どうすべきか
「なんかこう違和感しか感じないんだけど」
この新しい世界にやってきた彼ーコウノケイーが最初に抱いた感想である。
「なんか思っていたのと違う。男ってさ、こんなの見ると無茶苦茶興奮するって聞いてるんだけど……。なんか反応薄い」
「普通はそうなんだろうけど……、俺はある種特殊なんだよ」
胸のあたりにある2つの盛り上がった部分を見つめて彼はつぶやく。
「なかなかのサイズ……、でもやっぱりこの感じはなんだかなあ〜」
「何なのよ、なんか侮辱された感じ。結構自信あったのにぃ~」
「悲観することはない。なかなかのプロポーション。モデルでもやれそうだ」
「だったら喜びなさいよ。この体あなたのものになったのよ」
「それはそれ。いざ自分の体となればねぇ、あるべきものがなくてないものがあるというのは……。やっぱり違和感しかない」
「もう〜、ごちゃごちゃ言わないの。でもなんでそんなに冷めているのよ」
「言ったろ。俺は特殊なんだよ。女に対してトラウマみたいなのがある」
「トラウマ? 何よそれ」
「俺にとっては女ってのは慈しむ存在ではないんだよ。子供の頃から理由もわからないまま嫌われ、いじめられ、無視されてきたからな。おとこやオネェには結構可愛がられてきたんだけど。いまもってなぜ嫌われてきたのか全くわからない」
「ふーん、そうなんだ。だからかもね」
「何が?」
「あなたがこんなことになった理由よ。そんな経験があったから人のいやらしさ、恥ずかしさ、優しが見えるかもって、そう思われたのかな。まあさ、もうゴチャごゃ言うのやめよ。これからはあなたがやることをやっていくだけだから。できるだけの支援はするから」
「だよな。頼むよ、相棒」
これらの会話はすべて彼、ケイコウノの頭の中だけで行われていた。
はっきりと意識を取り戻した彼はベッドに体を横たわらせたまま辺りを見渡す。
「なにか聞きたいことがあるの?」
「今はいい。そのうち質問したおすだろうから覚悟を決めておいてくれ」
「わかった。そのために私がいるんだもんね。任せておいて」
「よしっ!」
気合とともに彼は起き上がる。そして置いてあった鏡を見つめる。
「これが俺なんだな」
改めて認識する。
「さて、これからどうするかな」
ベッドに腰掛けながらしばし思案してみる。
「外に出なければ何もわからんか」
立ち上がった彼は外に出ようとドアを開ける。
開けた瞬間彼が目にしたのはびっくりしたような表情を浮かべその場に座り込んでしまった男女
「死んだはずだろう?」
彼らはそう言ったきり一言も話さないままただ驚いた表情を崩さない。
「誰?」
「あ〜、わたしの両親」
彼女はそう言った。