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私と彼女の物語  作者: 雪桃
高校一年生(全27話)
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委員会の仕事

 月曜から終礼が終わった後一時間、さくらと碧は会議室にて委員会担当の教師と共に会議に出席した。

 初めは委員会でこれから行う会議の内容──今日は七月に行われる体育祭が大部分だが、他にも一年を通して行われる行事は多く存在する。その予定を取りまとめるところから始まった。

 その後、碧がさくらに説明したように、体育祭についての全体的な予定を組み立て始めた。これが大忙しだということをさくらが実感したのは三日目からだった。


「碧くん、この山のように紙は何?」

「プログラムにまとめるための名簿と生徒の情報。俺がパソコンに入力するから神海さんは入力すべきところをマーカーで引いていって。あ、これ見本って渡されたやつ」


 中身を見ればわかる。来賓者の名前と所属名、生徒の学年と一人一人の氏名、更には体育祭で行われる競技の名称と内容説明、その他委員会に所属していなければわからないだろう情報がA4用紙の上から下まで黒い字で覆い尽くされていた。


「え、これ本当にまとめるの? これって高校生がするものじゃないよね。サラリーマンとかが一日かけてやるものだよね」

「まあね」

「ていうかこれ中学生とか先輩とかも入ってない?」

「中学生はパソコンとかに慣れていない子が多いし仕方ない。それに俺達はこれをまとめるだけでいいから先輩より楽だと思う」

「え? 先輩は何してるの?」


 さくらが目を通した生徒名簿には無駄に丁寧に学年とクラス、五十音順に氏名が記載されているが、よく見ると中学一年生の一組から高校三年生の六組まで全て書いてある。てっきり一学年だけを成し遂げればいいと思っていたさくらは思わずパソコンを起動させている碧に質問する。


「高校三年は基本的に委員長会議に参加はしない。アドバイスとかをくれるだけ。二年は当日の役割分担」

「当日?」

「司会進行、放送係、テントとか大がかりなものの設置、後は競技に必要な物の準備とか。生徒の表舞台に立つ業務だね」

「進行って、全校生徒の前で?」

「そういうこと」

「よ、よかった。裏方で」


 百人以上の前で何かを話すなどそれこそ本当に心臓が止まるだろうとさくらは確信する。そんなさくらを尻目に起動したパソコンに碧は向かう。


「神海さん、早くマーカー引いて」

「は、はい」


 さくらの仕事は当日参加する来賓者を照らし合わせてわかりやすく碧に提示すること、既に誰がどの競技に参加するか決まっているクラスの名簿に一つずつ競技名をペンで書いていくことだ。


(一日一時間しかないから集中しないと)


 さくらはその文字の羅列と白くなっている枠の部分を交互に見比べながら一つずつ丁寧に文字を書いていった。

 そうしてさくらが慣れないながらも毎週二日、碧と共に一時間ずつ真剣にプログラムを作って早三週間が経った。


「妖精ちゃん、仕事終わった?」

「この顔で終わったと思いますか?」

「貧血起こした時もそんな顔してるから区別つかないよ」


 久しぶりに部活に来たさくらの顔つきを見て彩果は苦笑を浮かべながら首を横に振る。

 今のさくらの顔と言えば、息抜きもほとんどないというように疲労が漂っている。不健康に痩せ細っているわけではないが、いつも優しそうな目つきが今は怒っているのかと問いたいくらい据わっている。


「まあそうだよね。今もようやく柴崎君から休憩していいって言われてここに駆け込むくらいだからね」

「私だってなんでここまで時間がかかるのかわかりませんよ。纏めても纏めても次々に書類は増えていく一方で」

「でもさくらが残業することはないんだ」

「碧くんに任せてます」


 さくらは申し訳なさとありがたさを碧に向ける。さくらの言う通り、今休憩している時も碧は休まずに手を動かしている最中だ。それが委員長と副委員長の違いかと言われれば少し甘えてる気もする。


「でも妖精ちゃんはそれに加えて稽古もあるんだし、業務も折半なんだからちょっとくらい甘えてもいいんじゃない? 柴崎君もそこまでひ弱な子じゃないんでしょ」

「全く。むしろ疲れ知らずかってくらい元気です」


 さくらがその顔で一つ一つ仕事をこなしている間に碧は表情一つ、顔色一つ変えることなく淡々とキーボードを打っては纏め終わった書類を教師に提出する流れができている。さくらはそれにしがみついて言われたことをこなしている。


「本当、中学三年間委員長をやっていただけあって要領がいいんですよあの人。むしろ私いない方が碧くんにとって好都合なんじゃないかって思うくらい」

「副委員長なんてどこもそんなものだと思うよ私」


 さくらが自分の効率の悪さについて黄昏ていると、不意に彩果とは違う高めの声が聞こえてきた。

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