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私と彼女の物語  作者: 雪桃
高校一年生(全27話)
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委員会の仕事2

 次の日から会議室に来たさくらの周りは随分と賑やかになった。全員同じ服を着てはいるが、やはり今まで静かだった会議室に何十人と生徒が集まると軽く圧迫感が押し寄せてくる。


「すごいね、碧くん」

「何が?」

「皆知らない人だよ」


 碧にとっては何も気になることはない。碧というよりも本来一般人であれば少し人が多いという感想で終わるだろう。

 しかしさくらの場合、一人二人ならまだしも何十人と知らない顔が一斉に集まればそれだけで恐怖の対象に成り代わる。高校一年の生徒は一度顔合わせをしたはずだがさくらの脳内からは記憶が抹消されている。


「む、無理。こんなところで目立ったら本当に精神的におかしくなる」

「神海さんって本当対人になると弱いね。演奏会とかどうしてるの?」

「え? 演奏してる時は人と話すことがないから楽でしょう」


 目の前にいる彼女のプロ意識に圧倒される碧を尻目にさくらは指定された席に着く。隣には同学年の女子が一人座っている。


(え、えっと、まずは挨拶。基本は挨拶)

「あ、あの」

「皆さん揃いましたか? 時間もないので早めに始めたいと思います」


 彩果から先日教わったようにまずは誰にでも挨拶をしようと隣の女子に声をかけたかったさくらだが、その勇気も虚しく前に立っている教師に遮られてしまった。


「……何か?」

「い、いえ。何でもありません」


 やり場のない手に気づいた隣の女子はさくらに声をかけるが、当の本人は顔をタコのように赤くさせながらその手を引っ込める。これではまたあの容赦ない従兄妹と幼馴染に毒を吐かれるだけだ。


「高校一年、二年の皆さんこんにちは。今日から体育祭の準備を始めたいと思います。二年生は大体わかっていると思いますが、例年委員会では行事毎にパネルなどを作成します。そして今年のデザイン案は二年が昨日までに考えてくれたので、今日からは全員で当日までに完成させてほしいと思います」


 さくらは二年の原案を見て改めて感心する。毎年そうだが、高校生とは思えないほどいつもデザインが凝っている。どこから意見が出てくるかさくらは先輩に問いたい。

 そんなさくら達の前に模造紙と画用紙、ペンがいくつかある。これを使って全員で完成させろということだろう。そしてその役割分担をどうするかが現在検討すべきことである。


「まずは三つの班に分けますが、必ず二年と一年がそれぞれ分担するようにしてください。後は好きなように分けていいですよ」

(それが一番困るんだけど)


 修学旅行や遠足、あまつさえただの授業内でさえ、誰か好きな人とグループになるという制度をいい加減廃止してほしいとさくらは心の中で願う。


「碧くん、もし誘われたら私も連れていって」

「自分で動けよ」


 教師の言葉でそれぞれ動く生徒だが、唯一さくらだけが碧の後ろを金魚のフンのようについていく。碧はそんなさくらを見て一つ溜息を吐く。

 そんな二人の近くにいた二年生が運よく誘ってくれたため、さくらも迷うことなく班に入ることができた。

 そうしていつも通り一時間近く原案を参考にしながら大きな模造紙を生徒で囲む。


「とりあえずこれから私達はこの下書き通り模造紙に鉛筆で描いていきます。ただ全員でやると混乱するので、これは下書きをした二年生がやりたいと思います。その間一年生は競技に使用するための段ボールを作っておいてください。見本がここにあるから」


 目の前には色のついたテープで全身を巻かれた段ボールの姿だ。これは毎年使用しているものなのでさくらもよく知っている。体育祭の内容は変わっているものと例年行われるものが混合される。


(これなら簡単だしプレッシャーもかからないから楽だな。流石先輩)


 さくらは小さめの解体された段ボールと黄色のテープを手に取って碧の隣に座って作業し始める。周りは雑談しながら制作活動を行っているが、さくらは話す相手がいない。碧も集中しているため邪魔はしない方がいいだろう。

 そう思っているとさくらの隣に一人男子がやってきた。


「こんにちは神海さん。隣いい?」

「へ!? は、はははい」


 笑顔で隣に座る男子にさくらは声を裏返しながら返事をする。上履きの色からして二年生だろう。

 さくらが引き攣らせた笑みを浮かべる中、男子はそのまま話を続けていく。


「神海さんってあんまり委員長って気質なかったよ」

「しょ、そうですか」

「いやーそれにしても神海さんって跡継ぎの勉強もしてるんでしょ。忙しいよね」

「い、いや、まあそれなりに」

「それに加えて学年の委員長にもなるなんて偉いね。神海さんって見た目に比べてリーダー的なの?」

「さ、さあ? か、かもしれないですね」

「えー、それなら将来有望だね。ところでさ、神海さんって彼氏いたりするの?」

「え!?」


 急な男子の質問にさくらは驚いてのけ反る。


「え、いないの? こんなに美人なのにもったいないね。俺だったら絶対告るのに」

「は、はえ? そうですか?」

「うんうん。というわけで神海さん、どう? お試しに俺と……」


 困惑するさくらと詰め寄ってくる男子の間に一つ遮るように手が伸びてきた。



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