11話 女神降臨!
「ん、ん〜」
あぁ、良く寝た…こんな感触の枕なんて使ってたっけ?
ゆっくり目をひらく、目の前は真っ暗だった。
なんだ?まだ夜か?
……!
いや待て、俺は異世界に転移して、皆に騙され…打ち捨てられたはずだ!
身体を起そうと頭を上げる。
むにゅ
ん?なんだ?
「いやん♡」
「うおぁぁ!?」
横にぐるっと転がり、その凶悪なほどの幸せ空間から抜け出す。
「お前は何者だ!そしてどんな罠に嵌めようとしている!もう俺は騙されんぞ!」
レンはもう自分しか信用しない、そう決めたのだ。
「もうレンったらぁ、せっかちさんねっ、体調悪いでしょ?私の膝でまだ横になってなさい」
そう言われたので。
「ふむ、確かに調子はよくないな、ではもうしばし、その幸せの園へ」
って、そぉーーい!ばい〜ん♪
「いやぁん、レンのエッチ〜♡」
「だ、騙されんからなぁ!そうやってまた人の貯蓄を狙うのだろう!」
「むぅ、そんなことしないもん!」
な、なんだこの可愛い生き物は…
愛嬌のある少し丸みのある顔、お目々ぱっちりで可愛い系だが、可愛い寄りの美人さんだ。
ぶっちゃけエリーなんかとは比べるのもおこがましいほどの可愛さだ、同じ金髪でもこんなに違うのか?
瞳は薄ピンクで…なんかうっすら光ってない?そして、あの胸部のあれは、何人家族なんだ?二世帯住宅か?あとで挨拶に伺おう、さっきピンポンダッシュしちゃったからな、カリンのほうは疎遠になってしまったし。
しばし見つめ合う2人―――
いやいやダメだ!絶対あの神かなんかの差し金にちがいねぇ!
「違うわよ、あんな神モドキと一緒にしないでよね、あと、いつでも挨拶にきてねっ、歓迎します♡」
読心しおった!ふぅ、今は心を鎮めて。
「お前はなんなんだ、説明せよ」
「レンには逆らえないしね〜、いいわよ、何でも質問してちょうだい」
地面にあぐらをかいて、話を聞く姿勢をとる。
まず分かった事だが、こいつは女神…らしい、やっと神様らしい奴の登場か。
女神なのは本当なのだろう、その人間離れした容姿、雰囲気から、嫌でも分かる。
だが、まだ目的がわからんからな、信用ならん。
どうせ、今はまだその質問には答えられない、とかなんとか言い出すに決まってるんだ、はいテンプレテンプレ〜。
名前は無いらしい、慈愛の女神ヘスティア。
と、呼ばれているとのことだ。
神様って国によって呼び名が変わったりする、確かに国が違うんだ、呼び名は変わるかもしれないが、でも普通、国が違っても基本的に人の名前は変わらない、そういう所があやふやな存在である、という証明なのだろう。
名乗ってる訳でもないのに人間側が勝手につけてるからな、最初から名前なんてものは無いのかもなぁ。
「じゃあティアって呼ぶぞ、いいな?」
「うんっ、嬉しい!名前もらっちゃった!」
目の前でフワフワ浮かんで、楽しそうにくるくる回っている。
神だねぇ。
「で、ティアはなんなの?なんで俺に逆らえないの?」
「私は〜、なんだろう?レンのペット?う〜んなんか違うなぁ、配下?これも違う」
顎に人差し指をあて、う〜んう〜んと悩みだすティア。
はい可愛い、何なんだよいったい、俺はどうすればいいんだ…
「あ!」
「お?ちょうどいい役職が見つかったか?」
「うん!奴隷!」
「う〜ん確かにそりゃあ俺に逆らえんわなぁ、ってい〜やいやいや、マジ勘弁して下さいよ〜、絶対罠じゃないっすかぁ〜」
「罠じゃ無いもん」
「奴隷だったら俺の言う事何でも聞かなきゃならんのだぞ?」
「うん、いいよ♪」
「じゃあ死ね」
「わかった♪」
バンッ!!
途端、女神が弾けて光の粒になり、キラキラと消えていった。
ピチュッた…
え、えぇ、どうしよう、ほんとに?ほんとに死んだの?なんで、俺は死ねなんて言ってしまったんだ、もしかしたら力がもらえた可能性もあったのに、最後のチャンスだったかもしれなかったのに、悪魔に魂を売っても構わないと自分でも言ったではないか…
人を信用できなくなったレンは、適当なことを言いやがってと、気付けば思った事をそのまま口に出してしまっていた。
ごめんティア、ほんとは本気で言ってなかったんだよ、どうせそんな事はできまいと思って、咄嗟に言ってしまっただけなんだ…これじゃあ!俺を捨てたあいつらとなにも変わらないじゃないか!
うなだれ、自己嫌悪に陥っていたら。
「大丈夫、レンはそんな人じゃないってわ分かってたから♪」
「ティア!死んだんじゃ?」
「死んだよ?でも私女神だし、死んでも死なないんだよ、ごめんね、ちょっといじわるしちゃった」
「全然大丈夫、俺が悪いんだ、よかったよ〜ティア〜」
レンは思わずティアに抱きついた。
あ、はじめまして、神園蓮と申します。
大丈夫だと分かるとすぐに調子に乗るレン、どさくさに紛れて二世帯住宅へ挨拶に伺った。
ティアはそんなレンを歓迎して、抱きしめ返してくれた。
「よしよし〜♪」
頭ナデナデのオプション付きだ。
「ティア、本当にすまなかった、真面目に聞くから、お前が俺の前に現れた理由を話してくれ」
「分かったよ♪」
向かい合って草原の上に座る。
そう、ここはシンたち5人と一緒に、お寺の階段から転移してきた最初の草原、その場所だった。
「まず、この場所の名前は神の庭園、別名箱庭って言われてる場所だよ」
神の庭園か…俺の名前、神園となんか関わりがありそうだ。
「本当は、レンが地球での寿命を全うしてから、ここを管理する神として、一人でここに転移してくる予定だったんだよ、なのにあの神モドキめ…余計なことを」
「今の説明だけでなんとなく読めたよ」
「さすがレン!可愛いなぁ」
「いや、可愛くはないだろ、どんな感覚だよ」
「可愛いもん!」
「わかったわかった、可愛くてすまんな、生まれつきなんだ、許してくれ」
「許す〜♪」
もう、ティアのほうが可愛くてドキドキが止まらんわ。
「ふふふふふふ」
「ちょ、その笑いやめて、トラウマだから」
「ごめ〜ん、じゃあ続きね」
「よろしく頼む」
レンは箱庭について質問しまくり、できるだけ詳細に説明を聞いていく。