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私と彼女の物語  作者: 雪桃
高校一年生(全27話)
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碧とさくらの攻防

 クラス内の終礼を終えた後、さくらと碧は担任に呼ばれ教卓の前へと向かう。


「神海さんはわかっていると思うけど、今日はこの後十三時から委員長会議があります」

「はい」


 碧も中学の頃同じような会議があったのだろう。疑問に思うことなくさくらと一緒に頷いた。


「今日の議題は委員長の顔合わせと学年委員長と副委員長を決めて、一年間の予定を組み立てるらしいです。必ず参加するようにとのことなので遅刻はしないでください」


 遅刻も何も後三十分後には会議室に集合なのだから少し仕度をすればすぐ時間になるだろう。

 担任からの伝言を聞き終えたさくらは即座に自身の席に戻り、ホームルーム中に配布された用紙と自分の筆箱をバッグに綺麗にしまい、机の周りを片づける。それは後ろにいる碧も同じことだった。


「もう行く?」

「へ?」


 碧に声をかけられたさくらは対応ができず素っ頓狂な声を出してしまう。その後すぐに会議の話だということを理解する。


「い、いやまだいいんじゃないでしょうか。十分前でも間に合うだろうし」

「じゃあそれまで話してようか」

「へ!?」


 一人にさせてくれるわけでもないらしい碧にさくらはまたもや変な声を出す。碧はそんなさくらに対し首を傾げる。


「一緒にいた方がすぐに会議室に向かえるからいいと思ったんだけど。駄目?」

「い、いやいいですけど。その、何を話せばいいのか」

「そんなの普通のことでいいんだよ。昨日見たテレビの話とか好きなアーティストとか。初めなんてそんな中身のない話を広げていくものだろ?」

「あ、ああなるほど」


 当たり前というように碧が色々話題を引き出してくれるがさくらにとってはどれも思いつかないことだ。家に帰れば風呂や夕飯の時間まで稽古、その後は宿題をやって就寝、稽古がない日は大体未奈達が家に来てそのまま談話、テレビを視聴する機会も今流行りの音楽を聴くこともほとんどない。


「何してるの?」

「自分の世間知らずさを改めて実感してます」


 未奈が自分を揶揄する理由がよくわかったさくらは碧の目の前で頭を抱えた。


「私はそういうのに疎いので部活関連とかでどうですか? 例えば碧くんはえっと」

「野球部だった」

「そうそう! えっとポジションは、ピッチャーとか?」

「センター」

「……へえ? すごいね?」

「絶対わかってないだろう」


 野球の知識も全くないさくらは碧のポジションを聞いても一切理解ができなかった。


「まあポジションって言っても三年になって情けで入れてもらったくらいだから。そこまで強い中学でもなかったし」

「で、でも運動できるだけすごいと思いますよ! 私なんてちょっと走っただけで息切れ起こしちゃうから体育も満足に受けられないし」


 よくわからないままさくらは碧を褒める。その矛先はあまり野球と関係ないが、碧は少し目を見開いた後時計の方を見て立ち上がる。


「そろそろ行こう。早めに行った方がいいだろ」

「そうですね」


 十三時まで残り十分というところでさくらも立ち上がり、荷物を持ったまま一階の会議室に向かう。

 着いた時にはまだ他の生徒はおらず、会議を行うための学年担当が資料を並べていた。


「クラス毎に座ってください。待ってる間は資料に目を通しておくように」


 教師からホッチキスで綴じられた書類を一部ずつもらったさくらと碧は指定された席に着いて無言で目を通し始めた。その最中にも他クラスの生徒が数人集まり始め、全員が揃ったのは十三時五分前だった。


「皆集まったようなので早めに会議を始めたいと思います。まずは出欠確認だけしたいので呼ばれたら返事をしてください」


 教卓に立っている教師がクラスの順番で名前を呼ぶ。学年のクラスは全部で六クラス、会議には教師を除いて十二人の生徒しかいないため出欠確認は一分で終わった。


「全員いますね。それでは委員長会議を始めたいと思いますが、その前にこの中でも委員長と副委員長を決めなければなりません。仕事としてはこの会議中の進行役と記録係、後はイベントを行う際の企画まとめなど雑務です。他生徒へのアナウンスは基本的に教師が行いますが、それ以外の仕切りは委員長達にしてもらいます。やりたいと思う人は挙手してください」


 案の定というべきか、教師の言葉に誰も手を挙げない。それはそうだろう。委員長と副委員長は人前には出ないにしても一年間多忙な雑務に追われなければならない。そんなものを進んで行いたいと思う者はただの変人だろう。

 さくらも極力空気になりながら誰かが手を挙げるのを待っている。するとさくらの前の男が動いた。


「はい、立候補します。後、推薦もします」


 新入生組の碧が手を挙げたことで他の生徒だけでなく、確実に誰も来ないだろうと思っていた教師さえも驚いていた。


「あれ、駄目でした? 持ち上がり組の方がいいとか」

「い、いいえ。そんなことないですよ。異論がなければ柴崎さんに委員長をしてもらいましょう。それで、推薦っていうのは?」

「神海さんを副委員長にしてください」


 さくらは碧の後ろで静かに頭を抱え始めた。

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