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ウェポンスピリッツは未来に継げる!  作者: 古魚
ハワイ奪還作戦編
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呉に帰る

 俺は防空指揮所でくだらない会話をしながら呉に着くのを待っていたのだが、予定より2時間早い22時に着いた。


 理由は不明、航海長が言うには、気象的には偶然。

 機関室の吹雪が言うには、調子が良かったらしい。


「うーん、久しぶり! 懐かしいなぁ」




 現在、8月27日、22時08分、連合艦隊呉に到着。



 俺たちは荷下ろしを始めていた。


「今日はいったん別れようか」


 大和はキューブを外さない限り、本体から一定距離離れると姿を保っていられないらしいので、俺は大和に別れを告げて『大和』を降りた。

 月明かりと工廠や倉庫から漏れる明かりで、辺りはそれなりに明るかった、そんな道をしばし進むと宿舎にたどり着いた。

 かなり和風な感じで作られていて、宿舎と言うより旅館に近い。


「すごいなここ」


 俺は用意された部屋に入る。

 他の人は三人や二人で部屋に入るが、俺は長官扱いなので、少し広めな一人部屋をくれた。

 ……いや、かなり広いな。


「一人で寝るにはもったいないぐらいだろ」


 俺が振り返るとそこには航大が、寝巻用の和服で立っていた。

 支給された部屋着だ。


「だから私たちもお邪魔させてもらうよ」


 航大の後ろから、空がひょっこりと顔を出す。


「ちょっと、私達も忘れないでよね」


 さらに、その後ろに吹雪と圭もいる。


「なんだ? お前ら、そろいもそろって」


 俺が聞くと、圭が部屋に上がり言う。


「全員でこれから集まることは少なくなるだろうからって、航大さんが」


 俺が航大の方を向くと、航大はいたずらっぽく笑った。


「まあな、今日ぐらい、348部隊全員で寝るのもいいだろ? 班長」

「……はぁ……分かったよ、入るといいさ」


 俺のその言葉を聞くと、一斉に部屋の中に飛び込んできた。


「ほんとに広いな、流石長官殿だぜ」


 そう航大は、座布団に腰掛け呟く。

 その隣で圭は、せっせとお茶の準備をしている、どうやらこの部屋には、湯沸かし器、湯飲み、茶葉、全て揃っていたみたいだ。

 一方女子たちはテレビを陣取り、ゲラゲラと笑いながらバラエティー番組を見ている、艦の中にテレビは食堂以外ないから、ゆっくり見れるのが嬉しいんだろ。


「お茶できましたよ」


 そう言って圭は、コトンと湯飲みを机に置き、座布団に座る。


「ありがとな」


 そう言って俺は茶を啜る。

 現在、22時40分、俺たちからするとまだまだ寝るには早い。

 

 というか、今の海軍は基本時間に緩い、夜に作戦行動をする場合なども多々あるから夜眠くなる習慣が薄い、人によって眠くなるタイミングがバラバラなのだ。


「とりあえず二人も座れよ」


 俺はそう言って、テレビの前に座る二人を座布団に座らせる、折角圭が入れてくれた茶が冷めてしまう。


「にしても、うちの部隊はどうしてこうも巻き込まれ体質なんだろうねぇ」


 そう空が零す。

 それを聞いた吹雪は笑いながら答える。


「私達、じゃなくて有馬が、巻き込まれ体質なんじゃないの?」


 それに航大と圭がうなずく。


「そうだな、訓練の時も長野の時も練習艦に乗ってた時も、さらにWSの件も、始まりは勇儀の言動がきっかけだからな」


 そんなことないと思うのだが……その場その場で、最適だと思う判断を下しているだけだ。


「ほんとですよ、長野の件に関しては、僕もう死ぬのかと思いましたよ?」


 そう圭は苦笑する。

 まあ実際、あの時の圭は14歳で、実弾訓練はしていなかったから怖がるのも無理はない、だが実際には心配無用でガンガン仕事してた気がするのだが……。


『ニュースのお時間です』

 

 いつの間にか、テレビはバラエティーが終わり、ニュースになっていた。


『今日の朝九時ごろ、千葉県の軍港が、空襲を受けました。どうやら空襲を行った飛行機は中国製のものらしく、日本海側から侵入してきたと見られており、自衛隊の防衛姿勢に不備があったのではないかと、疑問がぶつけられました』


 そんなニュースが流れた。

 俺たちは一度黙り、そのニュースに耳を傾け、流れる映像を見つめた、あの後政府と防衛相が、記者会見で詳しく話したようだ。


『今回の領空侵入および空襲の件ですが、万が一市街地に爆弾が落とされていたら、どう責任を取るつもりだったのでしょうか? これは、自衛隊の防衛に不備があったという事で間違いないですか?』


 記者はそう突きつけるように問いただすが、表情一つ変えずに防衛大臣の小堀さんは言う。


『自衛隊事態に、不備はございません、敵の機体が、初見のものだったため、対応が不可能だったのです、次回からは、同じ敵機が侵入することはございません』


 その一言で、周りの記者たちがどよめき、画面越しの俺たちは苦笑い。


『どうゆう事ですか⁉ 自衛隊に責任はないと逃げるおつもりですか⁉』

そう記者が問いただす。


「まあ、ちょっと言い訳がきついな」

「ここで引くと、記者のいいように言われるからな、多少は抗っておかないと」


 俺と航大はそうやって苦笑い。


 今回空襲を防げなかった理由は主に二つある。

 一つは鋼ノ翼によるステルス行為、そしてもう一つは、爆撃機たちの超高高度飛行。

 レーダーには鋼ノ翼で何とかし、高度15000m近くを飛行することで目視などでも見にくくする、そういう飛び方で空襲を行ったのだ。


『いいですか! 自衛隊の防衛の不備で、民間人に死者が出たらどうするつもりなのかと聞いているのです⁉ 今回日本の市街地上空を、敵の飛行機が通ったのですよ⁉』


記者が苛立って怒鳴る、それを聞いて周りの記者も。


『空襲の避難訓練も、防衛できないと知っているから行わせているんじゃないですか?』

『民間人への補償は? 万一空襲を受けた場合どうするんですか?』


 それを聞いて小堀さんは冷たく一言言い放った。


『ちょっと黙ってもらえるか』


 その一言に、並々ならぬ覇気を感じ、記者たちが一斉に押し黙る。


『いいですか、私達は今戦争をしているんです、家が壊された、生活に困る、それなら最低限補償金を出すと言っているでしょう? それで我慢していただきたい、それ以上を国に求めるなら、防衛費を跳ね上げさせたほうが早いのですが?』


 あーあ、ここまで来たら、明日はネットで防衛大臣叩かれるだろうな。

 ちなみに、今の日本の防衛費はGDPの5%となっていて、これでもいまだに高すぎると批判が飛び交っている。

 大きい声では言えないが、日本は2030年代から戦争特需で経済が緩やかに成長していたため、ほかの資金を大きく減らすことはなく、防衛費を5%まで上げることができた。

  

 それでも、足りない物は足りないが。


『な、そんな投げやりに! それでも日本を守る立場の人間ですか⁉ それに防衛費を上げるなんて、やっぱり国は戦争をしたがっているんじゃないか! 敵機が上空に入ったのも、自衛官個人の力不足が原因なんだろ!』


 そう記者が怒る、しかし大臣はその言葉に大臣は大きくため息をつく。


『ほらこれだよ、被害が出ないように防衛費を上げようと話をすると、戦争をしたがっていると言われ、上空を敵機が飛ぶと自衛隊の力不足を叫ばれる』

『そんな戯言に甘えるな! 言い訳が通用すると思ったら大間違いだぞ!』


 そう別の記者が怒鳴るが、大臣もマイクをどかし、怒鳴りだした。


『貴様らこそ甘えるな! 民間人に死者が出ないことを当たり前だと思うな!』


 その一言で、再び会見場は静かになる。


『これは戦争だ! 世界中の国が空襲を受け、民間人に少なからず被害が出ている、それなのに日本では、桜日は未だに民間人に被害が出ていない、それは何故か!』

『それは……』


 記者の一人が言葉を詰まらせると、大臣は続ける。


『わからんか! 自衛隊の防衛能力が突出して高く、軍が攻撃の芽を潰しているからだ!』


 その言葉を、笑いながらさっきの記者が言う。


『ふん、たかが数か月に一回しか起こらない空襲を防ぐことができない無能の集まりの、どこが防衛能力が高いだ』


 その言葉に、俺たちは湯飲みを握りつぶしそうになるが、圭が「落ち着いてと」止めに入る。


『今まで、2045年になってから、何度日本が空襲を受けたかご存じですか?』


そう大臣は問いかける。


『今日の一回と五月の一回で二回だろ、たかが二回を両方とも失敗するような……』


その記者が言い切る前に大臣は言った。


『29回です』

『は? 報告ではその二回しか受けていないと聞いているのですが、まさか妄想で話を進めているのではないですよね?』


 そうにやにやと記者が言うが、大臣はその記者に向かって資料を投げる。


『それは自衛隊の、観測課が記録したスクランブル発進の回数です、我々は基本的にすべての敵機を海の上で迎撃し、領空に入ったときのみ知らせました、確認したければ、日本中の基地に行って、資料を見てくれればいい』


 それを見て、その記者は笑みを崩す。


『し、しかし、嘘の情報を流していたというのは、よろしくないと思いますが』

『なぜわざわざ、国民を不安にさせるような情報を流さなければならない』


 その一言で、すべての記者の表情が固まった。


『空襲を何度も受けていると怯えながら生活するのは不憫だ、だから自衛隊は、常に最前線で日本の空を、海を、陸を守り続け、最低限必要な時だけ警報を鳴らしている、日本で過ごす国民が、戦争に怯えながら過ごすことのないように自衛隊や軍は戦っている、そんな自衛隊を無能と言うのは……私にとって……日本に住む者にとって……不愉快だ』


 最後の一言だけ強く言い放ち、会場は静まり返った。


 俺はニュースを消して、茶を飲み干す。


「気にしてもしょうがない、難しいことはお偉いさんに任せて、俺たちは戦うだけだ」


 そう言って立ちあがる、23時02分、もう浴場には誰も居ない頃か。


「俺は風呂に行ってくる、もう誰もいないだろうからな」

「お、じゃあ俺も行くか」

「なら僕も行きます!」


 と、男三人は大浴場に向かう、皆も風呂に入ってなかったのか。


「誰も居ないなら、私たちも行く?」

「そうだね」


 後ろに女子二人もついてくる、結局みんな同じタイミングで風呂か。


「一人でゆっくり入りたかったのに……」


 ぽつりと俺は、愚痴を零したのだった。




「あ~生き返るう~」


 そう航大が大きく息を吐く。

 親父臭いな。


「湯船につかるのは久しぶりですねぇ」


 圭もそう言って大きく息を吐く。

 『大和』には基本シャワールームしか用意していないため、確かに湯船につかるのは久しぶりだ。

 一様長官たちには小さい湯船が用意されているが、ほとんど使わず俺たちと同じシャワーを使っている。

 昔の『大和』には海水風呂があったが、今の『大和』は真水でシャワーだけだ。


「にしても、さっきのニュースどう思う? 勇儀」


 そう言って航大は、俺の方へ視線を向ける。


「どうって、どうだ?」


 俺は質問の意味が分からず、聞き返すと、航大が呆れるようにもう一度言う。


「お前はあのニュースを聞いて、なんか考えたかって聞いてんだ」


 あーそう言う事ね……。


「何も思わないさ、ただ事実だけを伝えれば良いわけじゃない、だからと言って、軍人や自衛隊の人間が貶されたり、馬鹿にされたりするのは嫌だが」


 そう俺は答える、正直俺は、世間の反応に興味はないが、貶されるのは不愉快だ、それ以外はどうでもいい。


「案外、有馬さんって一番軍人ですよね」


 圭が顔に湯をかけながら言う、なんだそれ? 案外軍人って。


「どういう意味だ?」


俺が問い返すと圭は笑う。


「有馬さん初めて会った時は普通の学生に見えたのに、今では長官として仕事しているのを見ると、軍人らしいなって、元からそうなのか変わったのかは分かりませんけど」


 なんだそれ……。


「俺は元高校生、現戦線長官だ、立場によって顔を分けるのは当然だな」


 流石に長官と言う立場で、高校生の振る舞いをするのはよろしくないと思っている。


「じゃあ今は、どっちの有馬勇儀なんだ?」


 航大の問いかけに俺は答える。


「348部隊班長、有馬勇儀、だな」


その答えに、俺たち三人は大きな笑い声をあげた。





「男子風呂は元気だねぇ」


 そう空はつぶやく、会話の細かい内容は聞こえてこないが、大きな笑い声が聞こえる、それなりに愉快な話をしているのだろう。


「ねえ、空」


 私は空の隣によって話しかける。

 近くに行くと、空の体の傷がくっきりと見える。


「どうしたの吹雪? こんなに近くによって」


 空はうーんと背筋を伸ばして聞く、私はそんな空の耳元でそっと囁く。


「覚悟は決まったの?」

「ぅひゃぁ⁉」


 空は変な悲鳴を上げてお湯に潜る、耳、くすぐったかったかな?


「なんで耳元で言うの!」


 湯船から顔だけ出し、こちらを睨む。

 私はその顔にお湯をかけて、話を続ける。


「日本に帰ってくる前に言ってたじゃない「吹雪の言ってた意味が分かった」って」


 空は、顔のお湯を払って座る。


「分かったとは言ったけど……」

「じゃあ言っておかないとでしょ? 私達は軍人、いつ死ぬかわからないんだから、できることはすぐにやった方がいいと思うけど? 後悔する前に……」


 私がそう空に告げると、空は自身の体を見下ろす。

 傷だらけの体を。


「こんな体でも?」


 確かに空の体は傷だらけだ、一般な女の子とは程遠い……でも、それでも……。


「あんたが好きになった人は、そんなことで人を選ぶ人なの?」


 私がそう聞き返すと、空はブクブクと泡を上げながら湯船に沈む、私的には、さっさとくっついてくれた方が楽なんだけどなぁ。

 私も湯船に沈みながら空の表情を見つめる。


 私は知っている、空が有馬に溺愛していることを、そして空自身もそれをわかってはいるが、受け入れてもらえるのか不安なのだろう。


 有馬は人を外見だけで選ぶ人ではないと分かってはいるが、それでも決心つかないのが乙女心というものだ、空だって兵士である前に女の子なのだ。



 戦場という名の地獄の中でも咲き誇る、今にも枯れてしまいそうな蒼花は、私の前で今、静かに揺れていた。

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