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ウェポンスピリッツは未来に継げる!  作者: 古魚
ハワイ奪還作戦編
14/340

カウアイ上陸作戦

艦隊現在地、カウアイ島海岸20キロ


「全砲門砲撃開始!」


 その合図で、カウアイの沖に並んだ三隻の戦艦『大和』『長門』『陸奥』が、空襲で破壊しきれなかった砲台や歩兵を薙ぎ払う、撃ちだされるのは全て、対地対空攻撃用の三式弾だ。



 さて、砲撃を開始して四分半、高角砲や副砲での砲撃も行い、島の固定砲台は完全に沈黙したようだ。

 砲弾が飛んでこないのを確認し、艦内で待機していた兵士たちは一斉に甲板へと出てくる。


 一方整備課は、大発艇の整備を完了し、海の上へと浮かべ始めた。


「さて、行くとしよう」

 

 咲間長官が艦橋を出る。


「自分も失礼します」


 俺も続いて艦橋を出る、その時大和の声が、耳元近くで聞こえた。


「絶対死なないでね」


 何を言うか。


「当たり前だ」


 俺はそう、大和に返した。


 甲板に出ると、すでに数個の大発艇が兵を大量に連れ、陸へと向かっている。

 その中には米軍の兵も見れる、今回上陸から奪還まで、日本側は約2000人、アメリカ側が約3000人の人が参加する。


 日本の2000人と言うのは、本土から来た高速輸送船たちに乗っていた人員だ。

 カウアイ占領の情報が出てすぐに本土では、40ノット近く出る高速輸送船『ハヤブサ』の一号、二号、三号が、数隻の護衛駆逐艦と共に出港、先にミッドウェイに向かっていた戦艦組と合流、そのまま一緒に来たという感じだ。


「さて、行きますか」


 俺は、国から支給された旧自衛隊装備を整える。

 背中には『89式小銃』、SIGの『p220』通称『9㎜拳銃』は、腰に装着する、軍は旧自衛隊装備が標準装備として、国から支給されたのだが……古い。


 『89式』や『9㎜拳銃』は2000年代初期に使われていた銃で、今はとっくに、何度も改良した『20式』と『SFP9』に変わっている。

 そこで、国から支給される武器に不満がある者は自分専用の銃を使うことができる、その代わり弾は自分で準備し、日常の手入れは全て自身で行う。

 弾切れになっても自己責任、なので自分専用の銃を使う人は少ない。


 しかし空は例外である。

 自分用の銃をいくつか保有し、必要に応じて持ち替えている。


「で、今回はその二丁か」


 空は、背中に銃剣のついた『kar(カル)』を、腰に『ベレッタ92』を入れる、時代遅れの装備だが、空には丁度いいのだろう。


「そう、『kar』は実戦で試してみたいし、今回塹壕戦が多そうだから一様ハンドガンをね」


 ARを持っていけば済む話なんだがな~。

 空はどうもARを好きになれないらしい、そうこう言っている間にも、敵の弾丸が大発艇をかすめる。


「アホ! 死にたくなければ伏せとけ!」


 操縦士が叫ぶと、一斉に俺たちは体を屈める、何度か大発艇の側面、や正面をガツンと弾丸が叩く音が響くが、今のところ、人には当たっていない。


「陸までもつかな?」

「そんなにボロじゃないだろう」


 今回は空襲と艦砲射撃で砲台系がほとんど壊されているため、大発艇に砲弾が当たることはない。

 陸に着く前に壊れることはないだろう、と言うかないであってほしい。


 弾丸を潜り抜けること数分後、目と鼻の先に陸がある、大発艇の扉が下りれば突撃開始だ。


「有馬、行くぞ」


 無線で咲間長官から声が聞こえる。


「了解」


 短く声を返し、操縦者に扉を開けるように指示を出す。

 その隣の大発艇からはすでに人が飛び出していた、俺は扉がバチャンと水の上に倒れ込み、視界が開けた瞬間。


「全員突撃!」


 そう叫んだ。

 その一声で皆が駆けだす、まずはビーチの制圧だ、ビーチを守っている敵兵を抹殺し、味方が安全に上陸できる場所を確保する、その後工作艦が錨を下ろし拠点を築く。


「散開!」


 俺の指示で分隊ごとに分かれ、それぞれが自分の目指す塹壕に駆け込む、俺と空が率いる部隊は正面の塹壕だ。


 中ですぐに兵の姿をみることはなかった、道が二手に分かれ、それぞれが大きめなトーチカにつながる。

 俺と空は左右にわかれ、二つの部屋を制圧にかかる、俺は右に向かった。


「邪魔だ!」


 俺は『89式』を連射し、視界に入った敵を一掃していく。

 思ったより数が多くない、これも艦砲射撃のおかげだな……ありがたやありがたや。

 俺がトーチカの中に入りこむと、敵もこちらに気付き、銃を乱射する、敵の銃声がいったん止んだ時に、ピンを外しておいたグレネードを転がす。

 爆発音と金属の破片が飛び散る音を聞き、壁から『89式』を突き出して敵をねじ伏せる。


「あと三人!」


 俺は照準に入った三人、いや自動人形だから三体を壊し、トーチカの中心に移動する。


「制圧完了か?」


 俺はあたりを見渡しながら『89式』のマガジンを外し、新しいマガジンを付け直す。


「空は大丈夫か?」


 俺はあたりを隅々まで確認し、もといた場所まで戻るとまだ空の姿はなかった。


「まだ終わってないのか……」


 俺は空の援護に動くべく、左側のトーチカに向かった。

 道中、敵、正確には生きた敵と出くわすことはなかった。




 塹壕を進みトーチカに入ると、俺はパチャリと水を踏んだ、しかし水にしてはどうも気分が悪い、俺はその足をゆっくり戻し、明るいところで確認する。


「……血か……」


 水かと思っていたその液体は、どうやら敵の死体から流れ出た血液の用だ。

 こっちの塹壕は機械ではなく人の兵が守っていたらしい、俺は血だまりを超え、中に入るとそこには……。


「空?」


 倒れ込む死体の中心、血溜まりの上に空が立っていた。

 その姿はいつもの青い髪と白い肌ではなく、返り血を浴び真っ赤に染まっている。

 『kar』の銃剣も鋼色ではなく赤黒い血で覆われ、ぽたぽたと血が滴っていた。


 俺はそんな空の姿に驚き、もう一度よく全体を見ると、左腹部の服に焦げ跡、そして機銃弾が貫通した後があった。

 肩にも銃痕が残っている。


「制圧完了」


 その一言だけを残し空は倒れる、その時俺は我に返り、空に駆け寄った。


「空!」


 傷口に布を当て、出血を食い止めながら周りを見渡す。

 入り口に固定機銃、兵士が手に握るのも機銃系が多い、こちらのトーチカの方が圧倒的に高火力だったらしい。

 部屋の広さ的にもそこそこ大きく、上陸阻止の上で中心的存在だったようだ。


「有馬、ビーチ制圧完了だ」


 咲間長官からの無線を聞き、俺はまた短く返事をし、空を抱えて外に出る。

救護用のボートがいくつも近づき、さらにその後ろから占領したハナペペ湾に錨を下ろすため工作艦の二隻が近づく、医療施設並び拠点になるためだ。

 戦艦は艦砲射撃と近海警備のために移動している。


「有馬さん!」


 圭の声が聞こえた。


「空さんをこちらへ」

 

 そう言って圭は俺を、『明石』の中へ案内する。


「腹と肩に数発、出血多量で意識不明だ」

 

 俺は空の様態を、圭に話す。


「わかりました、あとはこちらで面倒を見るので有馬さんは戦場に戻ってください」


 圭は空を重傷者用の担架に乗せ、奥へ入っていく。


「空は大丈夫にゃ」


 静かに明石が姿を現した。


「見た感じ弾は貫通し、内臓も無事にゃ」


 それならいいのだが。


「明石、空を頼む」

 

 俺は自然と明石の頭に手を乗せた。


「うにゃ~任せるにゃ、圭もなかなかの手練れだったにゃ、きっと大丈夫にゃ」


 その言葉を聞いて、俺は詰まっていた息を吐きだす。

 その後『89式』のバラ弾を、開いたマガジンに詰め直し、ビーチに出た。

 いくつかのテントは、軽傷者を手当てするためのものだ、重傷者だけが艦の中に入り、治療を受けることになる。


「有馬、敵航空基地を発見したぞ」


 咲間長官が俺のもとに駆け寄り、地図を見せる。


「ここだ」


 長官が指差したのはカウアイのもともと市街地だった場所だ、どうやら最初から開けた土地と倉庫があったらしく、そこを上手く使ったようだ。


「それで、どうやって叩くんですか? そこだと艦砲射撃ですか?」


 俺が聞くと、長官は首を振る。


「今戦艦組は、ニイハウで艦砲射撃をしているからしばらく戻ってこない」


 なんとタイミングが悪い……平地だから、無駄に兵を突撃させると一気に死ぬ、それは避けなければならない。


「戦車を出すか」


 俺はぼそりとつぶやく。


「戦車部隊を出すのか……まあ妥当かもしれんな、至急輸送船を呼ぶとしよう」


 そう言うと、咲間長官は無線機を持ち出す。


「至急、戦車部隊を用意しろ」


 俺はふと、Ⅳ号(フォース)と航大のことを思い出す。


 「大丈夫かな~」





「ばっくしゅん!」


 俺、坪井航大は『Ⅳ号』の中で盛大なくしゃみをかました。


「どうした? 風邪か?」


 Ⅳ号が言う、別に風邪は引いてないと思うが何となく寒気がした。


「なんでもない、仕事はきちんとするさ」


 俺たちは有馬たち上陸部隊の通信で、現在指定ポイントKに向かっている。


「目標は敵航空基地の制圧だったな」


 Ⅳ号がさっき聞いた目標を復唱する。

 今回の作戦は敵航空基地に潜入、ひたすら歩兵と航空機をつぶし、味方が進軍しやすいようにする。

 おそらく敵航空機と戦車の追撃を受けるから、そこは何とか頑張れと。


「ま、なんとかなるだろう」


 俺はそう言って足を延ばす。

 操縦は全てⅣ号が、砲撃関連は俺がやるので乗組員は一人だけだ、中はそれなりに広い。


「プレイヤーから各カードへ、ちゃんとついてきてるか~」


 俺が無線で五輌の戦車に聞くとそれぞれ返事が来る、ちゃんとついてきているようだ。

 俺は天蓋を開け、後ろを確認すると、確かに五輌は縦一列で俺の乗る『Ⅳ号戦車』に並んでいた。


「ん? なんの音だ?」


 俺は不審なエンジン音を聞き、正面を見る。


「お! きなすったか」


 俺は急いで車輌内に入り、無線を繋ぐ。

 今の無線は、自動でその車輌に適した言語に変換される仕様だ、便利だよなぁ~。


「こちらプレイヤー、敵機正面二機! 爆装してるからな、気い抜くなよ!」

「「「「「了解!」」」」」


 そう声が返ると同時に、正面から機銃掃射が襲った。

 金属を叩く音が聞こえた後、エンジン音が遠ざかって行った。


「まだ来るぞ!」


 Ⅳ号が叫ぶ、俺はもう一度天蓋を開け上部に着いた機銃を航空機に向かってぶちかます。


「墜ちろ!」


 多分絶対、ほぼ百パーセント当たらないと思うが。


「無駄なことをするな、死ぬぞ」


 ずいぶん冷静だな、まあ戦車からしたら日常茶判事か。


「へえへえ、すいやせん」


 俺は引っ込んで天蓋を閉じ席に着く、もう一度エンジン音が聞こえるが、今度は機銃の音が聞こえない、ということは……。


「爆弾来るぞ!」


 俺は無線で伝え、衝撃に備える。

 少し離れたところに爆弾は着弾し、小さな土埃を巻き起こす、爆発の大きさからみて60キロ相当の爆弾だ。

 そんなことを考えているとあと一発も外れ、戦車隊は無傷で切り抜けた。


「やはり、戦闘機の暖降下爆撃は命中率がよくないな」


 Ⅳ号は冷静に分析する、流石歴戦の戦車だな。

 だがまあいくつか言えるのは、まだ倉庫にそれほど敵機はいない、爆弾の補給が届いていない、戦闘機しかいない、だろう。


「目的地まであと数分だ、気を引き締めていこう」


 俺は座り直し戦車に揺らされること数分、敵の基地であるK地点にたどり着いた。


「来た来た、さあ仕事の時間だ、プレイヤーよりスペードとダイヤに、敵歩兵を警戒しつつ倉庫を破壊、プレイヤーよりクローバーとハートに、滑走路を破壊しろ、プレイヤーよりジョーカーへ、プレイヤーと敵戦車を警戒する、行動開始!」


 それぞれ行動を振り分けはしたが、結局全部『Ⅿ4A2シャーマン』中戦車で、魂は入っていないWSだ.誰がどの仕事をしても特に問題は無い。


「ジョーカー、滑走路周辺を回って、敵戦車を発見したら発砲しながら滑走路内に逃げろ」


 いったん無線を切り倉庫の裏に移動する。

 ここらは森林が切り開かれて基地にされたように見えるが、周りは手付かずなのか木が多い、奇襲されないよう細心の注意を払わないと。




「敵車輌は……まだ見えないな」

 

 Ⅳ号がぽつりと言うが、後ろで、装甲が徹甲弾を弾く独特の音が聞こえた。


「行くぞ!」


 Ⅳ号は急反転し、基地の中心に向かう。

 そこではジョーカーと、滑走路を破壊していたクローバー、ハートが敵戦車三輌と撃ち合っていた。


「敵車輌は中戦車二と重戦車一だな」

 

 俺は、敵の車種を確認し、砲塔のスコープを覗く、よくボディーを見てみると、型番号が振られていたため、量産型の戦車だと分かった。


「タイミングがきたら撃っていいぞ」


 Ⅳ号から声が聞こえ、俺は引き金を引く。

 発射された砲弾は重戦車のすぐ近くに着弾し、微妙な音と土煙をたてる。


「プレイヤーより全カードに、俺が重戦車を引き受ける、三輌で中戦車二輌を頼む」


 返事はないが、三輌の砲撃が中戦車に殺到しタゲを引き受ける。

 そうすると残りの重戦車は予想通り、単機になったこちらに砲塔を向ける、ぱっと見、砲サイズはそこまで大きくない。


「覚悟は良いな!」


 Ⅳ号がスロットルを最大まで飛ばし、敵車輌の側面に入り込む。

 俺はそれに合わせて砲塔を回転し、砲弾を叩き込む。


「チッ! 硬い!」


 側面に一発ぶち当てたが甲高い音を立ててはじかれる、俺は装填を急いで終わらせ、再び照準を合わせ、打ち込む、今度は上部構造に当たり、火花を散らす。


「またか!」


 WASの車輌は聞いていた通り、硬いやつが多いみたいだ、資料によると航空機もらしい、まあ陸専門の俺からしたらあまり関係ないが。

 そんなことを考えながら装填を終わらせ、再び照準を合わせようと、砲塔を回転させるとⅣ号が言う。


「いいか、一瞬だけ背後で停止する、その時にエンジン付近にぶち当てろ」


 そう言ってⅣ号は敵弾を躱しながら敵に近づいていく、一発かすめたが問題なさそうだ。


「いまだ!」


 急ブレーキがかかり、車体が敵の砲塔の動きよりも早く背後に回る、微弱に回していた砲塔の照準が敵のエンジン部をとらえた瞬間、俺は引き金を引いた。

 撃鉄を起し、砲弾がエンジンめがけ飛んでいく。

 その弾はやや薄い装甲を貫き、エンジンの中へと入っていく。


「衝撃に備えろ!」


 大爆発。

 爆風でⅣ号も煽られるがもちろん倒れることはない、爆風が収まり砂埃も収まったころで天蓋を開けて、周りを確認する。


「さて、終わったかな」


 あたりのいたるところから煙が上がり、倉庫は跡形もなくバラバラになっている、その下には、押しつぶされた航空機が多数残っていた。


「作戦成功、被害は0、歩兵の進軍を要請する」

「こちら有馬、お疲れさん、これから歩兵を移動する、そのまま周辺を警戒しといてくれ」

「了解」


 そう言って無線を切る。

 無線に出たのは有馬だった、戦場の指揮官として戦うあいつも大変そうだな……。


「さて、全軍航空基地に拠点を移すぞ」


 俺が伝えると安易テントをたたみ機材をまとめる、皆の準備が整ったところで、進軍を始めた。


 別に昔のように歌いながら進むことはない、昔は軍歌を歌いながら進軍し、士気を高めていたらしいが、別に今いる人員はそんなに天皇万歳軍万歳なんて人は少ない。

 まあそんな人が大勢集まるのもやや困りごとだが、そんなことを思いながら俺は航空基地へと足を進めた。


「うわぁー派手にやったな……」


 俺は航大と合流し状況を聞いた。


「まあな、戦車部隊の初任務だ、盛大にいかないと」


 この状況を作った当の本人は現在、『Ⅳ号戦車』のエンジンを調整している。

 航大は工業校出身で車いじりが好きなのだ、どっからどう考えても、車のエンジンと戦車のエンジンは別物だとおもうのだが、航大曰く「車ってつくなら何でもOK!」だそうだ。


「さて、話はそれで終わりだな」


 航大からの報告を聞き終え、俺は持ってきた移動用のバイクを借りる。


「どっか行くのか?」


 航大が手を止めこちらを見る。


「ちょっと、二人と一機の様子を見に行くのさ」


 そう言って俺は、移動用のバイクにまたがった。

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