間章 最強歩兵の起床
「民間の医者を建物の奥へ! 衛生兵は武器を取れ、玄関を固めろ!」
「動ける負傷者にも武器を渡しておけ!」
何か声が聞こえる。
「支援航空部隊、機銃掃射!」
「ダメだ! 病院が近すぎて突っ込めないんだ!」
しかも銃声も聞こえる。
「陸自が来るまで持ちこたえろ! ここには民間の医者もいるんだぞ! 死ぬのは俺たち軍人だけで十分だ!」
死ぬ? 民間の医者? ここは本土の病院なのかな?
まあいいや、体も重いし、まだ私は寝ていよう。多分、誰かがなんとかしてくれるでしょ。
『空がいたら……』
……有馬?
『いやだめだ、何言ってるんだ! 空は硫黄島でもう十分戦った。これいじょうは酷すぎる!』
おかしいな、有馬の声も聞こえる。本土の病院に有馬がいる訳無いのに……硫黄島は奪取できただろうから、きっと今頃艦隊戦で敵を殲滅してる頃のはず。
『空、無事でいてくれ……』
そこで、私はゆっくりと目を開けた。
「……ここは、軍病院かな?」
ゆっくりと体を動かし、ベッドから降り、窓の外を見る。
「燃えてる」
段々と思考が冴えて来る。
「私、硫黄島の戦いの後気絶して、目が覚めたら横須賀基地が燃えてる……どうゆうこと?」
本土へと攻撃を受けているの? でも、それにしては小規模だ。
「お目覚めか?」
karの声が聞こえる。視線を落とすと、私が寝ていたベッドの横に立てかけられている。
「kar、状況を教えて。それから、有馬はここにいる?」
「いや、指揮官は今頃海の上で、あんたの身を案じてる頃だろうぜ」
そう言うと、karはナースコールを押す。
「まずは何か食って、体を多少なりとも動かせるようにしよう。食ってる間に、現状と、お前が今取れる選択肢を話す」
「なるほどね、状況は分かった」
看護師に頼んで持ってきてもらったおにぎりと若干のおかずをお茶で流し込み、karの話に頷く。
「ああ、それで、お前はどうする? このままここで待機してることが、多分望ましいだろうな」
「私が、それをできる性格だと思う?」
「だろうな」
「それに、どうやら有馬が私の身を心配して、無事を祈ってるみたいだから、ちゃんと報告してあげないとね」
「祈ってる、だなんて、なんでそう思うんだ?」
私はストレッチをして体をほぐしながら、karの疑問に答える。
「うーん? 愛の力かな」
「なんだそれ」
karの銃身に、一緒に置かれていた弾を装填する。弾は五発。流石に足りないから、味方に武器を貰おう。
「じゃあ行こうか。無線所を取り返して、私の声で艦隊に伝えてあげよう、『横須賀基地の敵は全滅なり』てね」
久しぶりに起きたし、なんなんら左腕はもうないが、多分ギリギリ戦える。空挺降下ぐらいの人数と武器なら、肩慣らしには丁度いい。
さあ、始めようか。私が起きたことを、愛しの彼氏に伝えるための戦いを。




