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最終兵器、Weaponspirits


 俺たちは、駐屯所隣にある、富士重工工場の門まで行くと、警備の自衛官が、敬礼してこちらを見ていた。


「有馬様ご一行ですね、お話は伺っております、どうぞ中へ」


 そう言って、中へ連れられる。


「お早いご到着ですね」


 そう言って出てきたのは、いかにも研究員らしい格好をしている男性と、


「お久しぶりだにゃ」


ひょこりと明石がでてくる。


「明石! お前こんなとこにいたのか」


 明石、『大和』最初の出撃時、海上修復を『ヴェスタル』と行ってくれた、数少ない工作艦。

 かなり背は小さく、髪色は薄めのピンク、猫耳のようにとがった髪が印象的、だぼだぼの白衣をまとい、中には作業服のようなジャージを着ている。


「うむ、あの後有馬たちが、中国にカチコミをかけたとき、陸に上がって、若林と WSの研究の手伝いをしてたにゃ」


 若林と言われた人はさっきの白衣の男性だ。


 WSは通常、自身の本体である兵器から、一定距離れることはできないのだが、ブーゲンビルの時の大和のように、何か接続できる機械が近くにあれば、実体化することができる。

 ただ、キューブにかなりの負荷をかけるから、あまりやらない方がいいとのこと。


「紹介が遅れました、自分は若林翔太、ここの研究所で、WSの研究と火砲、航空機の開発を主に行っております」


 そう言って、若林は頭を下げる。


「さて有馬、要件は凌空から聞いてるにゃ、こっちに来るにゃよ」


 そう言って俺の裾を引く。

 

 それに続いて吹雪と空が付いてくる。

 二つの大きな扉をくぐり、研究所の中でも奥の方にある部屋に入り、目の前に現れたのは、キューブとよく似た、大きい立方体だった。


 通常のキューブは手のひらで握れるほどだが、この立方体は、その数百倍大きい。


「すごい大きさ」


 吹雪が感嘆し、俺たちもその立方体に目を奪われていた。

 そんな俺たちにお構いなく、若林は説明を始めた。


「ではまず、基本的なことから、WSの詳細な情報からお教えしましょう」


 明石がパソコンを操作し、俺たちの前に広がる机型モニターに、いくつものキューブを映した。


「最終兵器、WeaponSpirits、通称WS、彼女、彼たちは、戦争で使われた兵器たちに刻まれた、並び使っていた人たちの思い、専門用語でメモリーと言うものをまとめ、イメージを人の形に埋め込んだもの、それがWSです」


 この時点で、いろいろ聞きたいことがあるが、まずは空が聞いた。


「メモリーってどうゆう理屈でその場に残るの?」


 そうだな、一番俺も気になっていたところだ。


「人間は、強く激怒したり喜んだり、感情を動かすと、僅かながら、その場に残り香のような空気を残します、オカルト的に言うなれば、オーラのようなものです」


 オーラねぇ……なんとも信じがたいが、実際それでWSができてるんだから、信じるしかないのだろう……。


「それこそ、我々がメモリーと呼ぶ記憶の欠片です、それらをいくつも集め、デジタルの電子信号に変更、我々が知っている歴史と照らし合わせ、繋ぎ、一人の人間の記憶とします」


 そう言って、一つのキューブを指さす。


「それがキューブ、つまりWSの脳です」


 やっぱり信じがたいが、理屈は分かった、ここで止めてもしょうがない、話を続けてもらうことにした。


「本来WSは、ただのプログラムの予定でした、艦や戦車、航空機の自動制御システムとして取り込み、慣れない乗組員をサポートするためのプログラム、しかし、実験を繰り返し、本来の兵器に取り込もうとした瞬間、事件が起こった」


 そう言って、さっき指さしたキューブをタップし、拡大した。


「取り込んだキューブが、急激に質力を上げました」

「キューブの質力って?」


 吹雪が聞く、若林は拡大したキューブをもう一度タップし、概要をだす、そこには様々な数列が並び、グラフが少しずつ変化する。


「簡単に言えば共鳴反応、WSの力の源です、強く、キューブのデータと状況が一致すると、WSの感情が昂ぶり、力が増大します」


 つまり、質力=WS自体の力と考えていいようだ。


「質力が増大したWSは、特殊な音波を発し始めました、それを聞き取れるようにする機械が、皆さんのつける、|プライベートスピリッツ《魂の心情》、通称psです」


 あの機械、そんな名前があったのか。


「しかし、声を発することができたのは、戦艦、空母など、大人数の記憶が残った兵器だけでした」


 キューブを端に寄せ、もう一つの画面を出す、そこには航空機や駆逐艦、戦車、いわゆる量産された機体の名前が並んでいた。


「それ以外の駆逐艦や航空機、戦車は特別一人の思いが強かったり、兵器自体が、特別強い念を持っていたものだけでした」


 明石は、『零戦』のキューブをタップする。


「その中の一つが、『零戦』と『隼』にゃ」


 『隼』は、加藤さんの思いだと思う。

 『零戦』は酒井さんか? でも、そうなら零の姿は男になるはず。


「有馬、『零戦』は酒井の思いじゃないにゃよ」


 明石は、多量のキューブが表示される画面に戻したのち、画面の右から左へと手を流す。

 そうすると、キューブに似た黒い立方体が移される、その上には。


「『武蔵』『長門』『陸奥』『赤城』『加賀』『蒼龍』『飛龍』……この黒いキューブは一体……」


 見慣れた名前が並んでいた。


「これは、兵器たちの嫌な記憶、暗い記憶、言い換えれば、戦争の不の側面を集めたキューブです」


 若林が、そんな風に言いながら、赤城のキューブをタップする。

 俺は、画面に表示された『赤城』の概要に息をのむ。


 危険度69

 米軍機、主に『SBD』に対して敵対心を持っている。

 他にも、加賀に対して特別な嫉妬心を抱いている傾向が見れる、日頃から注意して会話を監視、加賀に対して攻撃的本能を露わにした場合、キューブを強制スリープモードにする。


 俺は、背筋が凍る思いで、その文字列を読んだ。

 あれだけ温厚な性格の赤城であっても、ミッドウェイの時のことは強烈な恨み、嫌な記憶として、WSに影響が出ていることを、ここからストレートに見せられた。


「若林の言う通り、これはキューブと同時に作られた、不の記憶だけを固めて保存したキューブ、その名も――――

             ――――ブラッドボックス鮮血の箱だにゃ」

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