航空母艦
「……航空母艦か……」
ヘリの扉から、帰投する二隻を見つめていた。
「俺は、何でこんなにも、兵器に憧れたのか、思い出してきた気がする……」
俺は、自身の行いを悔やむ。
何故嫌ってしまったのか……自分を殴りたい気持ちで一杯だ。
「きっと今なら……」
俺はそう思い、操縦者に告げる。
「大島に向かってくれ」
「了解、じゃあ扉閉めてくれ」
俺はその言葉を聞いて、開けていた扉を閉め、席に着く。
「それじゃあ、飛ばしますよー」
そう言って、操縦者はエンジン質力を上げ、操縦桿を手前に押込み、機体を前に進めた。
「うむ、非常にまれな結果だが今回の演習、引き分けとする」
私達は、大島に上がって、彭城元帥にそう言い渡された。
「引き分け、ですか……」
「まあ、互いに満身創痍だしな……」
私は足であるスクリューを、逆にエンタープライズは、攻撃と防御の要である甲板を抉られている、互いに航行不能、戦闘不能だ。
「まあ、私に依存は無い」
エンタープライズもそう言って話を促す。
「うむ、では決定だな、演習二戦目の結果を発表する」
そう言って、元帥は紙を開く。
「瑞鶴の損害、魚雷命中二、爆弾命中三、スクリューの破損で航行不能、大破」
あの魚雷は痛かった、まさかピンポイントでスクリューをやられるとは……。
しかもあの『アベンジャー』、完全に後部エンジン部を狙っていた、舵を切っていたから、水流ができて、エンジン部には当たらなかったけど、もし魚雷が直進して、エンジン部で爆発していたら、航行不能どころではない。
「プライズの損害……」
「私の事をプライズと呼んでいいのは、私が認めたものだけだ」
そう厳しく返す。
「そんな厳しいこと言わなくてもいいんじゃない、プライズ?エンタープライズって、長くて呼びにくいのよ」
私はそう笑い半分で言うと、プライズはこちらをきつく睨んだ。
「言っただろう、私が認めているのはヴェスタルと艦載機たち、それと……有馬指揮官だけだ」
私の中で、何かが切れる音がした。
「あのねぇ、司令官さんは、大和の長官で合ってあんたの乗員じゃないの、お分かり?それなのに、何をそんな照れたような言い方する必用があるわけ?癪に障るんだけど」
私の今の感情をぶつけると、プライズも睨みを一層強くして言う。
「何をそんなに気にしている、大和の長官だからなんだというんだ、それ以前に、あの人は私達WSの管理者で在り、日米連合艦隊の提督だ、それに瑞鶴、貴様は嫉妬しているのではないか?自身も指揮官のことが好きなのに、大和に乗っているから引き離せないと」
うっ……。
「言い返せないのか?どうやら図星らしいな」
腹が立つが、言っていることは確かに的を射ている。
返す言葉を探して唸っていると。
「あ~もうめんどうだ、それでは有馬君、あと頼んだよ」
そう言って、元帥は紙をほっぽって帰って行ってしまった、それと入れ違いで、先輩方が姿を現した。
「何をしているんですか、瑞鶴」
加賀さんは、そう呆れながらほっぽり出された紙を拾う。
「エンタープライズの損害、爆弾命中多数、甲板にいくつもの大穴、よって戦闘不能、大破」
それに続けて、赤城さんは結果を発表した。
「今回の演習は、互いに戦闘続行不能ということで、引き分けです」
元帥殿が残していった紙を、一航戦の二人が読み上げた。
「お疲れ様二人とも、なかなかすごい戦いだったよ」
「特に最後の攻撃は、互いに上手いところを狙ったね」
二航戦の二人もそう言って頷く。
「ありがとうございます、先輩方」
そう私はお礼を返す、プライズは、黙って何も言わない。
「さて、これからどうするんですか?彭城元帥によれば、勝手に帰っていいよとのことだけど」
零がそう言って、横須賀基地の方を指す。
「そうですね、演習はこれで終わりですし、基地に帰投しましょうか?」
赤城さんがそう言って、自身の艦に戻ろうとした時、上空に『ブラックホーク』が現れる、私達は顔を見合わせ、全員がヘリの下に集まる。
それもそうだ、だってあれには、司令官が乗っているのだから。
俺がヘリから降りると、皆は、俺の方をじっと見つめ佇んでいる。
「皆、お疲れ様……すごかったよ」
そんな言葉を伝えると、瑞鶴が首を振る。
「私たちが聞きたいのは、そんな言葉じゃない」
それに続けて、零が前に出る。
「司令官、いえ、有馬勇儀に聞きます」
皆の眼差しが、俺の目をまっすぐに見つめる。
「「「「「「空母のことは」」」」」」
赤城、加賀、蒼龍、飛龍、瑞鶴、プライズが、
「「航空機のことは」」
零と隼が、
「好きですか?」
全員の声が重なり、俺の心へと響く。
少しの間を置き、俺は自身の耳につけられたps2を外し、皆の方を再び見つめる、そこには、確かに兵器たちが存在していた。
「ああ、大好きだ」
その一言で、空母の皆の顔に薄く涙が零れ、加藤さんは、ふんと鼻を鳴らす、その中で、瑞鶴が我先にと、俺のもとにかけてきた。
「よがっだよ~司令官さん!」
瑞鶴は、いつもの凛々しく整った顔を崩し、泣き乱れた顔を、俺の肩につける。
「よしなさい瑞鶴、司令官が困っています」
加賀が、やや強引に瑞鶴を引き離そうとするが、俺がそれを制止する。
「いや、大丈夫だ加賀、少し前に瑞鶴と約束したからな」
そういうと、赤城が苦笑交じりに聞く。
「一体どんな言葉で司令官は瑞鶴を魅了させたのでしょうか?」
魅了って、そんな大それたことはしてないのだがな。
「別に、ただ好きな時に甘えると良いって言っただけだ」
その言葉を聞いて、瑞鶴は俺の背中に手を回した、それを見て他空母と零は、 「あっ」と言葉を零した。
「だからこうして甘えてるの……私、心配したんだから……司令官さんが、私たちを嫌いになったって聞いて……もうこうして触れられないのかと思って……」
「……すまなかったな」
俺が瑞鶴を優しく抱き返すと、瑞鶴は照れくさそうに笑う、そして、それを見ていたプライズは、俺の背中に飛びついた。
結構勢いよく。
「ぐぇ!プライズ、ちょっと痛かったんだが」
「知らん!瑞鶴ばかり甘やかすからいけないのだ!」
そう言って、プライズは背中から俺のことを抱きしめる、前と後ろで挟まれて、ちょっと苦しい。
しかも後ろは、大きな胸部装甲が二つ当たるから、余計いろいろ考えてしまう。
「ああ!プライズ離れなさいよ!今は私だけの司令官さんなの!」
そう言って、瑞鶴は一層体を俺に押し付ける
「何を言う!指揮官は私の艦長になるのだ!」
「いや、どちらの司令官でもなく、俺は皆の司令官なんだが……」
「「司令官」指揮官は黙ってて!」」
「はい……」
二人の剣幕に押され、俺は口を閉じた。
「まったく、私の後輩と米の空母は、いったい何をやってるのでしょうか……」
加賀はため息交じりに零す。
「良いじゃないですか、司令官が私たちのこと、見れるよう戻ったのですから」
赤城はそう微笑みながら言う。
「やれやれ、本当に司令官は人気者だね、大和が苦労するわけだ」
そう蒼龍が言うと飛龍も、「だねぇ」と相槌を打つ。
一方零と加藤さんは、少し離れたところでこちらを見守っている。
なんだ、やっぱり仲いいみたいだな、この二人。
その後、俺たち空母六隻と、その艦載機たちは、横須賀艦隊基地に帰投した。
俺は結果を凌空長官に報告し、空母と艦載機は見えるようになったと報告すると、
「そうか、なら大和達戦艦が見える日もそう遠くはないだろう」
そう返された。
明日の演習は、大和艦隊VS空母組。
細かく分けると『大和』『武蔵』VS『赤城』『加賀』『蒼龍』『飛龍』『瑞鶴』『エンタープライズ』での戦いだ。
今回は、どれだけ早く大和型二隻に撃沈判定を出すかで勝敗を決める、三時間以上大和型が耐えたら大和型の勝ち、それ以内に二隻とも撃沈判定を出せれば、空母組の勝ちだ。
そして、その後に『長門』『アリゾナ』VS『陸奥』『扶桑』の、艦体決戦の演習がある。
本当は『金剛』で数合わせをし、日本艦隊だけで行う予定だったが、千葉の空襲でキューブが壊されてしまったため、艦体の造船もストップ、急遽『アリゾナ』に入ってもらった。
「この戦いで、大和達が見えるようになると良いんだが……」
早く大和に謝りたい、ただそれだけ、俺は思い続けていた。




