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127話 身長を下さい

コンッコンッ



「セフィールか?」

『おはよう、起きていたか、朝食の用意が出来てるから早く来い』

「おう、わざわざありがとな、用意は出来てるから今行くよ」



ガチャ



「おはよう、相変わらず小さいな」

「うるせぇ、私は世界の重力に逆らわない、謙虚な女なんだよ」

「なるほど、それが重力という力を使う対価って訳か、安いものだな」

「ああ、安いもんだ」

「朝から素晴らしいツッコミを拝まされたな、いい事ありそうだ」

「どんな願掛けだよ、あんたは神寄りの人物で、こっちの願掛けを聞く立場だろ、少しくらい私に身長をくれよ、神様」

「あげたいのは山々だが、なぁお前、本当に人族なのか?」

「知らんよ、ステータスにもそんな情報は出ないし、親の顔なんて見たこと無いし…」

「重っ!朝から重いぞセフィール、そんなちっちゃいのに…」

「ふ、ふふふ…レン様はいいな、こんなに気楽に話せるのは久々だ、からかわれてはいるがイジメとは違う、そこに悪意が無いから聞いていられる、むしろ心地良いな」

「そうだろ?俺のからかいは愛情の裏返しだからな、イジメは嫌いだ、普通の暴力なんかよりも悪質だと俺は思うんだよな」

「私もそう思う」

「経験者は語る…だなっ」

「ほら、喋ってばかりいないで、行くぞ」

「おう」



―――



朝から、昨晩ご馳走になった夕食と、ほぼ変わらないほどボリューミーな朝食をご馳走になる。



「ふぅ〜、食ったぁ…朝から食べるにしては多すぎる…」

「私は、やはり身長が欲しい…だから毎日限界まで食べる事にしているんだよ」

「う〜ん、なんで伸びないのか…なにか魔力的な力が働いているのか?重力の対価ってのもあながち間違いじゃないかもしれんぞ…あいつに見てもらうか」



…ブツブツ



「おい、ブツブツと何を?」

「知り合いにな、人や物の内部魔力を可視化して見ることの出来るやつがいるんだよ、そういう調査とか得意なのではと思ってな、連れて来てみるか?」

「無理だよ、身長が欲しいとは言っているが、半ば諦めている…魔王様にだって諦めろと言われたんだ」

「そうか、諦めているなら…連れてきてもいいな」

「なんでそうなる?」

「期待してないからこそ好き放題出来るんじゃないか、失敗しても大丈夫ってのは、頼られる側にとっては有利な状況なんだよ」

「なんだそれは、おかしな考え方だな、まぁ好きにしてくれ」

「そうか、よしっ…アシュリー、聞こえるかアシュリー?」

『レ、レン様!?どういたしましたの?』



実はセイトを通して、オーソロン城の人達に時計を供給していて、今ではオーソロンの街全体に大分普及している。



「すまんな、少し魔力を見て欲しい人がいるんだよ、今手は空いてるか?」

『え、ええ、大丈夫ですわよ?今からですの?』

「いつでもいいんだけど」

『どちらに向かえば?』

「俺がそっちに行くよ」

『す、少し…5分程してから迎えに来て下さいまし…着替えが…』

「分かってるよ、準備できたら連絡をくれ」

『分かりましたわ』

「それがその時計の機能なのか、どこのやつと通話していたんだ?」

「北国のオーソロン城にいる、王様の側近だよ」

「は?遠っ!」

「凄いだろ?ここにいても魔王様とお話出来るぞ?」

「いや、まぁ…魔王様とはそんな気軽に話すことは出来んが、他の長達とは気軽に話せるな」

「魔王様は気難しいのか?」

「ああ、気難しいな、私は…少し恐怖を感じている、感謝もしているんだが、それとこれとは別だな」

「そうなのか、ますます会うのが楽しみになってきたぞ」

「レン様は変わってるな」

「自らトラブルに首を突っ込んでいくスタイルでやらせてもらっております」

「誰に対してのプレゼンテーションなんだよそれは」

「世界?」

「やかましいわ」

「…いいなお前、冷静なツッコミが癖になりそうだ」

「言っている意味が分からん」

『レン様、用意ができましたわ、いつでも行けますわよ?』

「おお、早かったな、じゃあちょっと迎えに行ってくるよ、転移」



ヒュッ!



アシュリーからの返事が来るや否や、善は急げと転移でその場から消えるレン。



「!?本当に転移を…レン様、いったい何者なんだよ、異世界人…渡り人、話はたまに聞くけど、その中でもダントツで規格外だな」



―――



オーソロン城内にある、アシュリーの部屋前に転移してきたレン。



コンッコンッ



「はい、レン様ですわね?入って頂いてもよろしくてよ」



ガチャ



「よう、いきなりすまない」

「いいえ、大丈夫ですわ、それで?」

「ああ、西国のとある町の町長なんだが、20歳にもなるのに身長が100cmくらいしかないんだよ、なんか呪いでも掛けられてるんじゃないかと思ってな」

「身長が?呪い…ですの?」

「呪いってのは、俺が適当に言っているだけなんだが、見た目は人間…だと思うんだが、この世界に成人になっても小さいままの種族っているのか?」

「う〜ん、聞いたことありませんわね」

「とりあえず連れて行くから会ってくれないか?」

「ええ、レン様の頼みですもの、もちろんですわ」

「ありがとな、じゃあ…転移」



―――



「ただいま」

「おかえり、早かったな」

「まぁ!なんて可愛らしい子なのかしら!」

「この金髪縦ロールのお嬢様がアシュリーだ、このちっこいのがセフィール、この町の町長だ、訳はさっき説明した通りだ、よろしく頼む」

「このお嬢様が見てくれるのか?アシュリーと言ったか、よろしく頼む」

「ええ、よろしくてよ、普段の生活で違和感とかはございませんの?」

「特にないな」

「人からおかしいと言われることも?」

「ない、身長以外は…」

「少し見させていただきますわね」

「う、うん」



アシュリーはじっとセフィールの胸辺りを見つめる。



「な、なんですのこれ…」

「やっぱり何かおかしいのか?」

「ええ、魔力が…吸われてますわ」

「吸われてる!?」

「なんだと?アシュリー、どこに吸われているのか分かるか?」

「普通、人はお腹辺り、主にみぞおち辺りから魔力を生成しますの、セフィールさんも同じ、魔体の色も他の人と変わりはありませんわね」

「なら、人族の可能性は高いという事だな」

「ええ、でもそのちょっと上、胸の中心りで魔力が消えていますわ、まるでそこに吸われるように魔力が集まって消えていっていますわね」

「もう絶対原因はそれだろ、本当に消えているのか?どこかに流れている、とかは?」

「これは、アッシュにも見せないとですわね…アッシュ、起きていますか?アッシュ!起きなさい!いつまで寝ているの!」

「このお嬢様、怖いんだけど…」

「身内相手ならこんなものじゃないか?少しおかんっぽいけど」

『アシュリー…なんだよ〜、うるせぇなぁ』

「今すぐ目を覚ましてすぐに着替えなさい!レン様が迎えに行きますわ!」

『え?…えぇ!?レン様が?ぼ、僕なんかしちゃった?』

「違いますわ!レン様がお困りになってるの!力になりなさい!」

『レン様が…困ることなんてあるのか?』

「おう、久しぶりだなアッシュ、そうなんだよ、少し助けて欲しい人がいるんだよ、力になってはくれないか?」

『レ、レン様!?はい!今すぐ準備致します!』

「よろしい、5分後に迎えに行きますわ」



姉ってどこの家庭も強いんだな…それにしてもアッシュも変わったなぁ、最初は俺にあんなにつっかかってきたのに、敬語まで使って…気を使わなくてもいいのにな。



約10分後―――



「レン様、ここは…」

「おう、わざわざ悪かったなアッシュ、ここは西国のゼンダルアという町にある町長の屋敷だよ、所でその喋りはどうした?前はもっと気楽に話してくれたじゃないか」

「わたくしが調教致しましたわ」

「はは、僕は生意気ですからね、気を使わないとまたどんなドジを踏むか分かりませんから」

「そんな気を使うなよ、まぁ調教済みならしょうがないか、それで今日はな、この子の事なんだが」

「この嬢ちゃんがどうしましたか?」

「この子の胸辺りをよく見なさい」

「え!?アシュリー、僕にそんな趣味は」

「黙って見る!」

「分かったよ〜」



アシュリーこわっ。



「う〜ん、ん?」



セフィールの胸辺りを見ていたアッシュだったが、急にセフィールから目を離して地面を見つめ始めた。



「嬢ちゃんの魔力が…地面に吸われている、のか?」

「決まりですわね、この子の魔力は、恐らくですが世界に吸われていますわ」

「世界…鼻くそが関わっていると思ったが、まさかのツェファレンが相手か…ティアに聞くしかないか?」

「例の女神様か?そんなに簡単に聞けるのか?」

「分からん、会いたいと思ってすぐに会えるものじゃないからな、とりあえずまずは俺がなにか考えてみるよ、そういえばセフィールの魔力と魔体の数値ってなんぼなんだ?」

「…ゼロだ」

「ゼロ!?お前…なんで技能を使える?体捌きだって魔力を使わなきゃ到底無理な動きだっただろう、それに、自分は魔力に敏感だと言っていただろうに」

「知らねぇよ、まぁこれが対価と恩恵なのかもな、魔力が無いからこそ敏感なのだと、私は思っているんだ、魔法も使いたければ際限なく使えるからな、体も疲れない」

「それは…お前、もしかして逆に魔力を魔脈から吸い上げることが出来るんじゃないか?」

「はぁ?そんな事…は、意識も試しもした事など無いから、でも普通出来ないだろ?」

「普通はな、でもお前普通じゃないだろ、重力の他の技能はあるのか?」

「…重力、重量変化、あと…黒塗りで分からないのが2つある」

「おいおい、絶対それだろ、なんで黙ってるんだよ」

「だって、恥ずかしいじゃん」

「じゃんって、なんでだよ」

「レン様、この世界の人間とはそのようなものなのですわ、ステータスを見られるのは裸を見られるのも同然ですの、レン様は今、セフィール様におパンツを見せなさいと言ったようなものですわ」

「えっ!?パンツ…俺、変態じゃん」

「変態ですわね、うふふ♪」

「それで変態のレン様よ、どうするのですか?」

「アッシュ、気を使うとか思わせておいて、中々ぶっこんでくるじゃないか」

「突っ込み好きの変態レン様、私はどうすんだ?」

「おいやめろ、3対1は卑怯だぞ、アッシュだってセフィールの胸を舐め回すように見ていたではないか」

「な!?それはアシュリーに言われて仕方なく!」

「わたくしは胸辺りと言っただけですわ、胸を見ろなんて一言も言ってませんわ」

「確かに、私も少し…いやらしさを感じたかも」

「なんでこんな話になってんですか!とにかくどうするんですか?僕達はもう帰っても良くないですか?」

「少しはしゃぎ過ぎたな、おう、もう大丈夫だ、協力してくれたからな、ほれ、2人に報酬だ、受け取れ」



ズンッズンッ



目の前のテーブル上にお金がふた山出現した。



「まぁ!こんなに頂けますの!?」

「これ、いくらあるんだよ…」

「5000万バレルずつだな」

「いや貰いすぎ!」

「いいんですの?」

「持ってけ、金の使い道がなさ過ぎて困ってるんだよ、好きに使え、経済を回してくれ」

「いったいいくら持ってるんだか」

「セフィール…それを聞いてしまうか」

「いや別に聞いてはいない、呆れてるだけだからな?」

「ざっくり100億以上だな」

「個人資産の額じゃねぇよ!」

「セフィールもいるか?」

「なんでだよ!私は払う側だろ!」

「ツッコミが激しくなってきたな、これはこれで…」

「いちいち話を脱線させるな!それで私はどうしたらいいんだよ!」

「すまんすまん、娯楽の少ない世界だから、楽しみが少なくてな、ついつい会話を楽しみたくなっちゃうんだよ、でもそうだなぁ…技能を封印する技能でも創ってみるか」

「封印する技能なんてあるのか?…っていうか作る?作るって言ったのか?」

「おう、創れるぞ、多少のリスクはあるがな」

「いや、ならやめてくれ、自分の為に他人をリスクに晒す訳にはいかん」

「そこは大丈夫だ、少し…というか死ぬほどの頭痛に苛まれるだけだし、そのリスクをも軽減化する技能を創って覚えたからな」



転移を創った時の激痛は、以前ティアにリスクリターンを貰った時に匹敵するほどの痛みだったので、もう耐えきれないと思ったレンは、後に激痛軽減という技能を創って覚えていた。


あくまでも軽減であり無効ではなく、そして任意で使用して発動させるものである。



痛み無効、なんて技能を創ろうものなら、またどれだけの痛みに襲われるか分かったもんじゃない、それに、痛みというのは身体の大切なバロメーターの一つだからな。



「やりたい放題かよ…ならほぼノーリスクなのか?」

「いや、俺には特殊なステータス能力があってな、体力や筋力の様な8つの能力の並びにあと一つ、貯蓄という能力を持っているんだよ」

「貯蓄?聞いたことあるような…」

「なに?聞いたことあるだと?」

「ああ、確か賢者様が…」

「おい、今なんて言った?」



ブンッ



「う、うぅ…」



賢者様、だと?



「おいセフィール、どこでその話を聞いた?」

「ど、どう、したんだよレン様、威圧を止め、てくれ…」

「ふぅ…すまん、昨日話した鼻くそっていうじじいは、実はルードの事なんだよ」



相変わらず俺の精神は働かないな。



威圧を抑え、冷静に戻るレン、つい感情的になってしまった事を反省する。



「そ、そうだったのか、トラウマを突くような事を言ってしまってすまない、そういえば最初に、賢者にこの世界に連れてこられたと言っていたな…」

「いいよ、悪いのは俺だ、精神10万が聞いて呆れるよな」

「いや、昨日私に貸しただろ、だからじゃないのか?」

「あ、そうだった、いやいや、それでも5万もあれば普通は大丈夫じゃないか?」

「まぁ普通はな、でもレン様にとってルードは、普通の相手じゃないって事なんじゃないのか?」

「そうだな…普通ではないな」



唯一亡き者にしてもいいと思っている人物だからな。



「それでな、貯蓄、という言葉を言っていたのは魔王様なんだよ、確か賢者が言っていたと、研究中だとか?」

「魔王に会う正当な理由が出来たな、貯蓄を個人的に研究して、個人的に使用するなら俺は別に構わない、だが、それで他人に迷惑を掛けるようなら…ぶっ飛ばす」

「そ、そうか、できれば殺さないであげてくれ」

「そこは大丈夫だよ、相手次第だけど」

「魔王様、逃げて…」



話しを戻すか…



「冷静に話そう、その貯蓄なんだが、女神様が数千年掛けて創った能力だ、常人が真似をするのはほぼ無理だ、そこは教えてやれ」

「それは、確かに無理だな…」

「まぁ、便利には違いないからな、別物として使用するならいいんじゃないか?たぶん貯蓄の本当の力は知らんだろうしな」

「賢者も?」

「当たり前だ、あんな鼻くそなんかに貯蓄の謎が解ける訳無いだろ、側だけを真似しただけだよ」

「そうか…」

「まぁもう一度俺に何かしようものなら、俺だけじゃなく、女神の怒りにも触れるかもしれないがな、もうすでに若干お怒りだしな」

「怖いな、例え魔王様が敵対しても、私は敵対しないからよろしく」

「お前、精神を貸与したせいか、図太いな」

「ははっ、そうかもな、まぁこれでも世渡りは上手い方なんだよ」

「イジメられて育ったくせによく言うぜ」

「それは言うな、子供だったんだよ」

「今も子供だろ、ぶはははっ♪」

「やめろぃ!ちくしょう!それでどうなんだよ、封印する技能を創ってくれるのか?そろそろお2人さんが退屈そうだぞ?」

「あ、すまん2人とも」

「いえいえ、とても勉強になるお話でしたわ、お城にいると、外のこういうお話は耳に入ってきませんから」

「そうですよレン様、全然退屈してませんよ」



退屈そうどころか、お金を貰ったからなのか、2人ともにっこにこだった。



全然退屈そうじゃないんだけど…



「めっちゃニヤけてるやん、特にアッシュ」

「そりゃあ、このお金を何に使おうかな〜って考えるだけでニヤけますよ」

「あるあるだよな、どんどん使えよ?」

「はい、了解しました」

「そろそろ送って頂けますか?」

「分かった、今日はありがとな、転移」



2人の姿が掻き消えた。



「さて、貯まった貯蓄ポイントを賭けて、ハスラーっていう職業でもって技能を創る訳なんだがさっそく技能を封印する技能を創るぞ」

「分かった、無理はしないでくれ」

「大丈夫だ、少し待ってろ」



目を瞑り集中する…



技能封印…技能封印〜…痛っ、くっ、やはり少しは痛くなるよな、でも全然耐えられる。



「よし、出来たな…」

「もう?技能ってそんな簡単にできるものなのか…やはり神様だな」

「なんとでも言え、俺のステータス見とくか?」

「え…そ、そんな、いいのか?」

「俺はこの世界の人間ほど、恥ずかしさを感じないからな」

「じゃ、ちょっとだけ」

「分かった、ステータス」



名前 レン∶神園蓮(かみぞのれん)

年齢 21歳

身長 175cm

職業 ハスラー Lv5


基礎能力

貯蓄 735900

体力 10000

筋力 100000 貸与[-60000] 

俊敏 100000 貸与[-60000]

精神 53000 貸与[-100000]

魔力 100000 貸与[-60000]

魔体 100000 貸与[-50000]

知能 40200 貸与[-10000]

技術 100000 貸与[-70000]


筋力、俊敏、精神、魔力、魔体、技術はこれ以上能ポイントを振れないため、貯蓄に振られています。


所持金

K4,700,000(4百70万クリ)

S10,000,000,000(100億サリー)

B900,000,000(9億バレル)

D1,000,000,000(10億デビル)

貸与中[−B10,000,000]利息[+21,100,000]


才能

投資 努力 回避 武術 魔法 同化 直感


技能

貸与6 リスクリワード4 潜行7 ドッジング5 全察知5

想像魔法(創造・同化) リスクリターン 収納 転移 激痛軽減 技能封印New

剣術Max 短剣術3 体術8 盾術5 


装備

レン専用装備

指輪(指輪1・2・3合成) バングル ピアス スマートウォッチ


装備効果

魔法収納【闇】 魔力偽装 認識阻害 魔法発動速度アップ 移動ポイント記憶【瞬光専用】


称号

討伐者

[カオスゴブリン]


開拓者ランク SSS+



「よし、ちゃんと技能封印があるな、それじゃあセフィール」

「はっ!」

「おい、どうした膝なんかついて」



こういう反応も久しぶりだな、なんか新鮮だ。



「レン様、これまでの無礼な物言い、大変失礼しました」

「おい、俺の能力はほとんど10万だと言っておいただろ、なんでそうなる」

「いえ、能力だけでなく、その…他のも色々と凄すぎて…」

「やめろ、普通に接してくれ」

「分かったよ、ふふふっ、ただ少しだけからかっただけだ」

「お前…やってんなぁ」



カリンにも精神を貸与してみるか、知能よりそのほうがいいような気がしてきたぞ。



「貸与するぞ」

「技能も貸与できるのか?」

「出来る、覚悟は?」

「頼む、それで、黒塗りの技能を封印するのだな?」

「そうだ、やってみろ、貸与」

「きたっ、では…封印!…う、うぅ…ぐあああぁぁぁ!」



ヤバい!もしかして身長が伸びるのか!?そんなすぐに!?



「回復!セフィール!よく聞け!激痛軽減も貸与する!すぐに使え!貸与」



コクコクッ



痛みで喋る事も出来ないセフィールを抱きしめ、回復を掛け、激痛軽減を貸与する。



「げ、激痛…軽…減!…うぅ、ふぅ~、ふぅ~」



メキメキメキメキ…



本当に伸び始めやがった!今度は違う意味でヤバいぞ!どうする!?



「メイドさん!何か着るものを!このままだと服が破れるぞ!」

「は、はい!ただいま!」



服はまだしも、皮膚まで破れないよね!?そこは頼むぞ異世界パワー!



心配そうに見ていた年配メイドに指示を出し、この速度では間に合わないと察したレンは、収納よりデビル・ディアーのコートを出し、セフィールに掛けて横たわらせた。



ボキッ、ボキボキッ…



「うっ、ぐっ!」



回復、回復、回復…


おお…おおぉ?おお!音がすげぇ気持ち悪ぃ!顔がどんどん大人になっていくよ!すげぇ!


ヤバかった〜、これ、対応したのが俺じゃなかったら死んでいたかもな。


回復、回復…



セフィールに膝枕をさせて、真剣な顔で何度も何度も回復を掛け続ける。



俺の威厳にかけても、死なせるわけにはいかん、絶対に成功させる!



「セフィール様…どうかご無事で」

「大丈夫だ、絶対に死なせはしない」



いつの間にか戻ってきたメイドも、持ってきた大人用の服をぐちゃぐちゃに握りしめて、泣きそうな顔をしている…



くそ、ツェファレンめ、余計な事をしやがって、鼻くそのあとはお前だ、世界よ、覚悟しておけ…



とりあえず後でティアに相談だなと思いながら作業を続けること数十分…



「すぅ〜、すぅ〜」

「こいつ…気持ちよさそうに眠りやがって、こっちの苦労も知らないで、くそっ」

「レン様、本当にありがとう御座います、これでセフィール様は、ようやく報われました」

「いいよ、当たり前が戻ってきただけだ、これからも支えてやれ」

「もちろんです」

「寝室に運ぼう、すぐには目を覚ましそうもないしな、案内してくれるか?」

「こちらで御座います」



セフィールの寝室まで運び、そっとベッドへ寝かせる。



「着替えさせるのは頼んだぞ」

「レン様がされてもいいのですよ?」

「おい、やめてくれ、あんた…そんなキャラだったのかよ、勘弁してくれ」

「ふふふ、かしこまりました、ではリビングでお待ち下さい」

「よろしくな、セフィールよく頑張ったな、おやすみ」



うん、久々にいい事をしたって感じだな、やはりこういうのは気分がいいな!

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