鶴VS鷲
12時13分、大島近海。
私は、その情報を初めて聞いた時、姉である『翔鶴』が沈んだ時に、似た感情を覚えた。
「私の過去に向き合ってくれた人、私の事を認め、慰めてくれた人」
あの後から、ほとんど会えず、こんな状況になっちゃたけど、あの人を好きになるのには、あの時間と、数回の会話で十分だった。
その人が、私たちのことを嫌いになったと聞いて、私はいてもたってもいられなかった。
それは、ほかの空母も、そう思ったのだと思う、だから私たちは、明石にその話を聞いた後、どうするか話し合った、明石にどうやったら、また、私たちのことが、見えるようになるのかも聞いた。
そこで出た結論が、演習での戦いだった。
「私たちが、司令官さんに空母の魅力を思い出させる、か……」
私は、頭が良い訳ではない、だからそんな結論しか出せなかったが、結局それしか方法はないということになり、一航戦の二人が代表して、そのことを司令官さんに伝えに行った。
「頭を撫でてもらえたって、加賀さんが言ってきた時には、私も部屋に向かおうとしたけどね……」
やっぱり、機械なしで私たちのことが見える、つまり、「私たちのことが大好きな司令官さんに戻ってもらってから、撫でてもらうんだ!」と決めた。
それに、加賀さんの前で抱きしめてもらおう、そうすれば、先輩のことを、ちょっとは見返せるかもしれない。
「いや、なにで見返そうとしてるんだって話だけどね……」
そんな乗り突っ込みを一人でこなしていると、港からブザーが鳴った。
出港しろってことらしい、すでに、相手であるエンタープライズは、配置に着いているから、後は、私が行けば演習開始だ。
「さて、百年前の屈辱を晴らすため! 司令官さんに、空母の魅力を思い出してもらうため! 五航戦、『瑞鶴』抜錨します!」
私はそう気合を入れ直し、体に力を込める。
基準排水量29、800tの、大きな私の体が動き出す、巨体の割に、動きだしは早い、何故なら、馬力だけなら、私は『大和』をも凌ぐ。
「さてさて、艦載機の調子はどう?みんな」
私は、格納庫の中に姿を実体化し、整備員たちに話しかける、整備長以外の人たちが付けてるのは旧式のpsだから、私の声しか聞こえてない。
それなりの階級を持ってないと、ps2は支給されないらしい。
「おう、艦爆『彗星』艦攻『流星』艦戦『紫電改』全部整備完了だ」
そう整備長が返す。
私の艦載機は先輩たちの物より、性能が高い艦載機を積んでいる。
今兵器開発部で、新型機を作成しているから、そのうち先輩方は先輩方で新しい艦載機を、私も、今よりももっと高性能な、幻兵器に近い、艦載機を使えるようになると言われた。
それぞれの空母が積む艦載機には、相性があり、例えば赤城先輩に『紫電改』を乗せても、本来の実力は発揮しえない、時代の差があるからだ。
他に、『F6Fヘルキャット』を『赤城』先輩や私が積んでも、同じようになる。
それぞれの空母に合った艦載機が若干異なるから、兵器生産部は、いくつかの生産ラインを同時に回さなくてはいけないらしい。
まったくご苦労様だ。
「ありがと、これからよろしくね、皆」
「「「「「おう!」」」」」
これから、私の格納庫ではこの人たちが整備を行ってくれる、仲良くなっておかないと。
「それじゃあ、艦偵二機と、攻撃隊を甲板に上げるから、昇降版への移動を始めておいて」
私はそう言い残して、甲板に上がる。
「いい天気、これなら、索敵で後れを取ることはないかな?」
私は一人呟く、そうして少し待っていると、後方の昇降版から、『二式艦偵』が上がってくる。
「さあまず第0ラウンド、索敵勝負! 行ってみようか!」
その一声で、二機の艦偵は空へと飛び立っていった。
空母同士の戦いは、索敵が命だ、先に見つけた方が、勝負の流れを握ることができる。
「さて……しばらく待とうかな」
そんなにすぐ見つかるわけも無いので、私は甲板から艦橋に移ろうとした時、嫌な気配を感じて、空を見上げる。
同時に、対空電探の意識をそちらの方へ向ける。
「おかしいって! 早すぎるでしょ!」
右前方から、敵航空機の編隊が近づくのをキャッチした。
まだ始まって数十分しかたってない、私の電探はずっと起動していたし、みんな空を見張っていてもらったから、おそらく偵察機は来てない。
……てことは、レーダーに映った?
「どんだけレーダーの索敵範囲広いのよ⁉」
レーダーに映ったにしろ、偵察機に見られていたにしろ、自分が危機にさらされている事には変わりない。
私は、両舷に装備する、12、7センチ高角砲を回転させ、敵編隊に向ける。
同時に、甲板に出ている戦闘機を、数機空に上げる。
「対空戦闘!」
遠い空で、紫電と敵機が交戦を始める、敵の動きも、なかなかに機敏だ。
「『ワイルドキャット』じゃないね、あの動きは」
日本海軍が長らく標的としてきた『F4Fワイルドキャット』は、機動力で日本機に遅れを取っていたが、今交戦している敵機は、『紫電改』の機動力にも、やや遅れをとるも、付いてきている。
「ああ、やっぱり地獄猫の方か……」
少しずつ、交戦場所がこちらに寄ってくることによって、敵機の姿を、目視でとらえられるようになった、よく見て見ると、羽の形が『F4F』とはやや異なっていて、それよりも機体が、大きいことから、『F6Fヘルキャット』だとわかる。
マリアナで、私の艦載機を堕として回った戦闘機、『零戦』の天敵だ。
「やっぱり、七機じゃ無理があるか……」
急発進させた直掩用の機体全てを向かわせたが、やはり、数的に不利だったのか、皆白旗を上げて、戦場から離れていく。
「高角砲、射撃開始!」
私は、味方機が全て墜ちたのを見て、高角砲の射撃を始めた。
今甲板には、爆弾と魚雷を抱いた、『流星』と『彗星』がいる、一発でも被弾したら、一瞬で撃沈判定を貰うかもしれない。
「小沢艦体の実力、侮らないでね!」




