105話 21年ぶりの再開
現在レン達4人は北国、オーソロン城の門の前にいた。
「緊張してきちゃった」
「21年ぶりだもんな」
「うん、覚えててくれるかな…」
「覚えてるよ、今でもディアー討伐に行かせたのを後悔し続けてるからな」
「悪い事しちゃったなぁ」
「お互い洗脳されてたんだ、鼻くそ以外誰も悪くないさ」
「ありがとう、じゃあ行こっか」
「おう」
―――
「お久しぶりですレン様、ようこそオーソロン城へ」
「メイ、久しぶり…だな?」
「はぁ、はぁ」
あれ?1週間も経ってなくね?相変わらず体調が悪そうだ、少し無理させすぎなんじゃないか?レイに一言言っておくか…
「大丈夫か?顔が赤いぞ、無理するなよ?」
「えぇ、大丈夫です、なんのこれしき…」
やっぱり無理してるじゃないか、レイは説教だな。
今だにオタク女子、メイの気持ちに気付かないレン、このあとレイは理不尽な説教を受けることが確定した。
コンッコンッ
「レイ〜、マリ〜、いるかぁ?俺だ〜レンだ〜」
ガタッ!ガタガタッ!
『今日こそは!』
『ふっ、甘いわっ!』
ドンッ!
『ぐぁぁ…』
『ふん、未熟者め』
タタタタ…ガチャ!
「レン兄さ!…ま?誰だ貴様!!なんだお前等は!」
「あれ?やっぱりマリーは気づかないのか」
「何をごちゃごちゃ言っている!兄様の名を無断で使用する怪しい奴め!私が成敗してくれる!」
レイカは魔道具で姿も気配も隠している、マリーの目の前にいるのは、偽装を解いたレン、カリン、セイトだ、皆黒っぽい服装でパッと見は悪役なのでマリーは警戒している。
いやマリーよ、俺の服も見忘れたのか?一回しか見せてないから覚えてられんか。
「マリー!その人がレン兄ちゃん本人だよ!何やってるの!」
「え…そう、なのか?」
「あぁそうだぞ、久しぶりだなマリー、神様に掛けてもらっていた偽装を解いたんだ、ごめんな驚かせて」
頭を撫でながら優しく言う。
相変わらずちっちゃくて可愛いなぁ、どうしても子供扱いしちゃうんだよなぁ、身長がティルと同じくらいだし。
「う、うぅ〜、兄様〜、久しぶりだ!会いたかった〜!」
ガシッ
抱きついてくるマリーを抱き止めて、ナデナデしながら、床に倒れているレイに質問をする。
「なんでレイは俺の事が分かったんだ?」
「匂いだね♪」
「えぇ…」
えぇ…キモいんだが?
「い、いや冗談だよ、真に受けないでよ〜」
「変な冗談はやめてくれ、お前が言うと冗談に聞こえないんだよ」
「ははは♪ごめんね、僕にはよくわからないけど、そういう真実を見る的な能力があるみたいなんだよ、あくまでも物理的なね、実はマリーが気配を消しても見えてるんだよね、油断してると見えないけど…」
「そう、だから私は昔、模擬戦で全然レイに勝てなかったんだよ」
「へぇ、才能や技能には表示されていない、本当の能力ってやつだな、神の偽装をも見破れるなんてすごいな…少し脳みそを解剖させてもらえないか?回復ならするから」
「え…か、回復してくれる、ならいいよ…」
「お前こそ真に受けるなよ、そんな事するわけ無いだろ」
「だよね、ははは♪よいしょっと、もうマリーは〜、少しは手加減してよ〜」
「修行しろ、修行を」
「いつ修行する時間があるのさ!もう!」
「ははははっ、相変わらず楽しくやってるみたいで安心したよ」
「でもね兄様、この前こいつ、レイカの事思い出して泣きそうになって…」
「マリー!やめてよ!泣きそうになんてなってない!」
そうか…良かったなレイカ。
「レイ」
「ん?なになに?いきなり真剣な顔して、真面目な話?」
「マリーも、2人はレイカに会いたいか?」
「当たり前だ!」
「会いたいさ、でも…」
「このアクセ装備と時計をお前たちにやろう」
「「時計?」」
「あぁ、まずこのアクセサリーなんだが、精神アップの効果がある、どのくらいなのかはあとで確認してくれ、そしてこの時計、これは黄泉の国の者と一度だけ話が出来る通信機能付きなんだ、俺も死んだ父さんと喋ったから間違いない」
「!?」
恐る恐る時計を手に取る2人…
「どういうふうに使うの?」
「時計の左側にあるボタンを押して、話したい人物を思い浮かべろ」
「う、うん……よしっ!もしも〜し…」
『……誰?』
時計から小さな声が聞こえてくる…
「!?れ、レイカなの!?」
『うん、私はレイカだけど…この声、もしかしてレイ?』
「うん、うん、久しぶり…レイカ〜、なんで死んじゃったんだよ〜、うぇ〜ん」
「レイカ聞こえるか!」
『マリだね』
「そうだ!お前…私達をおいて先に死ぬとは何事だ!この馬鹿たれ!」
『うん、ごめんね、相変わらずマリは言うことが厳しいなぁ』
「親友だからこそだろ!この…ばか…やろう…う、うぅぅ、うわぁ〜ん、会いたいよぉレイカぁ〜、なんで死んじゃったの〜ばかばかぁ〜」
マリーの後ろにスッとレイカが現れ、マリーを抱きしめる。
「ごめんねマリ…泣かないで…」
「「レイカ!?」」
「えぇ!生き返った!?」
「レイカ!?レイカなんだな!?兄様!これはどうなっている!?」
「騙して悪いな、レイカはこの通り生きていたんだよ、南の王様、氷王レイスがレイカだったって訳だ」
「そうだったのか、レイカ…おかえり!」
「うん、うん、ただいまマリ、ただいまレイ」
「おかえり〜、うぇ〜ん」
少し落ち着くのを待つかと3人は部屋を出て待機。
「仲直り出来て良かったねぇ」
「仲直りって、もともと喧嘩なんかしてないだろ、まぁでも、会わせて良かったな」
「うむ、少しうるっときたぞ、良いものを見た、さらに鼻くそへの怒りが増したが」
「ははっ、そうだな♪早く鼻くそにはこの世界から退場してもらわなければな」
「僕、もっと頑張るよ〜」
「あたしもだ!」
「その意気だ」
―――たっぷり1時間後
ガチャ…
「ごめんね兄ちゃん」
「いいさ、感動の再会は済んだか?」
「うん、今はレイカとマリーで抱き合って寝てるよ」
「そうか、じゃあ俺達は明日また来ることにするか?」
「僕はそれでいいよ〜」
「あたしも賛成だ」
「その2人が兄ちゃんのお友達?」
「そうだ、カリンとセイトだ」
「話は聞いてると思う、レンにはひどい仕打ちをしてしまったが、今は心を入れ替えて修行に励んでいる所だ、あたしはカリン、宜しく頼む」
「なんか僕と同じ匂いがするねぇ、僕はセイトだよ〜、よろしくね〜」
「セイトとレイは背格好も似てるし喋り方も似てる、仲良くできそうだな」
「うん♪よろしくねカリン姉ちゃん、セイト兄ちゃん、姉ちゃんもマリーと背格好は違うけど性格と喋り方が似てるよね〜」
「姉ちゃん…」
「兄ちゃん…いい!いいね!レンちゃん、この子いいよ!」
「興奮しすぎだ、少し抑えろ」
「セイトに姉ちゃんって言われるよりもしっくりくるのはなんでだろうか…」
「あ!またそうやって人をからかう〜、僕が本当の弟なんだからね!」
はははは♪
「じゃあ詳しい自己紹介は後にしよう、また明日来るよ、今はゆっくり3人で話をしておけ、レイカの話を聞いても暴走するなよ?しっかり冷静に話を聞くんだ」
「大丈夫、もう少しだけ話は聞いたから、お兄ちゃんのお嫁さん候補っていうのもね、ふふふふ…マリーの顔が凄い事になってたよ」
「はぁ、もっと話すことがあるだろうに、ほどほどにな」
「あ、あたしも嫁候補だから…な?」
「分かった分かった、ほら行くぞ」
「ま、待ってくれ」
「じゃあねレイちゃん♪また明日〜」
「うん♪セイト兄ちゃん、また明日〜」
―――――次の日
「改めて、あたしはカリンだ、鼻くそに洗脳されてこの世界にやってきた、最初はレンにひどいことをしてしまったが、今は修行と…まぁ罪滅ぼしだな、一生かけて罪を償うつもりでレンに付き従っている」
「おい、変な自己紹介はやめろ、普通に友達でいいだろ、この世界に来たときのあれこれはもう解消したと言っただろうが」
「いや、しかし…」
「レン、女心を分かってあげなよ、一緒にいる理由が欲しいだけなんだから」
「ば、ばか、レイカ!そんな事は…少し、ある、かもしれない」
「そうなのか?突き放したりはしないから気にしなくてもいいのに」
「違うよ〜、周りに知ってほしいんだよ、そういうとこだぞ〜?」
こいつ…ござるござる言ってた奴が偉そうに!そうくるなら…
「すまなかったでござるよレイカ殿」
「!?レ、レン!やめて!」
「兄ちゃん、いきなりござるなんて、どうしたの?」
「え?お前達は知らないのか?レイカは最初…」
「あー!あー!セイト!さぁセイトの自己紹介です!どうぞっ!」
「急にどうしたんだレイカ、そんなに元気な奴だったっけ?」
「マリ〜、もう21年経ってるんだよ?私も色々あったんだよ〜」
ふ〜ん、色々ねぇ、あの感じはオタクだって事を2人には隠してた感じだな…からかいがいがあるぜ、ゲヘヘへ…
安定のクズ野郎だった。
「僕の名前はセイトでござる!にんにん〜!」
「おお、やっぱり忍者なんだね、セイト兄ちゃんの方がござるがしっくりくるね、感動だよ♪」
「うむ、実にカッコイイ衣装だ、私の部隊にも取り入れるか…」
「そしてこいつが僕のペット、ブラックサーペントでござるっ!」
シュルルル
腕から黒い蛇が飛び出して、セイトを守るように巻き付いて待機、そして…
「シャー」
鳴いたよ!どうなってんだあれ!?相変わらずよく分からん奴だ…後で話を聞こう、あと…黒蛇でいいだろうが、なんで忍者がラテン語使うんだよ。
「同じ理由でこの世界に来たよ〜、姉ちゃんと一緒になってレンちゃんにはひどいことしちゃったけど、もうしない!足を折られて返り討ちになったからねぇ」
「あたしも、肩を砕かれて顔面をボコボコにされたな」
「男女平等だからな、何かをしてくれば男だろうと女だろうと関係ない、敵は敵だ」
「兄ちゃんらしいね♪」
「次は私だ、名前はマリ、この世界ではマリーと名乗っているのでそう呼んでくれ、よろしく頼む、3番目のレン兄様のお嫁さん候補だ」
「おい…はぁまぁそれは、今更か…」
「セイト兄様の格好もぐっとくるものがあるが、すまん」
「え!?なんで僕フラれたの!?」
「残念だったな勇者セイント…」
肩にポンッと手を置いて言ってみた。
「やめて?告ってもないし、フラれてないからね?」
冷静に突っ込むセイトか、なかなかに珍しいな。
「最後は僕だね、僕はレイ、この北国の王様やってます、どうやら僕も鼻くそに洗脳されてたみたいで、この世界に来たのも死んでからの転生だと思ってたんだけど、どうやら違うみたいだね、ただ、レン兄ちゃん達とも何かが違うよね、年齢は18のままだし」
「確かにな、俺達は地球とツェファレンの1年の長さの違いから、生きた日数換算で年齢が若返ったけど、お前達は転移させられたときのまま、18歳なんだろ?しかも年を取らない、まぁ俺達も不老なのかもしれんが」
「えぇ!?そうなのレンちゃん?」
「ああそうなんだよ、もし不老だったら相当な苦痛になるぞ、まぁ一人じゃなければ退屈はしないかもしれんが」
「不老…あたしはあまり気乗りがしないな…人生に飽きてしまいそうだ…」
「まぁまだわからないさ、どのタイミングで年をとるのかだな」
「あと4ヶ月くらいだよ、この世界では年を越す時にみんな一斉に年をとるんだよね〜」
「そうなのか、なら4ヶ月後に分かるな」
「楽しみなのか分からなくなってきたね」
「もし不老だったら、死なないように気を付けよう、残された人が不憫だからな」
「ごめんなさい…」
「レイカ…お前は生きていたんだ、こんなに嬉しい事はない、落ち込むな」
「マリー、こんな身勝手な私なのに…ありがとう」
パァン!
「うわぁっ、びっくりしたぁ、どうしたのさレン兄ちゃん、いきなり手を叩いて」
「湿っぽいのは苦手なんでな、とりあえずどうする?レイカはしばらくここにいるか?」
「う〜ん、カインド村だったよね?そこも行ってみたいんだよね」
「行ってこいレイカ、そこに行けば偽装解除前のレン兄様が拝めるぞ」
「え!?じゃあ行く!!」
「おい、理由がおかしいだろ、そんなものいつでも見れるだろうが」
「そんな事言ったら私だっていつでも2人の所に遊びに来れるよ?魔道具で空間繋げちゃうからね」
「は?」
「このお城、一部屋空いてない?」
「空いてるよ〜」
「その部屋私にちょうだい♪そこに扉作って、私のお城と繋げるからね〜、またいっぱい遊ぼうね♪」
「流石はレイカだ、変わってないな」
「うんうん♪物を作り始めると周りが見えなくなるからね〜」
「はぁ、転移扉とか…こんな離れてても作れるのかよ、とんだ化け物だったな、まさか聖堂を作ったのもレイカじゃないだろうな」
「流石にあれは無理、でもあんなものがあるんだもん、私がやることなんて常識の範囲内だよ」
「そう、か?」
いや、範囲内ではないだろ、なんだよレイカに会わせたあと、レクステッド城のショートカットアクセを渡そうと思ってたのに、いらんだろこれ。
「さすがの私も前まではそんな大層なものは作れなかったよ、でも今はこれがあるしね♪」
ジャラ
レイカは収納から袋を出して嬉しそうにしている。
「なるほどな、その魔鉱石はかなり優秀な素材なんだな」
「当たり前だよ、私だってこんなに大きい金剛魔鉱石は見たことなかったよ、前に見たのは20年前、ある商人が持ってきて金貨10万枚で買ったんだよ」
「10億!?」
「そう、しかも小指の先ほどの大きさだったしね、その後お城の中にダンジョン作ったんだよね」
「ダンジョン…」
そりゃすげえや、ダンスを踊りたくなる気持ちも分かる気がするよ、ってかアクセを必要なくさせたのは俺でしたorz
「さて、じゃあカインドへ向かうか」
「あ、その前に部屋に案内してくれない?」
「いいぞ、こっちだ」
執務室近くのあいてる部屋をもらい、お得意の部屋作りをして、さらに扉を3つ作っていた。
「じゃあ行こうか」
「は〜い♪」
「兄ちゃん、いってらっしゃい」
「気を付けて、次はこの部屋から帰ってきそうだな」
「はは…どうなることやら」
レイカの実力に若干引きぎみのレン、苦笑いをしながら3人を引き連れカインドへ向かっていった。




