表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
75/340

間章 空の膝枕


「大和に会いに行くんでしょ」


 吹雪が運転席から顔を出す、後部座席に空が乗り手招きする。


「疲れてるでしょ、あっちに着くまで寝ていなよ、ほらほら~膝枕してあげるから」


 そういって、俺を後部座席に座らせ俺の頭を引き寄せる。


「ああ、すまん……少し寝る」


 そう言って、空の少し柔らかく、少し硬い膝の感触を確かめながら、目を閉じた。




「有馬、だいぶ疲れてたみたいだね」


 有馬は普段、こうゆうことは強引にしない限り認めない、でも有馬は、今私の膝の上で寝息を立てている、そこからでも、有馬が相当参っていることが分かる。


 私は、そんな思い人の頭を撫でた、きちんと手入れされているのか、さらさらでずっと撫でていたくなる。


「まあ、あんな会議に出たらね、心も体も疲れるだろうねえ」


 有馬は、吹雪に迎えを頼んだみたいだけど、私も暇だったので、ついていくことにした。

 その車の中、私は国民発表の時だけライブで見れると聞いたので、吹雪に言ってナビからテレビに切り換えてもらった、だから、航大の妹が言った言葉に、心を抉られている姿も見た。


「ああいうのは心が持たないよ」


 吹雪は何も言わない、私たちは長い付き合いだから、有馬のことは大体分かる。

 あの、辛く苦しい長距離遠征訓練を一緒に乗り越えた仲だ、でも、そんな中で有馬を誰よりも理解し、一番の親友であった航大はもういない、あの中国の荒野から帰ってくることはない。

 有馬は、今でもそのことで傷ついている。


 その傷に、妹の鋭い一撃。


「んん、こ……航大、ごめん、ごめんな」


 有馬がうなされながら、私の足にしがみつく、いつもの雰囲気とは全く違い、実に弱弱しい。


「大丈夫だよ有馬、大丈夫」


 何が大丈夫なのか、自分でもわからないが、それしかかける言葉が見つからず、頭を撫で続ける。


 いつも私たちにしてくれるみたいに、私たちが泣いていると、すぐに頭を撫でてくれる、その手は大きくて、あったかくて、底知れぬ安心感がある。

 でも、その手を持った人の頭に手を乗せてくれる人はいない。

 

 その頭に手を乗せたいと思う人は、何人かいるのかもしれない、私たちのほかにも、有馬の弱いところを知って、助けてあげたいと思っている子がいるかもしれない、だけど有馬は、それを受けようとしない。


「ダメだよ、ちゃんと甘えるときは甘えなきゃ、有馬まで死んじゃうよ」


 有馬は絶対に、人に弱いところを見せようとしない、航大が死んだ時ですら、ルカに言われるまで涙をこらえていた、このままじゃいつか壊れてしまうのではないかと、心配になる。


「そんな有馬が頼って、甘えて、弱いところを見せてくれるぐらいの人に、私はなりたいなぁ」


 そんなことをぼやきながら、有馬を撫で続けた。



 しばらくすると、海沿いに着き、有馬が止めておいたボートまでたどり着いた。


「ほら、有馬、着いたよ」


 そう言って有馬をゆする、ゆっくりと有馬は目を開け起き上がる。


「おはよう……すまなかったな、こんなこと頼んで」





 俺は、寝起きの目をこすりながら、吹雪と空に感謝する。


「別に私が好きでやってることだから気にしないで」


 と吹雪が笑顔で言う。


「私の膝が恋しくなったらいつでもいってね」


 そう空が、いたずらっぽい笑みを浮かべ自分の膝を叩く。


「……考えとく」


 正直、誰かの膝枕で寝ることは初めてだったので、不思議な感じだったが、安心感を覚え、癖になりそうだった。


「取りあえず、大和に会いに行かないとだな……」


 俺は気を取り直し、星の光る夜空のもと、ボートに火を入れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ