101話 レイカの実力
深層第2区の上空で、ござる女子のレイカの為、急遽魔法教室が開かれた。
「…と言うわけで、魔法は想像力でいくらでも強化できるんだよ、魔法にはクラス表示が無いのはそういう事だと、俺は思ってる」
「なるほど〜、目からウロコとはこの事でござるな、今後更に物作りが捗りそうでござる〜♪」
「今は強くなる事を考えてくれ」
「もちろんでござる!」
「どうする?少し練習するか?」
「いや、もう本番で大丈夫でござる」
「凄い自信だな、伊達に23年もこの世界にいたわけじゃないって事か、よし、それじゃあリスクリワード」
ヒュー…
「けっこう近くにいたな」
ヒュッ、サッ、ヒュッ、サッ…
氷塊を避けながらゴーレムに近付いていく。
「このくらいで大丈夫でござる」
「分かった、では頼んだ」
「では…ふんぬっ!」
ピカッ、ドカドカッ!
ガラガラガラ…
えぇ…
「レイカ…何をした?」
「ん?この世界でも随一の硬さを誇る魔鉱石で大きなトゲを作って、光に変えて飛ばしたでござる」
「天才かよ…」
天才多くね?マジもんの天才は想像力も天才だな、魔鉱石って…俺の剣の材料になったやつじゃないか。
「なぁ、その魔鉱石、少し見せてくれないか?特徴も教えてくれ」
「いいでござるよ、はい」
レイカの手の平の上に、ピンポン玉ほどの黒いツルツルした石が現れた、手渡されたレンはじっくり眺める。
「特徴は?」
「魔核に近い存在でござる、魔力が凝縮して石化した、とでも言うでござろうか…」
「なるほどな…こうか?」
ポロッ
「んな!?」
「なんかできたけど、透明だぞ?」
「これは金剛魔鉱石でござる!なんてものを!」
「もしかして魔力量か?」
「そうでござる!魔鉱石とは魔脈の流れから外れた魔力が少しづつ溜まって凝縮!数十年掛けて石化すると言われているのでござ〜る!金剛魔鉱石は更に大きな魔鉱石が数百年掛けて凝縮して出来上がるとされているでござるよ〜!それ欲しいでござる〜、ちょうだい?」
「お、おお…またもグイグイと、分かったから、これはプレゼントするから、少し落ち着いてくれ、さすがの俺も動揺して魔法の制御が甘くなりそうだ」
「やった〜♪ごっざる〜、ごっざる〜♪」
「いや、だから落ち着けレイカ…」
金剛魔鉱石を両手で空に向かって掲げ、変なダンスを踊り出すレイカ。
「レン、女子に宝石のプレゼントなんて、なかなかやるじゃないか」
「カリンにもやろうか?」
「あたしがもらって何に使うんだよ」
「アクセサリーにでもすればいいじゃないか」
「ば、バカ、そういうのは好きな女子にやってやれ!」
「俺は今のカリンだったらわりかし好きなんだがなぁ、もう騙したりはしないだろ?」
「もう!このたらし野郎!」
「レンちゃん!僕も欲しい!」
「いいぞ、かなり魔力使ったし、まだ狩りは続けるから、帰ってからな、レイカに何かしらの魔道具にしてもらったほうがいいんじゃないか?」
「そうだね〜、レイカちゃ、ん…」
『ご、ご、ご〜ざるぅ、ご、ごっざる〜♪っあそ〜れっ!ご、ご…』
「今はそっとしておいてやれ、金剛ダンスが終わるのを待とう」
「レイカ…ふふふっ、面白いやつだな」
「こういう所がオープンなのかもな」
レンは魔力を回復させるのに丁度いいと、ダンスを眺めながらしばらく待つ。
―――
「うぅ…恥ずかしいでござる…死にたい…」
レイカは手で顔を覆い、箱の隅で小さくなっている。
「大丈夫だレイカ、素晴らしい金剛ダンスだったぞ、鉱石の神も降臨するか迷うレベルだっただろう」
「ぶっ…鉱石の神って、レン、笑わせるな」
「僕も一緒に踊ったから、平気だよ〜♪元気だして〜」
「嬉しすぎて周りが見えなくなっていたでござる、ごめんなさい」
「大丈夫だ、そういえばレベルは上がったのか?」
「1だけ上がったでござるよ」
「高レベルなだけあってなかなか上がらないか、潜在能力からだな、今日は2人のルベル上げを見学してろ、あと帰ったら金剛魔鉱石をあと2つ作るから、2人にも役に立つアクセか何か作ってくれないか?報酬は今後好きなだけ魔鉱石を作ってやる」
「それは!…プ、プロポーズ!?お前の味噌汁を毎朝飲ませてくれ的な!?」
「おい、俺が魔鉱石を作るって言ってるんだから、それだと俺が毎朝味噌汁を作ることになるだろ、意味分からん解釈をするな、まぁお前は可愛いし、料理も上手い、作ってくれるなら俺としてもやぶさかではないが、そういうのはこの世界での目的を果たしてからだ」
「分かったでござる!カリン殿、セイト殿、帰ったら付与する能力も含めて、どんなアクセサリーにするか話し合いでござるよ!」
「うむ!分かった!」
「は〜い!」
「さて、魔力も回復してきたし、次の獲物を探すか」
「「「了解!」」」
金剛魔鉱石に込めた魔力は25000だったな、そんなに消費したのに、ものの1時間程度で回復するとは、しかも岩板を作って宙に浮いたまま…魔体60000はやはりチートだったか…ってかダンスなげぇよ…
―――――
ザクッザクザクッ
「グゴゴ…」
ドサッ
「やったぁ!近接で倒した〜!」
「これで2人とも、近接でもゴーレムを倒せるようになったな」
レベルが上がり強くなった2人、ちゃんと装備を整えれば問題なく倒せるようになった。
「レンのおかげだ、しかしスパルタだった…あたしは元より気配察知を持っていたし剣技もクラスアップした、レンからドッジングを借りるだけで良かったが、セイトはよく頑張ったな」
カリンには黒王を貸して、俊敏と技術、あと初の技能貸与、ドッジングを貸与して、ゴーレムを何体も倒させた、最後の方は貸与を全て返還、自力で難なく倒せるようになっていた、セイトにはまず普通の魔鉱石で作った盾を持たせ、筋力を15000貸与、全察知とドッジングを貸与して避ける感覚を体に覚え込ませた、気配察知が生えたらしく、全察知とドッジングを返還、気配察知で氷塊を弾きながら尚も避ける練習をしていたら、身躱しの術という技能が生えたらしい、それから少し練習して筋力も返還、盾も無しに避けられるようになった、最後の仕上げに黒王を貸して、これでもかと言うほどゴーレムと戦わせた。
本当は短剣があれば良かったんだが…すまんなセイト。
「やったよレンちゃん!」
「2人とも凄いでござる!」
「苦戦したけどね〜、疲れたぁ」
「当たり前だ、ここが深層第2区だって忘れてないか?」
「「あ…」」
「忘れてたのかよ、とにかく相当強くなったよ、Sランクは確定だろ」
「あたしがSランク…」
「早く組合に行きたいねぇ」
「まだ18時だ、それにまだまだゴーレムもいる、狩りを続けるぞ、他の魔物もいるが、それは後日だ」
「ひょえ〜、レン殿は本当にスパルタでござるな〜」
因みに2人が戦っている間は、レンとレイカで軽く模擬戦をやっていた、もちろんレイカに能力を貸与してだ。
「明日も模擬戦だからな?レベル上げは3区でもいいかもな」
「3区…最深層も夢じゃないでござるな」
「そうだな、だが今は最深層は攻略しない事に決めている」
「鼻くそに手を貸すようなものでござるからな」
「そういう事だ、さて、狩りの続きだ」
―――――
本日の鍛錬を終え、レクステッド城に戻って来た4人。
「もう駄目、動けない〜」
「あたしもさすがに心が疲れた…」
「拙者も早くレベル上げたいでござるな」
「ははっ、さすがに模擬戦だけじゃ物足りないよな」
「そうでござるな、2人が強くなっていくから、焦りもあるのでござろう、でも今は潜在能力を上げる時、分かっているでござる」
「ご飯はどうする?またオーク串にするか?」
「いや、拙者はまだ疲れてないでござるからな、作るでござる」
「頼む、ありがとな、レイカ」
「う、うん♪いいのでござる~、返しきれない恩が貯まる一方でござるからな」
「気にしなくていいよ、お互い様だ」
「レン殿らしいでござるな、では作ってくるでござる〜」
―――
…殿、レ…の…レン殿〜!
「んあ?朝?」
「何を言っているでござる、ご飯出来たでござるよ」
「あ、え?あぁ、寝てたのか、すまんな、こたつが気持ちよくて」
「2人も起きないでござるよ〜」
「分かった、起こそう…カリン!セイト!」
ビリビリッ…
「うわぁぁあぁ!」
「な、なんだ!?いったい何が…?」
「おはよう、ご飯だぞ」
「今日は、アイシーボアの生姜焼きでござるよ〜♪」
「なんと、生姜焼きだと!?」
「じゅるり…」
「じゃあいただこうか」
「「「「いただきます!」」」」
…
カチャカチャ…
皆、無言で食い進める。
「美味いな…懐かしい味だ」
「お腹いっぱいだよ〜、レイカちゃんありがとう♪」
「フローラの料理も美味しいが、こっちのほうがやはり口に合う」
「レン殿…そ、その…フローラとは?」
「はは、レイカ、そんなに心配するな、カインド村の村長の娘、人妻だ」
カリンがレイカの心情を察知して説明してあげた。
「そうだ、鬼の様な女神でな、怒らせると怖いのなんの」
「鬼?女神?」
「確かに、初めてあたし達がカインドへ行った時は、初っ端けちょんけちょんに言われていたな、お前は草でも食ってろってな、ふふふ…」
「それは、怖いでござるな」
「この世界の女の人って、姉ちゃんみたいなの多いよね」
「弟よ、それはお淑やかな人が多いと言う意味だよな?そうなんだよな?」
「姉ちゃん殺気!食卓で出す気配じゃないよ〜、何処がお淑やかなんだよ〜」
「「ははははっ」」
楽しく食事をして、皆疲れていたので特に長話もせず、皆それぞれの部屋にいき、眠りについた。