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135話 金貸しのレン

借金貸与の条件が開放しました。



貸与者 レン

被貸与者 ガング

建て替え費用 5,000万

内容 ホテルの備品及び床、壁修理


貸与しますか?



貸与さん、君は相変わらず恐い技能だね…


借金貸与って言葉は合ってるのかい?まぁどうでもいいか、どーせ技能のベースとなっているのは俺の知識なんだ、考えないようにしよう、とにかく…今はイエスだ、こいつに慈悲はない。



被貸与者、ガングに借金を貸与します。

返済期間と返済方法を被貸与者と相談して下さい。



なるほど、返済を強いられるのか。



「ガング、いつまでに、どんなふうに返済する?」

「へ?」

「1年後に一括とか、毎月500万ずつとか、2年後まで毎月250万ずつとか、なんなら毎月50万、10年払いとか?」

「ま、毎月50万で!」

「了解だ」



返済方法 毎月50万

返済回数 100回払い

返済期間 10年

確定しますか?



イエス…



返済期間とその方法を設定しました。

借金を貸与してください。



「ではガング、借金確定だ、貸与!」

「う、ぐぅ…ぐぁぁぁ!!」

「これは…」



ガングの右頬に5000という数字が痣となって浮かび上がり、直後ガングが胸を押さえて暴れ出した。



なになに?これ…めっちゃ楽しいんですけど!



クズであった。



「はぁ、はぁ…うわぁ!?な、何だこれぇ!」

「落ち着けガング、今度はなんだ?」

「なんか、目の前に文字が…残り返済額?5,000万…」



借金を貸与しました。

返済額は毎月1日に強制回収いたします。

当日に被貸与者が返済額を満たす金額の貨幣を所持していなくとも、財産がどこかに存在する限り、そちらから回収されますので、了承及び、都度確認をお願いします。


また、財産が返済額に満たなかった場合、同額の所持品または、どこかに存在する返済額と同額相当の品を回収し、返済の代わりとします。


※重要

【所持品が返済額に満たなかった場合、返済の意志無しと判定、罪科発生により生命刑と財産刑の不利益処分となり、貸与者の承認を得次第、基礎能力と技能を全て徴収し、被貸与者は命を落とす事になります、ご注意下さい】



一発で!?本当に慈悲無しだったよ!!こっちのほうがよっぽど呪いじゃね!?



「「…」」

「レン?ガング?どうした?」



ルダンが何も話さなくなった2人に声を掛ける。



「い、いやだぁ〜!死にたくない〜!許してくれ!」



レンの足にすがりついて泣きじゃくり、命乞いをするガング。



ガングの前にもモニターが出てるのか、説明文を読んだのか…貸与もレベル上がったからな、進化したのか?


ガング…ご愁傷様だな、でも通知してくれるだけ優しいと思うよ?



「諦めろ、これからは真面目に働いて、金を稼ぐんだな」

「そんな〜」

「なぁ、いったいなんなんだ?」

「さっきもナナに技能を貸与したろ?」

「そうだな」

「金も貸与できるんだよ、まさか借金まで貸与できるとは思わなかったが…」

「金を貸すのと、借金を貸すのは、同じなんじゃないのか?」

「そう思うよな、う〜ん説明が難しいな…金を貸す、というのは、貨幣そのものを物理的に貸すという事、借金を貸すのというのは、貨幣を物理的に貸すのではなく、対価を払わせる、みたいな感じだな、そんな線引きがあるみたいなんだよ」

「なんとなく違いは分かった、でも結局金は返すんだから同じじゃないのか?

「普通の貸与は相手にリスクはないんだよ、まぁそれは俺次第なんだけど、基本的には返してくれるのはいつでもいいし、貸してる間は俺も利息を貰える」

「借金は?」

「今回の場合は、俺がこいつの代わりにホテルの修理費用を立て替えた、という事が条件で発動したんだと思うんだが、返済方法を決めなければならない、そして回収は強制だ、金がなかったら持ち物から強制回収、財産になるような持ち物もなければ、俺に何もかも奪われて、こいつは死ぬ事になる」

「こわっ!」

「そう、貸与という技能は恐いんだよ、ナナだって、もし返してくれなかったら、最終的に死ぬ可能性があったんだ」

「何にでもリスクはつきまとうか…」

「そうだ、俺だって技能を貸してる間はその技能を使えない、金だって貸せば減る、リスクはつきものなんだよ、しかし今日のは俺になんのリスクもない、少し労力を使っただけだ、これだけで5,000万、もしくはそいつの能力全てだ、ボロい商売だぜ、ケッケッケ…」

「ねぇねぇ、そろそろいいかい?」

「誰だ?」



実はずっとルダンの後ろに男が立っていたのだ、最初はニコニコだったが、今は全然笑っていない。



まぁ、ルダンのパーティメンバーだろうな、この状況じゃ笑えないよな、しっかしイケメンだなぁ。



「僕はルダンリーダー率いる、煉獄の氷風のメンバー、ランステイルだよ、ランスって呼んでね、よろしく♪」

「俺はレンだ、よろしくなランス」



格好いいパーティ名だな、ルダンとメリーの特徴を入れたのかな?なんか2人は炎と氷って感じの夫婦だったしな。



「レン君は強いんだねぇ!驚いたよ!」

「だから言ったろ、コイツはヤバいって、信じてなかったのかよ」

「さすがに盛っていると思ったんだよ、実際は盛りが少なかったみたいだね」

「なんでルダンは俺が実力者だって見抜いたんだ?」

「数時間一緒にいれば誰でも分かるよ、メリーも絶対敵対しちゃダメって、あと一人のメンバー、ベンネっていうやつなんだが、言い聞かせていたからな」

「相手の実力を察知するのも強者の証だ、ルダンもなかなかだな」

「A級相手になかなかって言えるのが凄いよな」

「ホントだね〜、レン君、開拓者ランクを聞いてもいいかい?あ、開拓者だよね?」

「ああそうだ、開拓者ランクはSSS+だな」

「「SSS!?」」

「お、お客様、今のお話は…本当ですか?」

「本当だ、嘘だったら俺は相当痛いやつだろ、あと俺は客じゃねぇ、ここには泊まらん」

「え、そんな…」

「当たり前だろう、こんな事があったのに、誰が泊まろうとするんだよ」

「す、すみません、そうですよね…わたくしの監督不行き届き、また、わたくし自身も未熟でした、本日はご迷惑をお掛けしてしまい、本当に申し訳ございませんでした、またの機会がありましたら、その時は宜しくお願い致します」

「いい経験だったろう、これといった被害もなかった訳だし、このホテルがもっと良くなることを祈ってるよ」

「はい、精進します」



どうするか、今日はレクステッドで寝るかぁ。



「ええ〜、泊まらないのかよ〜、SSSの話聞きたかったのに〜」

「見てなかったのかよルダン、なんであんな扱いされたのに泊まらなきゃならないんだよ、もうそんな気分にはならんだろ、今日は拠点に帰るよ」

「拠点はどこなんだ?」

「南のレクステッド城だ」

「え!?王の関係者なのか!?」

「違う!…いや、違わないか、まぁでも、そんな偉い立場じゃない、普通の開拓者だ」

「いや、普通ではないだろ、SSSが何で普通って言えるんだよ…」

「他人の考えはどうでもいいんだよ、俺が普通と言ったら普通なんだ」

「わ、分かったよ頑固だなぁ、次はいつ頃来れるんだ?」

「明日の朝には来るけど?」

「早っ!」

「聖堂があるんだから来れるだろうよ」

「まぁそうなんだが、そうじゃなくて、もうこの国に愛想尽きたとか、用事なんてないのかと思ってな」

「ナナがいるだろう、ほっとけるかよ、それに、おかしなやつってのはどこにでもいる、個人と国は関係ないだろ、今日はなんかホテルに泊まるっていう気分じゃなくなっただけだよ」

「そうか、そういえばナナの件が解決していなかったな、個人に関しては同意だ、だがお国柄ってのも少しはでるからな、最近は北国も王が変わって、優王とかい言われてるし…」

「そうだな、あいつは良くやってるよ」



こっちにも情報は回ってるんだな。



「あいつ?本当にレン、お前は世直しでもしてるのか?まぁいい、後で話は聞かせてもらおうか、引き止めて悪かったな」

「はははっ♪世直しねぇ、そんな所だ、ハンカチ用意して聞く準備をしておけ、じゃあ俺は拠点に帰るよ、また明日な、ルダン、ランス」

「おう」

「またね、レン君」



因みにガングは、しばらく前に支配人に言って部屋をチェックアウト、肩を落としてトボトボとホテルを出ていってしまった。


ラプンに話し掛けたが無視された為、支配人が手続きをしたのだ。



くそ、なんか、魔物でもぶっ飛ばしたい気分だな…

『主様〜、西の深層に行ってみたら〜?』

『うむ、我も魔系?とやらの魔物共が気になるのぅ』

『それは魔王に会ったり、ナナをどうにかしてからにするよ、そのあと一緒に暴れようぜ』

『楽しみじゃな』

『うん、分かった〜』

「レン様!」

「ん?ラプンどうした?」



ホテルを出て転移で帰ろうと思っていると、ラプンが焦って小走りで追いかけてきた。



「あ、いえ、ちゃんと謝らないと…と思いまして」

「さっき謝っただろ、大丈夫だよ」

「いえ!改めて、今日は疑ってしまって、ごめんなさい」

「分かったよ、謝罪は受け取った、次に来た時はよろしくな、因みに金ならほら」



ジャリジャリジャリジャリ…シュッ



足元からレンを囲うように金貨が溢れて、また地面の中へ消えていった。



「お金が生えた!?」

「俺は収納という技能を持ってるんだよ、容量はほぼ無限でな、手荷物なんていらんだろ?」

「凄い…聞いたことない技能です、本当に先ほどの自分を殴りたいです、少しでも疑った自分が許せません」

「なら今まで以上に頑張るんだな、でもラプンは小さい、強さは知らないがこんな世の中だ、暴力に対抗する何かしらの対策は練っておいた方がいいだろうな」



小さい、イコール弱い、とはならない世界だからな、セフィールの件もあるし。



「ま、俺みたいなのが相手だと、どんな対策も無意味だがな」

「そうですね…そのあたりは煉獄の氷風の皆様と相談してみたいと思います、今日はとても勉強になりました、ありがとうございます」

「おう、またな」

「はい!」

「転移」



ヒュッ



いまさら実力を隠す気などさらさら無いレン、話が終わるとすぐに転移を使用し、カリンとレイカの待つレクステッドへ戻っていってしまった。



―――



「消えた!?」

「ラプン、どうしたの〜?」

「し、支配人…」



扉の外で叫んだラプンに気付き、支配人がホテル内から声を掛けてきた、ラプンはその声に振り向き、難しい顔をしながらホテル内へ戻る。



「どうしたのよ難しい顔して、今日は色々な顔しているわね、いつもにこにこラプンちゃんなのに」

「支配人…その、レン様が、消えました…恐らく転移かと」

「なんですって?」

「間違いないです、本人が転移と言っていましたので、それに収納、という技能を持っているらしく、荷物はその中に入れていました…」

「収納…そんな技能が?それに転移は賢者様しか使えないはず、魔王様ですら使えないのに…」



でも、B級開拓者のガングを片手間に倒す実力、その後の修復魔法、転移も出来て当たり前と思ってしまうわね、しかもまだまだ底が見えない…とりあえず魔王様へ報告ね、敵対だけはしないよう進言しないと。

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