Y計画とナンバーゼロ
「Y計画? ナンバーゼロ? 知らないね」
吹雪は、レンチを片手に首をひねる、俺は書類に書いてあったこの二つを、整備長の吹雪なら知っているかもしれないと思い聞いてみたが。
「そうか……」
吹雪が知らないなら、あとは兵器開発部に聞かないと分からないか……。
「開発部に聞きに行くの?」
空が、上についていたパイプをつかんで降りてくる、どうやらパイプ伝いに、この倉庫を回っていたようだ。
お前はここが、公園か何かと勘違いしているんじゃないか?
「空か、一緒に行くか?」
空は、ぶら下がっていた手を放し、3メートルほどの高さから飛び降りる、相変わらず超人的な運動能力は健在みたいだ。
「うん、私の装備返してもらいに行く」
そういえばメンテされてるのか……。
兵器関連は、吹雪率いる整備課が見るが、銃器関連は、自衛隊の銃器課が見るらしい、兵器開発部の倉庫は、銃器課の工廠の隣にあるのだ。
「行くか」
俺は、空と航空基地を出て、反対側にある研究、改修ドッグに向かった。
「やっぱでかいな、この基地」
俺は、横須賀湾に建てられた自衛隊、軍共同本部の省前で立ち止まる、空も同じように立ち止まりあたりを見渡す。
「港、宿舎、会議室、工廠、滑走路にドッグ、完璧だね、全部そろってる」
そんなことをぼやき、再び俺らは工廠へと歩みを進める、空の銃も、計画の話も、工廠で働いている人に聞いた方が早いだろう。
「お邪魔しまーす」
俺と空は、ひとまず計画を聞きに行った、空が先に用を済ませろというのだ。
「おや、指揮官殿、よくぞいらっしゃいました」
白髪で白いひげを生やす、工廠長らしき人物が出てきた。
「実は、お聞きしたいことがありまして……」
俺が聞く前に、その人は答えてくれた。
「Y計画とナンバーゼロですね? ちょうど先日完成したばかりです」
話が早い。
俺と空は、工廠長に連れられ、工廠の奥に入る、ちなみにこの人は、兵器開発部、研究ドッグの管理者、永山栄吉さん、移動する途中で教えてくれた。
「これが、ナンバーゼロが示す、新鋭機です」
そう言って、電灯に明かりを灯す。
伝統が照らす先には、真っ白で、『F3』のような、『su30』のような見た目の、小型のジェット戦闘機があった。
「これは……」
「ナンバーゼロは、『零戦』を基にしたジェット戦闘機の開発指示でした、そこで我々開発部は『零戦』の機動性、軽量化の技術を応用し、作り出したのがこちら『Ⅿ―0Jジェット戦闘機』愛称は『ゼロ』、一様鹿児島の基地に試作機を、8月の半ばほどに送っています」
そう言って『Ⅿ―0J』、いや、『ゼロ』の説明を始める。
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『Ⅿ―0Jジェット戦闘機』
三菱紅葉エンジン搭載
最高速度マッハ2、1 巡行速度900㎞ 航続飛行可能距離2920キロ
機首 17ミリバルカン砲二門 両翼内蔵 20ミリFB弾機関砲を一門ずつ
対空ミサイルハルパー イ号照準追尾型三八式誘導弾
30式空対空高速誘導弾 04式空対空誘導弾
最大で六本ミサイル搭載可能
従来のジェット戦闘機よりも装甲が薄く、ミサイル防御の性能が低い代わりに、強力な機関砲と機動性を実現した、垂直離着陸は不可能だが、滑走路距離が短いため、『いずも』や『かが』にも搭載可能な艦上機。
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俺は新たな『零戦』の姿を見て感嘆する。
これを、空自の連中が使いこなせるのだろうか? だが従来のジェット機とコンセプトは違うものも、性能面ではかなり優れている、まさに現代の『零戦』とで言うべきか……。
しかしFB弾機銃まで着けるとは……余程、この機体に格闘戦をしてもらいたいようだな。
FB弾とは、ファイヤーバレット弾の略で在り、通常の破砕榴弾に、特殊な酸が混ざっている弾だ、命中した際、その酸が機体の装甲版やボディーを溶かし、中に詰まっている徹甲榴弾が内部を破壊する。
「これ、何機作るつもりなんだ?」
「現在は150弱の量産を計画しています」
「……なら欧州遠征までに、空母分は頼む」
永山さんは頷き、もう一つ隣のドッグへ案内する、次のドッグは航空機の倉庫ではなく艦用のドック、そこには……。
「なんだ……これ……」
そこには、護衛艦と言えず、イージス戦艦とも違う、巨艦が存在していた。
「イージス戦艦、いやそんなサイズじゃない……この艦、この戦艦は、一体何なんですか……」
永山さんはにやりと笑い、答える。
「『攻撃用イージス戦艦やまと』、これがこの艦の名前になります、Y計画の目的です」
俺は、『やまと』のそばに置いてあった設計図を見て驚き、読み上げる。
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攻撃用イージス戦艦『やまと』
全長198m 最大幅28m 最高船速29ノット 巡航速度22ノット
主砲 45口径46センチ単装対艦砲 一門
側面砲 72口径10センチ速射砲、方弦三基三門、両弦六基六門
CIWS ファランクス、片弦六基、両弦十二基
ⅤLS 20セル
魚雷 68式四連装短魚雷発射管二基
護衛ヘリ SP44二機搭載
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空もそれを聞き、目を見開く。
「今ある装備、全部詰め込みましたって感じの艦だね……ほんとにこれ動くの?」
46センチ……『大和』の主砲と同サイズだ……そんなものをイージス艦に乗せたのか……率直に言って頭おかしいぞ。
「この艦の試運転はいつだ?」
俺が聞くと永山さんは。
「来週の観艦式です」
そういえば来週観艦式か……同時に進水式を行うのか?
「この艦は軍に知らせずに政府が指示した艦なんです、ですから来週まで通常の兵には知らせないようお願いします、後この艦の進水式は行いません、まるで最初からいたかのように使ってくれ、とのことで防衛省より言われています」
『やまと』は政府の指示か……政府は何を考えているんだ? 防衛以外は、軍に任せることになっているのに、攻撃用のイージス艦なんて……。
ただまあ進水式をしないのは賛成だ、万が一そこを、敵や反戦の人たちに狙われたら、たまったもんじゃない、都市伝説は増えるだろうが……。
そんなことを考えながら、俺は『やまと』を見つめていた。
「お前も、いつか沈む日が来るのか?」
――――――俺は、誰にも聞こえないほど小さな声で、そう投げかけていた。




