106話 謎の花
レン達4人は時計を渡しにカインド村へやってきていた。
「へぇ、これが偽装中のレンなんだね、なんか作り物みたい」
「本当だな、改めて自分で見ても違和感が半端じゃない」
「でもいい男だよねぇ、初めて見た時は少し嫉妬したもん」
「まぁその後ボコボコにされたけどな」
ちょくちょくその話題を出すよな、もしかしてカリン、根に持ってない?
「別に見ても楽しくないだろ、村長の所に行くぞ、この間も来たばかりだし、さっと挨拶してさっと次にいくぞ」
「うん♪楽しみだよ」
―――
「あっ!お兄さん!」
「ようティル、お手伝いか?」
村長宅に着くと、ティルが玄関先の花に水やりをしていた。
「ううん、この花はね、ティルが育ててるの!」
「そうか、綺麗な花だな、なんていう花なんだ?」
「うんとね〜、ダークパプリオって名前でね、今は白いけど綺麗な紫のお花になるの、もっともっと大きくなるんだって!昨日種を植えたんだ〜」
「へぇ〜…は?昨日?もう咲いてないか?」
「うん!凄いよね!スイムからもらったの!」
「う、うん、そうか…大切に育てるんだぞ」
おいスイム、ティルに何を渡した…そのうち動き出しそうだ。
「その人はだぁれ?」
「ん?あぁ、この人はレイカという、元勇者で今は南の王様だ」
「また王様連れてきた!お兄さんすごいね!さすが神様だ〜!」
「ふふふ、いろいろやらかしてるんだねレンは、こんにちは、私はレイカ、王様とかは気にしないで、ただのレイカだよ、よろしくね♪」
「うん♪よろしくお願いします!レイカお姉さん!」
「まぁ可愛い、すごいねこの子」
「だろ?いろいろと才能の塊なんだよ、知能が上がったおかげか、なんだか喋りが流暢になったな、将来が楽しだ」
「おじいちゃん呼んでくる?」
「頼めるか?」
「は〜い」
タッタッタッ…
『おじーちゃーん!お兄さん来たよー!』
『おいティル、お兄さんってレンの事か?』
『あ、お母さん、そうだよ!おじいちゃんは?』
『今は出かけてるぞ、母ちゃんと一緒にサンドラさんの所だ、わたしが出るよ、まだ数日しか経ってないのにどうしたんだ?』
村長は出かけてるのか、まぁいい、フローラに人数分渡しておけばいいだろ。
「ようレン…なんだなんだ?えらいべっぴんさんを連れてきたじゃねぇか、寂しくて戻ってきたと思ったぞ」
「フローラもべっぴん具合は変わらんだろうが、こいつはレイカという、新しい仲間だ、仲良くしてくれ」
「よろしく〜、レイカっていいます♪すごく綺麗な方ですね!」
「やめろやめろ、わたしにはそういうのは似合わん」
「いや、そんな事ないぞフローラさん、背も高くてあたしも憧れる」
フローラの程よい膨らみのある胸を見つめながらそんな事を言うカリン。
悲しくなるからやめろカリン、お前はまだ伸びしろがある…はずだ、いや…地球で30歳だったからな、すまんカリン、いくらチートの俺でもそれは対応不可能だ。
「カリンまで、はぁなんか用事があるんだろ?とりあえず入れ、昼飯でも食っていけ、今日はティルとわたししかいなくて暇なんだよ」
「おお!もうそんな時間か、結構組合に長くいたんだな」
「じゃあいただこう」
「フローラさんのご飯美味しいから楽しみだな〜」
「セイトはレンと違って素直で可愛いな」
「おい、俺だってフローラのご飯は美味しいといつも感謝の祈りを捧げてるだろうが」
「お前はやり過ぎなんだよ、普通でいいんだ普通で」
「この人の事だったんだね、ご飯が美味しいってレンが言ってたよ」
「はぁ〜、あんまり期待すんなよ?」
―――――
「「「「うまぁ!」」」」
「そりゃそうだろ、ダークネス・オークカオスだぞ?まずいわけないだろ、ただ焼くだけでも美味いんだ、料理人泣かせの食材だな」
「なんで料理人泣かせなんだ?」
「それは…」
「ティル!このお肉は焼いただけが1番好き〜!」
「こういう事だ…」
「は、はは…まぁそんな落ち込むなよ、他の肉以外の料理も十分負けてない美味しさだよ」
「ありがとな」
「本当に美味しい…後でレシピ教えてくれない?」
「お?レイカも料理するのか?」
「うん♪結構得意な方だよ〜」
「そうか、話が合いそうだ」
気をつけろフローラ、こいつはただの料理好きじゃないぞ、多分料理してる所を見ただけで完璧に同じ料理を作るだろうよ、ある意味料理人泣かせだな。
「ふう、食ったぁ、さて…本題なんだが、レイカ」
「はいなっ!はいこれ♪」
「これは?」
「時計だな」
「これが?なんか変わった見た目だな」
「それを腕につけて少し待ってろ」
そう言うとレンは村長宅から出ていってしまった。
「お兄さんどうしたの?」
「ふふふ、ティルちゃんもそれつけて待っててね♪」
しばらく待っていると…
『フローラ〜、聞こえるか〜?』
「は?今、レンの声が…」
「その時計の左側のボタンを押しながら喋ってみて」
「お、おう…れ、レン?なのか?」
『おお、成功だな♪さすがレイカだ』
「すごい…レンは今どこにいるんだ?」
『う〜ん、深層第1区の岩山の中かな』
「遠っ!」
『はははは、うさぎと戯れてるよ』
「いいな〜!ティルもうさぎさんと遊びたい!」
「いや、時計よりも、この短時間でそこまで行ってるレンに驚くぞ、すこし…キモいな」
『おい!聞こえてるぞ!』
「まぁ聖堂を通ればすぐか…」
『いや…聖堂は通ってない…』
「ほら、やっぱりキモいじゃないか」
『ぐうぅ…そういう魔道具を作ってもらったの!試したかったんだよ!』
「レンちゃん、例のピアス?」
『そうだ、よく分かったなセイト、岩山の中だからすこし不安だったけど通り抜けたな、光の概念がねじ曲ったよ』
「異世界だからね〜」
『まぁそういうわけで、結構離れてても通話ができる魔道具だ、これで何かあったらいつでも連絡してくれな』
「結構どころじゃねぇだろ、本当にすごいな、レイカが作ったのか?」
「作ったというか、改造だね♪既存の時計を改造したんだよ〜、通信と通話機能付きなんだ〜」
「通話は分かったが…つうしんとは?」
「まぁそれはこれからいろいろ考えるところなんだよ、今は文字を送れるってだけかな」
「文字?」
「うん、右側のボタンを押しながら、送りたい人を思い浮かべて、う〜んとりあえずレンに一言何かを言ってみて」
「分かった…草食いのレン、とりあえず帰ってこい」
ピロン
「ただいま、おい、草食いはやめろ」
「うわっ、本当に壁をすり抜けて来た!すごいね〜」
「ああ、もう転移でいいだろこれ、凄すぎて頭の中ぐっちゃぐちゃになってきたな…」
「レンの知能でもぐちゃぐちゃなんだね」
「でも実際は早く動いてるだけなんだろ?頭の中はぐちゃぐちゃでも、よく体がぐちゃぐちゃにならないな」
「確かに…光の速さで移動してるのによくピタッと止まれるよな、まぁ光と魔法の混合特性なんだろう、よくわからん、完全に神の領域だな」
「まぁ、その魔道具の核となるものはレンが作ってるんだけどね、」
「あ、そうだった…」
「さすが草神様だな」
「おいフローラ、今日はやけにからかってくるじゃないか」
「ははは♪たまにはいいじゃないか、いつもやられっぱなしだからな、天罰だと思え」
「へぇへぇ、わ分かりましたよ、あと、とりあえず村長とテラー、セイス、リル、サンドラ、あとは…光の夫婦は一つでいいか、あと6個渡しておくから、それぞれ配っておいてくれ」
サンドは…いらんだろw
「ティルもこれもらっていいの!?」
「いいぞ〜、いつでも連絡してきていいからな」
「うん!わかった!ありがと〜♪」
「ふふふ、さてと…今日はもう行くよ」
「お兄さん!また来てね!」
「こんないいものを、本当にいつになったら恩返しができるんだか」
「違うぞフローラ、俺がお前達に恩返しをしてるんだよ、それに村人全員家族なんだろ?あんまりごちゃごちゃ考えるな」
「ははっ、お前らしいな、ありがたく受け取ろう、すまないな」
「おう、何かピンチの時は遠慮するなよ?さっきの技ですぐ来るから」
「ああ、心強いな、期待してるよ、じゃあ気を付けて行ってこい」
「おう、村長達によろしくな」
「じゃあまったね〜」
「お邪魔した」
「後で連絡するからレシピの件、よろしくね♪」
「わかったよ、レイカも何か教えろよ?」
「分かった♪じゃまたね」
最低限の用事を済ませると、さっさと出ていくレン達、珍しくティルが駄々をこねなかった。
なんか、それはそれで寂しいな、子供の成長は早いもんだ、そのうち…『まぁた来たよ、このおっさん暇なん?』とか思われるようになっちゃうんだろうか…
「ふふっ、背中が寂しそうだぞレン、慰めてやろうか?」
「お?カリン、懐かしいフレーズだな、じゃあ慰めてもらおうかな」
「あ、私も慰めてあげる♪」
「レンちゃん、ハーレム野郎だね♪」
「うるせぇ、お前の楽観視がたまに羨ましく感じるよ」
「僕の持ち味だからね〜、これだけは譲れないなぁ」
ははははは♪
仲良く喋りながら4人が次に目指すは烈王治める脳筋の国、東国。
サリーの驚く顔が楽しみだな…あ、フローラにレイカの正体言うの忘れてた、普通にレイカと呼びつけしてたし、あとで怒られるの確定だな、ふふふ…
怒られると分かっていても何故か嬉しそうなレン、そんなからかい合える人間関係の友人達ができた事に、ちょっぴり幸せを感じていたのであった。




