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ウェポンスピリッツは未来に継げる!  作者: 古魚
亜細亜電撃作戦編
36/340

藍色

現在、9月3日、07時00分。


 俺たちは、パプア港を出港する。


「ご武運をお祈りしています」


 明野さんがそう言って俺達『大和』率いる輸送部隊に敬礼する、そうすると後ろに並ぶ兵たちも、倣って敬礼する。


「ありがとうございます、行ってきます」


 俺もそう言って敬礼する。

 そうすると、こちらの数千名もならって敬礼し、艦たちは汽笛を上げる。


 いよいよインドに向かう時だ、向こうに着いたら約三日で、インド軍の救出、敵車輌部隊への打撃、この二つを完了し、日本に帰投する。

 今回の作戦はスピード勝負だ、敵の本陣が出てくる前にことを済まさなくてはいけない。





「さて、またしばらく船旅か」


 出港してから数時間、俺は相変わらず艦橋に居る。


「そうだな、早くてもインドに着くまで四日はかかるやろな」


 航海長の三浦長官は言う、意外にも道中は安全安心でインドへ向かっていた。



 だがしかし、最後の最後で問題は起きた。




現在、9月7日、08時00分。




 もう目と鼻の先にインドが見えた時だった。


「あと少しで港、速力を落としましょう」


 俺がそう言うと、三浦長官は連絡管を通して機関室に連絡する。


「両舷前進微速」


 大和の進む勢いが弱まっていき、切り裂く波が小さくなっていく、そんな時嫌な報告が艦橋に届く。


「対空電探、航空機多数探知! エンジン音から見てプロペラ機! 右上空約五十!」


 その一声につられ、俺は空を睨む。


「最悪なタイミングだな」


 凌空長官が舌打ちをする。


「各員第二種戦闘配置! 対空戦闘!」


 俺はその一声を放ち、空母の二隻に目を向ける、すでに『赤城』から量産の『零戦』15機、プライズから量産の『F4F』14機が発艦している。


「機種判明! 『S型艦攻』二十、『S型艦爆』十五、『N型艦戦』八!」


 スピード重視の部隊だ,輸送船の破壊を目的としているな……。

 しかしWASも甘かったな、本州近くでも航空機を撃退しているだからビビらず水雷戦隊を送ればよかったものを、選択を誤ったな。


「この程度なら、レシプロ機だけで対処できるな」


 そう言っていられたのは束の間だった。


「IFF識別応答なし! 新たな敵機後方より、双発中型の低速ジェット!」


 その一声で俺は気付いた。


「双発中型で、低速……『ルーク』か!」


 『S3ルーク』、WASのジェット攻撃機、搭載爆弾量はそれほど多くないが、対艦に有効な73㎝と言うバカでかい魚雷を抱ける、米海軍が護衛艦を多々失うことになった原因だ。

 はたから見たら『MiG―25』の用だが、性能は全く違う。


「まずい、あいつはプロペラ機じゃ手に負えん」


 浅間副艦長が言う。

 あいつの最高速度はマッハ1,6越え、『零戦』達じゃ追い付かない。


「後部カタパルトより連絡! 『桜花』が勝手に射出体制に入っています! クレーンの操作が不可能! 止められません!」


 何⁉


「桜花! 何をしている⁉」


 俺は、急いで桜花に通信を入れる。


「止めないでください!」


 そう言って、後ろからロッケトエンジンの咆哮が聞こえ始める。


「貴方が私に戦う術をくれました、だから私はこの艦を、貴方を守るために戦います」


 俺はなお止めようとするが、それを大和が止め、


「いかせてあげて、今は勇儀が桜花を信じてあげて」


そう言った。


 その言葉に俺の心は動かされた、『信じてあげて』か……。


「……分かった、桜花の発艦を許可する……ただ、生きて帰ってこい」

「了解です……必ず、戻ります」


 俺はカタパルトの整備員に、桜花の発艦を進めるよう指示する。

 

 暫くして、発艦準備が完了したことを整備員が報告してくれる。


「『桜花』! 射出準備完了!」


 それに続いて桜花が叫ぶ。


「『桜花』、発艦します!」


 その言葉と同時に、カタパルトから勢いよく一本のロケットが飛び出す。


 その機体は一直線に敵機の方角に向かう、いままでは艦にぶつかり終わりだったが、今の『桜花』は違う、機首を上げ勢いよく上昇した。


「頼んだぞ、桜花」


 そう言って、桜花を空中に残し、俺たちはインドの港に錨を下ろした。





「急げ! 時間がないぞ!」


 そう怒鳴り声が響く、止まっている間を航空機に狙われたらひとたまりもない、戦闘機が足止めしている間に荷揚げを終了させないと、重要な護衛目標に被害が出かねない。


「全輸送艇、荷揚げ終了しました」

「よし」


 俺は、報告を聞いて自身の鞄を背負う。


「行ってきます」


 俺は長官たちと大和に敬礼する。


「生きて……生きて帰ってきてね」


 大和はそう俺の目を見て言う、俺はそんな大和の頭を撫で、頬に触れる。


「大丈夫だ、あと、桜花の事頼んだぞ」


 大和はうんとうなずき、すっと姿を消した。


「全部隊、前へ! 合流地点まで前進!」


 そう俺は指示を飛ばす。

 そうすると、『Ⅳ号』戦車率いる戦車部隊が、ゆっくりと前進を始めた。




 私は、窓の外で荷揚げを終えた『大和』達を見る。


「大丈夫みたいですね」


 私は、そのままエンジンを加速させ、敵機に向かった。


「見つけた!」


 私の照準に三機の大型機を定める。

 その腹には、見慣れた九三式61㎝よりも数段大きい魚雷、22式73㎝航空魚雷を抱いている。


 もちろん、私が飛んでいた大戦中の魚雷ではなく、近年日本が極秘で開発していた雷速49ノットの高速魚雷、しかし研究結果をWASに盗まれてしまったらしい。


「大和さんたちを襲わせはしない!」


 私は射撃レバーを構える、それと同時に三機は散開する。

 まずは右側に向かった敵を追う。


「そこ!」


 敵機の下に回り込み、照準の真ん中に敵機が来た瞬間20ミリ機銃を発射する、鋭い連射音が響き渡り私は身を翻す。


「さすがに一連射じゃ落ちませんか」


 今度は敵機の上空へ上がり、急降下の姿勢を取る、しかし、敵機もやられっぱなしではなかった。


「そこから撃ってきますか」


 機体を急停止させながら機首を上に向け、機首下に着く銃口から機銃弾を発射する。


「そんなもの当たりません!」


 私はくるくると機体をドリルのような機動で回し、機銃弾を躱す。

 敵の機銃弾が止むと、再び20ミリ機銃を叩き込む。


「撃墜確認」


 そう言って次の機体に移ろうとすると、背後に敵機が回り込み、細いミサイルを発射した。


「っ! 空対空ミサイル!」


 敵のうち一機は、魚雷ではなく空対空のミサイルを積んでいた、そのうちの一本が、私めがけて発射されたのだ。


「何をこんなもの!」


 私はエンジンをフルで動かし宙返り、ミサイルの追尾を外し、そのまま後方へ回り込む。


「次はこっちの番です」


 回り込んだことで敵機と正面から向き合った。


「墜ちろおおお!」


 気合を乗せながら敵機に20ミリ機銃をばら撒く、しかし負けじと敵機も、私に機銃を撃ちだす。

 何度も、機体を擦る音が聞こえる、それでも負けるわけにはいかない!


「らああ!」


 私はぎりぎりまで近づいて、40㎜超電磁砲を敵機にぶち当てる。

 そうすると敵機は、煙を上げて海面へと近づいていった。


「二機目撃墜!」


 私は機体を左にそらす、もう一機の魚雷を抱いたジェット機を墜とす為だ、しかし私が狙う機体はそこにはなく。


「しまった!」


 三機目は、私が別の機体に集中している間に、私の背後に回り込んでいた。


 まるで時間が止まったかのように周りの景色が流れる、私に向かってくる敵機の機銃弾、回転するバルカン砲の銃身。

 私が敵艦へと命中する時にも、同じような感覚になったことがある。


 ゆっくりと、背後から迫って来る機銃弾を感じながら目を閉じようとする。


――――――だが。


『生きて、帰ってこい』


 あの人の声が、頭の中で反復する。


「散って……たまるか!」


 時間が再び動き出す。


 私はエンジン質力を最大まで上げ、全力で機首を下に向ける。

 数発の機銃弾が羽を貫きエンジンを叩く。

 だが負けない、私は負けない、あの人が、死ななくとも戦える戦場を用意してくれたから。

 

 全力でエンジンをふかし、一度弾を避けた後は回避機動を取らず、己のスピードだけを信じて直進を続けた。


 2300……2600……2700……。


 速度メーターは凄まじい速度でメモリを刻んでいく。


 2800……2900…………3000!


「上がれええええええ!」


 時速3000キロを超えた瞬間、操縦桿を思いっきり引き寄せ急上昇に入る。

 たった数十秒で、飛行高度は4000から9000へと到達した。

 後ろを振り返っても、敵の機体は私を追尾できていない。


「好機!」


 私は機体をそのまま宙返りさせ、高度を上げようとする敵機に照準を定める。


「墜ちろ!」


 機首から40ミリ超電磁砲が発射され、敵の右翼付け根から侵入、機体を斜めに切るようにしてエンジンを貫いた。


「やった……勝った……」


 私は燃え墜ちる敵機を見届け、機体を水平に戻した。

 一呼吸おいて、窓の外を見ると。


「藍……」


 そこには、雲一つない藍色の空が広がっていた。


「海面の紺とは、また違った美しさですね」


 その藍色は、私が見てきた海の紺よりずっと――――

                 

     ――――***な色だった

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