表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ウェポンスピリッツは未来に継げる!  作者: 古魚
亜細亜電撃作戦編
42/340

鉄騎兵たちの舞

現在、9月7日、15時45分、作戦思考中。



「で、どうすればいい?」

「少し待て、今考えてるんだ……」


 航大は無線機越しで俺に聞いてくる。


 敵の数は十三、味方の数は十三だったがさっきの奇襲で『74式』が一輌撃破、先行させていた『BT』もいつの間にか撃破されていたため十一。


 現在はこちらが数的不利だ。


「だがこちらには『ティーガー』がいるから……『ティーガー』を先行させて様子見、『ハウンド』が出てくるようならそのまま潰してもらって、重戦車が出てくるなら後退しながらダメージを与えてもらう……ともかく、いかに『ティーガー』を使うかが大切だ……」


 そう呟きながら、指先で地図をなぞる。

 この一帯は、市街地ではなく農村地帯のため畑や獣道が続くばかりで、壁にできるような建物は存在していない。


「そしてこっちは『プーマ』四輌と『74式』を向かわせるか……『74式』のAPFSDFなら、戦中戦車ぐらい軽く破れる」


 『74式』は現主力ではないとは言え、『10式』が十分な数揃うまで主力だった戦車だ、WSに比べれば性能は勝る。

 相手が中戦車となればなおさらだ。


「それで、残りの『T―34』と『BT』戦車、それと航大の乗る『Ⅳ号』戦車を出す、これで重戦車三輌を徹底的に叩く、この方針で行こう」


 俺は通信機の向こうに居る航大に伝え、『T―34』の中に入る。

 そこでは運転席にルカ、砲撃手席に空、通信手席に吹雪が座る、俺は車掌席だ。


 この『T―34』はルカが自分で改良したらしく、一人でも操縦、射撃、装填ができるようになっているらしい。

 現在のロシアMBTは、装填・射撃を全自動で行えるため、これくらいの改良は朝飯前だろう。


「さて、俺たちの目標は『スコルピオン』だ、気を引き締めて行こう、吹雪、全部隊に打電、全軍『ティーガー』に続け」

「了解、全軍『ティーガー』に続け、打電します」


 それを受け戦車たちは陣形を組み始める、今回は『ティーガー』を信頼しているからこそできる作戦だ、陣形はこうなっている。


          Ⅳ号 BT

       T34  BT  BT

正面 ティー

       74式 38T 38T

         38T 38T


 正面の『ティーガー』が、突っ込んで来る『スタッグハウンド』を一身に引き受け、後ろから詰めてくると思われる、中、重戦車を二部隊で分かれ各個撃破を狙う。


「『ティーガー』より打電……何これ?」


 吹雪が首をひねる、それを見て、ルカが答える。


「ああ、それはドイツの暗号文だな……敵車輌を見つけたみたいだぞ」


 それを聞いて、吹雪が頷く。


「あれドイツの暗号文なのに、なんでルカさんは読めるの?」


 吹雪が問い返す。


「ヨーロッパの国の連中と仕事をしたとき困るからって、本土の情報課に、無理矢理勉強させられたのさ」


 ドイツの暗号電文、ロシアに筒抜けなのか? それとも共有しているのか?


 まあ、そんなことを今考えている余裕はないのだが……。


「そんな悠長なこと言ってないで、早く散開の打電してくれ」


 俺が呆れ半分に言うと、吹雪は「はーい」と返事をして通信機に向き直る。


「全部隊に打電、全軍突撃セヨ!」


 吹雪は全軍突撃を意味する、ト連送を全車輛に打電する。


「さて、俺たちも分離だルカ、頼むぞ」


 そう言うと、操縦席に座るルカはぐっと親指を突き立てる。


「空、敵の『スコルピオン』は固い、装甲が薄いエンジン付近と車体下部を狙い続けろ」

「あいよ、任せておいて」


 で、俺は吹雪に無線機を借りて、航大に繋ぐ。


「おーい生きてるか~」

「うるせえ! 戦ってもいないのに死ぬか!」


 相変わらず威勢のいいこった。


「はいはい、そっちの『ティノザウリア』は強敵だ、いくらⅣ号がいるからって油断すんなよ」

「分かってる、そっちこそ油断して頭ぶち抜かれましたじゃ困るかんな」

「へえへえ、分かってるよ」


 俺はそう言って通信を切る。

 その直後前方で、発砲音と甲高い金属音が響いた。


「お、『ティーガー』が始めたみたいだな」


 軽快な発砲音は『ハウンド』の発砲音、甲高い金属音は、その弾を『ティーガー』の装甲が弾く音だ。


 俺の予想通り『ハウンド』が先行してくれたおかげで、『ティーガー』をぶつけることができ、数的不利を覆すことができそうだ。





「そんなちんけな砲で、天下の『ティーガー』さまの装甲が抜けると思うな!」


 ゆっくりと『ティーガー』は前に進む、余裕と貫禄を醸し出しながら。


「砲手、確実に仕留めろ」


 『ティーガー』の目的は『ハウンド』の標的となること、それを果たすために、あえてゆっくりゆっくりと動いているのだ。


「復活してからの第一射目、じっくりと味わえ!」


 そう砲手が言って引き金を引く。


 撃ちだされたアハトアハトの砲弾は、高速で動き回る『ハウンド』に吸い込まれていく。


「命中! 撃破だ!」


 命中した砲弾は『ハウンド』の装甲をぶち抜き、内部から根こそぎ爆発させた。


「このままいくぞ!」





「さすが『ティーガー』、『ハウンド』なんかじゃ相手にならんな」


 Ⅳ号はそう呟く。

 やはり同じドイツ戦車として、何か感じるものがあるのだろうか?


「俺たちの目標は重戦車だが……まだ見えないな」

「当たり前だ、敵重戦車は本陣、そうほいほいと前線にはでてこないはずだ」


 そんなことを話していると、『ティーガー』よりも遠い位置で、鋭い発射音が聞こえる。


「対中戦車組も始めたな」


 この鋭い発射音は『74式』戦車のものだな。


 今の陸自主力、『10式』戦車の旧式車輌だが、アナログから発揮される安定性は決して引けを取らず、絶対的な強さを発揮する。




「行くぞ! 戦車小隊、久しぶりの『74式』だ!」


 いつもは『10式』に乗っている乗員たちだが、今回の作戦で用意されたものは『74式』だったため、乗員にとっては久しぶりの乗車だった。


「照準よーし!」


 砲手がそう叫ぶ。


「よーし、お久しぶりの105ミリ砲弾、しかと味わえ!」


 パシュンと鋭い音で発射された砲弾は、勢いよく『バレンタイン』に向かっていき側面装甲を貫徹、そのまま弾薬を誘爆させた。


「命中! 老兵舐めんなよ!」


 その後ろからは『プーマ』の援護射撃が飛ぶ。

 これによって、『74式』に照準を合わせていた『バレンタイン』が動き、照準を狂わせる。


「逃がさねえぞ」


 砲塔を旋回させ、照準器の中心に『バレンタイン』を押さえる。


「もっぱつもってけ!」


 再び105ミリの鋭い砲弾が、『バレンタイン』を襲った。




 さて、向こうは大丈夫だな。

 俺は双眼鏡で状況を確認して、そう確信する。


「で、こっちだが」


 俺は通信機を取る、ザザーと砂嵐のような音が聞こえる。


「航大……だ……で……け」


 勇儀からの通信は途切れ途切れになっている。


 これは……。


「すぐ近くに奴がいるな」


 Ⅳ号が言った直後、車体のすぐ脇にエネルギー弾が着弾した。


「あっぶね!」


俺は砲塔のスコープを覗き込み敵影を確認する。

 その直後発射炎が上がった。


「Ⅳ号! 左に切れ!」


 俺がそう叫ぶと車体が大きく左にそれ、その直後戦車のすぐ右脇に土煙が上がる。


「Ⅳ号、そのまま左に流れて勇儀たちから『ティノザウリア』を引き離す」


 俺がそう言うと、Ⅳ号は左に車体をそらしながら。


「分かっている、こいつは俺達だけで片付けるぞ」




「航大は『ティノザウリア』のタゲを取ってくれているみたいだな」


 俺は頭を出して、双眼鏡を覗きながら言う。


「『BT』も散開して『チャーチル』に向かった、私たちは『スコルピオン』に集中できるぞ」


 ルカがそう言いながらハンドルを右に切る。


 『BT』が全速で前に出て『チャーチル』に向かっていく、左方向には『Ⅳ号』を追いかける『ティノザウリア』。


 『Ⅳ号』を『ティノザウリア』が追うのは予想済みだった。

 『ティノザウリア』はおそらく敵部隊での最高火力、狙うならば一番新しい『74式』、もしくはWSの最強格である『ティーガー』。 

 そして、WSの魂が入った『Ⅳ号』、このどれか。


 現在『ティノザウリア』の前に立っているのは『Ⅳ号』、なら素直に『Ⅳ号』を追うのが妥当だと敵も考えたのだろう。


「さて、そろそろ良いか」


 ルカはギアを下げ、速度をやや落としながら反転すると、こちらを追いかけてきた『スコルピオン』の砲塔と向かい合う。


「勝負開始だな」


 俺がそう呟くと、互いの砲塔からほぼ同サイズの砲弾が撃ちだされ、互いの左右に着弾する。


 それを合図に互いの車輌は動き出す。

 こちらは中戦車、スコルピオンは重戦車、のはずなんだが、敵も動きはそれなりに軽快だ。


「ルカ、そのまま左に回りながら、敵の背後をついてくれ」


 俺は頭だけ車輌から出し、状況を把握する。


「空はそのまま砲撃続行」


 空は何も言わない、集中しているのだろう。

 そんな中、敵の砲弾が『T―34』の正面装甲を叩く。


「うお! あぶねえ、敵弾、砲塔左正面に命中、だが弾いた!」


 俺がそう報告すると、空が血相変えて叫ぶ。


「有馬! 頭下げて! 死ぬよ⁉」


 どうやら心配してくれてるようだ。


「大丈夫だ! お、敵の履帯付近に命中!」


 俺がそう空に伝える。

 そうするとわずかに砲塔が動き三発目、徹甲榴弾が敵のエンジンにめがけて飛んでいく。


「さすがに一発じゃあ止まらないか」


 俺は煙を上げる『スコルピオン』を眺めながら呟く、その証拠にまだ、敵の砲塔は動いている。


「ルカ、側面に回り込め、多分あいつはもう動けない」

「了解」


 ただそれだけルカは返し、アクセルを踏み込む。

 砲塔がこちらを追従しようと回転するが、車輛の動きに完全にはついていけない。


「これでーおっしまい!」


 そう空が叫び引き金を引く、撃ちだされた砲弾はすぐに敵車輌に着弾した。


「命中確認、敵撃破だな」


 今度は砲塔側面を抜き、射撃系統をぶち壊したのか、完全に『スコルピオン』は動きを止めた。


 その頃、同じく舞を終えた鋼鉄の騎兵たちは、静かに砲身を下に向け、後一輌の舞が終るのを静かに待っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ