだろうな、魔王が助けたのか?」

「そうにゃ、施設に乗り込んで、子供達を救出したにゃ、15年前、ナナが5歳の時にゃ…」

「う…うぅ」



突然ナナが頭を抱えて呻き出した。



「どうした!?」

「にゃ!?ナナ!どうしたのにゃ!」

「回復、回復、回復…」

「はぁ、はぁ、はぁ…思い、出しました…」

「忘れていた、もしくは記憶を操作されていた、のか?」

「恐らく忘れていたのかと、思います…魔王様に助けてもらう直前、私達10人は、突然豹変した大人たちに無理やり押さえつけられ、椅子に縛り付けられていました、それでなにやら実験のような事をされていました」

「助けた時は瀕死だったと聞いているにゃ、目を覚ました時には全員記憶を無くしていたにゃ」

「そうか、それで今思い出したと、魔王はなんでそのまま保護しなかったんだ?」

「最終的にはちゃんと保護はしたにゃ、でも最初は…魔王という立場もあって、おおっぴらに保護できる状態ではなかったにゃ、孤児というのは他にもいるにゃ、私も私もと後を絶たなくなるにゃ」

「なるほどな…なら孤児院でも建てればいいのに」

「魔王様は…こういってはなんなゃけど、政治に関しては下手くそにゃ…それにあの頃は子供だったにゃ」

「…ふむ、魔王は今何歳なんだ?」

「30歳にゃ」

「当時15歳か、その年で一国の王とは優秀だったんだな、政治以外で…」

「強さに関しては右に出るものはいなかったにゃ」

「実力主義の悪い部分がでたな、鼻くその思惑通りじゃないか」

「鼻くその思惑?その三流作家が書いた小説のタイトルみたいなのはなんにゃ?微妙に読みたくなるにゃ」



この世界、小説あるのか…三流作家という言葉のチョイスといい、本当に異世界っぽくないな。



「それは長くなるからな、後でルダンとかがいる時に一緒に説明するよ、とにかく話の続きだ、魔王は助けた後、すぐに放置したのか?」

「一度は各町へ送り出し、人選をして教育させたにゃ、でも、技能に何かしらの異変があって、まともに戦闘も生活もできない事が発覚したにゃ、それぞれ特殊な技能を持っていて、それも使いこなせずイジメられたりもしていたにゃ、ナナやセフィールがいい例にゃ、なので魔王様がもう一度、保護ではなく士官させると言う名目で呼び戻して、5年ほど子供達を鍛えた後に、各町に長候補として送り出したにゃ、ナナ以外…」

「あの時は絶望しました…10人の中でも私は特に呪いの制御が難しく、町の長候補にはなれませんでした…」

「なるほどな、だから最西端だけ町長がいないのか…」



セフィールが話した内容と一致するな、そんな過去を過ごしていたとは、しかしあいつ、長たちに時計を渡すとかいって9個しか受け取らなかったよな…どう考えても2個足らないだろ、各町に1人ずつで8個、魔王の分で9個、ナナの分で10個だろうが…


生きていないやつでもいるのか?それともナナは長じゃないから?一緒に育った仲なのに?



「この街の町長的なやつはいるのか?」

「レンも会っているにゃ、フィリアーナにゃ」



いるんかい、なら全部で11個だろ、フィリアーナという名前に聞き覚えはないけど。



「いや、そんなやつには会ってないが?そいつも呪い子なのか?」

「にゃ?そうなのかにゃ?…いやいやいや、絶対会っているにゃ!私が魔王様にレンの報告をした次の日、同じくレンの事を報告しに来ていたにゃ!」

「えぇ、でも知らんもんは知らん、そんな名前に記憶はない」

「嘘…を言っている感じはしないにゃ…何でにゃ?あの内容は絶対に話しをしたような内容だったにゃ…」

「まぁ良いよ、別にそこまで知りたいわけじゃないしな、取り敢えずその後は、ニャルが魔王から頼まれてナナを保護したと、そういう事でいいか?」

「そうにゃ、あとフィリアーナは呪われていないにゃ…」

「フィリアーナも同じ施設で育ったのですが…呪わていなかったのです」

「そうなのか…」



椅子に縛られて、順番に実験でもしていたのか?それでフィリアーナとやらの順番前で助けられたのかも知れないな。



「ニャル、本当にありがとう、あなたが、いなかったら…私はもう、死んでいた、と思う」

「悲しい話はやめるにゃ!今は生きてる!それでいいにゃ!」

「よしっ、ニャルの疑いも晴れた事だし、お前達にはこれをやろう」

「疑われていたにゃ!?」

「当たり前だろ、重要な話に水を差して遮るし、焦ったようにどっかいっちゃうし、もしかしたら呪いをかけてる側の人間だと疑ったんだよ、だからすぐにナナの技能封印を解いて返してもらったんだ」

「1日限定とかは嘘だったにゃ!?」

「ああ、何回でも貸せるしな、でも実際ずっと貸してるわけにはいかないだろ」

「な、なんにゃ〜、心配して損したにゃ〜」



良いやつだな、ナナは幸せ者じゃないか。



「ナナ、こんなに良い猫に拾ってもらったんだ、絶望なんか感じていたら失礼だぞ」

「はい、ニャルには感謝しています、もちろんレン様にも…」

「ちょっ、猫って言い方は失礼じゃないのかにゃ?」

「別に俺はお前に世話になってない、失礼だろうがなんだろうが関係ないだろ」

「いや人間性!悪人にゃ!」

「ふ〜ん、そんな事いうんだ、これを渡すのはナナだけにするか〜、俺は悪人らしいからな、そんなやつから物なんて貰いたくないだろ」

「綺麗ですね、これは?」

「時計だ」

「にゃ!?にゃ〜…レン様ぁ〜、冗談ですにゃ〜、にゃにゃ〜ん♡」



レンに寄りかかり、猫なで声で誘惑しようとしてくるニャル。



分かりやすいなぁ、この世界でお調子者キャラはいなかったから面白い。


あ、サンドがいたか…いや、あいつは別枠、おバカキャラだったな。



「よしニャル、そのフードを外せ」

「にゃ!どうぞにゃ!」



バサッ!



何をされるのか一瞬で理解したニャル、時計の為なら何でもする勢いだ。



「おお〜、猫耳だ!すげぇ、虎とは少し形が違うんだなぁ」



ワシャワシャ…ワシャワシャワシャワシャ…



「にゃ、にゃ、にゃぁ〜♪」

「ありがとう、ほれ、これな」

「にゃー!やったにゃー!」



こいつ…時計の機能を知ってるな?どこで知った?



「ナナに機能の説明はしておいてくれな」

「了解にゃ!あ…」

「ニャル、どこで知った?」

「にゃ、にゃ〜、セフィールが来て、魔王様とフィリアーナに渡していたにゃ…あ、でも最後にフィリアーナは取り上げられていたにゃ、にゃふふふ♪」

「セフィールも行動が早いな、まぁナナとそのフィリアーナとやらの分を忘れていたのは説教するけど」

「セフィール…あの子は元気ですか?」

「ああ、俺が呪いを解いたからな、今は立派な大人だ」

「そうにゃ、すごく美人になっていたにゃ!」

「レン様…セフィールを助けてくれて、ありがとうございます」



ナナも優しいな、なんかこの世界、鼻くその周辺以外、いいやつ率高くね?たまに変なのはいるけど、ラノベ信者としてはつまらなく感じるんだよな〜、期待していた魔王は優しいって言うし、鼻くそをぶちのめすしか楽しみがないなぁ…


…ん?誰が来たな、只者じゃなさそうだ…



「ニャル、お客様だぞ」

「にゃ?レンも分かるにゃ?」

「ああ、只者じゃないやつが店の前にいる」

「行ってくるにゃ…」

「ああ、ニャルの事は忘れないよ…一ヶ月くらいは」

「死なないにゃ!あともう少しくらい覚えててほしいにゃ!たぶん知り合いが来ただけにゃ!」



なんだよつまんね〜、敵だったら楽しかったのに…



この世界で強くなりすぎたレン、力を完全解放できず、少しウズウズし始めていて、考えが物騒になってきていた。

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