間章 空母機動部隊総司令官〝植木伊織〟
「『しろわし』、『しょうほう』、攻撃隊準備完了したぞ司令官」
私は、司令官の部分を強調して、懐かしい教え子に、指示を仰いだ。
「……別に、有馬でいいって言ったじゃないですか」
通信先から、ため息交じりの声が聞こえる、その声に苦笑しつつ、言葉を返す。
「じゃあ有馬、指示をくれ」
「えーとそうですね……ではまず『しょうほう』から『F15J―ⅭⅩ』を四機先行させて、敵の護衛艦三隻をロ号四五式徹甲誘導墳芯弾で攻撃、開いた隙間から、『しろわし』の『F35B』五機で、空母一隻、もしくは二隻を攻撃」
昔は、頼りなく俺に投げられまくっていた教え子が、こんなに立派になってるとは……。
「撤退するなら見逃し、攻撃してくるのなら、役割を交代しつつ攻撃を続行……って聞いてます?」
「ああ、聞いてる聞いてる」
「……まあ、聞いてると信じてますよ」
私は、懐かしい柔道選手としてのころの自分を思い出す、六年前、偶然有馬のいる中学校で、柔道の講師をやっていたころの思い出を……。
植木伊織艦長、現在の海上自衛隊、第一機動部隊司令官を務めるこの人は、俺が中学生の時初めて出会った。
その頃は、世界大会を目指す現役の選手だったが、今は徴兵にて、海自に属している、知り合いに聞いてみたところ、柔道の強さは健在らしい。
「何か問題があったら報告を、それでは」
俺は無線機を切る、ここから先は、現場指揮官である植木先生の仕事だ。
「そうか、有馬は植木と知り合いなのか」
隣で、『大和』からの攻撃結果を待つ彭城艦長が言う、艦長は、もともと海自の幹部だったから、植木先生のことも知っているのかもしれない。
「はい、中学校の時部活動のコーチをやってもらってました」
もちろん部活は柔道部、入った理由はよく覚えてない、別に体格がよかったわけでもなく、力があったわけでもないが、何故か俺は、柔道部に入部した。
「じゃあこれが終わったら、植木に勝負挑んで来ると良い、あいつ、たまに士官学校で柔道教師をやってるからな」
海自に来てまで柔道を教えているのか……。
「そんな無謀な事しないですって」
俺は、植木先生の報告を待ちながら、鎮守府の外を見やる、警戒態勢は解かれていないが、随分空気は和らいだように見える。
それだけ、大和達と海自の空母組が、信用されている証拠だ。
「お、こっちは終わったみたいだな」
艦長が無線を繋いで、大和達の報告を聞く。
「ふむ、ふむ、水雷組は全て撃沈で、空母は一隻撃沈確実、一隻中破か……ご苦労、帰って……どうした!」
報告を聞いている途中、艦長が急に声を荒げだした。
これは、何かあったな……。
「分かった、今すぐ艦を向かわせるから、何とか耐えろ、舵を切り続けて、空母組は、位置を探れ」
「艦長、大和達に何か問題でも?」
俺が聞くと、艦長は苦い顔で状況を知らせる。
「潜水艦だ……」




