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オタガイサマ。

作者: ちょんまげ

普段、ものづくりをしています。

ものを作るという事は、自分を含む誰かを考える事が基本な気がします。

ちなみに小説は殆ど書いた事が無いので、見て頂けると嬉しいです。

ご指導など頂けると尚、嬉しいです。

オタガイサマ。


このまま、最高の時間が続いて欲しい。


僕は売れない小説家だ。

文系の大学を出てるわけでもないし、作家というのもおこがましいかもしれない。

なんとなく、細々と作家活動を出来ているラッキーな人間だ。


ライトノベルから何かのコラムまで、色々書かせてもらっている。

生きて行けるだけの仕事が出来て、とても幸せな事だと思う。

ただ、制作している時は、ほとんど意識がぶっ飛んでいるので、楽しいかどうかすら分からないけど。


こんな僕にも同棲している彼女がいる。

その彼女が、僕の書いた小説を真剣に読んでくれる。

その時僕は、凄く嬉しくて、かなり緊張する。

彼女の真剣な顔が笑顔になるのが、僕の幸せ。そして、書き続けている理由。


こんな時間がずっと続いて欲しいな。と僕は思う




こんな僕のそばにいて呆れてしまわないのかなぁ。


僕はほとんどの時間を小説を書いて過ごす。

仕事にしているライトノベルやよくわかんないコラムは勿論だが、同棲している彼女のためだけに書いている小説もある。

書き始めるとだいたい意識がぶっ飛んでしまう。朝始めて、気がついたら夜なんて事もよくある。そういう時は彼女は決まって僕の背中合わせに座って本を読んでいる。

反対に、一日中外をぶらぶら歩いたり、ぼーっとしていて家に帰らない時もある。そんな時はさすがに彼女も怒っているけれど。でも必ず「おかえり。」と言ってくれる。


彼女の仕事が休みの時でもやらかしてしまう事も…多い。

彼女を色々な表情にしてしまう。

きっと怒らせたり、悲しませる事が多いと思う。


買い物に行く約束をしていたのに。

遊びに行く予定だったのに。

ほとんど計画通りには行かない。


彼女は最後は笑って許してくれるけど、本当はどう思っているのかな。

何度も我慢をさせて、こんな僕と一緒にいて嫌にならないのかな?


思っている事を教えて欲しい。




君以上の人に出会った事が僕はない。


僕には頼りになる担当編集者がいる。

その人のお陰で書き物の仕事で、何とか食べていけている。

その編集者の勧めで、短編集を出版する事が決まった。

文芸誌に短編を書いていたものと、新たなに書いたものをまとめた本だ。

締め切りが近づくある日。

彼女から連絡があった。


会社の飲み会で酔ってしまったので、迎えに来て欲しいという事だった。

僕は嬉しかった。

僕らは自己主張があまり得意では無いので、あまり喧嘩をする事も少ない。

僕のせいでもあるが、話す事もそもそも少ない。

いつも彼女は、僕にほとんど合わせてくれる。

そんな彼女の呼び出しに喜んで、僕は部屋着に上着を羽織って何年履いたか分からないボロボロの靴で家を飛び出した。


彼女の教えてくれた居酒屋の近くで、少し待っていると、会社の人達と彼女が一緒に出てくる。

彼女も会社の人達を見ると、まるで自分とはかけ離れた別の種類の様に感じた。

彼らがスーツを着ているからだろうか。それとも、ネオンを反射させる革靴を履いているからだろうか。

彼女が周りの人達に頭を下げてから、僕の方に嬉しそうに駆け寄ってくる。

僕は、彼女の笑顔が眩しくて直視出来なかった。

彼女と家に向かう途中。彼女は飲み会での話しをしていた。

僕は、ほとんど彼女の話しが頭に入らなかった。

急に彼女の横を歩くのが、情けなくなってきた。

僕は彼女の話しが途切れた時にいう。

「僕の横いて、恥ずかしくないか。嫌じゃないか。話してよ何でも我慢せずに。」

彼女は大きくはないが、声を出して笑う。

酔っているのだろうか。声を出して笑う事自体が珍しいので、どっきとする。

彼女は少し怒った表情でいう。

「私の選んだ人を馬鹿にしないでよ。」

そして、表情を和らげて続ける。

「そして、その人が選んだ私を。」


彼女には敵わないな。




このまま、最高の時間が続いて欲しい。


この間、出版された短編は頼りになる編集者のおかげで、そこそこ売れたらしい。

お陰様で次は新たに連載で少し長めの物を書く事になった。

僕は天気が良い暖かい日に部屋の中で、パソコンに向かい合って原稿を書く。

今日は仕事が休みな君がいる。背中合わせの定位位置で本を読む。


僕が置いた左手が彼女の左手に覆う様に当たる。そして、カチンっと金属音がする。

僕が彼女の方に目線を向けると、彼女は左手を見て嬉しそうだった。

僕には、この左手の薬指に着けている指輪の価値は分からない。

ただ、その指輪を眺めて嬉しそうにする彼女は、僕の幸せだ。


きっと僕のせいで、これからも怒らせてしまったり、悲しませてしまったり、呆れさせてしまう事もあるだろう。

何が起こるかわからないけど。

僕の書いた小説を君に喜んで貰いたい。自分のために。

こころざしが低いと言われるかもしれないけれども、この時間を続けていきたいと思う。


何だか矛盾だらけだけど、それで良いかなと僕は思う。


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