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私と彼女の物語  作者: 雪桃
高校一年生(全27話)
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初日からの悲惨な出来事

高校生編スタートです。

 ティタニアの騒動が終息して半年以上が経った。一度は人々から存在を消されていた彩果も無事人間の世界に帰ってこれた。全員の記憶も戻り、様々な傷を抱えることになった彩果も共に、二学期からは平穏な学校生活を送ることができた。

 そして中学三年の卒業式も無事に終わり、四月からは高校生活が始まることになる。


「まあ中高一貫だから新鮮味も何もないんだけど」


 さくらは困り眉を顔に浮かべながら呟く。


「卒業式も一応決まってるからってことでやったんだよね。大半が持ち上がりだから真面目に聞いてる人少なかったね」

「俺らは何も変わらないしな。女子は制服変わるけど」


 女子は中学と高校で制服が少し異なる。中学の制服には赤いネクタイがつけられるが、高校はそれが赤いリボンになる。ただそれ以外は全く違いがないのでさくらは新鮮味を一切感じていない。むしろ違和感を覚えているくらいだ。


「今日も入学式だけどつまらないんだろうなぁ。知ってる人ばっかりだもん」

「知らない人ならそれはそれでさくら人見知りになるだろ」

「だ、大丈夫だよ。もう高校生なんだし。多分」

「おい」


 目を合わせず顔色を悪くするさくらに昨夜は呆れた視線を送る。そんな様子を見ながら有季はふとさくらの胸元を見る。


「さくらちゃん。リボン曲がってるよ」

「え、嘘。さっき直してきたのに。やっぱりネクタイに戻したいなー」


 有季に指摘されたようにリボンは少し斜めになっている。さくらは一度ほどいて結び直そうとした。


「さくら。転ばないようにな」

「大丈夫だよ。ここアスファルトだし……」


 リボンに集中しているさくらは足元の小石に気づかなかった。

 爪先が小石に引っかかり、何が起こったか理解できないままさくらは綺麗に全身をアスファルトに打った。


「だから言わんこっちゃない」

「さくらちゃん、僕がやってあげるからじっとしてて」


 ほとんど保護者のような有季にリボンを結んでもらい、ついでに乱れた髪を整えてもらった。


「……ありがとうございます」

「いいえ。はい、バッグ持って。今度はちゃんと足元見ながら歩くんだよ。手繋いであげようか」

「子どもじゃないから。それだと本当に親みたい」


 手を出す有季に拒否を示す前にさくらは腕を引かれた。


「相澤くん!?」

「俺が引くからいい」

「だから子どもじゃないって! ちょっと、離してよ」


 さくらの抵抗を物ともせず昨夜は腕を引いて強引に歩いていく。その様子を後ろから見ていた有季は驚いた表情を浮かべた後に意地の悪そうな笑みを零した。


(早く告白すればいいのに。まあ、今のさくらちゃんには早いかな)


 有季はそのままさくら達の半歩後ろを歩くような形でついていった。




 高校の入学式はつまらないと言えばつまらないものだった。クラス担任が誰になるかというくらいが気がかりだったがさくらにとっては別に誰でも似たり寄ったりなので特に気にかかることでもない。

 平穏に高校生活も過ごせるだろう。そう高を括っていたさくらは席順を見て絶望した。


「なんで私新入生と同じクラスなの!?」


 さくらの学校では、いわゆる中学からの持ち上がり組と高校からの新入生組とで分かれる。大体一年生のうちは学校生活に慣れるということで別々のクラスになることが一般なのだが。


「今年は持ち上がりも新入生も中途半端だったみたいだね。半々のクラスにした方が効率が良かったみたい」


 さくらが配属されたクラス構成は、持ち上がり組が半分、新入生組が半分の混合クラスだった。異例と言えば聞こえは悪いが、今年の人数としては仕方がない。そこに文句をつける生徒はいない。一人を除いて。


「いや無理だよ。半分が知らない人でしょ。無理だよ。うん、無理だよ」

「反芻してるだけだぞ今のお前」


 廊下の隅でアルマジロのように丸まっているさくらは通り過ぎる人の視線の的になっている。それに気づいてないさくらは更に丸くなる。


「だってさ、冷静に考えてみようよ。先生たち皆私の実情を知ってるわけだよね。中学一年の時緊張しすぎて自己紹介中に失神したんだよ。絶対に配慮すべき人間だよね」

「そんなことになってたのさくらちゃん」


 さくらの緊張しいは三年一緒にいた時点で粗方理解ができた二人だが、流石に気絶するくらいだとは思っていなかった。いくら緊張しいのさくらと言えどそこまで行けばもう病気だろう。


「とにかく決まったものは仕方ないんだ。さくら、休み時間になったら遊びに行ってやるから」

「来ないで! 折角終息したカップルか二股騒動がまた掘り出されるでしょ! 尾びれと背びれと髭もついて!!」

「さくらちゃんって年を重ねるごとに馬鹿になってきてない?」


 いつも通り毒を吐く有季だがこればかりは昨夜も首肯せざるを得なかった。

 大体あの時は転校してきた当初で二人の世話をさくらが行わなければならなかったから噂が広まったのだ。今は皆そんなことで大騒ぎすることはないだろう。少なくとも持ち上がり組は。


「どうしよう。今すぐにでもクラスを替えてもらおうかな。いや、いっそのこと転校するっていう手も考えられなくは」

「どうにかしてやりなよ相澤。さくらちゃん意外とこういうこと決断早いから」

「なんで俺なんだ」

「あれ? 千年前に守り切れなかったこと、まだ後悔してるって言ってなかった?」


 有季は的確に相手の弱点を抉ってくる。昨夜は意地の悪い笑みを浮かべる有季をその碧眼で睨む。


「はあ。おいさくら。諦めて教室に」

「はいはい何してんのお三方」


 昨夜がさくらに手を伸ばそうとする中、不意に背後からさくらより低めの声が聞こえてきた。

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