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切妻屋根の館  作者: 真山砂糖
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1 散歩

さて、散歩中に思わぬことに……

 私は香崎小春。T県警の刑事課に勤務している刑事だ。前回のふざけた事件の後、私はまたもや奇妙な事件に関わることとなった。なぜそういう事件ばかりが起こって私が巻き込まれてしまうのだろうかと自問した結果、そういう運命なのだと思うことに至った。

 これまでのように、今回の事件のことを書き記しておく。


 前回の事件からひと月ぐらいしたある日、私と妹の夏子は平日の朝から街中をぶらぶらと散歩していた。ごく普通の住宅街だ。

「夏子と散歩するなんて、中学生の時以来かもね」

「え? お姉ちゃんと一緒に散歩なんかしたことあったかな?」

「あるわよ。でも夏子はまだ幼稚園児だったから、覚えてないんじゃない」

 非番の日だったので、のんびりと快適に過ごそうと思っていた。別段何をするわけでもなく、私はただぶらぶらと歩いていただけだった。授業が休校になり、夏子はやることがなくなったので、私に付いてきたのだ。

 自宅の近くを流れる川に沿って歩き続けて、かれこれ2時間は経過していた。夏子が少し歩き疲れたようだったので、公園で一休みすることにした。自販機で紅茶を買って、二人でベンチに座って飲んでいたら、暑い中、スーツを着た年齢も性別もちぐはぐな人たちが走り回っているのを見た。

「こんな暑い時に、スーツの上着を着て、大変ねえ」

「お姉ちゃんもいつもスーツ着てるじゃない」

「そうだけど、あんな黒っぽい色じゃないし、もっと薄めのやつを着るわよ。それに、私は運動靴を履いてるから、走るのも不便じゃないし」

「ふーん」

「で、あの人たち、何してるのかしらね? 就活には見えないけど」

「なんだろうね?」

 紅茶を飲み終えて、私たちは街中の散歩を再開した。まるで小学生のように、家々の影になっている道を通りながら、夏子との外出を楽しんでいた。そこへ、先ほどのスーツの人たちが道の角から現れて私たちの横を走って通過して行った。私は刑事の勘で何かおかしいと思った。夏子を見たら、夏子も何か異変を感じ取っているようだった。私たちは彼らの向かった方にUターンして、来た道を戻った。

 しばらく歩いていると、道の角に、スーツ姿の人間が三人いるのが見えた。私たちは電柱の陰から様子を伺っていた。すると、すぐ背後から何者かの視線を感じて振り返った。

「うわっっ」

「あの、何をされているのですか?」

 私が少し驚くと、スーツを着た中年の女性が疑わしい目つきで質問してきた。何と返答しようかと一瞬迷ってる内に、その女性の後ろから男性が現れて、威圧されているような感じになった。私は身の危険を感じて警察手帳を出した。

「県警の香崎です。スーツ姿の人が何名か、街中を走り回っていましたので、事件性を感じて様子を見ていました」

 私が手帳を出した途端に、その人たちの顔色が変わった。

「……刑事さん……」

 その人たちは、何か困惑してるようだった。

「何かあったんでしょうか?」

 その人たちはお互いに顔を見合わせた。

「あの……実は……」

 真正面にいる中年の女性が、言いにくそうに話し始めた。そこへ、先ほど道の角にいたであろう人たちも横から現れた。

「山根さん、どうしました……」

 その女性に、中年の男性が声をかけた。私は警察手帳を彼らにも見せた。

「……実は、書類を盗まれてしまって……」

「盗まれた?」

「……はい、それで探していたのですが……」

 みんなどこかぎこちなかった。

「詳しいことを伺ってもよろしいでしょうか?」

 山根と呼ばれた女性は、少し考えてからまだ決心がついてない感じで、手で私に道を開けるような仕草をした。

「では、こちらに来てもらえますか……」

 私は夏子を見た。夏子はうんと頷いた。この状況で冷静な判断ができているので、さすがに刑事の妹だなと思った。

 私たちは、このスーツ姿の人たちに付いて行った。


また事件に巻き込まれてしまうんですね。

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