瑞鶴の反撃
「収容急いで!瑞鶴の航空機はすぐそこまで来てる!」
私の甲板上の整備員は、慌ただしく動き回りながら、艦爆艦攻を艦内に戻し、戦闘機をどんどん甲板上に上げる。
私の整備員も、決して素人ではないが、日本の整備員は、その比じゃないほどの、鍛錬を積んでいるのかもしれない。
一時攻撃隊が私のもとに帰ってくる前に、『瑞鶴』から発艦した航空機が、こちらに向かってくるのを、偵察機が確認している、異常なほどの速さだ。
「畜生、日本人はなぜこんなに手が早いんだ」
甲板の整備員も焦っている、こんなに早く敵が来るなんて、誰も予想していなかったのだ。
「エンタープライズ、攻撃機の収容と、戦闘機の発艦、完了したぞ」
そう言って、整備員たちは艦内に避難していく、同時に、私の電探に強い反応があり、敵がすぐそこまで迫ってきたことを、教えてくれる。
「対空配置、きっちりよけきって反撃して見せる!」
私はAircraftCarrier『エンタープライズ』アメリカ一の武勲艦として、日本の艦に、負ける訳にはいかない、それに、
「これに勝てば、きっと指揮官は私に振り向いてくれる!」
私の覇気をもろともせず、手を差し出し、私の考えを認めてくれた、あんなにも私達兵器を愛し、上手に使うことができる司令官は、あの人以外に見たことがない。
愛だけで考えれば、あの人にも勝るかもしれない、そんな魅力的な男性を、好きにならないわけ無いだろう!
「ヘル!頼むぞ!」
「まっかせておいて!」
私は、空中で敵機に向かっていく『F6Fヘルキャット』ヘルに向かって、声をかける。
私が復活してすぐに使っていた、『F4Fワイルドキャット』の後継機である『F6F』は、日本自慢の20ミリ機銃を受けても、容易には火を噴かないほどの強度と圧倒的なエンジン馬力で、『零戦』や、他日本艦上機を苦しめた。
そんな機体が今、空中で私の空を守ってくれている。
「だが、今相手にしているのは、ジークやケイト、ヴァルなどの旧式機ではない」
隣にコルト指揮官が現れる、指揮官は、日本から貰ったps2で、私の姿が見えている。
「コルト、こんなところに居て良いのか?」
コルト指揮官は、『アリゾナ』の艦長だが、日本に渡されたWSの管理者なので、今、私に乗艦している。
しかし、さっきまで艦橋に居た気がしたのだが……。
「私も、日本の新型機を見ておこうと思ってな」
それなら、もっと安全な艦橋で見ていればいいのに。
甲板に爆弾を食らったら、いくら演習弾とは言え、人は死んでしまう、そんな考えを悟ったのか、コルトは。
「君が、一度目から被弾するとは思えないな」
どうやら、高い期待を私にかけてくれているようだ、とても嬉しいことではある。
「私を褒めても、お前が最初にかけた言葉は、忘れないぞ」
指揮官は、私の事を怖がる人が多いと知った時、私に一言、言い放った。
『君に人は乗せない』と。
「さすが日本機、機動力が違いすぎる!」
私の背後から襲い掛かる、赤い火筒をできるだけ避けながら、なんとか速度で振り切る。
「まったく、どうして日本機はこうなのかな⁉」
私は、上空に居る他の機体に聞いてみる。
「そんなの私達だって知りたいですよ~何機の私が、あの火筒に落とされたと思ってるの~?」
『SBDドーントレス』、レスが答える。
「装甲を捨てて得た、あの機動性と火力でしょ、私達には、到底考えられないけど」
『TBFアベンジャー』、ティアが言葉を繋ぐ。
「そうだね、でも、そんな機体を日本人は使いこなしてたんだから、すごいよね」
私達米軍機と日本機は、設計思想が根本的に違う。
米軍機のほとんどは、パイロットの命を第一に考え、装甲版とボディーが猛烈に硬い、機銃のタイプも12、7ミリで、一撃必殺と言うより、大きな網で敵機を捕まえ、滅多打ちにするという感じだが、日本機は……。
「装甲版はなく、ボディーの金属も薄い、おまけに風防ガラスも、ただのガラスで防御力は無い……そんな機体、ジュラルミンでできた棺桶同然だよ」
私は、そんなことを思いながらまた一機、棺桶に青い火筒を突き立てた。
「対空機銃、左側面集中!」
私は右側に回頭しながら、左弦側から向かってくる雷撃機に、機銃を集中させる。
「しぶとい!」
大戦中散々やりあった『ケイト』と『ジル』、日本語だと『九七艦攻』や『天山』と呼ばれる機体は、装甲が薄く簡単に落とすことができたが、今襲ってくる新型機は、『ケイト』の倍硬い、『流星』と言う艦攻らしく、我々は『グレイス』と呼んでいる。
「こんな機体とやりあっていたら、大戦中、連合国の被害はもっと増えていただろうな」
そんなことを考えながら私は何とか敵の攻撃を躱し切る、今の雷撃を最後に敵航空機は引き上げていった。
「ほら、言っただろう、君はきっと被弾しないと」
そう言って、私の隣に立つコルトは艦橋に戻っていった、着艦を邪魔する気はないようだ。
「ヘル、降りておいで」
「はいはーい」
そう軽い返事が返り、上空に渦巻いていた機体たちが一機、また一機と私のもとに返ってくる、それと入れ違いで、高高度で待機していた攻撃隊が動きだす。
「そろそろ行くね、プライズ」
ティアの声だ、敵攻撃隊の後を追って瑞鶴に向かうのだ。
「ああ、よろしく頼む」
私は短く返答を返し、ヘルたちの着艦に力を注ぐ、急いで整備を終わらせ、次の空襲に備えなければいけない。
そんなことを考えていた時、私の対空レーダーに、複数の敵機が急に現れた。
「なっ!ヘル、超低空から戦闘機、数機が突っ込んで来る!」




