連合艦隊、帰投
「計画については以上です、あとは何が御用でしょう?」
俺たちは、二つの計画の説明を聞き終えた後、空は銃のことを話し、工房へ案内してもらっていた。
「有馬も行くよ」
空は、俺の袖を引っ張り工房に入る。
そこには、たくさんの銃が飾られ、奥では鉄が溶ける匂いが漂う、その隣には試射できるカウンターが並ぶ。
「空様からお預かりしている銃はこちらになります」
そう言って、ケースを差し出す。
「えっと……」
ケースの中に入っていたのは、『Kar98k』。
「うんばっちり、さすが豊和工業だね」
空は感心しながら、karのコッキングレバーをカチャカチャいじり、何度か構えた後、満足そうにケースに戻した。
「さて、これで用は済んだな」
俺は帰ろうとするが、空が何かを思い出したかのように、引き留める。
「有馬ってマイガンあるの?」
俺は、自身で管理できる自信が無かったため、支給品の銃しかもっていない。
「いや無いな」
空はにやりと笑う、その顔に嫌な感じがし、その場を離れようと走り出すが。
「逃がさないよ」
空は笑みを崩さずに先回りし、扉を閉め、俺の裏襟をつかんで試射カウンターに連れていく……。
いや、俺を引きずっていった。
「この際だから、有馬のマイガン買っちゃおうか、有馬お金持ってるもんね?」
まあ、普通に給料は貰っているし、ハワイ、亜細亜、両作戦での成功祝いももらっている、通常の高校生よりは圧倒的にお金は持っていると思う。
それに、生活に必要なものは、軍が賄ってくれているので、生活費にお金を使う必要が無いため、有り余っていると言えばその通りだ。
「せめてハンドガンぐらいは自分の使いなって」
軍の場合は自衛隊と違い、望めば自分で買った銃を使わせてもらえるが……。
「お前、何簡単に言ってんだよ……」
戦争で使えるのなんて一級品の銃以外ない、その中でも一番安いハンドガンですら、15万近くする。
「私が選んであげるからさ~」
と、押し切られ俺は試射第に立つ。
「まずはこれだね」
そう言って、俺に見慣れた形のハンドガンを差し出した。
暫く空のおススメを聞いた後、俺の要望を空が聞き、それに合った銃を選んであげるということになったので、俺は、いくつかの条件を出した。
「ふむ……なら、之が良いかな」
その要望を聞いた空は、一つの銃を持ってくる。
「……これって、ファイブセブンか?」
俺は、その銃のことを知っていた。
特段自分は、銃に詳しいわけではないが、その銃のことだけは
何となく知っていた。
「よく知ってるね、これは『FN Five-seveN』、弾薬にP90と同じ5.7x28mm弾を使用していて、この弾薬は小銃用の弾薬をそのまま短くしたような形状をしてるから、高い初速で発射されるため貫通力が高く、SS190弾では100mほどの距離があってもボディアーマーを貫通できる、そんな銃だね」
空は饒舌に、FNの解説をする。
「装弾数も20発と多いしなかなかいい銃だと思うよ」
「よし、ならこれにしよう」
この銃は、俺が昔見ていたアニメの主人公が持っていたもので、少しだけ思い入れのある銃だった。
「それじゃあ、お会計です」
そう言って、レシートを持ってくる整備員、俺はそこに示された金額を見て、血の気が引いた。
「銃って、高いな……」
「弾と整備キット込みでこの価格になります」
俺は、少し躊躇いながらもカードで会計を済ませ、銃とその他諸々を受け取った。
「帰ろっか」
空も、karをもって、工廠を後にした。
俺たちは工廠を出て、宿舎まで帰る途中、港の前を通る。
港自体はガラガラだったが、港の水平線に、いくつもの艦影が見えはじめた。
9月14日、午後4時53分、連合艦隊帰投。
「この汽笛は……」
海の方向から汽笛が聞こえた、この汽笛を、俺は知っている。
「やっぱり」
そこには、ゆっくりと減速しながら港に近づいてくる、『大和』の姿があった。
『大和』だけではない、各地に散らばっていた、ほかのWSの艦の姿もあった。
援護に来てくれた、『武蔵』『扶桑』『三笠』『瑞鶴』『阿武隈』『矢矧』
『吹雪』『雪風』、インドまでの道のりを援護してくれ、その後佐世保に帰投して、待機してくれていた『赤城』。
WSのメンテ、装備の最終点検を呉で行っていた、『蒼龍』『飛龍』『加賀』。
北方で、アリゾナと一緒に警戒待機に当たってくれていた、『長門』『陸奥』。
新たに進水し、就役したのであろう、駆逐艦の『綾波』『陽炎』。
全ての艦が、一隻ずつ錨を下ろし、入港する。
「ゆ~う~ぎ~!」
俺の前に、袴と巫女服を掛け合わせたような姿、見慣れた姿の大和が走って出てくる、俺が大和の声に反応したことに気付くと、空は耳にpsをつける。
「おっ、大和久しぶり」
大和は、空の方に向いて、ちょっと不機嫌そうな顔をしたが。
「久しぶり、空、元気だった?」
空はうんとうなずき、海辺に近づく。
「大和、みんなはどうした?」
俺が聞くと、大和は艦隊の方を指差して答える。
「みんな三笠先輩と話してる」
三笠先輩?
「三笠のことは、先輩呼びなのか?」
大和は「うん」と大きくうなずき答える。
「だって、連合艦隊の栄光を作った旗艦の内の一隻だしね」
そう大和が話していると、後ろに見慣れない軍服の女性が立つ。
「おい大和、なぜこんなところにいる?」
その声は凛々しく響く、俺はその女性を上から足元まで見て確信した。
「戦艦『三笠』……」
髪は、茶髪のショートで丸まっている、日露戦争時代の海軍長官服を纏い、白いマントを羽織っている。
そして首からかけたネックレスの中央には、Z旗の模様が入っていた。
「む、もしや貴官が司令官であるか?」
三笠はこちらに向きなおり、敬礼する。
「私の名前は戦艦『三笠』、日本海大海戦時、連合艦隊の旗艦を務めたものだ」
堂々と、やや大きい胸を張り、三笠は言う。
「俺は戦線長官の有馬勇儀中佐だ、これからよろしく」
三笠と俺は、手を握り合い、敬意を示す。
「さて大和、三笠は、お前に用があるそうだぞ」
俺は逃げようとした大和の裏襟を掴み言う。
空は港に並んだ艦をぼーっと眺めて、こちらに興味はなさそうだ、まあ、空からは二人の姿が見えないからな。
「いや、良いのだ、司令に挨拶に行かなくていいのかと言いに来たが、司令がここにいたのだからな」
三笠がそう言って、後ろを振り返ると、そこには連合艦隊のWS、見たことある顔も、初見の顔も、三笠と大和を先頭に隊列を組み、敬礼する。
「「「連合艦隊、ただいま帰投しました!」」」
全員で、声を揃えてそう言った。
俺も、最大限の敬意をもって敬礼し。
「お帰り」
そう一言、たった一言みんなに呼びかけた。
暁の水平線に沈む夕日に、各艦は照らされ、おぼろげに浮かびだされる。
もう一度日本の海を守るため、大日本帝国海軍連合艦隊は、桜日国海軍横須賀港へと、錨を下ろした。




