言われるがまま
「ふざけるな!」
あたり一面に怒号が響く。放った本人は怒り心頭だが言われた側は冷静に対処する。
「確かに今回の件は全面的にこちらに非があります。しかし、起こってしまったことをなしにはできません。考えうる最良の策を用意しました。ご了承いただくしかありません。それに今回のことがなくともそう遠くない未来、そうですね遅くとも3ヶ月以内には同じようなことになっていたかと思われます」
「だからといって……」
「まあ、冷静になってください。受け入れがたいのは理解していますが……。こういうことを受け入れるのは過去には何人かいたんですから」
「俺にそういう趣味はない!」
「まぁまぁ落ち着いて。今回に限り特別にオトクなサービスをおつけしますので」
「日本直販みたいなことはいらない。元に戻せ」
「それは無理です。あの人完全に復帰しましたんで。まさか同姓同名だとは、男女の違いがあるのに」
「同性じゃねぇ。オレはコウノだ。あっちはカワノ、男女同じ名前なのは日本じゃよくある。ちゃんと確認すればわかることだろう」
「そうですがね…。まさか職業まで一緒とは。収入は全然違いますが」
「そりゃ、あっちはミリオンセラー歌手、こっちは人の歌歌わしてもらってなんとか日銭稼いでいるだけだから。よく間違われてがっかりされているだけど……。それでも歌唱力と演奏の旨さだけは評価されてたんだ。創作能力が全く無いとは言われてたけど……。やっぱり能力が同等なら女のほうがいいのかな。むこうには優秀なバックアップがあったようだし」
「そう思うなら……。やってみませんか? 最大限のバックアップを保証します。もちろんあなたの努力次第ですが」
「なんだかなあ……。うまく言いくるめられただけのような気がする」
「よろしく」
「よろしくって……、いいの、オレみたいなので」
「仕方ありません。贅沢は言ってられませんので」
「準備はいいですか、行ってしまえばもう戻ってこれませんから」
そう呼びかけられて意識をそっちにかたむける。
「今さらどうこう言えんわな」
「そうですね。不満はありますが……。いろいろとサポートはしますがちゃんとしてくだいね。気を抜いたらだめですよ」
「わかっている。しかし大丈夫かな」
「それはなんとも……」
「最後に注意事項です。ある程度のチート能力をおつけしましたがそれ以外に危機を脱する手段がない場合のみ使えるようにしています。あとイメージを大切にしてください」
「わかるように言ってくれ」
「おいおいわかると思います。生活していく上でなにか感じたらその都度アップグレードしていきますのでそのへんもお楽しみに」
「だからどういうこと?」
「それではお達者で」
答えはなかった。それ以降の記憶はない。
次に目覚めたとき、彼は自分が生きていた世界とは違う世界にいることを感じるのであった。