旧友との再会
「見つけたぜぇ『スタッグハウンド』」
私はそう言って、エンジンのギアを全開まであげ、射撃用のレバーを引き寄せる。
「あいつに一発デコピンする前に、殺されちゃ困るんだよ!」
私はそう言って射撃レバーを引く。
そうすると、85ミリの爆音を立てて一直線に飛んでいく。
「随伴『BT』、しっかり狙え!」
「「「「ypaaaa!」」」」
いい気合だ。
私はそう思いながら、また敵車輌の方を睨む。
敵の砲塔は完全にこっちをとらえ始め、発砲のフラッシュが目に入った。
「きかぬわ!」
正面装甲に一発命中するがはじき返す。
たかが『ハウンド』如きの砲で『T―34』の装甲が抜けると思うなよ、あの『パンター』の砲ですら受け止めることができる『T―34』の装甲を。
「まあ、これで終わりだな」
私は再び射撃のレバーを引く。
その弾は見事に一両の『ハウンド』に命中し、大きな火柱が上がる。
すると、それを見た残りの数量が向きを変え、退避行動に移ったため、砲撃を中止した。
「待ってろよシューカ、久しぶりにお前の顔を拝んでやるからな!」
私はそう言って、列車の側面に戦車を並べ、同行を開始した。
現在、9月7日、12時02分。
現在列車を止め昼休息をとっている。
戦車の整備、武具の手入れも同時に行う、ここを怠ると、目標「お堀」を突破する際に支障が出る。
「まったく、いいタイミングで合流できたな」
合流したのは、北欧の『BT』戦車四輌と『T―34』、クロイツの『プーマ』四輌と遅れてやってきた『Ⅵ号戦車ティーガー』。
どうやら、キューブはやられたらしいが本体は無事だったそうで、調子を見る為、盾役としてこの戦場に投入されたらしい。
そんな『ティーガー』を眺めるⅣ号が、俺の視界には映っていた。
「まったくだね、同志には感謝しないと」
空はそう言って、被っていた帽子を外す。
今の俺たちは、陸戦用の動きやすい迷彩服で、空は中尉、俺は中佐の証を胸につけている。
「まさかシューカに感謝されることになるとは、おっと今は空だったか」
俺と空はその声に振り返る。
そこにはロシア戦車兵の軍服を纏い、黄色っぽい栗色の髪を、後で縛りこぶにしている女性がいた。
「げ、ルカ、なんでこんなところに!」
空がそう言って、引きつった顔をする。
おや? 知り合い?
「何がげ、だっ!」
ルカと言われた女性は、そう言って空のことを持ち上げる。
「空、お前何かやったのか?」
俺は、持ち上げられた空を見つめながら聞く。
「ああ、こいつはなぁ、私達戦車部隊の獲物を片っ端か奪っていきやがった、おかげで私達の戦果はいっつもゼロだ!」
そう言って、空の頭にデコピンする。
「あうた!」
変な声で、空は悶える。
「ほう、詳しく聞こうか」
俺は空のロシア時代のことに興味を持ち、この女性に聞いてみることにした。
「ああ良いだろう、そうだな……」
少し考えて話始める。
「ある時、敵戦車部隊発見の報告が私達、第十二戦車大隊に来たんだ、私達はしばらく戦っていなくて腕がなまっていた、久しぶりの戦闘だと皆張り切っていたんだがな」
そこで、空がちょっかいだしたんだろうなあ。
「こいつがなぜかその戦車部隊の付近にいたらしく、上の連中が空を先に送り込んだんだ、そしたらなんだ、私達が到着した時には完全に動きが止まった戦車、ナイフと手榴弾を抱えたシューカが居たんだ、どうやってそれだけの装備で戦車を倒したのか聞いてみたらだな……」
ナイフと手榴弾か……まあ普通に考えて、それだけで戦車部隊に殴り込みにはいかないよな。
「中に入りこんで乗員を皆殺しにしたと言ってきたんだ、おかしいだろ? なぜそんなことをするのかわからんし、そもそもなんでそんなことできるのか意味不明だ」
空は半笑いで女性にぶら下げられている。
すでにもがいて脱出することはあきらめたようだ、それからしばらくの間、空の武勇伝? を聞き続けた。
しばらく経って、女性は空を持つ手を離した。
「さっきのことに恩を感じ、今話したことを反省してるなら、私の『T―34』拭いてこい」
そうすると空は、しぶしぶと布を取り、戦車の方へ向かった。
「で、挨拶が遅れたな」
ルカと言われる女性は被り物を取り、結んでいた髪をほどく。
「私は北欧モスクワ連邦、第十二戦車大隊隊長、ルカ・ジュペッタ少佐、『T―34―85』が私の専属車輌だ」
そうその女性は名乗った。
「俺は有馬勇儀、戦線長官で中佐だ、普段は海軍で戦艦『大和』に乗っている」
俺もそう名乗る。
というか戦車大隊のうち一つは女性に任せいてるのか、相当人手が足りないのか? それとも、ジュペッタ少佐が特別なのか?
「『T―34』に、魂的存在はいるのか?」
俺が何となくそう話すと、ピクリと眉が動く。
あ、やっぱり知っているんだな……それなりに階級が高いから知っていると思っていたが。
「そう言えば、有馬殿はWSの魂が見えるんだったな」
ジュペッタが言う。
「ジュペッタ少佐、俺の素性をご存じで?」
「ルカでいい」
そう返された。
「なら自分も有馬でいい」
反射的に、俺はそう返した。
「有馬のことは世界中の軍隊が知っている、まあそれでも、それなりの地位を持ってる軍人のみだがな」
そうなのかぁ、俺の名はそんなに轟いているのかぁ……あんま嬉しくない……。
「で、『T―34』の魂だが、詳しいことは軍事機密だ、ただ、一つだけ言えるとしたら……」
ルカは、戦車の方を向き言う。
「この事実を知った時、お前の顔はどう変わるのだろうな」
そういってふっと笑う、その笑みはどことなくWSたちに似た笑み……どこか冷たく、悲しい笑みに見えた。
「おい、どういう意味だ?」
そう俺が聞き返すが、ルカは再び戦車用の被り物を頭に乗せる。
「空は返す、大事にしてくれ」
そんな部品みたいに言うなよ。
「これから何気に関わるだろうから、よろしく」
そう手をひらひらと振って行ってしまった。
「一体なんだ?」
俺の顔がどうなるのか見もの? いったいどういう意味なんだ?
俺はルカの残した言葉の意味を頭の中で反復させたが、その意味は、昼休憩が終る時刻になっても分かることはなかった。




