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私と彼女の物語  作者: 雪桃
中学一年生(全17話)
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図書館と重要文献

「おはようさくら。ひっどい隈だね」

「最近琴ばっかり弾いてるから体調崩しちゃってて」

「ほどほどにしときなよ。ただでさえさくらは体が弱いんだから」


 部活はないが未奈と泉に呼び出されて1年の教室までやってきた。

 どうやら奈子に言われた通り神海家のことを調べたらしい。


「何かわかったの?」


 さくらが尋ねると未奈は大袈裟に肩を竦め、泉は苦笑した。

 机に資料は置かれているが、どれも現在のこと。ホームページから引用してきたものだ。


「何千年にも渡って受け継がれる和楽の名門神海家。ほとんど演奏会のお知らせで昔のことなんて1個も書いてない。正直琴についてなんて書いてないと思うよ」

「やっぱり? ていうかじゃあなんでメールじゃなくてわざわざ学校まで来させたの?」

「外に出てないせいでお忘れですかお嬢様」


 未奈は持ってきた資料をバッグの中に強引に詰める。

 そんなことをしたら紙が折れたり皺ができたりしてしまうのに一切気にしないらしい。


「私達の学校の図書館は県内でもランクに入るくらい大きいのよ」

「へーそうなんだ」

「本当さくらはそういうの無関心だよね」


 さくら達が通う学校は東京都内でも規模が大きい。

 その中でも図書館は1階の3分の2を占めており、読書を推薦している学校でもあるのだ。


「これだけでかければ歴史も豊富でしょ」

「神海家は近いしね。もしかしたら寄付されてるかもよ。巻物とか」

「巻物……?」


 夏休みということもあって人は少ない。

 受験勉強をしている高校3年生がちらほら見えるがさくら達はそこをスルーして書庫に向かった。

 書庫も広い。漫画であるような梯子もあり、見上げると首が痛い。


「じゃあ手分けして探そう。目標、今日までに情報収集」

「無理だと思うけど」


 やる気満々な未奈と書庫の広さを目の当たりにして早くも諦めモードなさくらは二手に分かれて書庫を回っていった。

 そして泉はというと。


「あ、これ新刊出てたんだー。ちょっと借りてくるね」

「「手伝って」」


 さくらよりもマイペースな子と言えば泉だけだろう。

 ちゃんと仕事はしてくれるから放っておいてもいいのだが。


「うーん千年前のものとかはないね」

「あったら奇跡だと思うんだけど」

「だってつい最近のものじゃないでしょ」

「だとしても見つけないと」


 巻物という感じのものはなくても写経のように本にまとめてあるなら考えられなくない。

 だがそういうものがたくさんあるのがさくら達の学校である。


「歴史は広すぎて同じ文献ばっかだね。戦国武将とか美術品とか」

「ね。やっぱり和楽ってマイナーなのかな」

「日本を象徴する伝統です!」

「ムキにならないで」

「ねえねえ」


 本を借りてきた泉がレシートのような紙と鍵を持ってきた。


「何それ」

「神海家の歴史が書かれてる書物ありますかって聞いたら場所とそこに行ける鍵もらった」

「まさか話したの? ていうか信じたの?」

「話してないよ。たださくらの親に頼まれてーって言ったら普通にくれた」

「大丈夫なの管理」


 疑心を抱きながらもヒントは得られたので早速その場所まで行く。

 書庫の中の書庫。人目につかないところに保管してあるため、薄暗く、本も無造作に積まれていることもあった。


「図書室がこんなんでいいのかな」

「これだけ本があったら司書さんも疲れちゃうんじゃない」


 神海家のものは貰い物らしいので丁重に扱われているらしい。

 個人情報でもあるので表に出てこないことが多いが。


「あ、これじゃない。この千鳥格子の表紙」


 地図通りに進んでいった結果、しっかりと包装され、立て掛けられた本を見つけた。


「えっと何々……」


 古びているがしっかりと読める。ただその文章が。


「古すぎる。いつの時代よ」


 恐らく明治、この学校が創立された当初に譲り受けたものなのだろうか。

 ただ字体が古く、中学1年の3人では到底読み解けない。


「どうする?」

「持って帰れないよね」

「奈子さんなら全部訳せると思うけど」


 奈子は忙しい。会えるのは5日後の部活だ。

 その時までは何をすることもできない。


「……とりあえず奈子さんにメールして、5日後にもう1回来よっか」

「そうだね」


 折角手掛かりが見つかったというのに助っ人を頼まなければならないことで3人は肩を落として学校を出た。




(……古文とかもっとちゃんとやった方がいいのかな)


 風呂上り、自室へと戻っていったさくらはまだ少し濡れている髪をタオルで拭きながら宿題をやり始めた。

 元より成績はいい方のさくらだが、中学1年にはまだ古文を1人で解決するような知識が入っているとは限らない。


「奈子さんが全部読み解いてくれると嬉しいんだけどな」


 すぐに集中力が切れたさくらは押し入れにしまってある琴を取り出して準備を始めた。


「今日は何弾こうか、な……?」


 楽しい気分で立ち上がったさくらは激しい立ち眩みを覚えてしゃがみ込んだ。


「あれ? 貧血?」


 いつもかかっているものとは似ているようで違う。思考力も停止していく。

 最後に琴をしまうことだけは忘れていなかった。


「具合でも悪くなったかな」


 無理をすると更に悪化するため、さくらはそれ以上何かするのをやめてすぐにベッドの中に入って眠りについた。

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