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頑張る私にご褒美を!(王太子妃編・レンリア)

今日11月18日は、作者が小説を書き始めてちょうど一年半になりました。

相変わらずこのシリーズを書いておりますが、レンとリアの話が尽きず、まだまだ書きたいものが!!となっております。

これからも読んで頂けると嬉しいです。


そして今日は作者な愛する『夢とイマジネーションの王国』の王様の誕生日でもあります。

記念すべき日が重なって嬉しさのあまり書いてしまいました。

本編ではちびっこなので、こちらでは大きくなった二人のイチャイチャを書きたかったはずが、あれ?どうした?!

となってしまいました。

でも相変わらず仲良しな二人を書けて楽しかったです。


結婚式後すぐの頃のお話しです。



ルノア王国王太子であるファーレン・ルノア殿下とカサヴァーノ公爵家長女であるアルメリア・カサヴァーノ嬢との結婚式が盛大に行われてから、もう少しで2週間が経とうとしていた。



王太子妃となった私は、日々何かと忙しく過ごしている。


特に結婚式後すぐは、式にご参加頂いた近隣国の王族や大使の皆様へのお礼を兼ねた顔合わせという名の外交。

次は国内からのお祝いに来てくださっている領主の皆様との謁見。

ご婦人方とのお茶会に晩餐会。

先に招待客のリストを見て覚えた内容と、実際に会って顔と名前、素性や爵位だけでなく好みや趣味など新しい内容も一緒に覚えなければいけない。

まさか今生で前世で培った受付嬢としてのキャリアを活かせるとは思ってもいなかったけど、流石に覚える人数が多すぎて頭がパンクしそうだった。


それなのにレンは本当に凄い。

各国の王族と近しい従者、自国の全ての爵位ある方々とそのご家族の細かいことまで完璧に覚えているのだ。

さすが完璧無敵の王太子と名高いだけある。

私の旦那様の並外れた能力に舌を巻いてしまうが、


「リアはゼロから覚えてるんだから仕方がないよ。あの人数を把握するなんてほんとに大変なことなんだから。俺は小さい頃からの積み重ねで、新しい人たちだけ覚えればいいんだから、覚えなきゃいけない量が違うよ」


と言って、頑張りすぎなくていいよと頭を撫でてくれる。


優しい・・・けど、私にも意地がある。

『うん・・・』と言ってる私が納得していないことは、多分レンにも分かっているのだろう。

苦笑いしながら抱きしめて労るように背中をポンポンと叩いてくれる。

大好きな旦那様の胸に抱きついてギュッと頬を寄せるだけでまた頑張る元気をもらえる。

私って単純だなぁ、と思いながら結婚前から王城で暮らしていたので、城内の方々は知っているので覚える必要がないことに感謝した。



そんな私たちだったが、あの日レンに抱きしめてもらってからもう4日もたっている。

その間、私たちは休みもなく働いていたのだ。

このところレンは忙しく私が眠る前に帰ってくることはなく、先に起きて朝食もそこそこに出掛けてしまう。

もちろん『いってらっしゃい』のキスはするけど、結婚してから、私たち触れ合い極端に減ってない?!

新婚だよね!(だってまだ3週間たってないし!)

国の行事や外交などを優先しているから、まだ新婚旅行(ここにもそんな文化あるのかしら?)だって行きたい!

大好きな旦那様と一緒にいたい!!イチャイチャしたい!!って思ってもいいよね。


レンの隣で自分にできることを精一杯やる気持ちだけは、誰にも負けないと思ってるし、この場所を誰かに譲る気もない。

だけど、いつもそばにいたレンが足りない。

知らず知らずため息が口から出てしまいそうになるのをなんとか飲み込み、代わりに苦笑を漏らす。


寂しいなんて・・・


そんなワガママ、絶対に言えるわけない。

レンは寝る間もないほど政務をこなしている。

私に構う時間があるなら、少しでも休んで欲しい、眠って欲しい。



「はぁ・・・」


あっ!ついにため息が出ちゃった。

反省、反省・・・

そう思うけど、心にぽっかり空いたような寂しさは埋まらず、涙が出できそうになる。

ダメ、ダメこんなんじゃ!と、ソファに飛び込み並べられたたくさんのクッションの一つを抱きしめ、止めることができずに、とうとう溢れ出してしまった涙を誤魔化した。

涙は全部クッションに吸い取ってもらおう・・・

そう思ったけど、一度溢れ出した涙はしばらく止まりそうになかった。


今、この部屋には誰も居ない。


今日のやるべきことを全て終わらせた。

広い部屋で一人で寂しくご飯も食べた。

お風呂にも入って後は寝るだけとなったので、ミーナにも自室に戻ってもらった。


「う、う・・・」


抑えようと頑張っても嗚咽が漏れてしまう。

だめ、だめ、だめ。

そう思うと余計に涙が止まらなくなってしまう。


涙が止まらずどうしたらいいか自分自身が困っていると、バン!!と、部屋の扉が勢いよく開く音が聞こえ、驚いて涙でぐちゃぐちゃになっている顔を上げてしまった。

そこにはいるはずのない、でもこの扉をノックもせずに開けることができるただ一人の人が、額に汗をかき肩で息をし、髪も乱れて立っていた。

その人は、私の顔を見て驚いたような、焦ったような、悲しそうな表情を浮かべながら、私のところに駆けてくるとギュッと力一杯抱きしめてくれた。


「・・・レ ン ?!」


「リア!!ごめん、ごめんね」


ワガママな私の願望が見せた幻かと思っていると、抱きしめるレンの腕の力強さと温かさを感じ、急に実態を帯びレンを感じられるようになって来た。

するとこれでも我慢していた涙がポロポロ溢れて止まらなくなってしまう。

力強く抱きしめてくれるレンに縋り付くように抱きつき、私は謝ることしかできなかった。


「ごめんなさい、ごめんなさい。ワガママ言ってごめんなさい」


「リアは何も悪くないよ。ワガママも言ってないよ。我慢させてばかりでごめんね」


とうとう声を上げて泣き出してしまった私を、レンは私の名前を呼びながら、泣き止むまで抱きしめてくれていたのだった。





「リアの様子がおかしい?!」


「えっ、殿下気づいてなかったの?!」


ジンが呆れたように俺を見ているが、俺にはその瞳の意味が分からなかった。


今朝も自分も疲れているだろうに、笑顔で見送ってくれた。

確かに表情はあまりよくなかったが、連日の王太子妃として政務で疲れが出ているのかもしれない。

後少しでこの激務も落ち着きそうだが、リアの内容を検討してもらおうか。


俺が思案していると、ジンが呆れたようにため息をついていた。


「ほんとに王太子としては完璧無敵で欠点なんてないように見えるのに、こと恋愛に関してはまだまだひよっこの溺愛執着の激しいヘタレなんだよな」


『こんなに見た目いいのに』なんて、残念そうに言ってるが、俺には何を言っているのかさっぱり分からなかった。


「で、ジンは何が言いたいんだ」


からかったような言い方と雰囲気が一瞬で消え、ジンは真面目な表情でそして強い口調で話し出す。


「辛いのも寂しいのも、殿下だけじゃないんだよ!守りたいもん、見誤ってんじゃねえよ!大切なもん泣かしてどうすんだよ」


『泣かす!?!』って、『大切な者!!』


俺にとって大切な人はアルメリアただ一人だ、他にいない。

ふっと結婚してからの自分達の忙しさが思い出された。


なんでも頑張り屋で無理しなくてもいいと言っても、一切妥協は許さないまっすぐな性格のリア。

招待客だけで何百人といて、自国の領主も100人では収まらない。

それだけの人たちのリストとずっと睨めっこ。

眉間に皺ができてしまいそうで、皺を伸ばしてあげることもあった。

その頃はまだ結婚前だから一緒にいる時間が持てていた。


い ま は ?!


リアと楽しく会話をして、大好きな柔らかな体を抱きしめてキスをしたのはいったいいつだっただろう。

どんなに忙しくても、夜は必ずリアの眠るベットに横になることだけは譲らずにしてきた。

大好きな金の瞳が見られないことが残念でたまらなかったけど、起こしてしまうわけにいかないから我慢した。

抱きしめ返してくれない体を、そっと腕の中に閉じ込め束の間の睡眠をとる。

そんな生活を、俺たちは3週間近く繰り返してきたのか!?


ブルっと身震いする。

寂しがりやで泣き虫なリアをずっと一人にしてしまった。

きっと悲しんでいる、でもそれを言わずに我慢しているんだろう。

早く帰ってリアと話をしなくては!


俺は1分でも1秒でも早く、リアのところに帰らなくてはいけない。

先送りにできない案件に取り掛かったのだった。




そして、レンの部屋への乱入へと繋がるのだった。




大好きなレンの匂いと私の名前を呼ぶ大好きなレンの声に、私は少しずつ落ち着きを取り戻したのだった。


「ごめんね。泣き出してしまって」


優しく頭を撫でてくれる手の感触が心地いい。

レンはそっと抱きしめる腕の力を緩めると、涙でぐちゃぐちゃになっているであろう私の顔を覗き込み、そして幸せそうに笑ってくれた。


「やっと、やっとリアを思いっきり抱きしめられる」


嬉しそうに私の涙を指で掬うと、目尻に溜まっていた涙を唇で受け止めてくれた。


「こんなに泣くまで我慢させてしまってごめんね。自分だけが寂しいと思ってた。リアも同じくらい寂しかったんだって気づいてあげられなかった。俺、夫失格だね」


シュンと見るからに肩を落としているレンに私は首を振る。


「ううん。レンのせいじゃないよ。レンは忙しいんだから、私はワガママを言っちゃいけないのよ。ちゃんとレンは私のとこに帰ってきてくれるんだから、我慢しないと・・・」


レンの唇がそれ以上いうことを許さないというかのようにキスをされ、最後まで言うことができなかった。


「我慢なんてしないで。させたらすぐに教えて。俺、仕事し出しちゃうと周りが見えなくなることがあるから。普段はジュロームが止めてくれるんだけど、あいつ今メアリアン嬢との婚約式で忙しくて、まともに会えていないんだ。ほんとにジュローム様様だわ」


苦笑いをするレンは、涙がやっと止まった私を愛おしそうに見つめ、大事そうに抱きしめてくれた。


「我慢させるために結婚したんじゃないよ。二人で幸せになるために結婚したんだよ。だから覚えていて。俺の幸せはアルメリアと共にいることだって。たまには立場を忘れて知らない土地ところに行ってのんにりしたいなぁ。後少しで落ち着くから、それからのんびり新婚旅行に行こうね!」


これからもきっと仕事に追われて寂しくて泣いてしまうこともあるかもしれないけど、我慢した先に大好きな旦那様がとびっきりの愛を呟き、抱きしめてくれるなら、きっと私は頑張れる。


頑張った私には、世界で一番素敵なご褒美をくれる旦那様がいるのだから。



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