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パリピ相手はかなり疲れる

◇◆◇◆◇


婚約までの経緯ながっ……長いなぁ!


でもまあこれが私ごときが、恐れ多くも第2王子と婚約を結ぶきっかけになった話だ。


ていうか子爵がなんで第2王子の婚約者に?思うよねー!私だって思うわ!


でも身分は申し分ないことになってしまっていた。何故ならこの茶会事件がきっかけで伯爵になったからだよ!


当時4歳だった私は情勢もよく分かんないでぼんやりしてたけど。何せそれまで直接人にかけられた呪詛を祓う方法、全くなかったらしい。かけられたら術者を殺すか、死ぬのを待つしかなかったみたい。


なのにいつの間にかポケットから消えていた私の薬草飴が、呪詛を受けて長く寝込んでいた第1王子を回復に導いたと。後で無表情に私を膝にのせて、頭を撫で続ける父から聞いたのだ。


城に呼び出されて尋問されたらしく、三日間帰ってこられなかった父は、大変疲れていたらしい。私の髪は父に似てふわふわと量の多い、ライオンのたてがみのような白っぽい髪だから、撫でてもあまり触り心地はよくないのにね。


まあとにかくその功績をもって伯爵になった。


……それで爵位としては、フラン様とも婚約できるようになったんだけど。とは言っても、所詮元男爵令嬢の成り上がりの伯爵だ。当然裏がある。


革新的すぎる魔法を見つけちゃった私は、自国のやばい連中のみならず、他国の利用しようとする連中から身を守る必要があったのだ。


私がちゃんと独り立ちできて、自分で伴侶を選べるようになるまでの仮初の婚約とする。そのためのバックアップは惜しまない。


父が随分と交渉したらしく、そんな王家の対応として大丈夫?的な事前契約書まで交わしてくれたのだ。本当に護衛をつけてくれたので、大変ありがたかった。


だけどなんでその相手がフラン王子?別に他の、なんかあっても多少問題のない、変なのに抵抗できるひとがよくない…?破格が過ぎない?もう次何か生み出せるとは限らない小児相手なのに。


そのようなことを婚約者として次に会った時に、フラン王子にそれとなく聞いてみたけど。


眠たそうな顔で悪く笑うと、俺で妥協しろとのことだった。


彼を盾にするには上等過ぎて困るって話をだね、していたんですけどね。わしゃわしゃと頭を撫でられてうやむやにされた。


やけになった私は、正直たかが飴がそこまでの効果を発揮するわけないじゃないかと。この時点でまだ舐めていたので、詳細な経緯をまとめた薬草飴のレシピを気楽に王家に献上したのだった。


ちゃんと飴の型……鍛冶職人の名前をつけたドルエ紋のことも紹介して。


実際作ってみて、やっぱ効果ないじゃんと、誰かに言ってほしかったのである。相談したら、父もそうすべきと頷いていたからね。


そしたら普通に誰が作っても効果を発揮したので、呪詛で苦しんでた系の人が大体助かったのだ。


おまけに飴の色や、混ぜ込むもの、形を変えることで様々な効果まで出た。ドルエ紋以外に、効果的な紋を使った飴が様々開発された。


レシピは大々的に公開したから、実際に私が呪詛にかかったひと達に作った訳じゃないのに。めちゃくちゃ研究資金があちこちから献上されたのが恐い。何もお返しができない。


あれは胃が痛かった、と漏らせば、王様はいつも通り微笑んでいる。


「アンはまだ小さかったからな。お前が頭角を現したのが、ちょうど呪詛による攻撃が猛威を振るっていた時期だよ。誰でも呪詛を放つことができたが、誰一人解く術を知らなかった。特に人に対してはね。どうしようもなく死ぬのを見守るしかなかったんだ」


「そうよねぇ……クライトが呪詛にかかった時は、苦しみを和らげる程度の対症療法しかできなかったし。私が息子を亡くさずに済んだのは、貴方の発見が間に合ったからなのよ?」


「君はよく伯爵ってことに胃を痛めているけどね。君ほどの功績を上げて何も渡せなければ、王家だって見限られてしまうよ?たかだか身分にこだわらないで、これからもうちの国に全力で貢献してね!期待してる!」


王様と王妃様から過分な言葉に戸惑っていたら、いきなり伸びてきた腕が、私の狙っていたブルーベリータルトをかっさらっていった。


驚いて振り返れば、いつからいたのか金髪碧眼の、お手本のような絵本の王子様がそこにいる。まあ、行儀悪く立ったまま素手でタルトを貪っているけど。


「……クライト王太子殿下」


「君にお兄ちゃん、って呼ばせたかったけど。ちょっと間に合わなかったね!」


そういって微笑んだ彼から、きらきらと効果音が出てるのは幻聴だろう。絵にかいたような美青年は、フラン様のお兄様だ。


いずれ王様になるというのに自由が過ぎるけど。呪詛で長らく寝付いていたこの人が元気で楽しそうだし。もうキャラがこんなだと認識されているから、誰も文句がつけられない。得なお人である。


弟の仮初の婚約者だってのに、大変よくしてくれた奇特な人だ。


「いっそ希望者募ってお見合いする?救国の獅子なら、誰選んでも文句つけられないでしょ」


おっさんにつけるみたいな恥ずかしい二つ名でしょう。


白いたてがみのようなモフモフ髪、金色に見えなくもない目でいつの間にかついていた。やめてほしいと何度言ったか分からない。


だけど、結構便利な発明しちゃった人間を、国としても隠しておきたいらしいよ。


他国に向けて、こういう細かいごまかしは随所でしているらしい。一見親父みたいな異名もその一環だ。まあ些細なことだし別にいいよね!とのことだった。よくはないかな。


「兄様よぉ、相手を決めるのはあくまでアンだろ。余計な茶々入れんじゃねぇよ」


「まぁアンリエなら、わざわざフランとか選ばなくてもよりどり見取りだよね!あ、でも満月位のおっさん神官にも求婚されてんでしょ?あれからどうにかしないと、やばすぎて他のまともな男来ないんじゃない?殺されちゃうもんね」


基本超パリピなので、この人の軽口は返すのが難しいので曖昧に微笑むしかない。あと、返せるところだけ無難に答えるので精一杯だ。


「お断りしました………」


うちの国は多神教でも、国に登録される共通の神官の階級がある。


自分の宗教内で最強に近い権力だと、神の名を冠して名乗れるようになる。つまるところ月の女神教の超偉い神官が満月位なんだけれども。


私にあのど変態神官様の相手は無理だ。明日の朝日を拝ませない自信だけがある。

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