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133話 呪いの謎③

魔女っ子店員のニャルを呼び、テーブルの上を片付けてもらう、勿論残った料理の器は差し替え済みだ。


食後のお茶を飲みながら、まったりして。



「さて、そろそろ自己紹介を聞こうか」

「そうですね〜、ナナはいつ頃から呪いが発動したの?」

「おい、なんでニャルがここにいるんだよ…」

「えっ!?ダメですか?…うるうる」



普通口でうるうるは言わないだろ。



大きな目をうるうるさせ、仲間に入れてとその目だけで訴えてくる、身長は低い方でティルより少し小さいくらい、ローブを着てフードをかぶっているので、体型も髪の長さも分からないが、赤い髪がチラッと見える、八重歯の可愛い元気っ子だ。



「まぁ別にいいか、仕事は大丈夫なのか?」

「お構いなく〜、私は働きたい時に働くんで〜」

「自由過ぎる、何このホワイトな会社、羨ましいわぁ」

「当たり前じゃないですかぁ、なんでオーナーである私が、汗水垂らして肉体労働しなければならないんですかぁ、やだなぁもう」

「でも、ニャルはいつも一生懸命働いてるよね?」

「ナナ!そこはバラしちゃダメなところ!めっ!だよめっ!」

「お前がオーナーだと?あれ?さっき店長に言ってみるって」

「はいっ♪だから店主である私が店長にとんこつラーメンを作れと指示を出したんですよ?」

「無茶ぶりが過ぎる!反射率0%!漆黒の会社だったよ!」

「レン様、でもニャルは優しい人なんです、こんな私を雇ってくれ…」

「はいストップ〜!そういうのはいいから!恥ずかしいよ!ナナ!めめめの、めっ!」



めめめのめ!?こいつふざけてんのか天然なのか分からんな…



「ニャル、取り敢えず今は話が進まないから黙ってろ、お前の恥ずかしい話は後で聞いてイジり倒してやるから、今は我慢してくれ」

「我慢してないよ!?無理に私の話をしなくてもいいんじゃないですかねぇ!?」

「それは、もう無理だ…」

「なんでぇ!?」



テーブルに突っ伏して絶望するニャル。



「それで?ナナの呪いは生まれつきなのか?」

「…違います」

「何歳頃からだ?」

「よく覚えてません、親とかの記憶もありませんし、子どもの頃はよく他の子達と遊んだ記憶はあるのです」

「確かに、それなら小さい頃は大丈夫だったって訳だな」

「はい…魔王街には、身寄りのない子供を保護して、教育してくれる施設がある、はずです…」



はず?子供の頃の記憶だから曖昧なのか。



「なるほど…いい街なんだな」

「は…はい、私はそこで同年代の子共達10人と行動を共にしていました、勉強も食事も遊ぶのも、寝るのも一緒、年齢ごとに部屋を分けて、教育に段階などを設けていたようなのです」



学校の寮生みたいなものなのだろうな。



「施設の場所とか名前は分かるか?」

「すみません…覚えていません」

「そうか、その施設には全部で何人くらいの子供がいたんだ?」

「…分かり、ません」

「え、ざっくりでも覚えていないのか?」

「同年代10人で行動しろ、そう言われて行動していましたが…他の子共達は見たことなかったのです、その頃は子供だったのでそれなりに生活は楽しくて、気にしていませんでした、単に私が忘れているだけかもしれませんが」

「…」



それはないだろ、遊んでいる記憶があるのに、他に人がいなかったかどうかくらいは覚えてるだろ…きな臭いなぁ。



「ならその時の大人たちの言葉は…失礼だが嘘だったという可能性もあったと言うことだな?」

「レンさん!デリカシーないですよ〜!」

「ニャル、構いません、レン様…私もそう、なのだと、騙されていたのだと、思います…うぅ」

「ナナ、よしよ〜し、大丈夫だよ〜、今は私がいるからね〜、私!嘘つかない!」

「ナナはどういう経緯で施設を…」

「レンさん!これ以上ナナをイジメちゃダメ!」

「…」

「レン?大丈夫か?」

「ん?ルダン…ああ大丈夫だ、これ以上質問してもナナの辛い思い出を突くだけだからな、解散しようか、対策は考えるから待っていろ、すまないが技能は返してもらえるか?」

「ねえレン、その技能はずっと貸しておく事は出来ないの?」

「メリー…すまない、そんな万能な技能じゃないんだ、残念ながら1日限定なんだよ、しかも同じ技能は同じ人間に2度と貸すことは出来ない、また辛い目にあわせてしまう事を許してくれ、ナナ」

「大丈夫です、今日は楽しかったです…ありがとうございました…」

「ニャル、ナナを頼むぞ、あの看板を持つ仕事ならナナはやっていられるんだろ?」

「当たり前だにゃ!」



にゃ!?こいつ…猫族の亜人だな?絶対そのフードの下は猫耳生えてんだろ、性格の緩さといい、な〜んか怪しいんだよなぁ、名前もニャルだし…



まぁいいか、今はそんな場合じゃない。



「そう言えば、ナナの年齢は?」

「20歳です」

「20…そうか、まだまだ人生はこれからだ、諦めるなよ」

「はい…」

「さ、解散解散!ニャル、ナナの部屋は?」

「ナナ、自分で案内できる?」

「はい、大丈夫です」



う〜ん…でももう少し。



「最後に一つだけ、いいか?ニャル」

「ナナを泣かせなければ」

「ははっ、ニャルは優しいんだな」

「そうにゃ、ニャルは優しいんだにゃ!」



もはや隠す気ゼロだろ、猫だからって語尾がにゃは…いいね!100点だ!



「ナナ、お前は今、幸せか?」

「…今は、幸せです、でも…」



すぐに技能を返還するからな、そりゃそうだよな。



「ニャル」

「へ?ウチにゃ?」



今度はウチかよ、いくつ本性を隠してんだよ…



「お前はナナを助けたいか?」

「あまり前にゃ!」

「…そうか、分かったよ」

「な、なんにゃ?恐いにゃ〜」



猫族確定だなこりゃ、絶対後でもみくちゃにしてやる!



「これは確定だ」

「なにがにゃ!?」

「ニャル」

「は、はいにゃ…」

「何怖がってるんだ?」

「何かが確定したにゃ、恐いにゃ…」



しまった、声に出てたか…



「大丈夫、痛くはしない」

「訳わかんないにゃ〜」

「とりあえず解散しよう、ナナ、部屋まで案内してくれ」

「はい…」



今この場で技能封印を解くのはまずいので、いつもナナが寝泊まりしている部屋まで一緒に行き、部屋の前で能力を返還してもらった。



ごめんな嘘ついて、あの場ではこれが精一杯だったんだ、お前を守るためだ、許してくれ。



『う、うぅ…ぐすっ』



部屋の中から微かに泣き声が聞こえてくる。



「…」



ナナは、先ほどまでの幸せな数時間と、またこれからはいつもの日常、という名の地獄に戻ってしまうギャップに我慢しきれず、思わず泣いてしまった。



悪いナナ、また辛い日常に戻してしまう俺を恨んでくれ、その代わり必ず助けてやるから。


犯人め…許すまじ!

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