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私と彼女の物語  作者: 雪桃
中学一年生(全17話)
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重体

 3日後の朝。さくらの母は朝ごはんにやってきた自分の娘を見て手を止めた。


「……お母さま? どうしたのそんな顔して」

「それはこっちのセリフです! 自分の顔を見てみなさい!」


 怒りというよりも焦りに近い声音で母はさくらを洗面所へ連れて行く。

 そこに映った自分の顔はまるでゾンビのようだった。

 元々美人な顔立ちなので醜くはないのだが、顔色は真っ白で血の気という言葉は存在せず、唇もひび割れていて目の下には遠くからでもわかるくらい濃い隈が浮き出ていた。


「貧血だってここまで酷かったことは……いいえそんなことを言ってる場合じゃないです。病院に電話して! すぐに連れて行きます」


 近くにいた使用人に急いで命じる。命じられた使用人は慌てて受話器の方へ向かった。


「大丈夫よお母さま。寝てれば治る……」


 息が詰まって洗面所に覆いかぶさる。直後。


「おえっげほっげほっ!」

「さくら!?」


 喉の方が焼けるように熱く、吐き出したものは真っ赤な血だった。息苦しさは収まらない。


(苦しい……痛い……誰か助けて)


 さくらの意識はそこで途切れた。




『お目覚めくださいさくらこ様』


 目が覚めて最初に映ったのは真っ白な天井だった。見慣れた病院の天井である。


「さくら!」


 (だる)くて動けないさくらに涙目の母が覆いかぶさった。


「お母さま?」

「良かったわ。あなた、今までにないくらい重症で、今度こそ本当に死んでしまうのではないかと」


 重度の貧血持ちという体質のせいで何度も手術や入退院を繰り返してきたさくらだからこそ母はこんなにも取り乱して泣いているのだろう。


「私、どれくらい寝てたの?」


 母が落ち着くまで待ってからさくらは聞いた。母は涙を拭って座り直した。


「4日間よ。学校の方にはちゃんと連絡を入れておいたから」


 ということは奈子に頼もうとしていた約束の期日は過ぎてしまったのか。

 恐らく未奈と泉が説明してくれていると思うが当事者がいないというのは何か不便なことがありそうでならない。


「部活行きたい」

「駄目に決まっているでしょう。未奈ちゃんも泉ちゃんもお見舞いに来てくれると言っていたのだから待っていなさい。私はお医者様に知らせてきますから安静にしててね」


 立ち直ると仕事が早い母である。

 1人取り残されたさくらはすることもなく天井を見続けた。


(さくらこ様って誰だろう)


 起きる直前、若い男性の声が聞こえたような気がした。

 だが聞いたこともないような声で、しかも顔も見ていないので誰なのかもわからない。


(でも何か懐かしかったような)


 考えると頭が痛くなってくる。

 さくらは思考を停止して母が帰ってくるまでの短時間、目を閉じて休んでいた。


 さくらが目を覚ましたことは使用人を通して学校の親しい者達に知らされたらしい。

 次の日には未奈と泉が見舞いに来た。


「やっほーさくら。調子はどう? 倒れたらしいけど」

「まあ怠いけどいつもの感じと同じだから大丈夫。血を吐くのは初めてだったけど」


 軽く笑い話にでもしようと思っていたさくらだったが未奈と泉が真剣な顔をしているので止まった。


「ねえさくら。私達、奈子さんにあの本を訳してもらって要約したの」

「ちゃんと琴のことも書いてあったよ」

「そうなんだ。それで?」


 見たことのない2人の顔立ちにさくらは焦りを感じて次へと進める。

 2人は顔を見合わせて頷いた。


「さくら、単刀直入に言う」

「う、うん」

「あんたが吐血して倒れたのは寿命を吸い取られたからなのよ」

「うん?」


 さくらは急なことについて行けず首を傾げた。それでも未奈は続ける。


「さくらが見つけた琴は千年前の神海家のお姫様、神海さくらこという人が所有していた琴なの。そしてさくらこは早死してしまった」

「どうして?」


 未奈はまとめてきた紙を見せながら説明した。


「その琴には呪いがかけてあった。弾いた者の寿命を奪っていくという呪いが」


 それは、過去の神海家で起こった最悪な物語であった。

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