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私と彼女の物語  作者: 雪桃
高校一年生(全27話)
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高校の友達は

「そういえば言うの忘れてた」


 未奈は自分の席に着いて何かに気づいたらしく声を出した。近くに席があった昨夜と有季、遅れながら登校してきた泉はその声に反応して彼女の方に向く。


「何を言ったの未奈?」

「さくらがクラスで一人ぼっちだから私の友達を紹介したって話」


 入学初日から遅刻する泉はあの会話に参加できなかった。そんな泉に先ほどのさくらの様子を説明する。


「それで? その柴崎碧さんがどうかしたの?」

「ああそう。多分さくらのことだから碧のこと勘違いしてるんだよね」

「勘違いって、できるほど情報量ないだろ」

「いやそうじゃなくて。碧のこと女の子だと思ってるんだろうなぁって」

「「え?」」


 未奈の衝撃発言に昨夜と有季は声を揃えて聞き返した。


「いやだから、碧って名前だけ聞くと女と間違えられるんだけど、本当はバリバリ男の子だってこと」

「ああ、あるよね。(あきら)って書いて女の子の時とか」

「そうそう。まあ悪い奴ではないんだけどさくらは異性になると途端に警戒心倍増させるから」


 未奈と泉が呑気に談笑している中で、蚊帳の外になった男子二人はどちらからともなく引き攣った顔を見合わせる。


(警戒心どころか、また気絶するんじゃないか?)


 二人は心の中で同じことを思っていた。




 さくらは後ろにいる男子をただ凝視するしかなかった。

 昨夜と同じくらいの見上げ方からすると彼も175くらいの身長はあるだろう。黒髪は邪魔にならないようにベリーショートにされ、スポーツマン特有の筋肉が程よくついた体は健康そうな印象を受ける。

 傍目から見れば好印象を受ける顔立ちをしている彼の名は柴崎碧。未奈に紹介された同じクラスの友達候補だ。


(男の子、だよね。男装している女の子じゃないよね。声が低いもんね)


 混乱しながらもさくらは未奈に対して並々ならぬ殺意を抱いた。恐らく未奈は知っていながら男だということを黙っていただろう。さくらの反応を楽しむため。


(あの薄情者!!)


 さくらはとにかくポーカーフェイスを貫きながらも心の中で未奈に殺意を抱く。後で何かしら嫌味を言おうか考えていると座り直した碧と目が合った。


(そういえば彼も私のこと知ってるんだよね。未奈経由で)


 碧にとってみれば面倒事を押しつけられたようなものだろう。高校生活に慣れなければいけないところに人見知りのさくらまで押しつけられればそれこそこの先雲行きが怪しくなるだけだろう。

 迷惑をかけるということでさくらが苦笑しながら小さく頭を下げると碧も何かに気づいたらしく表情を変えないまま頭を下げてきた。どうやら話は通じる人らしい。


(後で断ろう。別に友達なんていらないし。友達なんて、いらないし……)


 さくらが見えない壁を作っている間にも残りの発表は終わり、伝達事項に入った。


「持ち上がり組の生徒はわかっていると思いますが、明日から一週間は全体集会と授業のガイダンスがあります。高校は義務教育ではなくなり、一つ一つの単位が重要になってくるので必ず出席するようにしてください。それと、委員会も決める必要があるのでなるべく積極的に意見を言うように。こちらからは以上です。他に何か伝達がなければホームルームを終わりにしましょう」


 初めてのホームルームということで特にそれ以上の報告はなく、すぐに帰りの挨拶になった。後は帰宅する生徒と残る生徒と自由に分かれる。

 さくらはさっさと未奈達のいる教室へ向かおうとスクールバッグを抱えて扉の方へ歩こうとする。そこで後ろから声がかかった。


「神海さん」

「はい!?」


 急に声をかけられたさくらはつい癖で身構えながら振り返る。突然バッグで盾をつかれた相手は驚いたように手を空中に向けたまま固まる。


「あ、えっと、ごめんなさい。ちょっとびっくりして」


 相手の驚きようにさくらもハッと我に返って冷静に謝罪を返した。


「いや、こっちこそ悪かった。何か急ぎの用でもある?」

「い、いえ特に。えっと、確か」

「柴崎碧。碧でいい。未奈から連絡が来たんだけどこれで合ってる?」


 碧はさくら自身のスマホを見せてくる。そこには未奈とのメッセージのやりとりが書かれている。先ほど未奈のスマホも見たさくらにとっては特に驚くものではない。


「あ、ああそうですね。じ、神海さくらでしゅ……です」

「知ってる。前にいたから」

「そ、そうですよね。あはは」


 さくらは棒読みのような乾いた笑いを碧に向ける。碧はさくらの愛想笑いに特に反応はせず、スマホをしまう。

 二人の間にしばし沈黙が訪れる。


(何か話さないと)

「え、えっと、未奈から頼まれたものは無視していいから。どうぞ私のことは気にせず高校生活を満喫してください。私はボッチで、いいので」

「なんで俺が友達にならないだけでボッチ確定なんだ」


 正論をかましてくる碧にぐうの音も出ないさくらだが、恐らく生活していく中でわかるだろう。さくらの特性が。


「とにかく私には関わらなくていいので。えっと、それじゃあ用事があるので私はこれで。さようなら」


 何かのデジャブを感じながらさくらは碧に急いで挨拶をしてそそくさと教室を出た。

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