第一の挑戦
「どうするのが正解?」
「ほっといていいわ。どっちにしても殴られるだけだから」
「旦那だろう? なんでそうなる」
「ただの政略結婚よ。というより支配するために中央政府がよこしてきた監視役、夫婦関係にしたほうが何かとやりやすいから」
「表向きは友好関係にあるというアピールってことか?」
「実際は支配する側とされる側っていう関係だけど。支配するには暴力に訴えるのが一番だからね」
ほんの一時の間にこれだけの会話を脳内で繰り広げる。
「おい、無視するな。旦那の言うことが聞こえないのか」
そう言う夫を無視して通り過ぎようとしたカワノの顔面に夫の拳が迫る。
「女の顔面に躊躇なくグーパンチを放つって。こいつ屑だな」
かろうじてそのパンチを躱す。
「なぜ避ける。黙って殴られていればいいんだ」
「お前なぁ、何様のつもりだ。仮にも嫁さんだろうが」」」
その言い草にカワノはキレた。
「何おー、口答えするとは随分とえらくなったもんだなあ」
再び殴りにかかる夫であったが彼自身違和感を感じていた。
「今まで歯向かってきたことなどなかったのに」
そして彼の放った一撃をカワノはギリギリのタイミングで躱しながら夫の腕を掴まえると体を反転させ、夫の体を腰に乗せるとそのまま投げ飛ばす。その場に審判がいたら思わず一本!!と宣言してしまうほどきれいな一本背負いを決めたのだった。
「なるほど、イメージが大切と言ったのはこういうことか。
こうなればいいなとイメージしたらそのとおりに体が動いた」
自分のすべて行動なのにカワノは人ごとのように感心していた。
「今の何? なんであんなことをできるの」
ロザヴィアは驚いていた。
「そういうのを見てきているからさ。みたことがないものはイメージできないからな」
「なにそれ、答えになっていない」
「続きはあとだ。まだ終わっていない」
夫は片膝をつきながらこっちを睨みつけている。
「てめえ、何しやがる」
「何って…、攻撃してきたからやり返したまでだ。こいつは正当防衛だ。3倍返しじゃないだけマシだと思え」
「何を分けのわからないことを……、お前本当にロザヴィアか? 人がかわったみたいに。今までこんなことなかったのに」
夫は混乱していた。妻のロザヴィアは今まで彼のいうがままだった。どんだけなぐっても反撃することなく黙っていた。それなのに……。
「だったらなんだ。テメェは許さん。かかってきな。返り討ちにしてくれる」
一体何なんだ? こいつはいったい……。夫の混乱ぶりに拍車がかかる。先程投げられた際に受け身が取れずしこたま頭を打ちつけたこともあって彼は判断力を失っていた。
立ち上がるが否や夫は再びカワノに襲いかかる。だがカワノは迷うことなく夫の首元に地獄突きをお見舞いする。
その衝撃に思わず膝をついてうずくまる夫の顔面にカワノは膝蹴りを浴びせる。
この一撃で夫は戦意を失った。その場に倒れ込んだまま意識を手放した。
「これで満足か? 聞くまでもないか」
カワノはロザヴィアに問う。だが返事はない。
「それでは」
カワノは何事もなかったかのようにその場を立ち去ろうとする。
「待ってくれ」
それを父親を止める。
「さっきの話はなしだ。ケイ、君を娘、いや息子として迎えよう。私は覚悟を決めたよ」
彼は何かを悟ったような表情をしてカワノにそう告げたのだった