皆が冷たい
さくらのクラス同様、未奈達も既にホームルームは終了していたらしい。さくらが教室に辿り着いた時には既に四人で雑談をしていた。
「あ、さくらおかえり。どうだった? 初めてのぼっちは」
「未奈に殺意しか湧かなかったわ」
さくらは珍しく激怒しながら未奈の頬を思いきり引っ張る。
「いたたたた。何よ、嘘は吐いてないでしょ。碧いたはずだし」
「いました。いましたよ。柴崎碧っていう男の子がね!」
これまでのさくらには考えられないほどの怒りっぷりに慣れていない男子二人は呆然とその様子を眺めるしかなかった。一方の泉は慣れているのか呑気に女子二人の様子を眺めている。
「だってさくら、碧が男だって言ったら確実に避けて通るでしょ」
「碧くんに限らず誰でもなります」
「そうでしょうそうでしょう。女子を紹介してもいいけどあんたグループ内に入っていくの苦手でしょ? 女なんて次の日にはある程度グループを作ってるものよ」
「まあごもっともですが」
未奈の言っていることも一理ある。初日に友達作りができないさくらのことだ。すぐに仲の良い友達同士でグループを作る女子と友達になるよりも一人でいることも多い男子と友人になったことが手っ取り早い。
「それに男子と仲良くなっておけば将来安泰だし。逆玉の輿みたいな」
「泉は一回黙りなさい」
急に口を開いたと思ったらどす黒い考えを持ち出してくる泉を未奈は黙らせる。
「泉のことは気にしなくていいからね相澤」
「なんで相澤くんに矛先が向くの」
「え、そりゃあねぇ」
未奈は気持ち悪い笑みをさくらに向けながら横目で昨夜を見る。昨夜は特に何も反応を見せてはいないが。
「大丈夫相澤くん? なんか顔が険しいよ」
「……別に」
昨夜が何も話してくれないのでさくらは疑問を感じながらもそこは流すことにした。
(良かったね相澤。さくらちゃんが鈍くて)
(黙れ加治)
さくらが見ていない所で意地悪そうにほくそ笑む有季に昨夜はその碧眼で鋭く睨む。
「で? 碧とは何か話したの?」
未奈が自分は何も悪くないと言うようにさくらへと話を転換させた。さくらはその疑問にうっと言葉を詰まらせる。
「挨拶は、した」
「会話は?」
「……逃げました」
「おい」
未奈の予想としてはたとえ仲立ちがあったとしても臆病なさくらが自ら初対面の人に対して話しかけるとは考えられない。つまり碧が率先してさくらに話しかけた。それなのにさくらは拒絶するように逃げてきた。
「せっっっかく仲介してやったのに。碧も積極的に動いてくれたのに! 一回一人で友達作ってみろお前!!」
「だ、だって突然声かけられたし。碧くんも私といるより他の友達作った方がいいかと思って」
「世間知らずが他人の心配を気にするな! 自分のことを優先に考えろ!」
「……はい。ごめんなさい」
まるで世間知らずな母親と奥手すぎる娘を見ているような感覚である。押しに弱いさくらは未奈に叱られたことで最終的に折れてしまった。
「明日からの目標を決めよう」
「目標って?」
「さくらは明日までに三人友達を作ってくること」
「勘弁してください。せめて碧くんだけでお願いします」
「あんたにプライドはないのか」
未奈が指示したものに対し、さくらは運動神経の無さを吹き飛ばすように机に頭を打ち付けるように頼み込む。
「まあまあ栗山さん。多分この一週間で嫌でもクラスメイトと関わることになるだろうから。ね? さくらちゃん。一週間以内なら十人くらい友達できるでしょ?」
「ハードル上げたな加治」
笑顔で鬼畜なことを言う有季にさくらは顔を引き攣らせ、昨夜は呆れたような視線を向ける。二人とも忘れていたが、有季は元々昨夜を殺してさくらを操り人形にしようとした張本人である。腹黒い性格は注意しておかなければならない。
「よし。頑張れさくら。目指せ友達三十人!」
「もうそれクラス全員じゃんか!!」
さくらが否定しようと更に言葉を続けようとしたが、その前に未奈がバッグ片手に立ち上がってしまう。それに続いて他の三人もその話は終わりだと言うように帰り仕度を始めてしまうので意見を言えなくなってしまった。
「あ、相澤くんまで……」
「悪い。でも折角高校生になったんだ。この際交流を広めたらどうだ?」
「できれば女の子限定でね」
「加治」
救いを求められ、苦笑しながら流そうとした昨夜だが、有季に茶化され、矛先を変える。
「はいはいそこのお三方。遊んでないで帰るよ」
「高校初日から先行きが不安だわ」
さくらは肩を落としながら四人の後をついていった。
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