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オルクスの瞳  作者: ティネスティ
序章
1/8

【第0話】過去

嗚呼、まただ。


私は、また失うのか。


 蒼い燐光は、かつての光景を鮮明に思い出させる。世界が深く、暗く沈んでいく。辺りに舞った火の粉が、ただその空間だけは今だ終結の時ではないと言う。此処まで追い詰められてなお、彼女は諦めない。それは過去を繰り返さないという決意の表れか。


 目の前で彼女の親友が、灼熱の焔に巻かれた。常人であれば、すでに絶望に蝕まれているであろう。記憶の奥底に留めていた狂気は、今彼女の制御を脱しつつあった。いや、ずっと以前から抑えきれなくなっていたのだろう。


 二の舞であった。最愛を失って、狂気に囚われた時から、彼女の運命は決まっていたのだろう。過去の決意はもはや塵芥の如くなり果てた。しかし彼女は気づかない。もう何もかもが遅すぎた。


 彼女は決して剣を下ろすことはなかった。それは世界に抗う、正しく大逆を犯さんとする狂戦士の様であった。


 自分の命がある限り、戦わなければならない。過去への戒め、それは彼女が課した制約や呪縛の類、決別である。


 彼女の力が、命の全てが剣へと収束していく。力の奔流が、彼女の周りを迸る。一帯を支配していた蒼い燐光は、すでに押しのけられている。吹き荒れる風は、彼女を守るように巻き上がった。


――嗚呼、私は私のために、この()()の敵となろう。たとえすべてを失ったとしても。




―――――――


――今回の()()は、いや今回も同じか。


物語の結末のように、ありふれていて退屈な噺。大きな力を持つ者は、()()に強制される。幾多の――何人も抗えずに、その生を終えた。ただ一人を除いて。


 それは正しく世界。世界に成り代わった者。


――次はどんな物語になるかな。


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