104話 金持ちへの仲間入り
レクステッド城前で、門番のヴァルフ、執事のザルドに挨拶をして、アクセサリー装備を渡しに行くため城を離れた。
「そう言えばお前達は、アイスゴーレムの素材はどうするんだ?」
「売りた〜い!これで僕もお金に困らなくなるねっ♪」
「ああ、間違いなく大金持ちだろうな、深層第2区の魔物なんて俺も売ったことないからな」
サリーがレベル上げでブラックウルフをいっぱい倒したけど、俺は1体も貰わなかったからな、押し付けられそうになったけど。
「あたしも売りたいな、レンにいつまでも持っていて貰うのもあれだし、武器を作ってもらうのに、流石にタダではラルファに悪いだろう、お金にしてしまえばあたし達の収納ポーチでも入れておけるだろうからな」
「あ、そのポーチは拡張の付与付きだったよね、そんなに容量ないの?なんならグレードアップしようか?」
「え!?できるのレイカちゃん!?」
「できるよ〜、簡単簡単♪すぐだよ、ちょっと貸して?」
チートが加速している、なんなんだこいつは、凄すぎるぞ。
「お願いします!」
「あたしのも頼む」
「俺はカモフラージュで持ってるだけだからいいよ」
「分かった〜、じゃあ2つね〜、むむぅ〜」
預かったポーチを片手に持ち、あと片手には金剛魔鉱石、目を瞑って唸りだした、するとそのうち魔鉱石がサラサラと崩れ、2つのポーチに吸い込まれていき…
「はい終わり!容量はねぇ、う〜ん…小さな町くらいかな♪」
「いや、マジでレイカはなんなの?」
「え?私は私だけど?」
「そうか、そうだな、今度からはチートが過ぎたらレイカ状態と言おう」
「それをレンちゃんが言うの?互い様だと思うけど?」
「セイトの言う通りだ、あたし達から見れば2人ともチートっぷりは変わらんぞ」
「そうだよ〜、小さな町くらいになっちゃうのもこの魔鉱石があるからなんだからね?しかもこれ1個で2つ分のポーチを改造して小さな町ほどなんだよ?普通の触媒、例えば中層の魔物の核とかなら、作る職人の腕がよっぽど良くても大きな屋敷くらいなんだから、金剛魔鉱石がどれだけ貴重なのか分かった?」
「うっ…自覚があるだけに反論できん、確かに貴重だな…これらのアクセもどれだけの性能なのか怖くなってきたよ、だが!お前らだって大概だということを忘れるなよ?」
分かってはいるんだ、ぶっちゃけ俺が1番チートだって事は、でも仲間が欲しいじゃん?寂しいじゃん?
「そういえば武器の素材はどうするの?」
「それは、デビル・コールドリザードの頭と魔鉱石を渡そうかと思ってるよ」
「へぇ〜、魔鉱石を加工出来る人なんているんだね、優秀だよその人」
「そうなのか?」
「うん、私も魔道具は作れるけど武器は苦手かな〜、普通に考えれば作れるはずなんだけど、そのあたりは性格が出るみたいで、武器は向いてないみたいなんだよね」
「なるほどなぁ、ラルファは以外に凄い奴だったんだな、俺の剣もそいつに打ってもらったんだよ、レイカも護身用に武器打ってもらったらどうだ?」
「そうだね♪どんなのにするか考えとくよ、あ、そうそう、金剛は武器に向いてないから、ただの魔鉱石のほうがいいよ」
「そうなのか?」
「うん、金剛は触媒向きなんだ、ただの魔鉱石はそのまま加工して使うのに向いてるの」
「なるほどな〜、じゃあ東に行く前には魔鉱石作っておこう」
アイスゴーレムの核も渡せば、水魔法を使えるカリンには相性のいい武器が作れるかもしれんな、他にも魔物を狩っていったほうがいいか?いや、金剛魔鉱石があればレイカが武器に何かしらの能力を付与してくれるから大丈夫か。
「じゃあとりあえず最初に組合に寄ってみるか」
「さんせ〜い♪」
「うむ、その後時計を買いに行けばいいだろう」
「私は組合に行くの久々だなぁ」
「自分の街だろ、せめて顔くらいは出せよ、久々って、どうせ20年ぶりとかなんだろ?」
「は、ははは〜…今度からはそうするよ」
―――――
「ようこそ、レン、収穫はどうだ?」
「おい、顔を見て第一声がそれかよ、相変わらずだな組合長殿さんは」
「ははは、期待して待ってたからな、ところで1人増えてるな…ん?えぇ!?氷王様ぁ!?」
「へぇ、私を知ってるんだね」
「若い頃一度見ただけですが、その美しい容姿は忘れませんよ、21年ぶりに見ても変わらずですね」
「私はちょっと特殊だからね♪」
「おい組合長、この前はうろ覚えって言ってただろ」
「ああ21年も経つんだ、うろ覚えだったのは間違いないが…思い出したよ、この組合には最初に1回来ていただけましたよね?」
「うん、1回だけね、よく覚えてるね」
「あの当時はSランクの開拓者として来てましたよね?俺もまだ、ただの開拓者でしたし、若かった、皆注目してたんですよ、しかし本当に見た目が変わってない」
俺もなんで年を取らないのか気になるな、もしかして俺たちも不老なのか?まぁそのうち分かるだろう。
「ところで…おいレン、なんでお前が氷王様を連れてるんだ?」
「ああ、こいつは誰かが引っ張り出さないと、ずっと引きこもってるからな、たまたまそれが俺だっただけだよ」
「たまたまなんてそんな事ないよ、レンだったからだよ」
「へぇ〜、やるなぁお前、でも氷王様、こいつには気を付けてくださいよ」
「おい、適当に危険人物扱いするのはやめろ、まだ知り合って数回しか会ってないだろ、それにあんたの技能で俺の人格は分かってんだろうが」
「ははは、そうだな、こういう冗談を言えるのはいい奴な証拠だよ、本当の悪者には言えんからな」
「勘弁してくれ、それで本題なんだが…」
「レンちゃん、それは僕から言うよ〜」
「おう、よろしく、まぁお前ら姉弟の手柄だからな」
「お?勇者様か?それは期待できるな」
「元だがな、あたしら姉弟で深層第2区の魔物を狩ってきた」
「うんうん!種類は1種類しかないけどね」
「ほぉ、その魔物とは?」
「氷の巨人、アイスゴーレムだよ♪」
「なるほど…やはりゴーレムはいたのか」
「知ってるのか?」
「話には聞いたことあるが、目撃情報が曖昧なんだよ、なにせ大地の亀裂を超えていかなきゃならんからな、過去に飛べる奴が何人か挑んだが、生きて帰ってきた奴は数人しかいないんだよ、しかも大半が姿も見ていない」
「あ〜…確かに、あれは普通の奴にはキツイよな、撃墜されて終わりだろ」
「どういう攻撃なんだ?昔優秀なAランク開拓者が、片腕を無くして帰ってきたことがあってな、巨人だったと言っていたんだ、そいつは引退しちまったが…」
「ゴーレムが氷の塊をぶん投げてくるだけだよ、あれは相当速かったな、まぁ俺は余裕だったが」
「今ならあたしたちも大丈夫だな、あんなただ速いだけの氷塊なんぞ恐るるに足らん」
「最初は恐かったけどね〜、あれだけ戦えば慣れるよね〜」
「私も初めて見たけど、近寄ってしまえばどうって事なかったよね」
「は?」
ガルディが目を見開き、レンを見つめる。
「おい、なんで俺を見るんだよ」
「お前!氷王様を深層に連れて行ったのか!?」
「ああ、まずかったか?こいつが行きたいって言うから連れて行っただけだが?」
「えぇ…氷王様に何かあったらどうするんだよ…」
「俺が一緒で何もあるわけないだろ」
「どんだけ自信満々なんだ」
「まぁそうだよな、組合長は俺の実力は実際に見たことないんだ、心配掛けて悪かった、でも安心しろ、自分の命に変えても守ると神に誓うよ」
「うん、私も大丈夫だと思う、組合長は心配しすぎだよ」
「う…はぁ、分かりました、でもご自愛下さい、この国は氷王様の力で発展してきました、急にいなくなられたらパニックになりますので」
「わかったよ、う〜ん…少し私に依存しすぎかなぁ、普通は国民の力で発展させていくものじゃない?」
「少し魔道具作りを自重したらどうだ?」
「うん、無理!」
「分かってた、まぁいいんじゃないか?ここは地球じゃないんだし、こうしなきゃならないなんて決まりは無いだろ」
「うん♪自重はしないけど、これからは作る物の内容を考え直すよ」
「ねぇ、そろそろいい?」
「おおそうだった、アイスゴーレムだったな、じゃあ俺が今預かるよ、この部屋に出せるか?」
「結構大きいよ?」
「大丈夫だ」
ガルディは、自分の腰に掛けている黒い革袋をポンポンと叩きながら言った。
「こいつに入れるから、1体ずつ出してくれ」
「分かった〜」
ズシン…
セイトはウエストポーチから大きめのアイスゴーレムを取り出す。
ポーチを改良後、2人にはゴーレムを35体ずつ渡してある、全部で74体あったのだが、端数の4体はお礼だと言ってレンにあげたのだ。
「でかっ!…これがゴーレムか」
大きいほうは5mくらいあるからな。
「これがあと何体あるんだ?」
「バラバラなやつもあるけど、え〜っと…74体だな、4体はとっておきたいから売るのは70体かな?1人35体ずつだな」
「70…」
「入らないか?」
「いや入るには入るが、査定に時間が掛かるな、あと組合にある金じゃ足りんかもしれん…」
「全部じゃなくてもいいよ〜、買い取り出来るだけで」
「分かった、とりあえず全部預かろう」
―――
「よし、これで全部だな、確かに70体預かった、ちょっと待っててくれ」
「は〜い♪」
ガルディは預かった魔物を事務の者に渡すため、部屋を出ていき…
『ええ!?なんですかこれは!』
『深層第2区の魔物だ』
『凄い!この硬さ…見た目は氷ですが溶けてない!なんですかこの素材!』
『魔力はどうだ?』
『ちょっと待ってて下さい!…おっ?小さいほうが内包魔力が凄いですね』
『おい、騒がしいぞ!あ、組合長…ん?なんですかこれは!?』
『どうしたんですか?えぇ!?なにこれ、魔物なの!?』
「なんか大騒ぎになってきたな」
「ああ、これは期待ができるな」
「大金持ち確定だねぇ」
「みんなすごいねっ♪」
「いや、お前が1番金持ちだろ」
「え?なんで?」
「レイカは王様だろうが、忘れるなよ」
「そうだった、てへ♪」
拳を頭にコツッと当てて、テヘペロするレイカ。
可愛いなおい…
ガチャ…
「待たせてすまない、少し騒ぎになってしまってな」
「聞こえてたよ」
「ああ、そうだった、この部屋は一定の大きさの音を拾うようになってるんだよ、騒ぎが起きたら分かるようになってるんだ」
「便利だな、それで?」
「うむ、まずはこれを2人に」
ゴトッ、ゴトッ…
どこかで見たことがあるような木箱が2個出てきた。
「まさか、お金か?」
「そうだ、いくらになるかはまだ分からん、だが前金として2億クリずつ渡しておく、今組合で払えるギリギリの金額だ、他の所とは違ってあまり儲けていないからな…」
「に、2億ずつ!?いや十分でしょ!ってことは…たったの35体でその金額!?しかも前金…」
「…」
流石にそこまでの金額になると想定していかなかったセイトは叫び、カリンは言葉を失った、レンは1層の魔物の2〜3倍くらいかと1人冷静だった。。
「良かったなカリン、セイト、これでお前らも今日から常識との戦いになるぞ」
「や、やめてよレンちゃん、少し預かっててくれない?」
「駄目だ、自分で管理しろ」
「姉ちゃ〜ん」
「ちょ、ちょっと待て、あたしもいっぱいいっぱいなんだ、これが前金…だと?」
「ああ、流石にこれ以上払ってしまうと組合の運営資金が底をついてしまうから、ひと月…いや、ふた月は待っていて欲しい」
「いや、何十年でも待てる金額だろう、はぁ、レンの金銭感覚が狂うのもよく分かるな」
「おい、俺の金銭感覚は狂ってなんていない、分かっててあえて狂ってるフリをしてるんだよ」
「ふん、自覚がないというのは恐ろしいものだな」
「…」
くそっ、自覚はあるから反論できん…
「まぁいい、金がある事には変わりないんだし、使ってこそ経済が回るんだからどんどん使えばいいんだよ」
「まぁ一理あるな、金なんて使わなかったらただの鉱石だからな」
「そ、そうだよね、よ〜しっ、いっぱい使うぞ〜!」
「じゃあ組合長、またふた月後に残りの金額と余った魔物を引き取りにくるよ」
「ああ分かった、なんだか借金を背負った気分だな」
「そんなに気負わないでくれ、金ができなかったら数年後でも大丈夫だよ」
「すまないな」
「街と人の為に有効活用してくれ、ゆっくりでいいぞ」
「ありがとう、助かる」
「じゃあまたな」
「バイバ〜イ」
「宜しく頼む」
「これからはたまに顔出すから宜しくね♪」
「はい、お待ちしております」
その後は雑貨屋で時計をあるだけ購入し、グレイス、タイラー、シロに挨拶をしてまずは北国、レイとマリーの所へ向かう事になった。
因みに、シロにだけ通信、通話機能付き時計を渡してある、タイラーがすごい目で見ていたが…嫉妬でシロをいじめたら殺すと言っておいた。




