どうすべきか2
「はじめまして、名をケイ、姓をコウノ、生まれも育ちもニホンでございまして……」
両親と聞いて慌てて自己紹介をしようと話し始めたコウノであったが
「何を言ってるんだか」
「いや、初対面だし……、挨拶しておかないと」
「結婚するわけじゃないんだし……。第一あの二人にとっては見た目は私でしかないんだよ。中身がどうだろうと!!」
「生き返ったというのか? 我らの願いが通じたというのか。神よ、感謝いたします」
両親は祈りを捧げた。
「もう…、どうするのよこれ」
「どうしよう……」
「仕方ない。これから言うことをそのまま伝えて」
「お父様、お母様、これから言うことをよく聞いてください」
彼女が語る言葉を一字一句違えることなく伝えていく。
「これまでに私達が聞いた話がすべて正しいとして考えるならば……」
「すべて本当の話なんです。疑いになるのは当然ですが……。信じてくれと言うしかないのですが」
伝えるべき言葉をすべて伝えても彼らは納得はしていないようだった。
「少しいいかな。できれば娘と話がしたいんだ。いるんだろう」
「いますよ。だけど直接の会話はできません。。私にしか聞こえませんので。あくまで伝聞と言う形になりますが」
「構わない。君がいまやったように正確に伝えてくれたらいいだけのことだ。それで確信が持てたら信じよう」
その後は親子の間でしかわからない会話が続く。カワノは居心地の悪さを感じたが逃げることはできない。
「ありがとう。もうできないと思っていた、けど最後に話しができて良かった。君の話を信じることにするよ。でも君は娘ではない。できるだけ速やかに出ていってほしい。これ以上は辛くなるだけだ」
「わかりました。そうさせていただきます。こうなってしまったこと、深くお詫びいたします」
彼らの娘、ロザヴィアに憑依してしまったカワノはただひたすらに謝った。
「謝る必要はない。君もある意味被害者みたいなものだろう。君は悪くない。ただ我々の気持ちを考えてほしい」
二人のその言葉を聞いてロザヴィアは悲しくなった。ただ思念体になってしまった彼女は涙を流すことすらできない。しかし彼女がもといた体はその気持ちに反応した。
「泣いているのか、俺……」
ロザヴィアの気持ちがいまやカワノのものになってしまった体に伝わっていく。
「こんなのないよな」
カワノは涙を見せないようにしながら退出していく。両親はそれを黙って見つめる。
そうして彼は異世界への第一歩を踏み出すはずだった。だが
「なんだなんだ。死んだって聞いていたけどな。ピンピンしているじゃねえか。どういうこった」
部屋を出た瞬間鉢合わせした男にそう凄まれた。
「誰?」
「あっ!! あれ、私の夫」
おもわず呟いたカワノの問にロザヴィアが答える。
「何だと! あんた、結婚していたのか」