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彼女と彼氏であるようでない。  作者: シャルロ
彼女と彼氏になりました?
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第五話 違和感

 

 学校の昼休み。

 颯太は教室で一人ぼっちでコンビニで買ったサンドウィッチを食べる。ちなみに教室に生徒は誰一人としていない。

 屋上や外にあるベンチ、使っていない教室などで食べる生徒が多いのだ。


「また一人なの?」


 颯太が外を眺めながら食べていると、声をかけられる。振り向くと綾菜が弁当を持って立っていた。


「そうだよ。文句あるか?」


「文句はないけど……寂しくない?」


「まぁ、寂しいな」


「じゃあ、一緒に食べる?」


 そう言うと、綾菜は自分の机を颯太の机の正面に置く。


「まだ、返答してないんだが」


「良いでしょ?」


 有無を言わずに綾菜は話を続ける。


「話し相手になってくれるのか?」


「うん」


「へー」


 適当な返しをしておく颯太。

 綾菜は弁当を開けて食べ始める。


「夏休み中に夏祭りあるらしいね」


「あー、朝に妹から聞いたな」


 確か八月の一日と二日だったはずだ。


「誰かと行く予定ある?」


「ない」


「私もない」


「なんか悲しいな」


 二人で慰め合っているようにしか思えない颯太。

 綾菜は弁当を順調に食べ進めている。


「去年みたいに砂川も誘っていくか?」


「でも、私帰省しないといけないかもしれないからさ」


「そうか」


 颯太に興味はほとんどない。何故なら彼女と行きたいからだ。だが、肝心の彼女など存在しない。


「今日もコンビニで買ったもの?」


「今日も?」


「いやー、よく食べてるの見かけるから」


 綾菜はプチトマトを口に入れて、味わい飲み込む。


「見かけるなら毎日声かけてくれよ」


 一人は意外と寂しいものなのだ。泰斗が別クラスにいるおかげで、颯太は男子とはあまり会話しなくなったのだ。


「えー、なんか嫌だ」


「ひどいな」


「気が向いたらにする」


「そうしてくれ」


 颯太はあっという間に食べ終わり、教室の時計に目を向ける。黒板を見ると日直の欄に『古賀』と書いてある。


「今日、日直なんだな」


「あ、うん」


「黒板消す以外ほとんどやることないけどな」


「そうだね」


 少し笑いを浮かべながら弁当を食べ進める綾菜。もう少しで食べ終わるところだ。


「そう言えば、砂川は彼女と仲直りするって電車で言ってたな」


「昨日言ってた話はそう言うことだったんだね」


「さて、仲直りできたか後で見に行ってやろう」


 ニヤリと笑みを浮かべる颯太。


「ごちそうさまでした」


 弁当が食べ終わり弁当箱の蓋を閉め片付けを始める。机も元の位置に戻す。


「古賀、良いところにいた。先生の手伝いしてくれ」


 廊下からダンボールを持った担任の先生が呼びかけていた。


「はーい、分かりました」


 そう言うと弁当箱を机の上に置き、廊下へ向かおうとする。


「古賀」


「なに?」


「サンキューな」


「うん」


 短く言葉を交わし、綾菜はそのまま廊下に出て行った。


「すまないな」


「いえいえ、大丈夫です」


 そんな話し声が聞こえ、教室には颯太一人。


「喉渇いたな」


 学校には一階にウォータークーラーが設置されているので、颯太はそこへ向かう事にした。

 階段を降りて昇降口に向かう。外のベンチで昼食を終えた生徒などが靴を履き替えている。

 颯太は気にせずウォータークーラーで水を飲む。キンキンに冷えた水はとても美味しく感じる。


「さて、砂川が仲直りできたか見にいくか」


 そう言って、二階の教室に向かおうと階段を上ろうとするが、ある光景が目に止まった。


「あれは…」


 先生の手伝いが終わったのだろう。

 一階の空き教室の前で綾菜が同じクラスの女子生徒に話しかけられている。しかも、綾菜一人に対して、女子生徒は五人だ。

 颯太は何かおかしいと感じていた。


「古賀ってあいつらと話した事ないよな」


 違和感の正体は綾菜がクラスメイトと話している事にあった。綾菜は普段クラスメイトと関わらない。いつも、一人で行動している。

 そんな事を考えていると女子生徒五人は綾菜と話を終えたのか、綾菜から離れていく。

 こちらに向かってくる女子生徒五人組を尻目に、颯太は綾菜に話しかけにいく。近づいていくと、綾菜は向かってくる颯太に気がついた。


「先生の手伝いは終わったのか?」


「うん。ただダンボールを運ぶの手伝ってただけだから」


「なぁ、さっきの…」


 予鈴のチャイムが鳴り響く。


「早く教室に戻ろうよ」


 颯太の発言を上書きするかのように、綾菜はそう言った。


「あ、ああ」


 二人は階段を上り、教室に戻った。

 席についてもう一度、さっきの事を聞こうとするが綾菜は弁当箱を自分の鞄に仕舞いに行ってしまった。


「颯太ー!」


 廊下からよく聞き慣れた声が聞こえる。泰斗の声だ。


「なんだ?」


「古文の教科書貸してくれー!


「分かったー」


 教科書を机の中から出して、廊下に出る。

 途中、綾菜とすれ違う。興味なさそうに横を通っていた。


「ほらよ」


「サンキュー」


「そろそろ始まるから教室に帰れ」


「おう」


 そう言うと、泰斗は廊下をダッシュして自分の教室に戻っていった。

 颯太も自分の席に戻ると、先生が教室に入ってきた。ちょうど、授業開始のチャイムも鳴った。


「はい、じゃあ今日は……」


 その後も、綾菜の件が気になり授業に集中できなかった颯太であった。


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