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ウェポンスピリッツは未来に継げる!  作者: 古魚
ハワイ奪還作戦編
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突撃



「総員! 進め!」


 長官が先陣を切り市街地に突入していく。

 『FG』を振り切り火砲陣地を叩くためだ。

 

 ここで足止めを食らうわけにはいかないので、荷物は輸送車両で運んでもらい、最低限自分の武装を抱え全速力で駆け抜ける。

 輸送車両を襲わせないために、歩兵は囮の役割も果たすのだ。


 『FG』は設定された範囲内で行動停止の命令が下るまで動き続ける、だからいつまで待っても、火砲陣地を取り囲む市街地に配置された『FG』が無力化されることはない。


「止まるな! 進め!」


 すでに数名が焼かれ、切り裂かれ、足を止めている。

 しかし振り返ってはいけない、足を止めれば犬の餌だ。


「畜生!」「shit!」


 俺の耳には、英語日本語かまわず悪態をつく声が聞こえてくる。

 あと少しだ、あと少しで市街地を抜ける、そんな時。


「あ! ああ!」


 俺の部隊の後ろを走っていた兵が燃えた、俺がいるのはちょうど中間の当たり、後方の人員が全滅したのか『FG』の視線を切れたのか分からないが、ここまで来たのは事実だ。


「クソ、もうここまで食い破ってきたか!」


 俺は『FG』に向かって適当に『89式』を撃つ。


「行け! 止まるな!」


 そう叫ぶと、他の兵たちはまた走り出す。

 俺は『89式』を構えながら下がる、無理なことは分かっているがここで時間を稼がなくては。


「クソ!」


 『FG』は俺に向けてとびかかり、ブレードで俺の首を狙う、俺はそれを紙一重でかわし、脚のあたりに『89式』を撃つが。


「やっぱり効かないよな!」


 いちばん装甲が薄いと思っていた足の装甲も『89式』じゃ効かなかった、『FG』は口を開き、火炎放射の準備をする。

 ヤバイ! そう思った直後。


「え?」


 鋭い飛翔音とともに『FG』の首が打ち抜かれた。

 倒れた犬はそのまま起き上がらない、よく見ると首から体につながるケーブルが切断されていた。


「……まさか」


 こんな狙撃をできるやつ、俺の知る限り一人しかいない。

 そいつの姿を探して、市街地の端にある時計台に双眼鏡を向けると、木製のライフルを構える空の姿、その隣には、それを満足そうに見つめるkarの姿があった。


「何してんだあいつは」


 重傷者ベッドにいたんじゃないのか? 俺はそう考えながら、また駆けだした。




 少し走るとほかの部隊と合流した。


 市街地をよけて側面から回り込んだ戦車部隊が先行して重装甲の敵を薙ぎ払い、火砲陣地を攻撃してもらいに行っているのだが、火砲の砲弾はまだ雨のように絶え間なく降ってくる。


「航大、聞こえるか⁉」


 俺が無線で『Ⅳ号戦車』に繋ぐと爆音交じりの声が返ってくる。


「なんだ! こっちは最前線で忙しいんだが!」


 『Ⅳ号戦車』は、戦車部隊の先導者パスファインダーとして、最前線を走る、忙しいのはごもっともだ。


「火砲陣地にたどり着けたか⁉」

「たどり着けてたら、そっちはそんなに忙しくないだろう! 野砲団体に足止め食らってんだよこっちは! おかげであと4500m地点から一歩も動けねえ!」


 なるほど、市街地に野砲がなかったのはこっちにまとめていたからか。


「いくつだ⁉」

「多分、十前後!」


 多いな! どんだけため込んでたんだ……。


「分かった! 航空支援を要請するから、あと三分耐えろ! 支援が終わったら、続けてくれよ!」


 そう言って通信の相手を、空母に切り換える。


「航空支援、座標4、5、4、1、目標野砲! 対空砲火注意!」


 火砲陣地から4500m、砲弾は来るだろうが、機銃弾はほとんど飛んでこないはず、航空支援を要請しても問題ないよな……。


 そんなことを考えながら再び足を進める、敵歩兵はほとんど襲ってこない、来るのは無造作に降り注ぐ砲弾の雨と自動人形による自爆特攻、機銃掃射だ。

 犬と違い自動人形の装甲は薄く、さほど賢くないため打ち破ることは容易、だがあくまで銃を撃つことはできる。

 たったそれだけの動作ができるだけで、簡単に人は殺せるものだ。





「おい! 各カード、まだ生きてるか!」


 俺は野砲に向けて砲弾を発射しながら無線を繋ぐ、スペード、クローバー、ダイヤは、すぐに返事が返るが。


「おい、ジョーカーとハートはどうした⁉」


 俺が、爆音に負けじと声を張り上げ聞く。


「ジョーカーは火砲に、ハートは野砲にやられました!」


 スペードから返事が返った、これで残りは、俺達含めて三輌だ。


「ダイヤよりプレイヤーに、後ろより航空機八機接近!」


 航空支援が到着したようだ。

 俺は後ろに双眼を向け、どれだけ爆弾を持ってきたのか確認する。


「『九九艦爆』が三機で……それぞれ『六番』二つと『二五番』一つ、『九七艦攻』六機で……『六番』六つの奴と『八十番』一つの奴で分けたのか」


 日本の昔ながらの爆弾は、0を一個取った数字に番をつけて呼ぶ。

 つまり、今味方が持ってきた爆弾は、『六番』60キロ、『二五番』250キロ、『八十番』800キロとなる、これだけあれば完全に野砲は沈黙してくれそうだな。


「プレイヤーより各カードに、航空支援が終わったら、全力で野砲をぶっとばせ!」


 俺がそう無線を入れると、正面に小さな『六番』が降り注いで砲を黙らせる。

 そこに追い打ちをかけるように『二五番』、『八十番』が野砲を吹き飛ばし、あるものは弾薬に当たって誘爆を起した。


「戦車前進!」


 指示を全車両に出し、ダメージを受けた野砲を叩く、もうさっきほどの砲弾は飛んでこなかった。

 ただ、空から襲う砲弾の雨は止まないようだ。


「どうせなら空から叩いてくれよ」


 俺がそうこぼすと、Ⅳ号が戒めるように言った。


「敵の火砲陣地の対空砲火は盛んだ、艦上機のみで攻撃するのは損害が多すぎる」


 俺は、へいへいと頷き顔を上から出す。


「うへー、ひでえありさま……」


 あたりは俺たちが打ち込んだ砲弾と、空からの爆弾によって吹き飛ばされた機械の腕や頭、足が散乱している。

 これが人だったらと思うとぞっとする。


「さて、あと4500m進むとしよう」


 野砲が止んだことで、後からちらほら味方の歩兵も出てくる、俺たちは火砲を避けながらまた前進を始めた。





「なあⅣ号」


 俺は車体前部につく機銃を構えながら聞く。


「なんだ」


「子供が人を殺すこと、子供が殺されることが、そんなに悪いことなんだろうか?」


 俺は聞く。

 俺の目線の先にはMGになぎ倒される自動人形、もしこの兵たちが俺と同い年ぐらいの兵だとしても俺は引き金を引ける、その自信がある。


「もしそれを肯定してしまったら、大人が人を殺すことを許しているようになる」


 そうⅣ号が言う。


「つまりどういう意味だ?」


 何が言いたいのかよくわからず聞き返すと、Ⅳ号は冷たい声で、しかしどこか悲しげな声で言い放った。


「人を殺すのは私達兵器だけで十分だ、それを操る人も、人同士で戦うことも必要ない、人が人を殺すことは間違いだ」


 Ⅳ号は、どうも反戦思想が色濃い気がする、まあべつに悪いとは思わない。


 俺は肯定も否定もせず、機銃を撃つことに集中する。

 そんな時、『Ⅳ号戦車』の隣を有馬が走り抜けていった。





 俺は航空支援が終了し、航空機たちが空母に帰っていくのを後方から確認した後、戦車たちが蹂躙した野砲陣地を通り抜ける。


「航大は大丈夫か? あいつくたばってないよな?」


 そんな言葉が自然と口からこぼれた。

 火砲の砲弾は前衛に集中しだしたのか、あまりこちらに降ってこなくなった、なので救急車両も呼び、前戦から運ばれてくる負傷者や道中で拾った負傷者を、ここで手当てしている。

 

 俺も一人怪我人を見つけたので、一度前線を離れここに運びに来たのだ。


「さて、前戦に戻りましょうかね」


 テントに運び終わった後俺は、負傷者の並ぶテントを後にした。

 俺がここでぐずぐずしていると歩兵が足踏みしてしまう、咲間長官率いる左翼突入部隊も動き出したみたいだしな。


「こちら有馬、今からそちらに戻る、状況を教えろ、繰り返す、状況を言え」


 俺が無線で前線の通信課に呼びかける、そうすると爆音と機銃音に紛れて声が返ってきた。


「こちら戦車隊に随伴する31小隊、状況を知らせます」


 戦車隊の随伴ってことは一番前か。


「戦車の機銃をフルに活用しながらゆっくりと前進中、火砲はほとんど当たりませんが敵機銃座が増えてきました!」


 陣地に近づくにつれて機銃座の数も増えたか、やっぱり戦車を先行させて正解だったな。


「了解、そのままゆっくりと進め、こちらもすぐ前線に戻る」

「了解!」


 そう言って小隊との無線は途切れた。


「急ぐか」


 俺はそうぼやき、少し足を進める速度を速める。

 俺の周りには、前衛の後受け役である後衛がじりじりと進んでいる、敵が後ろから回り込んできた時、前衛を攻撃させないためだ。


「後衛部隊隊長!」


 俺がそう叫ぶと、一人の兵が走って俺の横に立つ。


「これより自分は前線に戻る、後受けの前進速度を少し早め、このまま進んでくれ」

「了解」


 俺が指示を出すと、その人は無線機を使って俺の指示を各員に送った。

 それを確認して、俺は全速力で走り出す。

 前線に急いで、この目で状況を確認しないと落ち着かないのだ。




 それからしばらく走り、戦車隊の随伴隊、すなわち最前列の部隊にたどり着く手前無線が入った。

 前戦からの報告かと思い、通信を聞く。


「こちら有馬、何か?」


 後ろから圧巻の機銃音が聞こえる、さらに言えば、ちらほら火炎放射器の音も聞こえてくる、どうやら相当まずい状況の用だ。


「こちら左翼突入部隊、火砲陣地手前にたどり着きましたが、有刺鉄線と機銃座が邪魔で突入できません! さらに敵は火炎放射器を持っている模様!」


 破綻した。

 今回は正面から最初に突撃し敵の勢力を集中的に配備させ、開いた側面から咲間長官率いる突入部隊が陣地に侵入、混乱している隙に正面も突入、制圧するはずだった。

 だが敵は、側面にもばっちり防衛姿勢を築けるほど勢力を持っていたか。


「正面部隊も陣地に向かっている、合流して突入を目指す!」

「りょう、う、うわああああああ!」

「おい、どうした⁉ おい!」


 通信先で火炎放射器の音が聞こえた直後、無線が途切れた。


「畜生! 敵の正確な数が分からない、一体どれだけの機械歩兵がいるんだ⁉」


 俺は悪態をつきながら、目線にとらえた戦車の背後に回る。


「通信課!」

「はい!」


 俺が呼ぶと、背中に電話を背負った通信課の兵が横に来た。


「全正面部隊に繋げろ!」


 そう伝え、あたりを見渡す。

 ちらほらと倒れているものもいるが、一様部隊としてはまだ生きているようだ、正面は戦車の機銃で飛び出してきたものは小銃で貫く。


「繋がりました!」


 そう言って、俺に受話器を差し出す。


「こちら有馬、全部隊に告ぐ、左翼陣によると敵機銃と有刺鉄線で前に進めないとのことだ、よって作戦を変更、合流してから突入を目指す、俺は先行して左翼の指揮官と合流する、各自の判断で前進する速度を速めよ!」


 俺は伝令を伝え終えると、受話器を返す。


「お気をつけて!」


 そう通信課の兵は言って受話器を戻した。


「ありがとう、行ってくる」


 俺はそう言葉を残して『Ⅳ号戦車』の横をすり抜け、前線へと進んでいった。


「畜生、ひどい有様だな」


 俺は戦車の先に進み、目標である火砲陣地の小高い丘にたどり着いた。

 しかしそこに人影はほとんどなくまる焦げになった、人間だったものがそこら中に転がっている。


「まだ生きてる奴はいないのか……」


 俺は敵の機銃座に見つからないようこっそりと近づいていく、そんな時有刺鉄線の手前で隠れる長官の姿を見つけた。


「しぶとい爺さんだな」


 俺はそう言って、長官の隠れる穴の中に飛び込んだ。


「お疲れ、よくここまでこれたな」

「ええ、それはお互い様ですね」


 咲間長官は、敵が隠れながら機銃を撃つために掘った穴に、身を潜めていた。


「ほんと、ここからどうするかな」


 長官は『89式』を持たず、ハンドガンのグロック18と腰にぶら下げた日本刀だけだ、話を聞くと『89式』は犬に食われたらしい。

 そんな状況からどうやって生還したのか是非教えてほしいが、それは生きて帰れたらだな。


「あと二マガしか残ってないですね……」


 俺は、ポーチに入ったマガジンを確認する。

 『89式』のマガジンが二つ、拳銃が三つと弾薬的には厳しい。

 俺は残弾が僅かになったマガジンを抜き、新しいものを差し込む、拳銃は撃ってないから弾薬は減っていない。


「どうやってこの状況を切り抜けるつもりなんですか? 長官」


 あたりには火砲の砲弾が一定の間隔で降り注ぐ。

 目の前には鉄線で囲われた火砲陣地があるが、一歩でも穴から出たら、機銃弾で蜂巣確定だ。


「いっそ『Ⅴ1』でも撃つか」


 そう言って咲間長官は信号弾を構えるが。


「今ここで撃ったら俺たちの直上に落ちてきますけど」


 俺の一言に「だよな」といって、再び引っ込んだ。

 ほんとは巡行ミサイルで座標を指定し撃ちたいが、あいにくそんな現代武器は持ってきていない。

 空母に乗せた二発の『Ⅴ1』を、信号弾を上げたところに落としてもらうほかに、敵に大きな打撃を当てられない。

 

 だが日本が改良した『Ⅴ1』は、信号弾から延びる黒い煙に含まれる砂鉄に反応して落下場所を調整する。

 ここから斜めに打つと、黒い煙を辿ってここに落ちてきてしまうのだ。


「有馬」


 長官が信号弾を握りしめながら俺の名前を呼ぶ。


「どうしました?」


 名前を呼ばれた俺は外の様子を窺うのを止め、長官の方に顔を向ける。


「私がいなくなっても戦線長官としてやっていけるか?」


 急に何を言い出すんだ?


「私が教えたことを使って、大和たちが海戦をするときや、陸で戦うときでも、きちんと指揮を執れるか?」


 長官は俺の肩をつかみ言う。


「何を言っているのですか?」

「答えろ」


 長官の表情は真剣だ、これまで見たことないぐらい。


「……できます」


 そう言うと、長官は優しく微笑んだ。


「あの『娘』たちを頼むぞ」


 そう言って穴の外に飛び出し、刀を抜き一直線に駆けだした。


「長官! いけない、早まってはだめだ!」

「おおおおおおおお!」


 止まらなかった。

 刀で鉄線を切り開き、グロックで敵の自動人形を打ち倒す、しかしその体を無慈悲に機銃弾が数発貫いた。

 長官の体が鞭打ち倒れこむ。


「ちょうかああああああああああああん!」


 長官は倒れこんでも血反吐を吐きながらも手を持ち上げ、信号弾黒を打ち上げた。

 数秒後、ボボボと小さいロケットエンジンで滑空する爆弾が、上空にゆっくりと現れる。

 俺は長官を助けるために穴から出ようとするが、敵の機銃弾がそれを阻止した。


 俺が穴に戻るのと同時に、長官の上空でロケットエンジンが止まり、落下を始めた。


 俺は、穴の中から長官の最後の瞬間を見つめていた……最後の一瞬―――

    

     ―——長官は笑っていた。


「あああああああ、ァ! オェェ」


 強烈な吐き気がして、その場にうずくまる。


 『Ⅴ1』、それは二次世界大戦中ドイツが発明した無人ロッケト爆弾、一定の場所を設定すると、自動でその場に向かい落下、その場を地獄へと変える。

 それを目の前で、今この瞬間俺は見た。


 落下地点から炎を噴き上げ、周囲のものを焼き払い、爆風で辺を薙ぎ払う。

 土埃が落ち着くと、そこには熱でひしゃげた火砲と、真っ黒になった地面だけが残っていた。


「有馬!」


 『Ⅳ号戦車』が近くに止まり、天蓋が開くとそこから航大が俺に手を伸ばした。


「航大……」

「もうすぐここら一体を掃討するための艦攻が来る、同士討ちされる前にずらかるぞ」


 作戦計画上『Ⅴ1』を打ち込むのは制圧が終わり、敵の火砲を破壊する時の為に、使用する予定だった物で、『Ⅴ1』を発射すると同時に、艦攻が仕上げをしに来るのだ。

 俺は航大に言われた通り戦車に乗り込む。

 進軍してきた道を戻る道中、上空を大量の『九七艦攻』が通り過ぎた、その腹には、大量の六番と焼夷弾が抱えられていた。


 作戦報告書

カウアイ奪還作戦

総員5203、死者3842、重傷者219健全者1142、咲間啓樹戦線長官死亡

使用WS戦艦『大和』『武蔵』『長門』『陸奥』空母『赤城』『加賀』『蒼龍』『飛龍』

護衛艦三隻、米軍側重巡一駆逐三戦艦『アリゾナ』

航空機『零戦』『九七艦攻』『九九艦爆』『Ⅴ1』

上陸から始め、航空基地の制圧、火砲陣地と市街地の制圧にて終了全体的に日本兵の未熟さが目立った。

偵察をおろそかにしてしまったことからの被害と考えらえる、九七艦攻で偵察を行ったが性能不足、艦偵の開発を速やかに行ってもらいたい。

追記、ハワイ島の周辺の警戒態勢を強化するらしい、内容については連合より連絡を

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