縄文時代からこんにちは。〜3分で読める短編小説〜
ベルトの金具の位置が以前よりも浅くなった時、何を思うのだろう?
カロリーに飢えた誇り高きホモ・サピエンスなら富の象徴だと喜び、くまのプーさんのものまねで生計を立てようとする若手芸人ならものまねの再現度が高まったと自信を持つことだろう。
しかし、どうやら一般的な現代人は自身の逞しい肉体がショーウインドウに映ったことに絶望し、どうにかこの脂肪を抹殺できないだろうかと、腹を捻ったりつまんだりすることになるらしい。
捻った結果、皮膚が炎症を起こすだけで何にもならないと悟った彼らはダイエットなどという贅沢の極みとも言うべき娯楽に走ることになる。
我々の住む世界はいつ何処で飢餓になるか分からない。そうした現状での脂肪は貯金のように無くても罪にはならないが、あった方が良いものなのだ。脂肪があれば異性にモテるし、危険な狩猟から早期にリタイアして気楽などんぐり拾いで生きていくこともできる。
対する現代人とやらは脂肪を絶対悪だと思い込んでいる。彼らは時にTV通販で紹介されたハイテクベンチプレスを購入し、時に納豆マニアやバナナ愛好家と化し、時に海外から怪しげな薬を購入することになる。
しかし、彼らも我々の子孫であることには間違いないのだろう。3日もすれば己の行動の愚かさに気づき元の生活に戻るのだ。脂肪の素晴らしさを再確認したということだろう。
ベンチプレスは洗濯物干し台の重しとなり、納豆とバナナの消費方法にあたふたし、怪しい薬を隠すために警察から逃げ回ることになるのだが。